ぷよコネの準備してたら延期を食らったショックでグロッキーでしたが何とか再起して初投稿です。
Run!Run!Run!
IS学園─── IS運用協定に基づいて日本に設立した、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校。
操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成される。
在校生は勿論のこと皆女性。前提としてISは女性のみが操縦可能であるからだ。
しかし今回の世代には、その原則を無視した者がいた。
クラス1-1の教室。周囲の視線を一身に受ける
そうともなれば、周囲の女性から好奇の目を浴びせられるらのも、決しておかしくはない。
そのような状況下におかれ、整った容姿を苦痛さに歪ませている“織斑ー夏”は、気まずさを感じるばかりだ。
───動物園のパンダってこんな気分なのか…
そう思いながら痛む胃の辺りを抑えつつ、この場から逃げ出したい衝動に駆られる。
しかし彼はどう足掻いてもこの場から逃れられ無い宿命である。男なら同情か嫉妬のどちらかを抱くだろう。
一夏は重たいため息を吐き、自らの境遇を嘆いたが、半ば諦めの中で現状を受け入れていた。
そして、彼は少し前に見たニュースを思い出す。
ドイツでも男性操縦者が存在したというニュース。名をヴォルフガング・イェルネフェルト。その名前には一夏にとって聞き覚えのあるものだ。
ドイツに出向いていた頃の姉の側にいた者。何もかも謎な少年(ちなみに一夏自身、ヴォルフの顔写真を見て男性なのかこれと困惑していた)
ともかく、あの男には色々と聞きたい事はある。何故己の姉と同居していたのか、何故姉がヴォルフのことを頑なに話さないのか、とかとかとか…
「…絶対聞き出してやる…」
その思考が口に出ていた事に後から気付き、慌てて唇を閉じる一夏だったが、時は既に遅く、彼はより一層の好奇と警戒の眼差しを浴びる。
だが彼にとっては、もう一人の男性操縦者と姉の関係が気になるのだろう。ー夏の意識は思考の海に没していた。
それ故に時間の経過も、自身に「織斑くん?」と呼びかける声にも気付く事が出来ないままだ。そんな具合に意識定まらぬ彼の頭に、出席簿の角が直撃する。
「がっばぶぁ!?」
激痛に悶える。彼は後頭部を押さえ、苦悶の呻きを漏らす。痛む頭の中では困惑と戸惑いばかりだ。まず自分はなぜ殴られたのか、次に誰が自分を殴ったのか。
涙の染み出した目で背後を見れば、そこには凛々しさを携えた女傑にして、一夏の実姉───織斑千冬が立っていた。
「何をぼけっとしている。自己紹介すらマトモに出来んのかお前は」
「ち、千冬姉…」
「此処では織斑先生と呼べ」
「あっばぶ!?」
二撃直撃。一夏は机にキスをする。姉弟間ではさして珍しくもない一連だが、公衆の面前で行うには中々に刺激的な戯れだ。
しかしそれを見て顔を顰めるものはいない。むしろこの教室にいる多くの生徒が、その目を羨望と興奮の色に染め上げ、織斑千冬を見る。
そして大多数の黄色い音が、爆ぜる
「「「「ッッキャーーーー!!!!!!!」」」
耳が裂かれんばかりの声量に顔を顰める織斑姉弟。そんなこともお構いなしに生徒達は叫び続ける。
「モノホンよ!モノホンの千冬様よ!?」「最高か?最高に決まってるじゃない!」「予想通りツンツンなのね、嫌いじゃないわ!!!!」「Foooo!!!!我が世の春がきたぁあああ!!!!」「凛々しいの塊…ありがとう…ありがとう…」
ブリュンヒルデ。それは織斑千冬が持つ最強を意味する称号。故に彼女は世界からの憧れを一身に受けると言っても過言ではないだろう。
なお当の本人は呆れた様相で生徒を眺めながら“私の周りにはこんなのしか集まらないのか”とぼやいている。
こんなの呼ばわりされながらも声援をやめない生徒達。痺れを切らしたのか、織斑千冬は声を張り上げて教師の常套句を言う。
「静かにしろ!!!!」
それだけでピタリと止む声。教室の空気が固まるが、慌てて緑色の髪が特徴的な、クラスの副担任である山田真那が慌てて千冬に駆け寄る。
「お、織斑先生! ヴォルフ君は見つかりましたか!?」
「ん、ああ。屋上にな…今連れてきた所だ」
「…!」
話題に上がった名前を耳にし、一夏が微かに目を見開く。彼は同じクラスなのか、と内心微かに驚きながらも周囲を見渡す。
どこだ、どこにいる。好奇心と何やら騒ついた心が彼の体を動かすが、しかし、何処にもそれらしき姿は見当たらない
織斑千冬は大きくため息を吐き、教室の戸を睨みながら恐ろしく低い声で言う。
「…───おい、そろそろ観念しろ」
皆一様に戸を見る。そこには誰もいないが、気配はあった。教室内に来ることをただただ忌避するかのような気配だ。
やがて戸からひょこ、と手が出る。白い手だが、しかしその首元には痛ましい傷跡が見える。戸の向こう側にいる者は、その手をひらひらと揺らしながら、男性にしては高い声で、眠たげにこう言った。
「……時差ぼけがひどいので早退するよー…」
「え、えぇ…?」
それに山田が困惑の声を上げた次の瞬間、織斑千冬は双眸を憤怒一色にし、勢いよく戸の向こう側にいる者に手を伸ばす。
教室にいる生徒達が見たのは、世界最強の片手に頭を掴まれ、持ち上げられた長い白髪が特徴的な少年だった。
「初日から随分と自由だなこの馬鹿者」
「チフユ、チフユ、痛いよ」
「ここでは先生と呼べ」
ぷらぷらと地に足をつけられないまま苦言を呈する白髪の少年。その髪型と高い声から一見女性と見紛えるが、制服の形からして、彼は歴とした男性である。
「…えぇー、あの私生活で先生はちょっと…」
「ほう? 随分と口が達者になったな?」
「あばばばばば!?!? ごめんなさいごめんなさい再会の嬉しさで調子乗ってた乗りましたオリムラ先生!!!」
めぎめぎと世界最強直々のアイアンクローをくらい、軋む音を鳴らす少年の頭蓋骨。余程の激痛を味わっているのか、足がバタバタと動く。
彼の“先生呼び”と謝罪で溜飲を下げたのか、千冬は雑に少年を席におろした。少年は落下の衝撃をもろに受ける。
「おぶっ!?」
「まったく…。すまない、自己紹介を続けてくれ」
少年は“ゔー…”と呻きながら軽く乱れた制服を整えた。そして自身に集まる好奇の視線を実感し、また呻く。
彼の聴界には数多の囁き声が響きだす。内容は「本当に男?」やら「男の娘…ありね」やら「千冬様(姉)とどんな関係が…」やらと多種多様だ。
「えっと、それじゃあ織斑くんからお願いしますね!」
「え、俺!?」
織斑一夏はぼんやりしていたおかげで、自分まで番が回っていた事を知らなかったらしい。
彼は慌ただしく席を立ち、しどろもどろながらも自己紹介を始めた。
「…ッスーーーーーー…」
始めた。
「えー…っと……」
……始めた。
「織斑一夏です。…よろしくお願いします…」
沈黙と同時、教室に尋問室のような空気が流れる。具体的に言うと「もっと色々吐き出さんかいコラ」といった感じだ。
それもそのはず。男性操縦者など希少も希少。加えて織斑千冬の弟ともなれば尚のこと。クラス中が情報に飢えているのである。
しかしそんな事など一夏が知る由もない。彼はなんと言ったら良いかわからず固まったままだ。内心「皆何を期待してるんだよ…」と冷汗だらだらである。
そうして棒立ちのままでいたらまたもや叱責を受ける一夏。その間でも彼に注がれる興味の目は変わらない。
───そしてそんな彼を一等強い興味と期待の眼差しで見つめる者がいた。獲物を前にした肉食獣とは違う。玩具を楽しみに待つクリスマスの子供のそれだ。凶暴性のない、しかしギラギラとした目つきで彼を見ている。
「お前もぼけっとするな。さっきから名前を呼ばれているだろうが」
「ミ゜」
その者も千冬から出席簿インパクトを叩き付けられる。机に頬をつけながら、彼は心の中で“前にもこんな事あったなぁ”と昔を懐かしんだ。
彼は幾度か咳払いをし、きっちりと背筋を伸ばし、溌剌とした笑みを作る。声が通るように息を吸い、お腹に力を入れる。
そして簡単かつ平凡な自己紹介を口にした。
「…皆さん、はじめまして。ドイツからやって来ました男性操縦者の一人、ヴォルフガング・イェルネフェルトです。長いのでヴォルフと呼んで下さい。
えっとあとはー…あ、そうだ。この一年間、よろしくお願いします」
その言葉に帰ってきたのは密やかな声。噂にも満たない話。ヴォルフはまぁこんなものだろうと思い、席に座ろうとしたが───その前にと、自身と同じ性である者の前に立つ。
顔を近づけ、まじまじとその者を見る。黒い髪と瞳。日本人としてなんらおかしくはない特徴。
白い少年は、その両手を伸ばし彼の手を掴んだ。不格好だが握手の形になっている。
「君がイチカだよね?」
「だ、だったら何だよ……」
笑顔でヴォルフは確認を取るが、一夏の方は頬が引きつりまくりだった。というか若干引いている。警戒していた相手がいきなり笑顔で話しかけてきたらそら身構えるもんである。
しかし彼の困惑などいざ知らず。ヴォルフは不格好な握手をそのままぶんぶんと振る。乱雑なハンドシェイクを不意打ちに喰らった一夏なそのまま振り回された。
「う、ぉ、あぁ!? いき、なり、手をふり、まわす、な、お前!?」
「やーーーっと会えたぁ!! チフ…オリムラ先生まったくイチカの写真見せてくれないんだもん!!」
「だあああ! いきなり何なんだ!? 大体お前千冬姉の何なんだよ!?」
「騒ぐな二人とも」
終幕を浴びながらも騒いでいた二人に制裁再び。
「ちょ、待っ、びば!?」
「待って千冬姉、何で俺まで…ぶは!?」
初日早々頭にたんこぶを作りながら呻くヴォルフは、それでも笑顔を絶やさなかった。
一方一夏は不満そうな顔のまま激痛に顔を歪めている。
「いたたた…ちょっとは加減して欲しいよ…」
戯けるように笑って見えるが、涙目なので痛みは本当なのだろう。だがその笑みに加わるのは、好奇と恍惚が同居した獣じみた眼光。
それは確かに一夏を見据えており、決して離さなかった。
「…諸々終わったら保健室行こう…」
ボソリ、と一夏は呟きつつ胃袋のあたりを抑えた。
首輪付きくんですが女装は頼まれたら対価次第でやってくれます。頼み=依頼の感覚がまだ染み付いてるからね、仕方ないね…犯罪の匂いがするなぁ!?
Q.戦い好きが顔写真みたい&やっと会えた発言の意味は?
A.顔写真見たい→対戦相手知りたい
やっと会えた→バトルしようぜ!
それぞれこう言うふうに和訳できますね。他にも「挨拶全般→首よこせ」などの派生もあります(頭島津)
・首輪付き
回りが女性だらけかつ好奇心の目が全身に来るのに迎撃出来ないからわりとげんなり。まるで成長していない…。話の通じるプレデター(相互理解ができるとは言ってない)イメージングはエンゼルフィッシュ。
・おりむー
なんかいきなりアルビノショタに恍惚な目でガン見された怖い。胃痛枠候補にしてハードモード爆走中の織斑弟。ちょっと危ういかもしれないシスコン。イメージングはthese are days (夏繋がり)
・ちっふー
おとうととゔぉるふがなかよさそうでなによりです(胃薬がぶ飲み)
なお当人達が知らぬままに男性操縦者二人を扱ったナマモノ同人誌の作成がクラス内のグループ一部で決まった、南無三。
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