Lostbelt No.8 「極東融合衆国 日本」 作:萃夢想天
挙句にメンタルやられて胃がやられてしまって………情けない大人だなぁ。
まぁそれはさておき。今回は前回の続き、というわけではありません。
少しリア友にアドバイスを頂き、オリジナルサーヴァントたちのマスター抜きでの
作戦会議のような場面を描こうかなと思っている次第です。
あと前回の内容で、某正義の味方さんの目の色を間違えるという大失態をやらかして
しまいました。申し訳ありません! 主人公の外見間違えるとかいよいよヤバい。
この投稿が終わったらすぐさま修正してきます。ご指摘感謝致します。
それでは、どうぞ!
クリプターの一人、ゼベル・アレイスターが日本国首相と手に汗握る舌戦を繰り広げていたまさにその頃。彼に付き従う五騎ものサーヴァントが一堂に会し、顔を突き合わせていた。
「はて、
夏に熟れる大玉の西瓜と同等の大きさと丸みを帯びた、その豊満な胸を支えるように腕を組む艶やかなる妙齢の美女。真名定かならぬ魔性の者であり、【
「ワハハ! 行先も告げずに赴く場所など一つ以外あるまい! 排便であろう、ワーハハハ!」
楽器を思わせる高らかにして朗らかな声を張り上げ、外聞を顧みる事すら厭わぬほどの頑強な心の宿主たる軍服の男。陽気な顔で不敵に笑う者であり、【
「たわけぇ‼ 殿が
瓦を割るような豪胆な声を腹から発し、そこから噎せかえるような酒の臭いを振り撒き喚く強面の鎧甲冑をまとう男。されどその眼の曇らぬ者であり、【
「
凪の水面に広がる波紋のように静かで、しかし厳かなる風格を以て肌を刺す圧を言の葉へと乗せる羽織に袖通す男。聳え立つ山林を思わせる者であり、【
「……………………………………………………………………………」
そして誰とも言葉を交わさず、視線を合わせようともせずにいる、虚空を見上げ続けるだけのやや痩身気味の男。しかし鋭い眼光に衰えなき者であり、【
壮観にして錚々たる顔ぶれが集うこの一室は、国会議事堂の二階にある一部屋。彼ら全員が契約を結んだ主君が地位を得たことで割り当てられた個室であり、専ら作戦会議に使われている。
けれど現在、その主君であるゼベルの姿は無い。これを機と見て動いたのは、フォーリナー。
「無事ならば良いのです。むしろ僥倖と言えましょう、気兼ねなく話ができるのですから」
「ふん、貴様のような女怪に開く懐などありはせぬ。殿の御味方であるというから切って捨ててはおらぬというだけよ。この日ノ本の行く末を見届けたらば即刻、素っ首叩き落としてくれる」
「ほぉ……よくぞ妾に歯向かったわね。これで二度とその下品な顔を見なくて済みそうよ」
「何ぞまた珍妙な妖を繰り出すか! 手間が省けるわ、殿への忠を尽くせるわ! おぉ滾る!」
だが、同じ主人を仰ぐとはいえ、元は生まれも国も時代すらも異なる英傑たち。一枚岩になる事も容易くはなく、一筋縄でもいかない。少し話そうとしただけでこの一触即発の空気に早変わり。
普段彼らをまとめるマスターが如何に苦労に苦労を重ねているか、その実情が伺えようものだ。
「------------御両人、其れ迄になされよ」
剣呑な二人の間に、剣の切っ先を宛がうように割って入ったのは、この場で唯一の常識人。
ランサーと同じく汎人類史の日本にて英霊の座に刻まれた剣士の英霊、セイバーだった。
誰よりも言葉に重みを載せる剣客がたった一言呟いてみせた途端、先程まで相手に向かって殺意を放っていたはずの二人が強張り、視線と意識を向けざるを得なくなっている。
「セイバーの言う通りだ! マスターも言っていたぞ、我々は団結せねばならないのだと!
ああ、団結! 良い響きだなぁ!
「…………
きっと話の内容など理解していないだろうライダーの同意を一応受け取りつつも、この面子でも恙なく話し合いを進められるように取り計らおうとするセイバー。事実上の進行役となりつつある。
話が逸れた事に気付き咳払いで誤魔化しを挟み、今度こそフォーリナーが話を切り出した。
「……故に、妾は知っておく必要がありますの。貴方たちの事を、今以上に」
サーヴァントはマスターに従う者。そこに否やはないが、唯々諾々と従うだけの木偶に成り下がるつもりは毛頭無い。真にマスターの思惑を理解していなければ、いざという時に役立てまい。
そう考えたからこそフォーリナーはこの場で、マスターが不在の状況でこそ話を持ち掛けたのだ。
彼女はゼベルによって召喚された為、五騎の中で最も『令呪』による強制力が働く以上、そう易々とマスターを裏切ることはできない。もともと彼女の中にそのような意思は無いのだが。
だが彼女以外の四騎は違う。星の断末魔が汎人類史から呼び寄せた、異聞帯へのカウンターとしてマスター不在のまま召喚された者たちである。フォーリナーの宝具によって無限に産み落とされる眷属を媒介にして契約と魔力供給をしている代わりに、令呪の強制力はそれほど高くない。
見極めておくべきだと、彼女は
「主人には貴方たちのステータス及び一部スキルや宝具の情報が見えています。そこに虚偽を謀ることは不可能であるとも伝え聞いておりますの。故にこそ、妾は貴方たちの理想を把握したい」
今、フォーリナーは賭けにでている。自身が契約を結んだマスターを守る為の、孤独な賭けに。
自分と違い彼らは汎人類史に味方するよう星の意思に求められ、それに応じた結果召喚された英霊であり、異聞帯側のマスターに加担する理由は見当たらない。彼女はそこが知りたいのだ。
ここでようやく、彼女が自分たちに何らかの疑いを抱いていることに気付いた二騎、ランサーとライダーは表情を変えて押し黙る。迂闊な事を話せなくなったと、口を噤んでいる様子である。
そんな時、それまで我関せずの態度を貫いていたキャスター、ガリレオが言葉を紡ぎ出した。
「つまり女王、貴女は我々がマスターに与する明確な理由が知りたいと、そう仰せなのかね?」
「ええ、そうですわ。妾と違って、あの人を裏切らないという確証が持てない者たちですもの」
「であれば、私はもう答えている。君とマスターが私を引き入れに来た時にな」
フォーリナーの語り口にランサーが鬼の剣幕で反応したが、本人は何処吹く風といった態度で押し流す。そしてキャスターのぶっきらぼうな返答には、フォーリナーもそれ以上の追及は控えた。
「キャスターの望みは既に主人が聞き届けていましたから、省いても良いでしょう。その理想を遂げる事と主人の計画とは対立しませんもの。これからも主人と己の目的の為に力を発揮なさい」
「言われずとも。私は誰よりも私自身に正直に生きる、そう決めたから英霊になっている」
「ふふ。では精々、『世界の在り方の証明』とやらを為すべく、命令を遂行してちょうだい」
「無論だ。世界を存続させるというマスターの計画に、私は賛同した。だから此処にいる」
最後にそう語り、キャスターはまたも虚空を見上げ始めて沈黙してしまう。彼の目的を再確認できただけでも収穫在りと考えを改め、フォーリナーは次に問う相手へと視線を動かす。
キャスターから右に動いた先にいたのは、会話だけで頭痛に悩まされそうな男。ライダーだった。この時点で挫けそうになる彼女だったが、マスターの為だと己を奮い立たせ、口を開く。
「ならばライダー、貴方はどうなのかしら? そもそも、どうして妾たちに味方しているの?」
彼女がライダーにキツく当たる理由は、主人が見定めたライダーの価値にある。
サーヴァントでありながら自由奔放を貫く陽気な男にはつくづく嫌気がさしていたが、マスターのゼベルはライダーの力が必要だと彼女に言い聞かせていた。それが一番気に食わなかったのだが。
とにかくフォーリナーにとって、マスターが欲するだけの力を有している事と、傍に置くことを許したからそれで不問としていた。よって、彼がこちらへ協力する理由を聞いてはいなかったのだ。
美女からの投げ掛けに対し、いつもの調子で豪快な笑みを浮かべながら、彼はこう答えた。
「吾輩がマスターに味方する理由?
「国の未来? それは、
「そうとも! 吾輩は
「…………ええ。妾も驚きました。我が国がこんな極東の島国に呑まれた歴史があるなんて」
テンションが異様に高いのは常だが、そのさらに上をいく「熱」が、彼の言葉に宿っていた。
フォーリナーも思わず、心の奥底にしまいこんだはずの侮蔑と屈辱を吐き出す。認められるはずもない事ではある。生前に執着も愛着もあった己の国が、まるごと小国家に帰依したとあっては。
ただ、ライダーにとってはこの異なる歴史の世界は、侮蔑より屈辱より、喜びが勝ったという。
「吾輩に果たせなかった想いを、理想を、この極東の島国はやってみせている! 栄えている!
はるか西暦2000年を超えた今まさにこの瞬間までも! これが愉快でないはずがなかろうよ!」
「そうですか…………貴方は、羨んでおりますのね」
「ワハハ、否だよクウィーン。吾輩は怒り、そして悲しんでいるのだ」
先程と一転して、普段の彼からは想像もつかない沈痛な面持ちを浮かべ、言葉を紡ぐ。
「認められるものか、この素晴らしき世界が間違っているなどと。未来への発展が無いなどと。
認めたいのだよ、
「--------------つまりライダー、貴方の望みは」
「ああ、そうさ! 勝手ながら吾輩の理想を託させてもらった、この世界を守る事! それが第二の生を手に入れたる吾輩の野望である! 何が正しいかに興味は無い! 吾輩にとって重要なのはな、
熱く語りきった軍服の男は、知れず握り締めていた拳を五人で囲む漆塗りのテーブルへと、感情のままに振り下ろす。筋力ステータス:C の力に耐え切れるはずもなく、木っ端微塵に砕けた。
大らかで朗らかな装いはその実、誰よりも真っ直ぐな性質の表れであった。大衆に選ばれずとも、世界に認められずとも、自分だけは「これが正しい」と思う道を歩まんとする、偉大な男の姿。
疑いの余地なく本心を曝け出して語ったライダーに触発されてか、ランサーが口を開いた。
「…………某も、
「ランサー、貴方も我が主人に従う理由を明かしてもらえるのかしら?」
「これほどの益荒男ぶりを魅せられ、奮わぬならば武士にあらず。語らいでか」
ライダーが感情の吐露により沈黙した今、ランサーの言葉を遮る者はいない。彼もまた汎人類史の側として召喚された英霊の身でありながら、クリプターであるゼベルに付く訳を話し始める。
「知っての通り某は、此処とは異なる本来の日ノ本にて、最強の武士であった」
「知っておらぬし通ってもおらぬが………続けなさい」
「ただ戦乱に明け暮れた某らが目指した、争いなき日ノ本の明日が訪れるを待ち惚け………英霊とやらに成ったこの身が、遥か永きに渡る天下泰平の世を為す礎となるならば。その一心であった」
槍兵の語り口から漏れ出したのは、諍いが争いを招き、やがて戦火が広がり収まりのつかぬ血沼の戦場が生まれる「かつて」への嘆き。そこから希望へ繋がる事を信じ夢見た、願いがあったこと。だが汎人類史はその夢を選ばず、更なる混沌と破滅への道を是とした。
「某ら戦乱を生きた武将は、誰しもが平定された国が幸せである事を疑いもしなかったのだ。飢えに喘ぐ事無く、親と子は血に裂かれず、皆が幸に満たされ、真に長閑な時の流れ続ける世を」
「……………………『座』に登録された英霊は、現在に至るあらゆる時代の情報を与えられる」
「------------知らぬ方が良かった。某らが平和にせんと巡り争った日ノ本の、未来の惨状など」
常から表情筋を強張らせ筋の浮き上がった強面の武者は、肩を震わせ大粒の涙を溢し流す。
「海に囲まれた某ら日ノ本の侍同士で相争った次は、海の果てより来たりし外津国の者どもと血で血を洗うような見るに堪えぬ泥沼の戦を始めよる! いったい某らは、何の為に戦ったのだ…!」
「らんさあ殿は、儂の生前よりも前の時代の御人であらせられたな。誠、恥じ行くばかり」
「同じ武士の其方に罪は無い。否………某より遥か未来に生まれ、散って逝った
「…………………」
「許せぬのは、某ら日ノ本の者を鏖殺せしめた世を『正しい』と認めよった、世界の方よ‼」
ランサーは歯噛みする。移り変わる時代の変化に、自分では着いていけなくなる事も頭では理解できている。それでも、新しくなった世界が己ですら目を背ける痛ましさで満ちていく事に対して、我慢出来るはずもない。平和であれと願った故郷が血と炎の紅蓮に焼かれ焦土と化す未来など。
何よりも世界がそんな歴史を認めた事が許せない。たった一人の人間が抱いた願いすら踏み躙り、怨嗟と絶望の坩堝と成り果てた国の有り様が、『正しい』と決定づけたその傲岸不遜さが。
「許してはおけぬ………某が立つ
異聞帯とは、星の意思によって切り捨てられた可能性の末端。有り得たかもしれない世界。
自分の生まれた国が、あらゆる国を切り取って治めたというならば、それは真に安定した幸により満ち足りた、安息の極楽足り得るだろう。それの何が悪い? 何故そうなる未来が正しくない?
力んだ拍子に奥歯を噛み鳴らしたランサーは、憤怒の表情のまま憂い、変わらぬ願いを語る。
「然らば認めさせるまでよ。既に
固い決意と共に座っていた椅子から立ち上がるランサー。力のこもった足踏みが粉々になったテーブルの残骸を吹き飛ばしてしまうが、意に介することなく熱く滾る思いに肩を震わせた。
キャスター、ライダー、そしてランサー。都合四騎の心情は把握できた。残るは剣の英霊のみ。 この場で最も利己心を押し殺せる可能性の高い、寡黙にして強者の風格まとう日本のセイバー。 他の四騎より警戒心を向けざるを得ない相手に、フォーリナーは密かに表情を歪める。
彼女やマスターのゼベルからすれば、このセイバーの目的は何一つとして明らかになってはいない以上、無視だけはできない。現状この中で最も裏切る危険性があるのは、他ならぬ彼なのだ。
ここが賭けの山場と、フォーリナーの意識が高まる。契約したマスターと自分の目的達成の為に、どれだけ小さな障害であろうと排除しなければならない。
「----------------ではセイバー、貴様は」
残る最後の一騎に問いを投げようとした瞬間、彼女らが籠もる部屋の扉が何の予兆もなく開いた。
「はー、疲れたわ。ただいまー、ちょっと時間かかって………なに、どしたのお前ら」
肩を回して口にした通りに疲れた顔色をした彼女らのマスター、ゼベルが帰ったきたようだ。
意気込んだ途端の帰還に流石のフォーリナーも頬を引き攣らせたが、また機を改めてからにすれば良いのだと思考を切り替える。今回得た情報をマスターと共有する必要もあると己を誤魔化す。
「いえ、特に何事も。それよりも酷いお顔をされているわ、主人」
「そうなんだよ、こっちは大変だったんだぜー? 成果は得られたから上々だけどもさ」
「成果、ですか?」
「おうよ」
どうやらマスターもマスターで何やら秘密裏に動いていた様子。普段から気張らなければならない場面になると腹痛やらに悩まされる姿も見ていて辛いが、今回はそうならなかったようだ。
契約を繋ぐマスターの言葉は、フォーリナーとの間だけに通ずるものではないため、他の四騎も聞き逃さないようにと意識と視線をこの場で最年少の青年へと向け直す。
全員の注目を浴びた事に少したじろぐものの、すぐさま気を取り直して「成果」とやらを語る。
「
いかがだったでしょうか?
なんか感想欄のコメントをみていたら、もうヒナコがメインヒロインの座に据え置いても
良いような気がしてきちゃいました………おかしいな、オフェリアの方が好きなのに。
自分で言うのもどうかと思いますが、幕間のヒナコがぐぅかわ過ぎて辛いんです。
……いっそゼベルとヒナコがくっつくような、てぇてぇ話を書くのもアリなのでは?
いやダメダメ、そんなん(オフェリアが)カワイソ過ぎますって。アーナキソ。
でもどうしようかな。時間が取れそうなら、違う世界線の番外編書こうかな……。
もしかしたらアンケートで希望調査を行うかもしれませんね。
それではまた次回をお楽しみに!
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