Lostbelt No.8 「極東融合衆国 日本」   作:萃夢想天

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どうも皆様、お久しぶりです。
ちょっと最近はドタバタしていたもので投稿が遅れてしまい、申し訳ありません。
どうか皆様も交通事故にはお気をつけて。不慮の事故とは突如襲い来るものですので。

高齢者ドライバーの免許返納反対派の人間でしたが、今日で賛成派に鞍替えします。
詳しく話せませんが、私に言えることと言ったらそれくらいです。

私事はここまでにして。さて前回は、オリジナル鯖たちの心の内を少しのぞかせた
段階で終わってましたね。今回はストーリーを少し先へ進めようかと思います。
本編でもクリプター同士のやり取りもっと増えろ……増えろ……!


それでは、どうぞ!





第二章三節 肥料の良し悪しどころか在り処さえ分からない

 

 

どうも、と言いたいところですが現在そんな悠長な事を言っていられるほどの余裕が無いくらいに焦りまくっている、ゼベル・アレイスターです。何に焦っているか? よくぞ聞いてくれました。

 

実は先のクリプター会議から一週間が経過してんだけどね、最後に話してから向こう四日くらいカドックとの連絡が途絶えてんのよ。最初はカルデアが異聞帯に侵入してきて手一杯だから、連絡をよこす余裕もないくらい大変なのかなって思うことにしてたんですが。

 

流石にここまで音信不通だと良くない想像ばかり掻き立てられて、せめて無事であってほしいと思いたいけど相手はカルデア。一方的に攻撃されて命狙われて、犯人の一味目の前にして和解するほどお人好し集団じゃないと俺の足りない頭でも理解できる。

 

だから手遅れにならないうちにカドックを救出しようと早い段階で決めていたんだが………。

 

 

「ふざけるなテメェ‼ ガリレオ! 話が違うじゃねぇかよ!」

 

 

カドック救出、ひいては他異聞帯突入にと想定していた策を、実行する前の段階で否定された。

 

俺が考えていた作戦には、キャスターとライダーの協力が不可欠であり、いざと言う時にこの二人が協力できるかと言う不安こそあっても、現時点で実行できないほどの不和はないと思われた。

いや。実際のところ、問題はない。二人が協力する点で衝突は起こらない。なら何が問題か。

 

怒りのあまり相手が英霊であることも忘れ、胸倉を掴んだまま怒鳴る俺に、奴は冷静に答える。

 

 

「いいや、違わない。マスター、君の策には懸念すべき落とし穴が二つ存在しているのだよ」

 

「は……?」

 

「マスターの想定していた他異聞帯への直接介入策。必要な要素は、私とライダーの宝具。

無論スキルの併用も必要だが割愛する。ここで真に重要な事は、それらが働かない外的要因がある事を理解してもらう事だからね。良く聞いてくれマスター、私の『観測』は千里眼ではないのだ」

 

 

胸倉を掴まれたままの姿勢で、諭すように語り出したガリレオの言葉に、首を傾げる。

コイツらの宝具とスキルが発動しない外的要因だと? 外的……なら魔力不足とかじゃないよな。それになんだ、「千里眼じゃない」ってのは。意味が分から…………待て、そういう事か。

 

 

「お前の『観測』は何でも見通せるわけじゃなく、外部から妨害される事もあるってことか」

 

「……聡いな、我がマスターは」

 

 

呟くようにして零れた俺の言葉に、ガリレオが嘆息交じりに肯定の意を示した。

 

そうか、成程。ガリレオの行う『観測』は、彼の宝具とスキルを同時展開して行われているものであって、いわゆる【千里眼】という概念的な視野による事象の閲覧ではない、という事なのか。

千里眼ってスキルは、かの世界最古の文明に君臨したバビロニアの王【ギルガメッシュ】とかの、ただの人間とは一線を画す領域に位置する存在に与えられる、規格外の視野拡張能力だ。

たしか聞いた話じゃ、過去・現在・未来のどれかを見通す事が可能だそうだが……ガリレオの力じゃ、せいぜい現在を目視するだけで見通すことは不可能って事なんだな。良く分かった。

 

掴んだ胸倉を開放し、続きを喋るように目で訴えかけると、ガリレオは小さく首肯する。

 

 

「我が第一宝具【木星の御子、我が衛星(ジョヴェ・バンビーニ・ミオ・サテッリテ)】は、私が生前に観測した木星の四大衛星を疑似投影し、さらにスキル【観測証明 : A】により衛星の中心点たる私と()()()()()()()()()()()ことで、超高高度からの現実の観測を可能としている。要するに、我が望遠鏡は遥か星空に漂う天体なのだよ」

 

「……改めて聞いても意味分からんなお前の宝具。今実際にある木星から地球を見てんだろ?」

 

「その解釈で良いさ。四大衛星はそれぞれが、拡大(イオ)縮小(エウロパ)時間(ガニメデ)重力(カリスト)を司り、微調整を行う事でようやく望遠鏡としての役割を果たすのだ。四大衛星がレンズで木星は観測者の目と言えばいいだろうか?」

 

 

キャスターは魔術師のクラス。生前魔術なんぞに縁が無かったはずのガリレオが何故キャスターのクラスで召喚されたのか甚だ不思議だったが、ここまでの事やれるなら最早大魔術規模だよな。

時計塔の天体科の連中が卒倒するのが目に浮かぶぜ。星の連なりを魔術に当てはめてるって時点で中々ロマンチックなもんだが、こっちのガリレオはお星さまから覗き見ときた。笑えんな実際。

 

 

「で、その超高性能で覗き放題な望遠鏡が、何故使えない?」

 

 

俺が一番聞きたいのはそこだ。こいつの観測の精度は既に、この異聞帯の中心地であるこの場所から相当遠くまで離れた位置にいたはぐれサーヴァントを発見してる時点で折り紙付きなんだが。

それほどのものが、何故使えないのか。そこが知りたい。俺はガリレオを味方に引き入れる際に、日本異聞帯の外にある汎人類史の白紙化地球を彼に観測させている。だから、この異聞帯の外側を見ること自体不可能ではないことは分かってる。なら、何が問題なのかを知っとかねぇと。

 

こちらからの問いかけに、一瞬険しい表情をしたガリレオは、少し間を開けて答えた。

 

 

「外的要因がある、そう伝えたろうマスター。問題はこちら側ではなく、あちら側にある」

 

「……………ロシア異聞帯だから見えない…………そうか、()()()()()()()()()()()‼」

 

「正解だ。より正確に言うなら、あの異聞帯の空を異常に厚い雲が覆っている影響だろう。

私の目はあくまで大気圏よりも外側からであって、大気圏の内側に遮蔽物があっては意味が無い」

 

「そういう事か畜生……! じゃあライダーが()()()()()()()()()()()()()()ダメって事か!」

 

「それ以前の問題だからね。まず彼が目視するべき、国の場所が分かっていないのだから」

 

 

とんだ落とし穴があったもんだと歯噛みする。なんてこった、クソ。こんな事で異聞帯間移動が制限されるとは予想してなかった。異聞帯の外と、他異聞帯内の宇宙にある星からの観測が可能だとしても、確実に見えているわけじゃねぇんだな。そうか、可能は出来るってだけで、出来ているという結果が出せるわけではない。最悪だ、今度はそこんところも考慮に入れとかねぇと。

 

いや、その前にだ。ここで再度の確認を入れておくべきだろう。念には念を入れるのが俺流よ。

 

 

「ライダー、確認したいことがある」

 

「ム? なんだどうした? 軍の編成案か、それとも補給線の開拓か?」

 

「お前自身のことだよ馬鹿野郎。お前の宝具とスキルの発動条件をもう一度確認しておきたい」

 

 

近くで話を聞いていたライダーにも声をかけ、マスターである俺の目から見えている以上の情報の見落としがないかを確かめるべく話を聞き出す。これ以上計画に穴を開けるわけにはいかん。

前々から異聞帯間の移動の要はお前ら二人だと言い聞かせておいたからか、ライダーは鷹揚に頷いてこちらに向き直り、どこか誇らしげな態度で胸を張るように語り始める。

 

 

「例の、他の人類史が反映した世界を統合するのに、吾輩の力が必要と言うヤツだったな?

ワハハハ! 良いとも! 吾輩の宝具とスキルについて聞きたいと、そう言ったなマスター!」

 

「早くしろ、仲間の命に関わる話だ」

 

「………手短にいくぞ。まずは領土間を移動する為に必要な宝具の方からだな」

 

 

流石のラテン系とはいっても、局面を理解するくらいの一面は持ってるらしい。こちら側の焦りや苛立ちが伝わって助かった。というか、仮にも国を治めた立場だ、それくらいの懐が無きゃ困る。

 

 

「我が宝具【偉大なる解放への一歩(リーベラティオステイプ・マニトゥード)】は、吾輩の足を起点として発動する、領域干渉型の宝具だ。幾つかの条件こそあるが、その条件を満たしてしまえば、我が両足は距離など関係なく他国家の大地を踏み抜くことが出来るようになる。一種のワープである」

 

「ガリレオもそうだが、お前も大概だ。一歩足踏み出したら目的地到着とか、どうなってんだ」

 

 

陽気な鳴りが一転して冷淡な面持ちとなり、普段とは異なる様子で淡々と自分の事を語っていくライダーだが、その内容もぶっ飛んでいた。実際に見た後でもしばらくは信じられなかったしな。

 

こいつの宝具は、今言っていた通りにワープの一種みたいなもんだ。

()()()()()()()()()()()()()()とライダーが認識したなら、足を踏み出した先がその場所に直接繋がるとかいうトンデモ宝具だ。国家間に何万キロメートルあろうがおかまいなしの次元歪曲現象。足を動かし、その一歩が大地を踏み締めた瞬間にライダーは超長距離移動を完了している。

真横にいても何があったか分からんかった。足を踏み出した直後に姿が消えた、程度にしか。

 

問題は今しがたコイツ本人が言ったように、幾つかの厳しい制約、もとい条件がある事だ。

 

俺が把握している時点では、三つある。

一つ、「移動先をライダー自身が『国』ないし『国家に相当する土地』と認識する」事。

一つ、「目的地である国家相当の場所が、『閉鎖的状況』にある」事。

一つ、「目的地である国家相当の場所の『名前』を、ライダーが知覚している」事。

 

現時点で俺たちが知っているライダーの宝具の条件は、こんなところだ。

これに関しては特に問題視する必要もないだろうと、ライダーを引き入れた時には軽く考えてた。実際、この条件を他の異聞帯は全て満たしているのだから、考える必要はないと思っていたんだ。

 

移動先が国である事、問題なし。異聞帯のほとんどは基になる国家がある。ロシアとかな。

目的地が閉鎖的状況にある事、これも問題なし。異聞帯は()()()()()()嵐の壁に囲まれてる。

目的地の名前をライダーが知ってる事、問題なし。2018年までに認定された全国家が範疇だ。

 

だがさっきのガリレオの話にあったように、もしかしたらヤバい見落としがあるかもしれん。

だから本人から改めて聞き出す。でも今のところは前に聞いた内容と変わっていないな。

 

 

「次に重要になるのは吾輩の【大国父 : A】のスキルの詳細だな!」

 

「マスターである俺にはスキルについて見えてるが、お前自身の言葉で聞いておきたい」

 

「任せろマスター! 吾輩はこのスキルによって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、つまりは国を背負って立つ者として、ライダーのクラスを獲得している!」

 

「確かに国ってものは、人が乗り降りするって意味じゃ、動かねぇ乗り物でもあるのか。

いくらなんでも曲解が過ぎない英霊の座? そりゃ確かにライダーはすげぇ偉人だけどさ」

 

「かつて何度も国の元首の地位を得た吾輩だからこその、大国父スキルであるな!」

 

「メチャクチャにも程があるわ。まぁ()()()()()()()()()()()人物なんてそうはいないか」

 

 

普段から何かと扱い辛かったり暑苦しかったりするライダーだが、本来は歴史にその名前を堂々と刻み付けた誇張の無い大英雄であり、その名前は後に正式に国家名に組み込まれる程に有名だ。

尤も、歴史の積み重ねで強さに違いが生じる英霊にとっては、近代であるか古代であるかって部分で「大英雄」の定義は変わるだろう。魔獣を殺した太古の勇者か、人を統率した近代の叡者か。

 

それでも俺は、今目の前にいるライダーが英雄である事に疑いなど微塵も抱いちゃいない。

魔獣や神獣を殺して人を救おうが、格差に追いやられ絶望する人を救おうが、それは過程が変わるだけで単位として救われた人間に違いはないのだ。同じだけ救えば方法は違えど立派な英雄だ。

 

っと、今は自論なんてどうでもいいな。大事なのは味方の性能の把握、その一点のみ。

ライダーの宝具が他異聞帯に対しても有効なのかは試していない。というか試した瞬間ほぼ確実に異星の神の使徒に感知されるだろう。特に単独で異聞帯を移動できるあの陰険女狐には。

だからやるならぶっつけ本番しかない。キャスターが目的地の状況と場所を観測によって正確に割り出し、そこへライダーが宝具を用いて突入する。言うのは簡単だが実行となると、なぁ。

 

 

「ライダー、お前の所感でいいから聞かせろ」

 

「何をだ?」

 

「キャスターが今、ロシア異聞帯を捕捉して『観測』したとする。()()()()()()()?」

 

「無論だマスター。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()辿()()()()()()()()()()

 

 

陽気な態度が鳴りを潜めた状態のライダーが、淡々と、けれど自信に満ち満ちた宣言を口にする。普段のコイツは単細胞染みたアホに見えるが、実際は歴戦の将であり、嘘はつかない男なのだ。

そんなライダーが、「できないわけがない」と堂々と答えたのなら、俺も躊躇なく信じよう。

何よりこの男の願いが利己的な類でないことは、真名を知った時から何となく察しがついてる。我が身可愛さに命を惜しむような真似する男なら、きっとコイツは英霊になってなどいない。

 

なら、答えは一つだ。

 

 

「任せるぞライダー。俺たちの計画の第一段階の要は、お前だからな」

 

「………ワハハ、責任重大のようだな。ああ、いいとも。吾輩に万事任せるが良い‼」

 

 

託す。この男に。俺たちの異聞帯、その命運を握るのは、ここにいるサーヴァント全員だけれど、キャスターを除いた次点で負担がデカいのは、おそらくライダーかランサーのどちらかになる。

だから頼むしかない。所詮俺はサーヴァントを現界させる楔としてしか、役立てないからな。

 

さて、目下のところ最優先だったキャスターとライダーの再確認は終わった。どちらも条件さえクリアできてしまえば、当初に想定した通りの働きをしてくれるだろう。してくれなきゃ困る。

そんじゃ次はどうすっかな。国会出席したら空想樹の様子でも見に行けたら……行けるかな?

あそこに行くにはさらに高位の政治階級を持つ必要がある。まぁでも首相を味方に引き込めたし、そのツテでどうにかなるかもしれんな。よーし、議会終わったら首相と話してみっか。

 

目前に現れた障害への打開策をひとまず見据えた俺は、次の仕事に向けて意識を切り替えてた。

 

 

「---------------------------------------これは⁉」

 

 

だからなのか、いきなり表情を険しくしたキャスターの言葉を、俺は信じられなかった。

 

 

「どうしたのです、キャスター」

 

「…………大変申し上げにくいのですが。女王、そしてマスター。落ち着いて聞いてほしい」

 

 

慇懃無礼な態度を常とする彼にあるまじき謙った姿勢に違和感を抱く、よりも早く。

 

 

「ロシア異聞帯が-----------------------------------------崩壊を始めている」

 

 

その言葉が俺を、絶望の淵へ追いやった。

 

 

 







いかがだったでしょうか?

今回は少し短めになってしまいましたが、その分情報は詰め込めたのではないかと。
さぁ、FGOが虚無期間中になんとしてでもストーリーを書き進めるぞう!


それと誤字報告をくださった
アトランダム03号様、。。 。様、圧倒的感謝です!

さーて次回ですが、まだ内容は未定です。でもなるべく早いうちに書きます!
お許しください!
それと個人的に「もしもゼベルが~だったら」的な番外編を余裕ができたら
書こうかどうか悩んでおりますので、もしかしたらまたアンケートするやも…?

どちらにせよ、また次回!
御意見ご感想、並びに批評やご質問も大歓迎です!

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