Lostbelt No.8 「極東融合衆国 日本」   作:萃夢想天

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どうも皆様、楽しかったバイトを辞めて少し後悔した萃夢想天です。
忙しくなるのが分かってたんでね。仕方なかったんですが、楽しかったです。


さて! 前回は異聞帯の王の正体が判明しただけでなく、当面の敵となる
米国のバーサーカーについてかなりの情報が得られましたね!

今回はそんな続きからです。
果たして反乱の結果は? 対するゼベルたちは?


それでは、どうぞ!






第四章四節 二酸化炭素は光合成に必須、となれば窒素は?

 

 

 

 

 

 

あー、クソ。寝不足で頭痛が酷い。生理的苛立ちが抑え難いゼベル・アレイスターだ。

 

なんで寝不足なのかって? それについてはこれから嫌でも詳しく話し合わなきゃならん。

ちょうどキャスター、ガリレオのやつも戻ってきたことだし。うし、気合い入れ直すか。

 

 

「マスター。反乱を決起した集団の撤退を確認した。もう大丈夫だと思われる」

 

「御苦労キャスター。それじゃ全員集まったってことで、緊急会議を始めんぞ」

 

 

場所はいつもの国会議事堂の一室。集まってるのもいつものメンバー……ああ、いや。

昨日から一人お客様が来てたんだっけな。わざわざ異聞帯またいでまで来てくれた人が。

 

 

「悪いなオフェリア。他の部屋に置いておくより、一緒の方が安全だと思ってよ」

 

「ううん、気にしないで。私も………あまり離れたくないもの

 

「……? まあ、なるべく早く終わらせるから、待っててくれ」

 

 

オフェリア・ファムルソローネ。彼女が昨日、この日本異聞帯へやってきた。

俺たちが人理焼却に巻き込まれたあの日に伝えられなかった事を伝えるために、わざわざ

会いに来てくれたらしい。呼び出しに応じて帰ったらそれを聞こうと思ってたのに……。

 

とにかく、まずは目の前の問題をどうにかせねばならん。

 

 

「んじゃ、早速聞きたいんだが———ライダー」

 

「なんだ?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()、理由を聞かせてもらおうじゃねぇか」

 

 

目下最大の頭痛ポイントがこれだ。

 

昨日、俺が異聞帯の王である【卑弥呼】への謁見中に、キャスターが反乱を確認した。

フォーリナーが連絡してくれたから、即座に対策を講じて実行に移すこともできていた。

適切な指示をしたと自負してる。何の戦力も持たない一般市民百余名とはぐれサーヴァント

一騎に対し、こちらはサーヴァント一騎に加え戦闘可能な兵士兼魔力タンクを二百ほど。

 

これで負ける理由がどこにある?

 

 

「この場にいるメンツで、敵の情報を一番多く持ってるのはお前しかいない。

 そしてお前は稀代の将軍だろ? こっちの手駒の動かし方を知らんわけもないわな。

 そのうえで教えてくれ。どうして未だにバーサーカーが生きているのかを」

 

 

俺は昨日、ライダーに敵と認識したバーサーカーを討伐しろと確かに命じた。

ライダーもそれに応え、与えたフォーリナーの仔を引き連れ反乱の鎮圧へ赴いた。

だが月が沈んで陽が昇り、それでも首魁であるバーサーカーは生存し、撤退を指揮してる。

 

そうなった理由ないし経緯を聞きたい。これは追及ではなく追究だと理解してもらいたい。

 

俺の意図が伝わったのか、帰還してからずっと眉間に寄せた皺を少しだけ緩め、語り出す。

 

 

「……順を追って話そう。キャスター、君も見ていたなら補足を頼みたいのだが?」

 

「構わないとも」

 

「では。吾輩はマスターの指示を受け、即座に討伐軍を編成し、敵のいる地へ向かった。

 首都東京からアメリカ県まで、吾輩の宝具【偉大なる解放への一歩(リーベラティオステイプ・マニトゥード)】を使用すれば瞬時に

 辿り着く。消費した魔力は随伴させた女王の仔から回収、万全の状態で接敵したのだ」

 

「そこで二百のうち七十が魔力枯渇により消滅。残存兵力が百三十になっていたよ」

 

 

ライダーが普段の陽気さを封じ、一軍の将としての態度で語る。途中でキャスターが現場の

『観測』をしていたことで得た正確な情報を挟み込んでくれた。そこまでは分かった。

 

ライダーが宝具を使ってワープする場合。対象が自分一人ならそこまで魔力消費がキツくは

ならないんだが、自分以外も、それも大量に移動させようとすると消費量が跳ね上がる。

そこんところは味方に引き入れた時に聞いてたからいい。聞きたいのは、接敵後の話だ。

 

 

「吾輩は百と三十の兵を率い、バーサーカーめの行く手に立ち塞がり、驚愕した。

 キャスターが『住民が不可解な大規模集団移動を開始。反乱の疑いあり』と報告したのを

 聞き、どれほどの民兵が待ち構えているかと警戒しておったのだが……」

 

「だが?」

 

「マスター、()()()()()()()()()。反乱軍とはとても呼べない、単なる集団だったのだ」

 

 

ライダーの真剣な表情から紡がれた言葉に、喉の奥から「は?」と一声を漏らす事しか

出来なかった。反乱の兆しを確認して行ってみたら、非武装の集団がいただけ、だと?

 

ふさけてんのか、と怒鳴るよりもわずかに早く、ライダーの口が先に動き出した。

 

 

「吾輩は解放者(リベルタドール)。つまり、本来は反乱を蜂起する側に立つべき男である。だからこそ吾輩は、

 反乱の何たるかを心得ている。あの場に集っていた者らは、民兵ではない。民だった」

 

「武力も何も持たない、ただの一般市民だったってのか?」

 

「ああ。加えて、連中の頭目……バーサーカーめも、攻撃の意思を感じられなかった」

 

「どういう意味だ?」

 

「そのままさマスター。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

あまりにも拍子抜けしそうなライダーの所見に、血が巡る度に響く頭の痛みが増した。

じゃあなにか? 俺たちは単なる早とちりをしてたってだけ? そういうオチなの?

そう言ってやりたかったが、場の空気は弛緩していない。真剣な面持ちでライダーは続ける。

 

 

「無論、吾輩はマスターの命令を最優先に動いた。市民を傷つける愚行は犯さず、ただ敵軍の

 中心となっているバーサーカーのみを狙うよう、女王からいただいた兵にも通達したのだ」

 

「でも、ヤツはまだ生きてる」

 

「その通り。あのサーヴァント、何故かこちらの攻撃がさほど通じていない様子でな」

 

「キャスター、観てたんなら何か分からなかったか?」

 

「……憶測ですが。何らかのスキルか、生前の逸話によるものではないかと」

 

 

敵を知る二人からの報告を聞き、少しずつではあるが情報が得られたことをまず喜んだ。

 

しかし、なるほど。確か最初に接敵した際も、ライダーの攻撃を受けてビクともしなかったと

キャスターが言っていたっけな。推測通り、おそらくは相手のスキルか逸話の影響だが…。

ここで俺は、バーサーカーの正体が想像していた人物だった場合を考え、仮定で話を進める。

 

 

「多分だが、スキルだろう。俺の予想通りの人物なら、生前の逸話は関係ないだろうし」

 

「ぬぅ⁉ 殿は既に、首魁の正体を見破っておられたのか‼」

 

「なんと! それならば、是非とも教えてもらえないか?」

 

「あくまで俺の予想ってだけだから、過信すんなよ」

 

 

俺の言葉に、ランサーとライダーがこぞって反応する。やめろよ、これで違ってたらすげぇ

恥ずかしい奴になっちゃうだろうが。でも意見は共有しといた方がいいし、やるべきか。

 

 

「米国のバーサーカー。おそらくだが、真名は【ジョシュア・ノートン一世】だろう」

 

「ふむ……済まぬ主人(マスター)。生憎ですが、妾はそのような名を知りません」

 

「あー、まぁそうかもな。英雄というより、庇護者って人だったから」

 

 

アメリカという国家に一石を投じた、未来を憂いる狂人にして万民に愛されし自称皇帝。

合衆国の辿る行く末を誰よりも案じて帝政による統一を叫び、盤石化しつつあった政権により

聞く耳を持たれず炉端の石扱いをされた人物。国民を笑顔にすべく、狂い続けた善人。

 

それこそが、存在せざるアメリカ帝国の終身皇帝。ノートン一世だと言われている。

 

 

「ほんの2~3世紀前、近代の人物だ。攻撃を受け付けない逸話なんぞありゃしねぇ」

 

「……となると、如何なるスキルで吾輩らの攻撃を緩和したのか、であるな」

 

「いや。それも気になるが、それより肝心な部分がまだだろ?」

 

「ライダーが率いていた女王陛下の仔たちが全滅した理由、だね」

 

 

キャスターの呟きに首肯で返す。俺が一番聞きたかったのは、その部分だ。

 

ライダーが連れてったはずの仔どもたちが、根こそぎ消滅したと聞いた時は心底ビビった。

それほどに強大な軍として機能しているのかと冷や汗をかいたもんだが、報告を聞く限りじゃ

そうでもないってのが分かった。そうなると、何が原因でやられたのかって別問題が生じる。

 

頭痛を加速させる謎。それについてライダーの口から、信じられない話が飛び出した。

 

 

「知れたこと。バーサーカーらがやったのではない。()()()()()()()()()()()だ」

 

「なんだと⁉」

 

 

平然と語ったライダーの言葉に怒鳴ると、キャスターが同様に落ち着き払った声色で続ける。

 

 

「数日前、中華県の方で数体の神の反応が消えていてね。その時は異聞帯の王が吸収したものと

 ばかり思っていたんだが……昨日現れたあのサーヴァントがやったと考えを改めたよ」

 

「そんな報告聞いてないぞ⁉」

 

「だから、いつもの自然消滅かと考えていたのだよ。それが、もう一騎のサーヴァント出現に

 よって状況が変わった。これは私の失態だ。我が『観測』を逃れる者がいたなんて」

 

「キャスターが今言ったように、吾輩らは件のサーヴァントの襲撃を受けてしまった」

 

 

どうやら、既にもう一人敵がいた兆候があったらしい。それをガリレオのやつが見逃した、と。

別にそこを責めるつもりはないし、何が何でも報告しろと命令してないから、そこもいい。

ただ、キツいな。攻撃を何故か受け付けないバーサーカーに、潜伏するサーヴァントか…。

 

 

「そのもう一騎のクラスは分かったか?」

 

「ライダーがうまく戦ってくれたおかげで、今度こそ『観測』することが叶った。

 ()()()()()()()()のサーヴァント。二度と私の衛星から逃しはしないと誓おう」

 

「アーチャー、か。いや、クラスを特定しただけでも上々。よくやってくれた」

 

 

キャスターが珍しく息巻いている。それだけ自分の行いに責任を持ってるって事だろうが、

今は何より情報を得られたことがありがたい。そうか、アーチャーのクラスなのか。

 

 

「キャスター。お前さっき、中華県で神の反応が消えたって言ってたな?」

 

「ああ。それもきっと、あのアーチャーの仕業と考えた方が良いと思う」

 

「だろうな。それ以前の足取りが不明だが、一先ず『中華のアーチャー』とでも呼ぶか」

 

「米国のバーサーカーに中華のアーチャー。ふむ、厄介なことになった…」

 

 

とりあえず真名が割れるまでの仮称として、中華のアーチャーと呼ぶことに決めた。

参ったな、少しでも得られたのはいいが、それでも圧倒的に情報が足りん。どうする?

いや、違う。俺一人で考えるな。ここには英霊が五騎もいる。全員で考えればいい。

 

 

「気になるのはアーチャーの方だ。ライダー、そいつ一人にやられたのか?」

 

「む? ああ、そうだ。恐るべきは一矢の鋭さよ。一射で数体まとめて射貫かれたわ」

 

「一発でまとめて? だが、それなら全方位から囲んで叩けば……」

 

「それが叶わなかったのだ。敵は潜伏し、奇襲を掛けてきよったのみならず、初手で

 宝具を使用してきた。はぐれサーヴァントは魔力を温存するものと、侮ってしまった」

 

「………宝具か」

 

 

百体以上いたフォーリナーの仔が全滅させられた理由を尋ねると、どうやらアーチャーは

弓兵らしく認知外からの強襲をしてきたようだ。しかもこちらに存在を悟られたと同時に

切り札である宝具を迷いなく切ってくるあたり、相当な手練れであると予想される。

 

ライダーの言っていたように、敵は星の断末魔が喚んだカウンターのサーヴァント。

正式なマスターはおらず、それ故に魔力供給もままならない。だから大胆な行動や大規模な

戦闘は控えてくるだろうと高を括っていたんだが。その思考を逆手に取られたのかもしれん。

 

 

「相手が上手(うわて)だった、それだけだ。次に戦う時があれば、そこで雪辱を果たせ。いいな?」

 

「……ワハハ、厳しいな。あぁいいとも! 吾輩の歩み、何人たりとも阻ませはせんよ!」

 

「それでいい。んじゃ、当面はアーチャーの方を警戒ってことでいいか」

 

「主殿、聊か早計かと」

 

 

久しぶりの出番で敗走を余儀なくされたライダーを励ます。当人も俺に「落ち込んでる暇が

あるならやることやれ」って言ったのを思い出したのか、普段の調子を取り戻してくれた。

話を一度区切り、優先的な討伐対象をバーサーカーからアーチャーに移そうと提案したところ、

セイバーに待ったの声を掛けられた。

 

 

「攻撃してこない敵より、容赦なく宝具使ってくる敵を警戒するのは、当然だろ?」

 

「否。弓兵の英霊とやら、おそらく機を窺っておったのでは」

 

「………話を聞かせてくれ」

 

「御意」

 

 

この場にいる全員の視線を一手に集めながらも、沈着冷静な態度を崩さず、剣客は語る。

 

 

「弓兵は中華の地に現れ、一度姿を晦ませた。己のみで太刀打ちできぬと悟ったが為、

 同じく召喚されたはぐれの者を探していたのであろう。そうしてしばらく、あめりかにて

 反乱の兆しを見出し駆けつけ、あちらに加勢したと考えられる」

 

「中華からアメリカまでかなりの距離がある。ガリレオの衛星監視の目を逃れながら、わずか

 一週間程度で移動できるか? そこらの神を使って移動したなら、王が見逃さない」

 

「生前、行軍に従じた者ならば可能かと」

 

「キャスター、ライダー。お前たちの意見は?」

 

「戦争の素人でないことは確かだな。民たちを兵団として動かそうと指示を飛ばしていた」

 

「武器は二つの弓。防具は古風な軽装。明らかに単独で動くことに慣れた様子だった」

 

 

セイバー曰く、アーチャーは先を見据える慧眼があり、徒党を組んでこちらに対抗するべく

機会を待っていたのでは、とのこと。筋は通るし、アーチャーの運用としても外れてない。

加えて敵を知る二人の証言から、ほぼ軍人か兵士なのは確定と。ますます厄介だな。

 

まぁ不可解な点があるのはバーサーカーも同じだ。で、そこをセイバーに聞きたい。

 

 

「今言ったように、アーチャーは確実に強敵だ。それでもか?」

 

「はっ。儂は、()()()()()()めを特に警戒すべきと存じまする」

 

「理由は? アーチャーより優先する必要性は?」

 

「———弓兵は戦にて猛威を振るう。片や、のおとんなる御仁は、()()()()()()()()()()

 

 

厳格に、一切の油断の色を示さないセイバーの言葉に、納得するより他にない。

 

 

「確かに弓兵も捨て置けば主殿の御命を脅かす敵となりましょう。されど国を興されたなら、

 この盤石なる日本に新たな亀裂を生じさせる大事(だいじ)となる。さて、国を揺るがすは誰ぞ?」

 

「………そういう事か。ああ、分かった。ほっといたらマズイのは、バーサーカーだな」

 

 

短絡的な思考をこうして諫めてくれるセイバーの存在が、本当に心強いし助かるぜ。

彼の言う通り、アーチャーよりも優先してバーサーカーを叩かなきゃならんのが分かった。

 

アーチャーは単独行動のスキルを有し、遊撃にも優れたクラス。遠方からの狙撃なんかも

脅威となる存在だが、長い目で見ればバーサーカーの方が絶対にマズイ。

この日本異聞帯の何がすごいって、日本以外の国家が存在しない世界ってところなんだよ。

なのに統一された唯一国家の中から新たな国が、それも皇帝を頂点とする帝政国家が誕生する

のは、異聞帯の根底を揺るがしかねん。そうなりゃ異聞帯の王にどんな影響が及ぶか……。

 

 

「事と次第によっては、弓兵の方は野放しでも構いますまい」

 

「は?」

 

「同志を求め消息を絶つほど用心深い。転じてそれは彼奴の力量を推し諮れようというもの。

 あめりかの動乱に加勢したところを見るに、こちらが向こう方を攻めれば自ずと戦場に姿を

 現しましょう。なにせ、やっと出会えた反抗の徒。みすみす見殺しにはせぬ」

 

 

淡々と戦況を見据え、展開を読み解くセイバー。その有り様に、思わず体が震えちまう。

こいつが此方側についてくれて、本当に良かった。汎人類史、ひいてはカルデア側について

いたらどうなっていたことか。これからもこうした会議には彼を必ず出席させなきゃな。

 

 

「……よし。みんな、聞いての通りだ。最優先でバーサーカーを倒す」

 

 

説得力に満ちた話に、誰も異を唱えない。そのタイミングで現状としての方針を固めた。

 

そうなると、アーチャーとバーサーカーの二騎がいることを考慮しての討伐軍編成が必須か。

キャスターは本拠地での『観測』に従事させるんで論外、フォーリナーも出来れば手元に

置いておきたいので除外。ライダーは敵を急襲する為に不可欠だから編成に組み込む。

 

さて。残るはセイバーとランサーの二人。防衛にも力を入れなきゃならんし、ここは…。

 

 

「次の派兵準備に、早速だが取り掛かってもらう。ライダー、早くも雪辱戦到来だ」

 

「ワッハハハハ! 任せろマスター! バーサーカー討伐の栄誉は吾輩がいただく!」

 

 

前提条件であるライダーは当然として。戦意を漲らせているし、心配は要るまい。

ここでもう一騎、対アーチャー戦を想定した人選をしよう。さぁ、存分に暴れてきな。

 

 

「ランサー、今度はお前も行ってくれ。アーチャーの首、お前の槍で落としてこい」

 

「おお、承知! ついに殿への手柄立てが叶う時来たれり! 祝い酒じゃあ‼」

 

 

バーサーカーはライダーに任せる。あまり攻撃が効かなかったらしいが、完全に無効化された

わけでもない。だったら、ランサーがアーチャーを落とすまでの時間を稼いでもらおう。

んでランサーはアーチャーにぶつける。敵の武装が弓だって話だから、ライダーより弓矢の

間合いやら対処法やらに詳しかろうと思っての采配だ。セイバーが口挟まないし問題ない。

 

 

「フォーリナー、残りはどれだけいる?」

 

「フォー…リナー?」

 

 

続いて、ライダーに指揮させるフォーリナーの仔どもたちの残数を尋ねようとして、うっかり

オフェリアの前で誤魔化すのを忘れてた。ヤベェ、どうしよう。今からフォローして間に合う

わけないもんな。ええい、しゃーない! 後でオフェリアに本当のことを話せばいいや!

 

 

「ごめんオフェリア、後でちゃんと話すから。フォーリナー、あと何体使える?」

 

「…………………」

 

「おい、フォーリナー?」

 

「ん? あ、あぁ。ごめんなさい主人(マスター)。妾の仔らの数でしたね? それでしたら………。

 妾以外の四騎を現界させる魔力供給用に120体、即座に稼働可能が3600体、まだ生まれて

 間もないのが100体ほどです。戦闘特化個体を所望でしたら、30体程度になりますが」

 

「次の派兵でライダーとランサーにどれだけ使える?」

 

「そうですわね……宝具の使用回数をそれぞれ2回に限定すれば、600体で足りるでしょう」

 

「分かった、それでいこう」

 

 

魔力タンク兼兵士に使えるフォーリナーの仔が、どれくらいまで動かせるかを尋ねる。

なんかボーッとしてたのか、慌てた様子だったが答えてくれた。でもかなり余裕はある。

 

サーヴァント相手に戦闘特化個体を出しても、焼け石に水にしかならないだろう。

だからそいつらはカルデア相手に温存して、ここは物量で叩く。なにも反乱に組した市民を

皆殺しにする必要もないんだし。ここで3600から600を失っても、まだ致命的損失じゃない。

フォーリナーが生産に尽力すれば、三日で500体くらいは増やせるから、ここは攻めるか。

 

 

「ライダー、ランサーはバーサーカーとアーチャーを倒す準備に取り掛かってくれ。

 キャスター、そっちはいつも通りで。セイバー、ランサーの代わりにオフェリアの護衛を

 頼むわ。フォーリナー、今回の討伐戦でまた損耗するから、生産に充てる時間を増やせ」

 

「了解だ!」「了解」「承知した!」「委細承知」「ええ、いいでしょう」

 

 

各員に命令を伝え、それぞれが命令に従って動き出した。

 

ライダーとランサーは退室し、フォーリナーの仔を育成している施設へ向かったようだ。

キャスターは『観測』のために別室へと移動。セイバーは「御免」と呟き、オフェリアの

背後に回って警護を開始する。フォーリナーも多分、どこかへいって仔を産むのだろう。

 

やるべきことは終わったし、ようやくオフェリアと話ができそうだ。セイバーいるけど。

 

 

「おし。待たせて悪かった、オフェリア。これで話せそうだ」

 

「え、ええ。そうみた「ちょっとよろしくて?」い———え?」

 

 

フル回転の労働から解放された俺の頭脳から、ようやく痛みが引いてきたタイミングで

オフェリアと話そうと思っていたんだが。横合いからフォーリナーが口を挟んできた。

どうしたのかと返事をしようとしたが、アイツが視線を向けたのは俺ではなく、オフェリア。

 

 

「主人。妾はこの小娘と話をしたいので、お借り致しますわ」

 

「え? いや、ちょい待ってくれ。俺もオフェリアと話が」

 

「すぐ済みますから。お気になさらず、他愛のない()()()()話し合いですもの」

 

「……………う、うん。危害は加えんなよ」

 

「勿論です。主人の客人ですもの、相応のもてなしは約束致します。では」

 

「あっ…ゼベル」

 

 

フォーリナーがオフェリアに話したいことがあるみたいだ。それも二人っきりで。

いや俺も話したい事あるんだけど、と言おうか迷ったが、先のコヤンスカヤへの支払いがある

から強く言い張れない。それにあの目よ。マスターに向ける目じゃねぇよ怖過ぎんだろ。

 

結局、最低限の安全を保障させるだけに留め、オフェリアを連れて行かせた。

部屋を出る寸前に不安げにこちらを振り返る彼女の瞳に、何も答えてやれなかった。

 

 

許せオフェリア。これからしばらく暇だから、なにか茶菓子作って待ってるよ。

 

 

 

 

 

 









いかがだったでしょうか?


本格的な対策会議を描写したかったんですが、14000字を超える勢いだったので
添削に添削を重ねてスマートな読み口にしてみました。削りすぎたかな?


さぁ、果たして対バーサーカー&アーチャー戦の行方は⁉
時間があればバトル描写もしたいけど、どうなるか分からないゴメンナサイ!
はたして、オフェリアに待ち受けるフォーリナーの話とは⁉


次回をお楽しみに!

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