Lostbelt No.8 「極東融合衆国 日本」   作:萃夢想天

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どうも皆様、萃夢想天です。

ついに始まった、日本異聞帯攻略。
カルデアを待ち受ける、有り得ざる歴史とは。
ゼベルの目的と、相対するカルデアの運命や如何に。

前回のあらすじ!
皇帝かりぎゅら、迷子。以上!


それでは、どうぞ!






第五章二節 種は芽吹き、地に根付く #2

 

 

 

 

 

 

 

事態が急変した。本当ならもっと綿密に計画を立ててから行動を開始しなきゃいけなかった

けれど、そうもいかなくなってしまったのだ。やっぱりバーサーカーの扱いは難しいよ!

 

 

『泣き言を言っとらんですぐに向かうのだ!』

 

「うぅ~!」

 

 

開いた通信から新所長のお小言が飛んでくる。自分の責任だと分かっているからこそ、

迅速に対処しなきゃならないことも分かっていた。でも、まさかこんなことになるとは。

 

私がこの異聞帯で召喚したサーヴァントは二人。キャスターとバーサーカーだった。

ひとりは、栄光と没落により自ら暗黒の淵へ堕ちた聖なる怪物、【ジル・ド・レェ】

もうひとりは、名君として称えられながらも月に魅入られ狂った暴君、【カリギュラ】

 

理性なきバーサーカーのクラスであるカリギュラが、私たちの会議中に忽然と姿を消し、

なぜか遠く離れた場所に行ってしまった。分からないことだらけで頭がパニックになる。

どうして勝手にいなくなったとか、なんで日本の英霊がきてくれなかったとか、色々と

まとまらない思考が頭を巡っていく。いや、今はとにかく、彼と合流しなくちゃ。

 

 

「ですが先輩。カリギュラさんは、どうやってあの『壁』まで移動したのでしょう?」

 

「ええ、私も気になっておりました。かの御方には、長距離を瞬時に移動するような逸話や

 伝説、またはそれらに準じたスキルや宝具があるのですかな?」

 

「ううん、なかったはずだよ。少なくとも、私の知ってるカリギュラには無かった」

 

「で、あるならば。今回の一件は、彼自身によるものでないとみてよいでしょう」

 

 

ノーチラスのハッチから、異聞帯の日本の陸地へ降りる。そのままマシュとキャスターを

引き連れて、カリギュラが向かった『壁』の方向を見つめ、その遠さに改めて愕然とした。

スタッフの計測だと、現在位置から直線距離でも20キロメートルは離れているらしい。

冷静になって考えると、本当にどうやったんだろう。キャスターの言葉を信じるなら、

カリギュラが自分の意思で離れたのではないのかも、という事になるけど。

 

砂浜に取られそうになる足を懸命に動かし、ひとまず目の前に広がる森に近付く。

 

 

『マスター・立香。その森林からも、凄まじい量の神性反応が確認されている。気を付けて』

 

「え、うそ⁉」

 

「マスター、下がってください!」

 

「御下がりあれ。私と盾の乙女が先陣を切りますれば、御身には指示を願います」

 

 

生い茂る緑に歩を進めた途端、デッキにいるホームズからの通信が飛んできた。

やっぱりここは、私の知ってる日本じゃない。だって、すぐ目の前にも神様がいるのかも

しれないと思うと、気が気ではない。記憶の中にある日本と、この世界が乖離していく。

 

通信を聞いたマシュとキャスターの二人が、即座に私を庇って臨戦態勢を整えた。

敵対存在の反応はまだ検知されていないと言っていたけど、急速な不意打ちなんかがくれば

対応できるはずもない。だから、ここから先は常に気を配らなきゃ。神経を集中させよう。

 

 

<…………もし……>

 

 

気を引き締めて森に一歩踏み出したそうとしたその時、どこからか声が聞こえた気がした。

聞き間違いか幻聴の類かとも考えたけど、マシュとキャスターが私を挟み込むようにしたのを

見る限り、彼女たちにも聞こえていたに違いない。遅れて周囲をもう一度見渡してみる。

 

 

『なんだ、どうしたのだ?』

 

「……いま、誰かに声をかけられたような…?」

 

『生体反応は確認できない。が、油断しないように』

 

「ふむ。生者の類でないのなら、死者の呼び声ですかな?」

 

「怖いこと言わないでキャスター!」

 

 

ボーダーでは音を拾いきれなかったようで、くまなく続けている観測データに何度も目を

通しているが、変化はないとのこと。キャスターが変なことを言ったせいで、怖い想像に

意識が偏ってしまいそうになるのをぐっと堪える。まだそうと決まったわけじゃないしね。

 

背中を合わせるような陣形で辺りを見回していると、すぐそばの草むらが小さく揺れた。

 

 

「マスター!」

 

「キャスター、攻撃は待って! こっちからの攻撃はなるべく避ける方向で!」

 

「承知致しました。では、盾の乙女よ。マスターの護りはそちらにお任せします」

 

 

マシュが私の前に立って盾を構え、キャスターは人の皮で作られた魔本に魔力を込める。

臨戦態勢の維持に留めるようすぐさま指示を飛ばし、揺れが激しくなる草むらを見据える。

そして、小枝を折ったような音を引きずりながら、何かが私たちの前に姿を現した。

 

 

<…もし、もし。聞こえておるか>

 

 

ゴロッ、と。重たく硬い物体が動く時に鳴るような音とともに、ソレは姿を見せた。

いや、うん。私は見覚えがすごくある。だからこそ理解が追い付かない。何故なのか、と。

緊張が奔る中、サイズ的にもフォルム的にも見覚えがあるはずの、しかし私の知識の上では

動くはずのないソレを注視する。マシュとキャスターの二人の視線も釘づけになっている。

 

 

<……もし。さては此方(こなた)の声が聞こえぬのか。されど(ろう)ではないようだが>

 

 

今も、目の前にいるソレから声が聞こえてくる。口を動かして喋っているわけではないので、

魔術的な何かか、それともテレパシー的なオカルトなのか。私に分かる訳ないけど、それでも

ハッキリしていることが一つある。私の知る日本では、絶対に有り得なかった存在という事だ。

 

 

「お地蔵さまが、喋った………⁉」

 

 

地蔵。そう、あの地蔵である。日本人ならきっと、お寺や神社だけでなく、学校への通学路や

何処かの道の傍らに静かに立っているのを見たことくらいあるだろう。そのお地蔵様がいる。

石っぽい見た目のままゴリゴリと音を立てて動き、不可思議な方法で話しかけてきている。

こんな光景を目の当たりにして、驚くなという方が無理がある。

 

 

『な、なんだソレは⁉ 何らかの儀式に使う呪像(トーテム)にしか見えんのだが⁉』

 

「仏教ではホトケを木や石に彫り、彫像にして祀る風習があると文献で閲覧した記憶が

 あります。しかし、それを自律人形(ゴーレム)として活用するとは、罰当たりではないでしょうか!」

 

「石像ですか……芸術品としてはイマイチですねぇ。やはり真に心動かす芸術を生み出すので

 あれば、生あるものを作り変えてこそ。無機質な石くれでは、COOL(クール)を表現出来ますまい」

 

 

三者三様の反応を示してくれたけど、違う、そうじゃない。私が驚いてるのはそうじゃない。

……あ、そうか。そもそも仏像がそこかしこに置かれているなんて、日本で実際に暮らして

いないと分からない感覚なのかな。「ここにあってもおかしくない」と思ってしまうのは、

私が日本人で、見慣れない人たちにとっては「ここにあるのはおかしい」ものなのかも。

 

とにかく、今のところ敵対する様子はないし、下手に刺激しないよう気を付けなきゃ。

 

 

「え、と……お地蔵様、あなたが私たちに声をかけてきたんですか?」

 

<…おお、おお。たしかに聞こえておったのだな。よいよい>

 

「どうやら間違いないようですね、先輩」

 

 

警戒を解かず、マシュの盾に隠れながら喋る地蔵に尋ねる。声の正体はあなたなのかと。

質問に対する回答は肯定。彫られた目や口を少しも動かしていないのに、返事は聞こえた。

やはり、魔術的な何かなのだろうか。ノーチラスの皆から警告が来ないなら、危なくないと

見做してもいいのかな。マシュにひとまず盾を下ろすよう伝え、敵意がないと示してみる。

 

 

<……む。そこな娘。()()()()()()()()()()()()

 

「え?」

 

「先輩のこと、でしょうか?」

 

 

すると、お地蔵様が気になることを話した。やはり? それに、娘って私のこと?

マシュも同じような違和感を覚えたようで、聞き返している。会話は成立しているようだし、

もしかしたら情報をこのお地蔵様から手に入れられるんじゃないだろうか。

 

淡い期待が浮かんだ直後、またお地蔵様の声が聴覚を介さず聞こえてくる。

 

 

<…此処らに人が来るのも珍しい。日本の民が外海の民を連れて斯様なところまで>

 

「そとうみのたみ? 外国の人ってことかな」

 

「私とキャスターさんの事を仰っているのでしょう」

 

「……………」

 

 

どうやらお地蔵様にとって、この辺りに人が来ることは稀なようだ。

それと、何故か日本人と外国人とを分けているようにも感じる。何故だろう。

 

でも、ここまで会話ができて現地に精通していそうな存在は、私たちにとって貴重だ。

協力とまではいかなくても、私たちが知らないこの世界の知識を与えてくれるだけでも

すごく助かる。手探りでも、相手を刺激しないよう努めつつ、情報を得なきゃ。

 

お地蔵さまに歩み寄り、自分たちの所属を明かして話を進めようとしたが。

 

 

「マスター、この場は私にお任せあれ。貴方様は盾の乙女と共におられるがよろしい」

 

「え、キャスター?」

 

「ご安心を。決して悪いようには致しませんので、ええ」

 

 

それをジル・ド・レェに止められた。交渉や話し合いは任せろと言っているけど…。

正直、不安ではある。なにせ精神が汚染された状態の彼は、いつどんな事がきっかけで

凶行に走るか分からないのだから。それでも、召喚に応じてくれた彼を信じたい。

 

 

「……分かった、お願い」

 

「承知仕りました。ご期待に添える働きを約束致します」

 

 

いつでもフォローする心の準備を整えてから、彼に交渉の席に立ってくれるよう頼む。

恭しい口調と会釈でもって、マスターに従順に仕えるサーヴァントであることを示して

くれている。うん、きっと大丈夫だろう。不思議とそう思える私がいた。

 

首から足元までを覆う深い紺色のローブをまとう大男が、小さなお地蔵様を見下ろす。

 

 

「お騒がせして大変申し訳ございません。我らは旅の者でして。我らが一団の頭目たる、

 藤丸立香様を中心に旅をしておりました。ですが先程、旅の仲間の一人が行方知れずと

 なってしまい、その捜索の為に森へ踏み入ろうとしたまさに今、言葉を介する良き隣人と

 巡り合うことが出来た、というわけなのでございます」

 

<…ほう。其方らの(ともがら)が何処やへ。さぞ心配であろう>

 

「ええ、ええ。我らが主たる藤丸立香様は、慈愛の君。ひとり彷徨う仲間の身を案じ、

 我先に捜索へ向かわんとするほどに、勇敢さと博愛に満ちた聖女の如き御仁なのです!」

 

(ちょっとキャスター! 言い過ぎ言い過ぎ! 本職の聖女にヤコブ神拳さ(おこら)れるから!)

 

 

狂気の気配など微塵も感じさせない会話術に驚かされていると、やはりいつもの彼なのだと

違う意味で安心させられる。持ち上げられ過ぎるとかえって居心地が悪くなるんだよね…。

 

 

「方々を捜し歩いて回ったのですが見当たらず、こうなればあの天高く聳え立つ『壁』に

 向かわねばならないかと決めあぐねていたところでして」

 

<…其方らの申す輩とやら。近場に居らぬとすれば、此方の道を往かれたのであろうよ>

 

「ほう。道、とは?」

 

<…此方らが結ぶ『神の通り道』じゃ。知らぬのかえ?>

 

 

ジル・ド・レェがお地蔵様と交わした言葉の中に、重要そうな単語があったのを聞き逃さない。

なんだろう、『神の通り道』って。言葉通りの意味なら、神様が通るための道なんだろうけど。

ソレを使ってカリギュラが移動してしまったのだとしたら、私たちはどうしたら追いつける?

 

 

「無知を晒すようでお恥ずかしいのですが、我らはあの『壁』について詳しくありません。

 よろしければその『神の通り道』とやらについて、お聞かせ願えませんか?」

 

<…よいよい。もとより此方は人を助くる為にある物なれば、断ろうはずもあるまい>

 

「感謝致します」

 

 

キャスターはギョロついた瞳を嬉しそうに閉じ、そのままこちらに振りかえる。

 

 

「お役立ては叶いましたでしょうか?」

 

「すごいよキャスター! ありがとう!」

 

「この身がマスターのお役に立つこと、それが私のいる意味でありますれば」

 

 

満足そうな顔で微笑みかけてくるキャスターにお礼を述べ、通信用の礼装を起動する。

回線を開きっぱなしにしておけば、私と一緒にノーチラスのデッキにいるみんなにも話が

聞こえるようになる。そうすればホームズあたりが、話から情報をうまく引き抜くだろう。

 

このお地蔵様から話を聞くだけ聞いたら、すぐにカリギュラを追わなければ。

彼の身が心配でもあるし、彼が何かをしでかさないかも心配だ。バーサーカーの中でも彼は

【加虐体質】という攻撃的なスキルを保有している。理性がほとんど機能していないうえに、

戦えば戦うほど見境がなくなっていく彼を、これ以上目の届かないところに置くのはマズイ。

 

私たちは確かに、この異聞帯を攻略……つまり、世界を破壊するために来ている。

けれど、それは争いたいがためじゃない。誰かを傷つけようとするつもりもないのだ。

 

 

「バーサーカー、無事でいて……」

 

 

豊かな緑の生い茂る森。その木々の隙間から覗く『壁』を、見つめることしか出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――マスター、彼らの存在を『観測』した。カルデアが、やってきた」

 

 

オフェリアとヒナコがこの異聞帯を去ってから約一か月。恐れていた事態が起こった。

 

 

「カドック、オフェリア、ヒナコ。んでちょっと前から通信の繋がらなくなったぺぺ姐ぇも

 含めて四人。まさか、四つの異聞帯を潰して、此処へ来るとは」

 

 

久々に俺の腹部に緊張という痛みが奔るが、気合で何とか誤魔化しきる。

 

ついに、ついに来やがったか。どうせならこんな小さな異聞帯なんぞ放っておいて、それこそ

キリシュタリアのクソデカいギリシャ異聞帯でも攻めてくれてたら良かったんだがな。

あの規模の異聞帯だ、そう易々と攻略はできまい。月単位で時間をかけてくれていれば、

きっと()()()()()()()()()()()()()()()()。ったく、間が悪いったらありゃしねぇ。

 

けど、来ちまったもんはしょうがない。

 

 

「キャスター、アイツら全員に戻るよう伝えてくれ」

 

「いいのかい? まだアメリカは落ちていないけれど」

 

「一か月も攻め続けて落ちなかったんだから、ここで粘っても意味無いだろ。

 それに、何となくだがカラクリは読めた。あのバーサーカーの異常な耐久性のな」

 

「分かった。ああ、そうだ。イギリスに向かったフォーリナーは?」

 

「アイツはもう戻ってる。不安だったが、流石にはぐれ英霊一体程度はやれたようだ」

 

 

拠点に残って『観測』を続けていたガリレオに、この場にいないサーヴァントたちを招集する

ようにと伝えた。頷いた彼はすぐさま、通信機を使って各自に呼びかけ始める。

 

しっかし、おかしなことになったもんだ。

 

日本異聞帯の女王である【卑弥呼】に嘆願して、この土地の端々にまで伸びた霊脈に手を加え、

そこから日本にまつわる存在が出てこないようにした。カルデアや汎人類史の断末魔とやらが

これ以上日本で力をつけないようにと思っての策だったが、なんでこうなったのかね。

 

 

「まさか、日本以外の英霊が急に召喚され始めるとは……何だってんだ」

 

 

霊脈に手を加え、異聞帯の王に【空想樹】を押し付けてから今日までの、約一か月間。

日本中のそこかしこから、いきなりマスター不在の英霊たちが連鎖的に召喚され出したのだ。

いや本当に驚いたぞ。ガリレオからの報告が上がるたびに腹痛と頭痛に悩まされたわ。

 

 

「これも、汎人類史の断末魔ってのの影響かね? それとも他に何か原因があんのか?」

 

「……私の『観測』は万能ではない。けれど、無能でもないはずなんだがね」

 

「お前の目を疑ってるわけじゃねぇさ。にしても、結構ジリ貧になりつつあるな」

 

「この一月で倒した汎人類史の英霊は、()()。それぞれが合流する前に討伐できたことを

 素直に喜んでいいと思う。まぁ、今後も召喚されないとは限らないが。どうする?」

 

「どうするったって………うぅん」

 

 

ガリレオの言わんとするところは読める。対策を講じないのか、という意味だろう。

打てる手は一つしかない。卑弥呼に頼んで、霊脈そのものを封鎖する。これで解決だ。

でもそれは出来ん。それをやっちまったら、この日本異聞帯の存在自体が揺らぎかねない。

 

だから、これからも召喚を観測次第、各個撃破。後手に回るしかないのが腹立たしいが。

 

 

「……いや。マスターの意向に従うとも。さて、全員に命令を通達したよ」

 

「助かる」

 

 

ガリレオの報告を聞き入れる。汎人類史からのカウンター召喚、どうにか止められないか。

霊脈の封鎖は出来ないから、それ以外の方法……。駄目だ、カルデアがやってるようなやり方

とは違って、カウンター召喚はマスターも召喚を執り行う存在もない。あくまで意志だけだ。

直接的な妨害が出来ない以上、止める手立ては無い。やはり見つけ次第倒すしかないか。

 

 

イギリスに現れたのは、【神秘という妄想を誰よりも理解した女魔術師(エレナ・ブラヴァツキー)】というキャスター。

 

イタリアに現れたのは、【果てなき夢が叶うまで諦めず前進する大罪人(クリストファー・コロンブス)】というライダー。

 

フランスに現れたのは、【死者よりも死を賛美し、死を昇華した処刑人(シャルル=アンリ・サンソン)】というアサシン。

 

ギリシャに現れたのは、【あらゆる逆境苦難を撥ね退ける炎門の守護者(キング・オブ・スパルタ レオニダス)】というランサー。

 

 

いずれも強敵だった。アメリカと開いていた戦端を縮小して、ようやく一騎を倒せるレベル。

幸運だったのは、アメリカで反乱を起こした民衆と、戦う必要がなかったことだと思う。

こちらが狙うべきは、反乱を主導する自称皇帝の【ジョシュア・ノートン】ただ一人。

それを毎度毎度阻んでくる、謎の中華のアーチャーに手こずらなきゃ、すぐ落ちたものを。

 

んで、一番厄介だった奴がいたっけ。アレの存在にいち早く気づけたことも幸運だった。

 

 

セイバーやランサーと同じタイミングで召喚されながら、今まで身を潜めていた日本の英霊。

 

 

後で調べて分かったソイツの名は、【宇喜多 直家】というらしい。

ガリレオの『観測』によれば、クラスはアサシンだとか。本当に始末できて良かったよ。

 

コイツは召喚されだした英霊たちを密かにまとめあげ、一か所に合流させようと画策していた

ようで、あと三日発見が遅れていたら俺たちにとって最大の脅威となっていたに違いない。

聞いてみればこのアサシン、センゴク時代で稀代の策謀家だったとか。危なかったぜホント。

 

これからもこんなのが立て続けに召喚されるのかと思うと、気が気じゃない。

気が滅入りそうになる。が、諦めん。もうすぐ俺の目的が達成されるってんだからな。

やり遂げてやる。目的が果たされたその時、俺の考えが正しかったと星が証明してくれる。

 

 

「………やるしか、ないよな」

 

 

大きな深呼吸を一つ。意識を切り替え、目の前の問題をどうにかすることに集中する。

 

 

「マスター。それで、カルデアはどうするんだい?」

 

「放置でいい。アイツらの目的は空想樹の伐採による異聞帯攻略だからな。放っておいても

 勝手に向こうからやってくる。それより、現地の反乱に加入される方が厄介だと思う」

 

「先んじて反乱分子を潰しておくのが良い、と?」

 

「セイバーはこの案で問題ないと言ってたぞ」

 

「なら、彼らを集結させたのは、カルデアとの合流前にアメリカを落とすためか」

 

 

ガリレオからの問いかけに、俺は冷静に答えた。実際、この考えは筋が通っていて穴もない。

今のところ他に『観測』された汎人類史の英霊もいないようだし、ここで決着をつける。

 

 

「ライダー、ランサー、フォーリナー…………この三騎で、総力戦だ」

 

 

―――俺たちにとってカルデアは、「敵ではない」のだから。

 

 

 

 

 

 









いかがだったでしょうか?


謎が謎を呼ぶ異聞帯!
これから先の展開、どうなってしまうのか!

次回もお楽しみに!


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