Lostbelt No.8 「極東融合衆国 日本」   作:萃夢想天

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どうも皆様、予想外に反響が大きくなって驚いている萃夢想天です。

FGOも今年で四周年と相成りました!
ここからさらに大きく、広く、長く愛されるコンテンツとして
いつまでも連綿と続いていくことを祈りましょう!

しっかしここにきて低レア七騎実装とはたまげたなぁ………。
ちなみに我がカルデアは実装開始から五分で宝具5となった大英雄の
イアソン様がいらっしゃいます。僕のヘラクレスは最強なんだっっ!
二部四章実装の医師神会計ことアスクレピオスとヘラクレスとを並べて
運用すると、リアル十二の試練ヘラクレスが爆誕するわけですな。怖。

たわわのアサシンことシャルロットちゃんを低レア実装した運営は神。


前書きが長くなってしまいすみません。
今回はクリプター会議がメインになります。

それでは、どうぞ!




第一章 根を落としたはいいが、水やりの仕方が分からない

 

 

どうも。期待値が平均値を上回らない男、ゼベル・アレイスターです。

 

俺は今、自分が担当する異聞帯のとある場所で通信礼装を起動しています。この礼装は己の周囲の

空間ごと結界として認識し、通信がつながっている場所へ疑似的に、音声だけでなく姿までお届け

できる優れものである。分かりやすく言えばVR技術を用いた通信みたいなものだけど、そう表現

すると途端に安っぽくなっちゃうのよね。凄い技術なんだけど、科学の方がぶっちゃけ……うん。

 

まぁとにかく、俺は自分の異聞帯にいながら、クリプターが集結する事になっている場所にいる。

そう、それこそが八つある異聞帯の中でも最大規模を誇るギリシャ異聞帯。あのキリシュタリアが

担当している世界だ。ここに来るのは初めてじゃあないが、何度来ても緊張のあまり腹を下す。

 

実用性があるのかと疑いたくなるほどにクソデカいテーブルを囲むようにして、我等クリプターが

一堂に会する。定期的に開く会議とはいえ、もうちょっと広さとか何とかならんかったのかね?

 

時計の文字盤を参考に、十二時の方向に我等がリーダー、キリシュタリアが腕を組み寡黙に座す。

そこから順に一時と二時の間辺りに長身オネエのペペロンチーノ、三時の方向に本をチラ見する

ヒナコ。四時と五時の間辺りにとんがりイヤーなべリル、六時の方向に俺。誰か場所変わって。

七時と八時の間辺りにデイビット、九時の方向にカドックが座る。またブツブツ言ってる、怖。

最後に十時と十一時の間辺りにオフェリア。これでクリプター八名、全員が出そろったわけだ。

 

本当に憂鬱で仕方ない。何が悲しくてAチームきってのヤベーやつ2トップに挟まれなくちゃ

ならないんだよ。どうせだったらオフェリアとヒナコの両手に花とかやってみたかったわ畜生。

とか落ち込んでたらヒナコが本を読む振りしながらこっち睨んできた。なんでばれるんスか。

 

早くも自分の異聞帯に帰りたいと思い始めた時、目を閉じていたキリシュタリアが場を動かす。

 

 

「空想樹の発芽から三か月が過ぎた。濾過異聞史現象______異聞帯(ロストベルト)の書き換えは終わった」

 

 

彼の言葉にはいつも重みを感じるが、場所が場所だけにより荘厳な風格をまとっているように

思えてならない。労いの言葉を続けたキリシュタリアに、俺の右隣にいるべリルが反応した。

 

 

「いやいや、そいつはまだ早いぜキリシュタリア。オレたちゃまだ誰も、労われるような事は

何一つ為しちぁあいない。なんもかんもぜーんぶ、『異星の神』さまの偉業なんだしよ」

 

「分かっていないのね、べリル。異聞帯の安定と、空想樹の安定は同義。キリシュタリア(・・・・・・・)

異聞帯のサーヴァントとの契約及びその継続に全力を注げ、そう言っているの」

 

 

これに対して、今度は生真面目なオフェリアが反応する。こんな堅苦しい雰囲気の中で普段と

同じように茶化せるべリルも大概だが、反対の意味じゃオフェリアも似たようなもんだな。

 

「貴方のようにまだ遊び気分が抜けていないマスターに対して、彼は」

 

「おいおい、そう睨まないでくれよ。お前さんの一睨みはシャレにならないんだぜ?

それに誤解されてるようだから訂正しておくが、オレはかつてないほど真剣さ、お嬢さん」

 

「……………どうかしら」

 

「信用ないねぇ。なにしろオレたちみんな、一度死んできたわけだしな。そんな経験した後も

お遊び気分でいられるほど大物じゃない。こうして復活こそしてるが、異星の神とやらの恩情が

二度も三度もかけられると思えるか? なら、生きてるうちにやりたい事はやっときたいのさ」

 

 

据わった目をしたべリルの言論に、流石のオフェリアも自分の発言が相手の気分を害した事を

察したようだ。特に言い返そうともせず、きまりが悪そうな顔で佇まいを直して口を閉じる。

 

どうでもいいけどさ、早いところ話を戻さない? 俺こういう場面だと緊張しすぎて腹痛になる

タイプだから、一刻も早く終わらせたいんだけど。なんで話を切り出したキリシュタリアの事

ほったらかしにして言い争ってんの、馬鹿なの? 「もういいかな」って目してるぞリーダー。

 

 

「……………」

 

「あら。平常運転のべリルに比べて、元気がないんじゃないカドック?」

 

 

なんで話を脱線させるかなぁお前らなぁ。

 

 

「目の隈とかサイアクよ? 寝不足? それともストレス? 心配だわ」

 

「……両方だよ。僕の事は放っておいてくれ、ペペ。仕事はこなしてるんだから」

 

「んー、無理ね。放っておいてほしいんだったら、せめて自分への逆境を笑っていられるくらいに

なりなさい。誰が見たって今のアナタは『辛い』って顔してるもの。そんな顔した友人を見たら、

アタシだって辛くなっちゃうわよ。当たり前のことでしょ?」

 

「……………僕の為に心配してる余裕があるとは、流石だな」

 

「あら、アタシはアタシの為に心配してるのよ。だって、自分から辛くなりたい人間なんて一人も

居やしないでしょう? アタシはそんな気分になりたくないし、させたくないから心配するの。

分かる? 独りでも平気ってのは、心を殺すことじゃない。ふさわしい強さを持つことよ」

 

 

けどこっちはべリルたちのような口論じゃなく、純粋な心配からくる話し合いになっていた。

深いなぁ、今のペペ姉ぇの言葉。気遣われているっていう解釈をカドックにさせないように敢えて

自分の我が儘って体裁を押し通してる。気配りの達人じゃなけりゃあんなさらっと言えないわ。

 

で、話戻してもらっていいですかね? キリシュタリアがそわそわしだしてんの見えないかな。

 

独りリーダーの異変に気付く俺だが、腹の痛みを耐えるばかりで口を挟む余裕なんて無い。

早く帰ってこの苦しみから解放されたいが、会議が進まなきゃ帰れない。そして会議は進まない。

詰みゲーと化しつつある空間を一瞥すると、理知的な瞳を有する最後の同士と目が合った。

 

片手で本を開いてはいるが、それを読まずに盾のように扱う偽文学少女に、目で状況を説明する。

ヒナコは普段から他人を観察する事に長けてる女だ、今こそその輝かしい才能を有効活用しろ!

 

 

「………無駄話はそこまでにして。キリシュタリア、用件はなに?」

 

 

よく言ったヒナコ! お前がナンバーワンだ! 今夜は赤飯だ、おめかしして来いよ!

 

 

「各自の近況報告と、私からの報告をするつもりだった」

 

「こちらの異聞帯の報告は済ませたはず。こちらは領域拡大に適していない。だから私は

貴方たちの異聞帯とは争わない。星の覇権にも興味はない。勝手にやりあっていればいいわ」

 

 

でかしたぞヒナコ。普段無口なお前がよくぞ話題を切り出した。不甲斐無い俺を許してくれ。

そんで、そういえばヒナコは前の会議でそんな事を言ってたなと思い出す。

 

一応俺たちクリプターは、担当する異聞帯同士の育成具合を競い合う使命があるらしくてな。

まぁキリシュタリアのギリシャ異聞帯が一番デカいから、結末は誰の目にも明らかではある。

と、誰もが思ってるだろう(・・・・・・・・・・・・)。ところが、そうでもないんだよなぁコレが。

 

その話は今すべきことじゃないし、そもそもこの場で言えるわけがない。胸の内に秘めておく。

さーて、とにかくヒナコのおかげで話が進んだし、このまま流れに乗って会議終わらせるか。

 

 

「……そんな言葉が信じられるか。閉じこもっても争いは避けられないぞ、芥」

 

 

だからよぉカドックお前よぉ! なんでそうやって話のレールを挿げ替えるかなぁ!

 

 

「最終的に選ばれる異聞帯は一つのみ。例え領域拡大を放棄しても、そのうち他の異聞帯に

侵略されて何もかもがパァになる。いつ、誰が横槍を入れるか分かったものじゃないしな」

 

 

そう言って一瞬だけこちらに視線を向けるカドック。おうなんだお前、俺に話を振ったのか。

人の事をコヨーテか何かみたいに言いやがって。そんなんだから契約してるサーヴァントとの

関係が良好じゃないんだぞカドック。ウチを見習え…………いや、どっこいどっこいだな。うん。

 

 

「私の異聞帯が消えるならそれでもいい。私はただ、今度こそ最後まで共にありたいだけ。

納得の問題よ。それさえ果たされるのなら他のクリプターに従うわ、ねぇゼベル?」

 

「ん? え、なに? ゴメン聞いてなかった。もう一回言ってもらえる?」

 

「…………別に」

 

 

断続的に襲い来る腹痛とカドックんとことウチの契約サーヴァントの関係の差について熟考して

いたら、急にヒナコに名前を呼ばれてビックリした。何か言ってたみたいだけど、聞き返したら

読書(仮)モードに入って耳を傾けてくれなくなってしまった。怒らせたっぽいな、後で謝ろう。

 

そうこうしている内に俺が話の流れをぶった切ったせいで宙ぶらりんになった空気を見逃さず、

キリシュタリアが組んでいた腕を解き、指先で軽く円卓をコンコンと叩き、視線を集める。

全員の意識が向けられたことを確認してから、彼自身の用件を改めて話題に挙げた。

 

 

「さて、遠隔通信とはいえ、私が諸君らを招集したのは異聞帯の成長具合を確認する為だけでは

ない。一時間前、私のサーヴァントの一騎が『霊基グラフ』と『召喚武装(ラウンドサークル)』の出現を予言した」

 

 

彼の言葉に、クリプター全員が衝撃を受けた。

 

その理由は、俺たちが元々所属していたカルデアを裏切り、現在そこにいる全ての関係者を

皆殺しにする計画を実行していたからだ。つまりキリシュタリアが口にした言葉が本当ならば、

全滅しているはずのカルデアがどうにかして生き延びていた、という事になる。

 

俺たちが異星の神とやらの恩情で復活してから三か月。その間も世界は変わらずに回り続け、

着々と滅びへ向かっていたらしい。そもそも俺たちAチームが達成するはずだった特異点の修復

だが、当然俺たちは死んでいたので達成できない。そのまま歴史の歪みが広がり、人類史全体が

崩壊するかもしれなかったわけだが、それを水際で食い止めた人物が一人、いたのだという。

 

カルデアに招集された48人のマスター候補最後の一人にして、魔術世界を知らない一般人出身。

そして、魔術回路が脆弱ながら俺と同じく、100%のレイシフト適正(・・・・・・・・・・・・)を持つ人物。

その名を、【藤丸 立花】という。人類最後のマスターとして、歴史に立ち向かった英雄だ。

 

藤丸を中心にしてカルデアはAチーム全滅という惨劇から立ち上がり、人理焼却という未曽有の

魔術事件の黒幕が用意した七つの特異点を制覇。最後には黒幕を倒し人理を修復したヒーロー。

 

異星の神によってこれらの情報がもたらされた時、俺の内に湧いた感情は、『感謝』だった。

本当ならサブのサブ、念の為の補欠要員でしかなかったはずが、一転して世界の命運を一手に

引き受けざるを得なくなった。俺たちが不甲斐無かったばっかりに、大役を任せてしまった。

だから俺は感謝こそすれ、殺す事はないと本気で思っている。今もだ。クリプター会議内で

現存カルデアを全滅させるという決定が下った時も、俺だけは最後まで納得できなかったのだ。

 

けど、結局否定も何も出来なかった。何もしてやれなかった俺が、何も言う資格なんて無い。

だからせめて安らかに逝ってほしいと勝手に願っていたが、彼らはどうやったか窮地を脱した

ばかりか、こちらに攻め入る腹積もりらしい。人類最後のマスターと、カルデアの残党全てが。

 

 

「霊基グラフはカルデアから持ち出したものとみて間違いなく、召喚武装の方もおそらくは

マシュ・キリエライトが持つ円卓だろう。彼らはいずれ、我々と相対する事になる」

 

 

キリシュタリアの報告を聞き、クリプターは皆それぞれ違った反応を見せている。

 

 

「……それで? 連中がどこに現れるのか判明してるのか?」

 

「いや、カドック。そこまでは予言に出なかった。あと数時間ほどでこちらに出現する、と」

 

「なんだそりゃ」

 

 

カドックは自分んところの異聞帯が上手く運営できていないからか、随分と焦りが見える。

打って変わってべリルの方は、おざなりな言い口でも下卑たにやけ面までは隠せていない。

元々殺しを楽しむような奴だ、敵が攻めてくるってシチュエーションは願ってもないだろう。

 

しっかし、本当にカルデアが来るのか。あと数時間で。だとするとどこから現れるのかは俺も

割と問題視した方がいいかもしれん。こっちの異聞帯は正直に言って隙がほとんど無い。

だからこそ、カルデアという不確定要素が今の段階で割り込んでくるのは、正直よろしくない。

 

どうしたものかと頭を抱えようとしたその時、それまで沈黙を保っていた男が口を開いた。

 

 

「出現場所はロシア___________カドック、お前の異聞帯だ」

 

 

俺の左隣に座る男、デイビット。魔術師の総本山たる時計塔の連中からも異端児扱いされるような

問題児が、ここにきて鶴の一声をぶち上げた。ただ、えらく確信に満ちた物言いが気にかかる。

 

 

「それは、なぜ?」

 

「何故もなにも、道理だろう、芥。彼らカルデアが『異星の神により白紙化された今の地球』に

おいて唯一知りえている情報は、カルデアを襲った勢力。つまりロシア異聞帯の王が派遣させた

黒犬兵団(オプリチニキ)以外に有り得ない。虚数空間から現実空間へ戻る為の楔として機能させられる『縁』は、

それしかない。オプリチニキは、カルデアにとって敵勢力の本陣の座標と変わりがないからな」

 

「……ふん。因果応報か」

 

 

ヒナコの問いにデイビットが淡々と答える。他のクリプターはデイビットの答えに納得を示した。

カルデアを全滅させるために送り込んだのは、カドックんとこの異聞帯の王が使役する黒づくめの

兵士と契約したサーヴァントだった。なら、それを逆に辿ってカドックのいる異聞帯へ乗り込むと

予測を立てたわけか。なるほどな。やっぱりただの問題児じゃなかったんだな。

 

カルデアの出現場所がほぼ確定したと分かると、べリルや世話好きのぺぺ姉ぇが救援を申し出る。

ぺぺ姉ぇは完全に善意での心配からってのは分かるが、もう片方は完全に殺したくてたまらんって

いう自己満足の解消が目的だろうな。はーやだやだ。なんで俺の隣ってヤバい奴しかおらんの?

 

 

「……要らないよ、助けなんて。これは証明さ、僕にだってできるっていう何よりの機会なんだ。

見せつけてやる、人類最後のマスターとやらに。そして…………お前にもな、アレイスター」

 

「は? なんでそこで俺の名前が出てくるの?」

 

「はっはっは! こいつぁイイ! イイぜぇカドック、そういう身近なトコでのぶつかり合いとか

オレは大好きさ! オーケー、一人で踏ん張って見せなカドック。兄貴分として応戦するぜ」

 

 

なんかカドックが藤丸に対抗意識燃やしてんなーとか思ってたら、火の粉がこっちに飛んできた。

俺カドックに嫌われるような事したかなぁ。お互い貧弱な魔術回路だから助け合っていこうなって

カルデアにいた頃は仲良くしてたはずなんだが。もしかして馴れ馴れしすぎて嫌われてたとか?

 

 

「だが、無理だけはするな。ヤバいと思ったらケツまくってとっとと逃げりゃいいからよ。

オレたちは競争相手だが憎い敵同士ってわけじゃない。それに、異聞帯を失ったクリプターには

価値なんて無くなっちまう。いざとなったら、皇女様と二人でトンズラこいてひっそり生きろ」

 

「……余計なお世話だ」

 

「そう言うなって。どこかに肩入れさえしなけりゃ、誰も手出しなんかしねぇって。

だろ、ヴォーダイム?」

 

「カドック、我々クリプターは自分が担当する異聞帯の領域拡大が目的だ。いずれそれぞれの

異聞帯の境界は衝突し、脆弱な方は養分と成る。そうして、より強い人理が未来を勝ち取る。

異聞帯による人理の再編。再び人類が神とともに歩む世界へと作り変える事こそ、我等が宿願」

 

「………………分かってるよ」

 

「ならばいい。だが、油断はするな。彼らは既に一度、人理の修復を成し遂げているのだ。

間違いなく、我等にとっての障害と成り得る。君個人の問題だけではない、と言っておこう」

 

 

一応として形だけの忠告を受けたカドックは、そのまま通信を切って自分の異聞帯へ帰った。

それにしても、カドックまで怒らせてたんかなぁ俺。後で個人的に通信して謝っておこうかな。

べリルも言ってたけど、俺たちは競争相手であっても敵同士じゃあない。そしてクリプターは

異聞帯を育成する義務こそあるが、異聞帯と運命を共にする必要は全くない。だからこそ俺たちは

仲良しこよしってわけにはいかなくても、助け合い支え合うくらいの関係性ではあるべきだ。

 

あーあ、気が重い。ヒナコはまだ分かってくれるが、カドックは割と拗らせてるしなぁ。

 

今からどう謝るべきかと気を揉んでいると、べリルとデイビットがいつの間にか消えていた。

さっさと帰ったのか、薄情者どもめ。だったら話も終わったみたいだし、俺も帰ろーっと。

 

最後にこの場に残った四人に挨拶してから通信を切ろうと思っていたら、ぺぺ姉ぇにいきなり

話しかけられた。

 

 

「アタシが心配してるのはアナタもよ、ゼベル。アナタはどうにも危なっかしくて、カドックとは

別の意味で放っておけなくなっちゃうの。パッと見では調子よさそうだけど、実際どうなの?」

 

「心配どーもペペ姉ぇ。でも案外なんとかなってるもんだよ、サーヴァントも協力的だし」

 

「そう? でも不安だわ。アナタが契約したサーヴァント、なーんか奇妙な感じがするのよ」

 

「奇妙?」

 

「ええ。だって異聞帯で召喚したサーヴァントなら、その地にゆかりのある英霊がほとんどの

確率で召喚されるはずでしょ? でもアナタのサーヴァント、日本の英霊じゃないわよね(・・・・・・・・・・・・)?」

 

「……………あ~、まぁ、うん」

 

 

不意を突かれたせいか、歯切れの悪い返事になってしまった。隠し事がバレなきゃいいが。

つーかペペ姉ぇ勘が鋭過ぎんよぉ。前の報告会でチラッと言っただけだぜ、しかも契約した

サーヴァントの特徴を少しだけ。それだけで気付くとか、さてはペペ姉ぇも普通じゃねぇな。

 

するとキリシュタリアの視線がこちらを捕捉した。やべぇ、追及されるとボロが出かねん!

 

 

「ペペロンチーノの勘も無下には出来ないな。ゼベル、君が召喚したサーヴァントは確か、

アサシンとしか聞いていないが? 君自身、何か違和感を抱きはしなかったか?」

 

「……………いや、特に何も」

 

「ゼベル、私たちは貴方を糾弾しているのではありません。あくまで確認がしたいのです」

 

「大丈夫だよ、心配性だなオフェリアは。ぺぺ姉ぇも心配ホントにサンキュー。

でも、今のところは問題ないから。契約したフォーリナー(アサシン)との関係も良好だし、異聞帯に

連鎖的に召喚されてる英霊も、今のところはこちら側に引き込めてるから」

 

「ふむ、報告にあった『イタリアのキャスター』、だったかな?」

 

「そー。真名は【ガリレオ・ガリレイ】だ。アイツが観てる限りはとりあえず大丈夫」

 

 

これ以上フォーリナーの方を探られない為に、ここで敢えてキャスターの真名を暴露する。

真名の秘匿はクリプター全員の暗黙の了解だ。それをわざわざ破るリスクもあるにはあるが、

そのリスクを冒してでもフォーリナーの存在だけは隠し通す。それだけの価値があるからな。

 

案の定、本来秘するべき真名の唐突な暴露に、ペペとオフェリアが瞠目していた。

 

 

「ちょ、ゼベル⁉ アナタ、そう簡単に真名を喋っちゃっていいわけ?」

 

「キャスター程度なら構わねぇな。アイツの逸話に明確な弱点なんざありゃしないし、有効な

攻撃だって何かに絞られるわけじゃない。むしろ、知られる事でアイツの観る幅が広がる」

 

「観る……幅? それはどういう意味なの、ゼベル」

 

「オフェリア………お前もしかして、手品とかのマジック観てすぐにタネとか仕掛けとかが

気になって聞いちゃうタイプ? よくないぜぇそういうのは。そういう謎を考えるのも楽しみの

醍醐味だってのに。カルデアにいた頃にもよく見せてやったろ、あーゆーのと一緒だよ」

 

「あら、なによそれ。アタシ聞いてないわよオフェリア。ヤダちょっと、そんな事してたなら

もっと早くに教えてくれれば良かったのに! 男に効くアピールの一つや二つくらい伝授して

あげたのに、恥ずかしがっちゃって。キャー可愛いんだから! ホンットにもうサイコー!」

 

「や、やめなさいペペ! 違うの、そういうものではないの! 違うったら!」

 

 

どうにか話題を明後日の方向に振れたようだ。しかしムキになってるオフェリアぐうカワだな。

普段の冷徹そうな見た目とのギャップなのかね。そういう意味で行くと、無感情なのに高圧的な

ヒナコが、犬みたいに人の後ろ着いてって「先輩!」みたくなる…………ねぇな。想像できねぇ。

 

さて、場が混乱してる隙に退場しますかね。今のところ皆元気そうで一安心だ。

 

カルデアがどう出てくるか分からんが、もし俺の異聞帯で出会う事になれば、その時は。

 

 

 

 





「キャスター、主人の様子はどう?」

「可も不可もなく。特に不自然な様子はない」

「そう、ならば良いのです」

「………それほどまでにマスターの傍を離れるのが不安か?」

「…………妾は戯れに付き合う人柄に見えるかしら」

「君という英霊の『観測』は未だ不十分だが、マスターから君への観測を過度に行わぬ
ようにと命じられているのだよ。惜しいことだが」

「ほう、命拾いしたわね。主人に感謝なさい」

「そうしておこう____________む?」

「どうかしたの?」

「私の『衛星』を通して観測した。ライダーがサーヴァントと接触したようだ」

「本当なの? だったらすぐ主人に報告を」

「待ちたまえ、報告にもある程度の情報が必要だ。マスターは会談の真っ最中で碌に
身動きは取れまい。ならば私たちが少しでも多く情報を得ることが先決だろう」

「………観たいだけ、というのではないでしょうね」

「それもある」

「この変態めが。なぜ主人は妾よりもこんな男を………」

「………妙だ」

「ええ、本当に我が主人は「そうではない」んむ?」

「ライダーと接触したサーヴァントの霊基の『観測』結果がでた」

「ほう。して、かの者は何者なの?」

「クラスはバーサーカーで間違いない。しかし、だからこそおかしい」

「何がおかしいの?」

「私の『観測』は正確無比だ。アレがバーサーカーである事も観えた。
故にライダーの説得に応じない可能性も、そこから戦闘に発展する可能性も充分に
予測できた」

「回りくどい。簡潔に述べなさい」

「女王陛下の仰せとあらば。結論から言えば、霊基強度が貧弱に過ぎるあの
バーサーカーが、ライダーの攻撃を受けて無事でいられるはずがないのだが。
どういうわけか、ルーラーに匹敵する防御力を会得しているようだ」


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