×→十年の時が経った
訂正後→数年の時が経った
誤変換しました…すんません…
首輪付きの声って結構高いイメージ。無線だと「あれこいつ女?」ってダン・モロとかカニス辺りが勘違いとかしそう()
ではどうぞ、前回から半年程経過しています。
guest member→太った男
ドイツ某州某所
とある軍部専用の病院の、とある一室。そこは日当たりも良く、風通しも良い部屋だった。
内装は上等なホテル並みに整っている。此処が病室などと言われても大半の人は信じる事は無いだろうし、信じたとしても、此処まで整える必要があるのかを問うだろう。
その問いにはこう返答しよう。勿論ある。そもそも大部屋では遮る物がカーテンだけで、プライバシーが全くない。精神的な傷を負った者からすれば、(無論傷の程度によるが)それは一種の地獄だ。
また大っぴらに出来ない身分や、事情を抱えた者。見せたくない傷や病を持った者。そういった者達を…言い方はあれだが、「隠す」為にも必要となってくる───要は心と、納得の問題だ。
404号室。此処に半年程前、外部から一人の少年が搬入されて来た。
無論、普通な少年ではない。非合法、非人道的な人体実験を数年の間受け続けた悲惨な存在だ。
実験名“デザインド”…女性にしか動かせないISを男性でも使用可能にし、尚且つIS世界大会優勝者をモデルに、最強の存在を作り出す計画。その為に彼が受けた実験は惨憺の一言に尽きる。
この計画の情報を掴んだのはドイツ政府。彼等は即座に軍部にてISの指導教官を務めている“織斑千冬”を中心にメンバーを編成し解体を開始。
無論抵抗して来た為、織斑千冬が制圧した。
そうして保護されたのが、NO.53こと“彼”である。彼は千冬の強い要望により、彼女の預かりとなった。しかし、心身共に深刻な状態だった為、即座に集中治療室に担ぎ込まれ、今に至る。
預かり先となった織斑千冬は、“彼”の治療を行った医者の一人から呼び出され、これから先の事や“彼”の現状を聞かされた。
「はっきり言っちまうと…あいつはなぜ生きているのか分からない状態だ。いつ死んでもおかしくない」
本来ならば柔和であろうその顔を、懊悩と悲観に歪めて老年の男は語る。
手始めに聞かされたその事実に、覚悟はしていたとはいえ、織斑千冬は頭を槌でぶん殴られたような衝撃を受けた。
「筋肉、神経、脳、骨、臓器諸々…全てに手を加えられた痕跡があった。まず傷が無い箇所がない。
これが消える事は無いと言っていい。過度な薬品の投与から薬害も複数疾患してやがった。大半は透析やら何やらして、何とか治せましたがね」
既にNo.53は人間の身体では無い。彼は最早フランケンシュタインの怪物だ。
そして肉体は健康から程遠く、無事な所は皆無。全身は常に不全を起こしているのに、それでも肉体が「生存」に向かって延々と動いている。これが無茶な実験の賜物である事は明白だろう。
「常人ならとっくに死んでいる処置の数々。なのにあの少年は生きている…不謹慎とは理解しているが…あの子は正しく“最高の被験体”だった」
そこまで言ってから、医師は自戒を込めて一度自身を殴る。
「…すまんな、本題に移ろう───」
そうして織斑千冬は“彼”の抱えた病理を聞かされた。先ず不眠症と過眠症の併発。どうやら“彼”は悪夢をよく見るらしく、現在睡眠を拒んでいる。その為、内臓疲労や肉体疲労が慢性化している状態だ。
次に視界不明瞭化。多数疾患した薬害の中で唯一完治せず、今も残っているもの。瞳孔が若干溶けているらしく、治るまでは時間が掛かるそうだ。その為暫くは杖を用いた生活となるらしい。
「…、もう外出しても大丈夫なのか?」
「一日一時間ほどなら。大概の物は回復したし…あとはさっき言った症状が治まるのを待つだけだ。本来なら薬を処方するべきなんだが…」
「身体が身体だけに望ましく無いと…」
「おっしゃる通りだ、教官殿」
薬害に侵されきった身体に、薬を処方するのは危険だ。なので今は自然治癒に任せる他はない。
時間を置いて薬を処方出来る様になるまで待つか、そのまま自然に治癒する事を待つか。
「栄養食をこっちから定期的に提供する。暫くはそれを食べさせるようにしろ。それと…アンタは多忙だろうが…今後二週間ほどは半日毎に状況レポートの提出をしてくれ。
部屋は、あの子の居る個室をそのまま使って構わない。回復が予定より早く済んだもんでね、大分使用期限が余ってんだよ」
医師はそこまで言って、千冬にカルテや検査結果、栄養食についてのデータを添付した書類を直接手渡した。
それを受け取った“世界最強と謳われている女”は、静かにその書類を眺めている。彼女の双眸は憂鬱に沈み、平時のような凛々しさなど欠片も無かった。
「…人生なんて、誰だって後悔だらけだ」
「……分かっているさ、頭ではな」
そう言って自嘲し、退室する黒髪の女。その背中を見て老年の医者は呟いた。
「……そう言ってぶっ壊れて逝ったやつを、俺は何人も見てきたよ」
そうして彼は懐に入れていた酒を、白昼堂々飲んだ。医者は良く晴れた今日この日、最後の業務を果たして仕事を辞めるつもりだった。
しかし存外、まだまだ自身は必要そうだと憂鬱な声で独り言を吐いた。
「だから、救ってやりたい…なんてのは俺の思い上がりかね」
そういって、壁に飾って一組の男女が幸せそうに笑うモノクロの写真を見つめた。
✳︎
404号室。窓は開けられており、爽やかな風がこの部屋にいる小柄な少年の頬を撫でる。
真白な包帯に視界を遮られている少年は、その風を心地よいものと理解し、その口端を上機嫌に釣り上げ、鼻歌を歌った。
まるで女性の様に透き通った声だ。伸びきったメラニン色素の無い白い髪のせいで、尚少年の性別を一見分からなくする。
少年…ヴォルフガングは気分を高揚させたのか、身体をリズムよく左右に揺らしている。
「ヴォルフ。上機嫌だが、何か良い事でもあったのか?」
少年は声を掛けられて、ようやく来客に気づいた。彼は一度身を硬ばらせるが、その声が既に知っているものと気付けば即座に警戒を解く。
「チフユさん? もう仕事終わったの?」
「…ああ、いや、今日は休暇を貰った」
織斑千冬は今の所少年が唯一警戒を解いている存在だ。その理由は未だ定かでは無いが、大半の人が“ヴォルフガングを救出した本人だから”と予想しているが、事実は定かでは無い。
しかしともかく、少年が本音を話すのは今の所彼女だけだろう。それは今日に至る半年の間、ずっと変わらなかった。
「もう包帯とっていいんだって」
「そうか、それは良かったな…今から外すか?」
こくり、と頷く。そして次には申し訳なさそうな声色。
「…ごめんなさい」
「……いや、謝るのは私の方さ」
…少年の手首と首には、大きな傷跡があった。彼は被検体当時、首に計測用の首輪を付けられていた。この首輪は肉に突き刺さって食い込んでいた為に、簡単には外れなかったそうだ。
また殺処分と拘束用に手錠もつけられており、それもまた首輪同様で肉に食い込んでいた。二つとも外す事は出来たが、醜い傷跡が残った。
手首には未だ後遺症が残っており、満足に動かす事が出来ない。少しづつ回復しているとはいえ、日常生活に負担となるのは明らかだった。
「いきなり瞼を全開にするなよ。少しづつ開けるようにしろ」
しゅるり、と視界を覆う包帯が外れる。
傷の首輪を付けた少年は、少しづつ目を開いて行く。
数度眩しさに目を瞬かせる。次第に目が慣れ始め、最終的にはゆっくりと、しかし確かに目を完全に開く事が出来た。
そして少年は世界を観る。
穢れた世界しか知らない少年は、今日この日この瞬間初めて正常な空間と、空と、自然を目の当たりにした。
「ああ───」
ただ一度の溜息。
そこに込められたのは、万感の思い。
溢れる涙は感動と歓喜により生まれた。
とめどなく、ぽろぽろと零れる涙は清潔なシーツに模様を作る。そんな事など気にせず、少年はひたすら泣いた。
「きれい───」
彼は一度たりとも綺麗な世界を見た事が無い。ただ我々がいつも何の気なしに見ている清浄な空、陽光を浴び輝く緑、それら全て、この少年からすれば得難く、程遠いものだった。
なぜか、報われた気さえした。少年は救われた気がしたのだ。己は
「………明日、散歩に行こう。外出許可が出た。見たい景色を考えておけ。可能な範囲で、私が連れて行ってやる」
“首輪付き”はシーツで涙を拭いながら、声にならない声で感謝を告げる。
…ずっと焦がれていたもの。それが手に入った瞬間。そう、彼は過去写真でしか見たことのない、この世界が見たかった。
今日は夜空を見よう。月を見よう。星を見よう。ああ、見たい。あらゆる景色が、穢れ無き世界が見たい。全てをこの肉眼の中に収めたい。
「…あ、れ……?」
そうして、そこまで思って、ふつりと。
「ッ!?」
まるで糸の切れたマリオネットの様に、少年は再び寝台に倒れ臥した。
焦る千冬。しかし直ぐにそれが杞憂となる。なぜなら少年はただようやく、睡眠をとっただけなのだ。
心が少し持ち治ったことで、数十日に渡る睡眠不足のしわ寄せが、今ようやく一斉に襲い掛かってきた。ただそれだけの事。
「驚かせるな…まったく」
ぐしゃりと自身の髪を崩しながら、千冬は安堵のため息を履いた。その顔には疲労がありありと浮かんでおり、持ち前の美貌よりもくたびれの方が目立つという有様。彼女の実弟がみたら即刻休めと抗議する事だろう。
そんな事など露知らず、少年の寝顔を見て懐かしむ様に彼女は少し笑っていた。
そして久々に明日あたり故郷にいる唯一の家族へ電話をしようと思いながら、念の為少年の睡眠を医者へ報告をする。
報告をし終えた千冬は、今日は取り敢えず一旦自室に戻ろうと404号室を立ち去ろうとする…が、彼女は一度逡巡を見せた。
言うべきか、言うまいか。それはたった一単語。どのみち今のヴォルフガングには聞こえないだろうが、それでも大事な言葉。それを言う資格が、今の己にはあるか?
そこまで考えて、医師の言葉が頭をよぎる。「人生なんて、誰だって後悔だらけだ」…その一言は織斑千冬の小さな縛鎖を千切るに、十分な威力を持っていたのだろう。
「…おやすみ、…せめて、いい夢を見ろ」
ぼそぼそとした小さな声だったが、聞こえているかどうかでも定かでは無いものだが、それでもそれは、大事な言葉だった。
ヴォルフガングくんの歌っていた鼻歌は「cosmos new version」です、ORCA旅団にいた時ハリが歌っていたのを真似した…みたいな感じで。まぁ各自のフロム脳に任せます(丸投げ)。
【首輪付きくん状態異常】
・成長障害(現在身長154、成長の見込みなし)
・幼児退行疑惑
・視界不明瞭(右眼の瞳孔若干溶けてる)
・もう全身傷痕まみれや
・不眠症+過眠症併発
・内臓及び肉体の慢性疲労
医者「何で生きてんだこいつ!?」(驚愕)
なんか嫌にドイツ政府の対応早いよなぁ? あ、そうだ(唐突) ちっふーは実験場で研究書類見ちゃってアイデアロールでクリティカル出しちゃったから絶賛SAN値減少中だし、変に責任感じちゃってる感じだゾ(織斑計画)
ヴォルフ君こと首輪付き。IS世界はACfa世界と比べてまだ全然マシ(私感)なので、現在社会理解した瞬間即企業殲滅…とかはしないと思います多分。亡国企業は手を出さなきゃ無事だと思う。
取り敢えず今は回復目指してレッツゴー、次回はお散歩回です。
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