紫の集会   作:喜求


原作:東方Project
タグ:八雲紫 カオス

なも知れぬ土地、世界と世界のスキマに集う数多の紫。
彼女達はそこで集まり、酒を片手に世間話に花を咲かせ、各々の世界を語り合う。

貴方の所の八雲紫も、この集会に参加してみては?




ゆかりんなら世界線くらい軽く越えてくれそうだなってことで書きました。

うちの世界線のゆかりんに出てもらっている為オリキャラについての話があります。

皆も書いてください(懇願)

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紫の集会

 

 

 八雲紫は急いでいた。

 

 

 

 今週は春雪異変があり、その事後処理もあってあまり寝れていない。

 

 

 

 それでも仕事と呼べるものはなんとか片付け、今はとある集会に向かうべく四肢を動かしていた。

 

 

「ええっと、お洋服は……いつものでいいわ」

 

 

 髪を整え、変な所はないかチェックし、式神である藍を呼び出す。

 

 

「藍、少し出掛けるわ」

 

「わかりました、留守はお任せください」

 

 

 頭を下げ、部屋を後にする藍を見送ってから目的地へスキマを開く。

 

 

 

 上物の酒と酒器を詰めたキャリーバックを手に取り、出発前の最終チェックを始める。

 

 

「髪よし、酒よし、顔よし、服も……よし」

 

 

 最後に誰にも見られていないことを入念に確認してスキマに飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

 

 一人を除き誰にも知られぬ土地にて一つのため息が響く。

 

 

「またため息? 最近多いじゃない」

 

「そりゃね。あなたのように私は頭も良くないし、苦労事は尽きないわ」

 

 

 この場に集うのは数多の世界の"紫"、それぞれの幻想郷を持つ紫の集会だ。

 

 能力の強弱も容姿も価値観も違う、けれど確かに"紫"と呼ばれる存在がここにいた。

 

 

 集会の目的は暇潰しと同じ境遇の別の視点による新たな閃きとされるが、実際集まる理由は様々でおおよそ自分の幻想郷を見せびらかす為だ。

 

 

 皆酒を片手にそれぞれの幻想郷を眺めて、アドバイスなり苦労話などに花を咲かせるのがいつもの流れとされる。

 

 

「あなたは干渉しすぎなのよ、それでは胡散臭さが演出できませんわ」

「頭では分かってるのよ、この前も"あんたに言われなくたってやるわよ"なんて霊夢にいわれちゃったし」

 

 

 くいーっと注いである持参した酒を飲み干し、次を注ぐ。

 

 

「でも概ねあなたの理想通りじゃない、弾幕ごっこすら制定できてない"あっち"よりはよいんじゃなくて?」

 

 

 扇子で示されたのはこれまた紫、あの紫は確か私よりも頭が悪かった筈だ。

 

「今私のことを馬鹿にしませんでした!?」

 

 

 聞こえてしまった……というより聞こえるように話したのか。何やら騒ぎだしたが気にしない気にしない。

 

「干渉のし過ぎとはいいますけど……やっぱり混ざりたくなるじゃない。霊夢とべったりくっついていたいし、かまって欲しいですわ」

 

「その気持ちはわかりますわ……そういえば、確かあなたの所もシナリオ外の人がいるのでしたわね」

 

 こちらの幻想郷を覗きながら同じくシナリオ外の人を持つ紫が言う。

 

 

「ええ、名は紗由理。どうも庇護欲に駆られちゃってね、外から連れてきたのだけど」

 

「ふぅーん……この娘の能力は?」

「まだ確証はないのだけど、恐らく"触れた力を身に付ける程度の能力"ね、私が運んだときに妖力を、霊夢と魔理紗に出会ったときに霊力と魔力が極端に増加しているわ」

 

「なんとも変わった能力ね、そしてとっても便利。さしずめ予備……といったところかしら」

 

「そんなところね。あとは刺激、元気で強い人間はそれだけで淀んだ空気をかき乱してくれるもの」

 

 閉じた環境である幻想郷がよく陥る問題が、妖怪の不活性化である。

 同じ住処、同じ景色、同じ行動は、あっさりと長命の妖怪の活力を奪っていき、次第に不干渉になっていく。

 やがてそれは妖怪と人間の弱体化という形で現れ、そこを突かれたのが吸血鬼異変だ。

 

 その問題を解消するのが人間である。彼らは生活の糧として、はたまた信念をもってその短い命を燃やし多くへ干渉する。

 

 

 ……それがたまに良くない方向へ行ってしまうのが管理者の悩みの種なのだが。

 

 

「ただの人間にしておくには惜しいわね」

「ええ、力を持った神と会えば神力も身に付けるでしょうし、鍛えさえすればとても強くなる筈ですわ」

 

「人の身でありながら人外の力を扱える、面白い人材じゃない」

 

「でしょう? けれどね、この娘頭は悪くないんだけど変に抜けてて危なっかしいのよ。この前なんて……」

 

 

 様々な紫といっても幻想郷そのものは大まかなシナリオに沿って造られる。よってヒトや地理などはおおよそ似通ってしまう。

 シナリオ外の人物に話が集中してしまうのも自然の流れだった。

 

 

 そして、そのシナリオ外の人間について話そうとしたところで拍手が一帯に鳴り響く。

 

「はあい皆さん、談笑中の所申し訳ありません。私のお話に耳を傾けてくださいな」

 

 

 酒器ではなくマイクを片手にそう話すのは初めに幻想郷を造り上げた紫。原作の紫、と呼ぶ人もいるだろう。

 

 

「今週の"ゆかりん頑張ったで賞"を発表いたしますわ」

 

 

 いつもの授賞式の開催に「わぁい」と静かに拍手を送る紫もいれば「いぇーい!」と派手に騒ぐ紫も見える、式神の藍がみたら卒倒するだろう光景なのは一目瞭然だ。

 

 

 ちなみにこの賞……"ゆかりん頑張ったで賞"は文字通りの意味だが、その受賞基準は結構適当で、今週のそれぞれの出来事を見て皆が一票づつ投票し、一番票が多いのが優勝となる。

 

 先週は月の賢者を上手く口で言い負かした世界線の紫に決まったが、今週はどうだろうか。

 

 

 

 

 

「ええっと、今週はー……」

 

 

 

 

 

 じゃかじゃかとテレビ番組とかで使われてそうな楽器の音が鳴り響く。

 

 毎度微妙に演出が違うのはそれだけこの発表に力を入れている証拠だろう。

 

 

 

 

 

「あなたね」

 

 

 

 ぱっかーん

 

 大きな効果音がして、スキマから現れたくす玉が今週の受賞者へと紙吹雪を撒き散らす。

 

 

「へ? 私!?」

 

 

 

 選ばれたのはあやt……ではなく私だった。

 

 

「よかったじゃない、あなたがMVPよ」

「いや……私なにかしましたっけ」

 

 

「きっとあれよ、霊夢にしばかれた時」

「あれなの!?」

 

 

 

「さあさ、台に上がって頂戴な」

 

 

 

 驚きが冷めぬまま表彰台へと誘導される。

 

 

「それでは皆に好評だった所を観てみましょう」

 

 

 巨大なスクリーンが現れ、映像が投影される。

 

 

 

 

 

 場面は冥界のどこか、西行妖が遠くに見える所で、霊夢と魔理紗が飛んでいた所から映像が始まった。

 

『はあいお二方、こんばんわぁ』

 

 そこへ割って入るのはもちろん私。

 

『紫か』

『ええ、八雲紫で御座いますわ』

『なんだ、こんなところまできてお節介か?』

『まあそんなところですわ』

『邪魔するんなら退治するわよ』

 

 突然出てきたことで魔理紗に疑惑の目が向けられているが、異変解決モードの霊夢はそれを通り越して退治する気満々の顔だというのがよく分かる。

 

『あら恐い、もしかして"あの日"かしら? 体調には気を付けるのよ』

 

 

 煽りを入れた直後、画面の手前から何かが高速で紫に飛来し直撃した。

 

 

『イッ!? ごめんごめんなさい私が悪かったわだからそれをしまって頂戴!!』

 

 

 よくよくみるとそれは霊夢の陰陽玉で、それが容赦なく叩きつけられていた。

 

 

 その後いつもの姿に戻り、異変について話してから動画が終わる。

 

 

 

「それでは皆様のコメントを読ませて戴きますわ……『紫っぽい』『一連の流れの後いつも通りに戻ったところが良かった』『私も霊夢に苛められたい』『今度真似してみますわ』などですわね」

 

 

 これはどんな羞恥プレイだと思いつつある私だが、このコメントを聞いた瞬間にこの私達は大丈夫なのだろうかという気持ちに刷り変わった。

 

 

「それではMVP、一言お願いします」

 

 

「ええー……」

 

 

 この流れで何を言えばいいのかと……。

 

 

 

「も、もっと霊夢とべったり出来るよう頑張りたいで……す?」

 

 

 最後に疑問系となってしまったが、そんなことお構いもなしに皆から沢山の同意の声が上がる。

 

 

「ありがとう御座いました……私も霊夢ともっとイチャイチャしたいのですが、立場上なかなかそうできないのを怨めしく思いますわ」

 

 

 

 あなたもか

 

 

 

 

 大体の紫に共通していること、それは幻想郷と霊夢への愛だ。

 

 その形は様々であれ今この場にいる紫は殆どが熱狂的な霊夢への愛を持っている。

 

 

 中には霊夢を産まれたときから育ててる私のような紫もいるので尚更だ。

 

 

「それでは今週のゆかりん頑張ったで賞の表彰式を終わりにします。それでは皆様、よい幻想郷ライフを」

 

 

 司会役の初代紫が元の世界へと帰る。後は談笑したり、忙しいなら帰るだけだ。

 

 

 私は寝不足もあって少々帰りたい気持ちがあるけど、MVPということで他の紫が集まってきていた。

 

 

「あなたのとこの幻想郷はどんな所かしら、よければ聞かせて欲しいですわ」

「霊夢の教育はあなたが行いましたの? 私の所はまだ幼くて勝手がわからないのです、ご教授願いますわ」

「あの娘は元気かしら、前に言っていた紗由理って人間」

 

 

 それぞれの話を同時に振られ一瞬わからなくなるが、これでも賢者と呼ばれる身だ。その頭脳を遺憾なく発揮し順々に回答していく。

 

 

 

 かれこれ数十分問答を続け、「ようやく終わりましたわ……」と呟き会場の椅子にへたりこむ。

 

 

「随分お疲れですわね」

 

 

 そこへ酒器を2つ持った紫が現れる。

 この紫は先の問答にはいなかったと思う。

 

 

「異変の後処理が立て込んでいて最近寝れていないのです。疲れもしますわ」

 

 

 彼女も椅子に座ると酒器の一つをこちらに渡してくれて、酒を注いでくれた。

 

 

「八雲紫をやるのも大変ですわね」

「貴方は……前世の記憶を持った元人間でしたわね、それもちょっと変わった外の世界の」

 

 私達が幻想のモノとして普及している世界から来たという、なんとも不思議な世界だ。

 

「ええ、今ではこの体にすっかり慣れてしまったけどこれでも……やめましょうかこの話」

 

 

 なぜその話をしようとしたのか……。

 

 まあその話の続きはわかる、元の性別が今の外見とそぐわないとでもいうのだろう。

 

 

「性別の違いなど些細な問題でしょう」

「ま、まあ最近はそう思ってますけど、初めは苦労したものですわ」

 

 

 ほんとうに……と呟く彼女、何があったのかは聞かぬが花というものだ。

 

 

「貴方の幻想郷を見せて戴いても?」

「ええ、是非見てくださいな。良ければ貴方のも」

 

 

 もちろんと返し、互いの幻想郷のスキマを開く……へぇ、なんとも興味深い。

 

 

「人間と仲が良いのね、貴方が元人間だからかしら」

「そうなりますわ、前世を遥かに越える歳月を生きましたが、やはり忘れることは出来ません」

 

 

 随分と人里に知れ渡っていて、それでいて印象も悪くない。まさに妖怪と人間が共に生活しているといえる。

 

 

「ですがこれほど仲良くなってしまえば別れが辛いのでは? 特に貴方なんかは」

「ええ、初めは泣きましたわ。それはもう乙女の如く」

 

 

 妖怪の一生と人の一生は天と地ほども違う、感情移入すればするほど別れの悲しみが増える。

 長く生きれば生きるほど別れを重ね、それは精神の比重の高い妖怪にとって猛毒となる。

 それに妖怪の性分も合わさって人間と積極的に仲良くする妖怪は極僅かといえる。

 

 

 それらを踏まえた上でなぜ? と問えばだからこそと人間好きな紫は言う。

 

 

「人は儚い存在ですけれども、その一生を費やし咲く花はとても美しい。元人間の私だからこそそれがより綺麗に見えてしまうのです」

 

 

 その花を間近で観ていたい……と続ける彼女はまさに人の入った妖怪だった。

 

 

 

「あら、貴方の所は外の世界の娘がいるのね」

 

「ええ、私が招き入れましたわ」

 

 

「可愛いじゃない、食べちゃいたいわ」

「貴方がいうと別の意味に聞こえますわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後もいくつか酒を酌み交わし、互いの幻想郷話に花を咲かせ。気がつけばかなりの時間が経っていた。

 

 

「あら、大分時間が経っていましたわね、藍に怒られてしまう前にお暇させてもらいますわ」

「そうね、私もそろそろ戻らないと。明日は人里で催しがありますし」

 

 

 立ち上がり、帰宅用のスキマを広げる。

 持参した酒器を忘れぬよう回収も行う。

 

 

「それでは、また来週に」

「ええ、楽しみにしておりますわ」

 

 

 

 こうして、紫の集会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ、紫様」

 

 

 自宅に戻ると、目の前には式神がいた。

 

 

「ただいま、なにか変わったことはあったかしら?」

 

「山の害鳥が取材をさせてくれとマヨヒガに押し掛けた以外は特に」

 

 

 考えなくてもあの射命丸というカラス天狗だろう。

 それにこの様子ならすでに追っ払った後だ。

 

 

「そう、なら私はもう寝るわ」

「畏まりました、御休みなさいませ紫様」

 

 

 

 部屋に入り服もそのままに布団に潜る。

 

 

 

 疲れで微睡む意識の中、今回の集会で得たものを整理する。

 

 

 

 

 最後に話した紫は人間と仲良くやっていたようで、活動の殆どが人里なのだという。

 

 

 少々胡散臭さが足りない気もするが、あれも一つの妖怪と人間の共存だろう。

 

 

「私も少しは人間に近づいてみようかしら……ね」

 

 

 私はあまり人里には行かない、それに人付き合いというのもわからない。

 

 

 用があれば藍を向かわせるだけだし、そもそも人里に用事が発生することがないのだ。

 

 幻想郷縁起の編纂で阿求と会うことはあるけれど、それも発行前に目を通すだけですし……。

 

 

 

 阿求……そうね、まずはあの娘から話をしてみましょうか。

 

 

 人里にいる人間との接し方を彼女から学ばせて戴きましょう。

 

 ついでに普段藍にやってもらってるおつかいなんかも済ませちゃいましょう。

 

 たまには人間とお話しないと、人と妖の共存とは言い難いですものね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、人里で妖怪だと騒がれ機嫌の悪い博麗の巫女に追いかけ回されるとまではこのとき考えていなかった。

 

 

 


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