急募:人類種の天敵を幸せにする方法   作:「書庫」

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バイトの面接が終わったので初投稿です(百均)



White tail tale beginning

 クラス代表決定戦前、ヴォルフガング・イェルネフェルトは相手となるセシリア・オルコットの試合記録を見ることもなければ、聞き込むことすらしなかった。

 また昨今のIS学園では「誰もいない訓練場でバカみたいに速い機体が飛びまくっている」のが噂となっていた。何だそれは、と思い観に行こうとした生徒もいたが、一度もそれがはっきりと確認された事はないという。

 

「うーん、久々だと難しい…」

 

 更衣室でそんな事をぼやいたのは、噂になっていた「馬鹿みたいに速い機体」の乗り手である。ヴォルフガング当人だった。

 彼は新たに組み替えた“ストレイド”の速さに慣れようと、ここ数日の間は訓練場に篭っていたのだ。

 

 開発者からセッティングされていたパーツである「LAHIREシリーズ」は、速さと軽さを売りにした一品だ。実際、その通りこのパーツを用いた事でストレイドのスピードは飛躍的な上昇を遂げている。

 

 が、欠点があるとすれば“脆い”事だ。

 

 エネルギーの大容量をブースター系統に割くため、シールドやら絶対防御やらのエネルギー数値が他機体と比べ、圧倒的とまでは言わないが低い。

 もちろん、売りである速さを駆使し、回避に徹すれば良い。だがこの機体の速さはそれこそ段違い。慣れなければ振り回されて終わり。ただの動く的と変わらないだろう。

 

「でも何とかなるか。

 …お腹すいた…食べ行こ…」

 

 感は戻りつつある。それに「速い」というのは嫌いじゃないし寧ろ好きだ。あの風を切る感覚と、目まぐるしく変わる視界は、何とも言えない興奮がある。

 

 そんなことを考えつつ、黒い帯のようなものが巻きついた黒色のISスーツを脱ぎ、自分が動きやすいように改造した制服を纏う。

 長い髪をヘアゴムで纏める。切る予定は───今のところ無い。戦闘の邪魔にはならないし、出来ればまた梳いたり、結んだりして欲しいものだ。

 そんな願望を頭に思い浮かべつつ、彼は食堂へ向かった。

 

「…わぁ」

 

 食堂にはほぼ屍と化した織斑一夏がいた。彼の前には、何処か不機嫌そうな篠ノ之箒が朝食を取っている。

 ホットサンドと簡単なサラダの乗ったトレイを手に、一夏を見るヴォルフに気付いたのは他ならぬ一夏だ。

 

「よぉ…座るか…?」

「なんで朝からそんなゾンビみたいな」

「久々だと全然ダメだな…剣道」

「は?」

 

 ───ISじゃなくて剣道? 何で? と思いつつ促された通りに隣へ座るヴォルフ。それに気付いた箒が、やや頬を引きつらせるがヴォルフの目には入っていない。

 

「何で剣道?」

「俺が知りたい…箒にISについて教えてくれって頼んで、一回断られて…でも何か了承してくれて…今ここ…」

「うーん、全然わからない」

 

 そんなふうに駄弁りながらホットサンドを口に入れると、目を輝かせるヴォルフ。どうやら困惑とか疑問とかより、今は食い気が勝るらしい。

 にへら、と微笑みながら二口、三口。その姿は殆ど無垢な子どもと変わらない。困惑の目が箒からあるが、それに気付くこともない。

 

「というか、イチカの機体って?」

「…一夏の機体はまだ無い。それが理由で今は昔の感覚を取り戻させようとだな…」

「剣道やってたんだ、イチカ」

 

 何気ない質問に答えた箒。そこから得た情報に微かな驚きをみせるヴォルフ。ぎこちない会話だが、確かに成立する言語のやりとり。やはり篠ノ之箒は困惑を強くする。

 そんな様子の幼馴染みに気付かず、というよりは気付く余裕も体力もない一夏は、机に突っ伏していた体を重々しく上げる。グイッ、と伸ばされる身体。ごきごきと音が鳴り、あくびも出た。

 

「…よし、そろそろ俺は行くよ。ヴォルフ、後でノートちょっと見せてくれよ、流石に基礎くらいは知りたい」

「ん、じゃあ放課後部屋で一緒に勉強する?」

「良いのか? お前も訓練とかしたいだろ?」

「今日はお休みってことで」

 

 そりゃ良いと笑いつつ、その場を後にする一夏。箒にもお礼を述べて去った彼の背を見ながら、ヴォルフは箒に言葉を放りなげる。

 

「…もう素直に好きって言っちゃえば?」

「ぶふぅッ!?」

 

 まさかのぶっ込みに思わず吹き出す篠ノ之箒。そんな様を可笑しそうに見ながらサラダを口に入れ、清涼感に頬を和らげるヴォルフ。まるで平和だ。何処にも危険な匂いなどなく、極めて長閑な雰囲気。

 そんな雰囲気をぶち壊すようにむせながらも呼吸を整えた箒は、涙目になりながらも水を飲む。息と調子を整えてから食ってかかるように「何故わかったのか」と聞いた。

 

「僕とイチカの会話であからさまにつまらなそうな顔してたから…羨ましい?」

「だっ、だだ誰が羨ましいなどと!!」

 

 紅玉色の瞳を小悪魔のような笑みと共に光らせる少年に、しどろもどろになりながらも否定にもならない否定をする少女。側から見ても篠ノ之箒という人間が、小さな少年にからかわれているのは明白だった。

 

「へーぇ、ならこれからの放課後はイチカと勉強しよっかなー」

「なっ…」

「あははっ! ほらほらもう隠せてないよ。

 …あと僕にその気はないから安心して良いよ? あ、でもそうか。イチカとの時間がとられるのが嫌なのかなぁ?」

「い、いい加減にしろ貴様!! 誰があんな鈍感で実直な奴なんかに…」

「いや途中から褒めてる褒めてる」

 

 実に活き活きとした表情でからかう少年。手玉に取られる少女。二人の見た目もあり、何故か姦しい。外見とはなかなかに人を惑わすものである。

 

「ゔぉるゔぉる〜新作のお菓子出てるよ〜」

「ッ! ヌホトケ、すぐ行くから待ってて! …じゃね、ホウキ。何でそんなに()()()()()のかわかんないけど、()()()は結構バレるよ?」

「───ッ!?」

 

 他の生徒に呼ばれ、ぱたぱたと食器とトレイを手に去るヴォルフ。最後の一言を受けた彼女は、その場に針で止められたようにピシリと固まってしまう。

 篠ノ之箒の脳内で姉の言葉が再浮上する。彼は危険である。彼は人間ではない。彼はなるべく早く殺さなければならない。あの天災とまで呼ばれた、姉がこうも言う。恐怖もするし、探る目も向けるのは当然だ。

 

 だが、だが篠ノ之箒はわからなくなった。確かに姉は必死だったが、彼は本当にそこまで危険なのか? そもそも実害をもたらした経歴もないかのように見える。そうともなれば敵視する理由は一切ない筈である。

 

 自分はどうするべきなのか。そう迷う彼女の手の中には、兎の意匠を持つスイッチが冷たく転がっており、何の意味もなく手のひらの面積を消費する。

 

 そうして、先日一夏へ言った警告と、その返答について思い出す。

 

 “やつは危険だと、あの人は言っていた”

 “…悪い、俺にはそう思えねぇ。いや、そう思っちゃいけない”

 

 ───あれはどういう意味だったのだろう。

 

 

 ───

 

 

 あっという間にその日は来た。クラス代表決定戦当日、ここに来て“織斑一夏の専用機体がまだ届いていない”という思わぬハプニングが発生する。

 これは仕方のないことであった。前例のない男性操縦者に“本来なら主に代表操縦者および代表候補生や企業に所属する人間に与えられるワンオフ仕様である特別性のある機体の用意”などどう考えても急すぎる。難航しても致し方ないことだ。

 

「…そういやヴォルフはもう持ってるんだな」

「政府が早くにレイレナード社に声をかけてくれたからね、だから一応そこの所属になってるよ、僕」

 

 嘘は言っていない。また違和感もないのでそのままスルーされたが、その場にいた織斑千冬は内心ひやっひやだった事をここに明記しておく。

 そんな事などつゆ知らず、一夏と箒が何やら揉め始めたのを身はからい、ヴォルフは小さな声で提案する。

 

「チフ…オリムラ先生、僕が先に出よっか?」

「却下だ。あいつが先の方がお前にとっても、此方側にとっても、一夏にとっても都合がいい」

「はっきり言うなぁ……あだっ」

「学校では敬語を使え」

「…寮では?」

「………………しかし遅いな、アリーナの使用時間も限られているんだが…」

 

 露骨にはぐらかす千冬とそれにジト目を送るヴォルフ。ギャーギャーと騒ぐ箒と一夏。そんな喧騒を切り裂くように、高い声が響き渡る。

 

「来ました! やっと来ましたよ〜!」

 

 緑の髪を揺らし、ばたばたと走る山田真耶。彼女は息を整えつつも、迅速に織斑一夏を専用機の元へ案内する。それに千冬や箒も続き、興味が湧いたのかヴォルフもついていく。

 

 その先にあったのは、ヒロイックなデザインで組み上げられた一つの技術の塊。ただ一人のために組み立てられた兵器。その特別性は、ISに触れて日が浅い一夏でも確かに実感することが出来た。

 そして同時に───彼は、眼前の機体に何処か「会うべくして会った」というか感覚を抱く。酷く奇妙ではあるが、それは確かな実感であり直感である。

 

 山田真那が告げるその機体の名は“白式”

 

 舞台役者の名が挙げられた時の観客のように、織斑一夏の胸は高揚した。眼差しは熱く、心は滾る。心なしか、彼の口元は釣り上がり笑みの形を作る。まるで楽しみを控えた幼子のようだ。

 

「…また“White(しろ)”か」

 

 そしてもう一人、笑みを浮かべる者がいた。

 ヴォルフガング・イェルネフェルトは、否“首輪付き”は、己が相対した中でも最も高い実力を持った者を、怪物と形容するにふさわしい者を頭の中で思い浮かべる。

 

 ───“白い閃光(ホワイト・グリント)

 

 全盛期を過ぎたUnknownを支えた、最強の座に君臨する機体。そして何より、一度己の腹を貫き、自らの人生に幕を引いた白。

 織斑一夏はそんな“白”になってくれるだろうか? いや、なって欲しい。そして自分と戦って欲しい。勝手な言い分と理解しているが、白の名を冠した機体を駆るのであれば、その者は強くなければ己が納得しない。

 

「よし、時間も押している。一夏、行けるか?」

「いつでも行けるよ、ちふ…織斑先生」

 

 ISを身に纏う一夏。何処か冷たい感触に、興奮していた頭は極めて冷静に変貌する。緊張がないと言えば嘘になるが、やるだけやらねば意味がない。その意思は強く、それは彼の双眸に確かに宿っていた。

 出撃前となる一夏に、数多の声が投げられる。声援と応援。幼馴染みと教師と姉から届けられるそれに、どうしようもなく勇気付けられる。

 

「───イチカ、盛大に暴れなよ」

 

 そして最後、カタパルトから射出される瞬間。

 長い白髪を揺らしながら、微笑みを向ける“彼”を見る。

 サムズアップで、激励とも言える言葉を吐く。

 

 織斑一夏には、それが頼もしく見えて、それでいて一度だけヴォルフガングを正しく認識した。

 ああ、悲しいことに彼は“戦いの先達”なのだと。

 

 

 “あら? 逃げずにやって来ましたのね”

 

 

 ───そうして小さな白は、初の敵と相対する。

 

 





ヴォルフ→ホワイト・グリント過激派強火勢。探る目には気付く。伊達に傭兵はしていなかった。

篠ノ之箒→束さんのフラグ管理が杜撰すぎてガバ発生。介入イベントが1減少。しかし早いとこ機体を貰わないと命がやばい(予言)

織斑一夏→ファインプレーは「座るか?」の後の早期退散。これがなかった場合では束さんの介入イベントがセッシー戦直後に発生していた。グランドルートへの道筋をガバ無く走る走者の鏡。

織斑千冬→先生と呼べ(無意識:それはそれとして名前呼びも捨てがたい)

アンケートで募集していた記念話ですが、百票以上のものは全て書くことに致しました。その方が皆楽しめるし私も楽しい最高か?
 ストーリーの進行度合いと書き上がり次第投稿致しますんで! それでは皆様アンケートご協力ありがとうございました!

UA20000記念話

  • ドイツ大人組飲み会
  • IS学園掲示板
  • レイヴン押し倒され騒動
  • ヴォルフ女装話
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