やはりこんなものに関わらなければよかった。
あぁクソ、裏があることは分かってた
だがこの研究さえ出来れば後悔はない。そう、思っていた
最悪だ、後悔しっぱなしだ
誰かこれを見たやつは俺を殺してくれ
たのむ
あたまがいたい
めがあつい
あぁ、いきてる
「なんでいきてるんだろうなぁ」
上手く口が回らない。何か口がおかしい。
舌で探れば歯がぐらりぐらりと揺れている。指でつまめば簡単に取れた。
「このとしではぬけか……けもぬけたしな……」
全身に走る激しい痛みで気を失った私。目を覚まし鏡を見れば、私の顔はほぼほぼ原型を留めていなかった。
「ほんとうに……こんなものにかかわらなければよかった……」
びちゃりと顔から剥がれた腐肉が地面に落ちる。
きっとこれは私に対する罰なのだろう。人間を人間とも思わず、非人道的な実験を行い続けた私への。
それにしても、だ。なぜ私は自我を保っているのか。
なぜ私がこのような姿になったのか。それはとあるウィルスが関係している。いや、関係どころかそれが全ての元凶だ。
Tウィルス。タイラントウィルスとも呼ばれるそれは、感染すると不死身になる。その代わり脳みそが壊死し自我がなくなる。そして激しい空腹感と全身に痒みを覚える。これは代謝が狂っていることが原因だ。
だが私は何故か自我を保ち続けているのだ。飢餓感はあるし、痒みもある。背中が酷く痒くかいたら腐った肉がずるりと削れたのは忘れたい。
となると脳がまだ壊死していないのだろうか。
もしかしたら脳がこのまま壊死せず、自我を保ったまま生きていけるかもしれない。
だがまだ壊死が始まっていないだけかもしれない。
壊死せずにいたらいいことかもしれないが、研究員共に見つかれば身体中バラバラにされ検査、研究されるかもしれない。
それを考えればまだ自我があり、化け物になりきっていないうちに自殺すべきなのかもしれない。
先程見た遺体を貪るアレにだけはなりたくない。
だが武器が必要だ。自殺するための。
ハサミやナイフ、メスだと意味が無い。何か銃のようなもの威力の高いようなもの。もしくは刃渡りの長い刃物でもいいかもしれない。
そう言えば隣の部屋の男がデリンジャーを持っていたな。
あれを使うか。
寄宿舎へ向かうために座っていた椅子から立ち上がる。
遺書は……どうするかな。
寄宿舎でデリンジャーを取ると本館にある自室へ戻ってきた。
道中ほかの化け物共からは見向きもされない。もう私も化け物だと思われているのか。
手に持つ銃。その重みがこれが現実だと訴えかける。
くそ。
「今の音は……銃声か?」
屋敷を探索していたクリス。突然響いた銃声に辺りを見回す。
「誰か生きている人間が……」
銃声のした方向へ走り出す。だが、銃声は1発きりでもう何も音はしない。
「……誰でもいいから生きててくれよ」
そして走るうち、廊下の途中に部屋があった。
「ここか?」
扉を開き拳銃をかまえ中に入る。
「……遅かったか」
中には1人だけ。椅子に座り俯く男。その手には小さな銃が握られていた。
「まだ熱い……やはりさっきの銃声は……」
部屋を見廻すうちに机の上に折りたたまれた紙があるのに気がつく。
「これは……遺書か……」
開けばたどたどしい文字が並んでいた
これをみたものにさいしょにいっておく
みているあいだもわたしのことをみはっていくれ
たちあがったらころしてくれ
うごかなくなるまでころしつづけてくれ
ばけものになるまえにしねたとしんじたいがねんのためだ
そしてこれはわたしからのちゅうこくだ
あのこに りさにきをつけろ
そしてねがわくばあのこにねむりをあたえてあげてほしい
あのこはただしよくのためにせっしたわたしをすいてくれていた
あのこのははおやをうばったのはわたしたちだ
ああしてしまったのはわたしたちだ
だからたのむあのこをねむらせてあげてくれ
つくえのなかにはんどがんのたまがはいっている
ひろったものだつかうならもっていってくれ
そしてきしゅくしゃのちかにはきをつけろ
そして
夜明けとともに洋館は永遠に葬り去られた。
一夜悪夢は覚めた。だが、夜は再びやってくる。