Lostbelt No.8 「極東融合衆国 日本」   作:萃夢想天

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どうも皆様、実地研修を一週間耐え抜いた萃夢想天です。

月曜日からとうとう新しい職場での労働が始まります。
今度のところは人間関係が良好だといいなぁ……。
そういうことなので、これから更新頻度がガタ落ちします。

それでも時間に余裕を見つけては投稿をしますので、
亀更新になってもお付き合いいただけると嬉しいです。

それでは、どうぞ!







第六章二節 根は下り、芽は陽を浴びる #2

 

 

 

 

 

 

 

「殿! 何故に某らを呼び戻した⁉ あのまま戦っておれば首級を挙げておったのに‼」

 

 

会議室に戻ってくるや否や、ランサーが掴み掛らん勢いで怒鳴り散らしてくる。

 

時刻は既に夜を過ぎ朝を迎えていた。総力戦を想定していた米帝国戦だったが、予想外に到着の

早かったカルデアの戦線介入を恐れ、出向いていたランサーたちに撤退を命じたのだ。

 

その指示にさぞご立腹なのだろう。こめかみに青筋が浮き上がってるしな。

戦う対象に対して無茶な注文を付けたって自覚はあるが、意図を汲み取ってもらいたい。

こっちが一方的に攻め立てるってのは、良くない。そういう問題なんだこういうのは。

 

 

「マスター、吾輩からの忠告だ。『昨日の敵は今日の友』という言葉があるそうだが、吾輩から

 してみれば、『昨日の同胞は今日の敵』に成り得るものである。留意されよ」

 

「………現在進行形で、向こうさんにとっちゃ俺は敵にしかならんだろう」

 

「では!」

 

「でも、俺にとっては敵じゃねぇ。カルデアを敵性対象とは認識していない」

 

 

これはカルデアを舐めているとか、侮っているとかって意味じゃない。

争う理由がない。戦う意味がない。そういう意味での「敵ではない」ってことだ。

自分が甘いこと言ってるってのは何となく分かってるよ。戦いたくないだけじゃないかって。

 

けど、本当に戦う理由は何もないんだ。

俺の目的を達成するのに、カルデアは脅威になるし邪魔になる。それは間違いない。

でも殺す必要も倒す必要もない。追い出せばいい。この異聞帯から外へと。

 

……これも言い訳かね。

 

 

「とにかく。カルデアに対する攻撃は可能な限り避けてくれ。かなり無茶な命令してるのは

 分かってる。それでも、頼むよ。人類史に名を刻んだお前らなら、簡単なことだろ?」

 

 

この考えを改めるつもりはない。少なくとも、マシュと藤丸立香と話し合うまでは。

要は筋道の問題であり、俺自身の納得を優先させただけだ。完全なる自己都合と言える。

勝手な言い分に付き合わせて悪いとも思ったが、それでも彼女らの言葉を受け止めねば。

 

唐突に課せられた人理修復。壮絶な旅。きっと何度も辛い思いをしてきたはずなんだ。

人類最後のマスターなんて重荷を、魔術の世界すら知らなかった一般人の未成年の双肩に

背負わせた挙句、なかったことにして「はいさようなら」なんて、あんまりじゃねえか。

 

それに、俺は知っている。マシュという少女が、本来長く生きられない存在だったと。

 

カルデアにいた頃、彼女の主治医をしていた医療部門のトップの男から聞いていた。

マシュは20歳まで生きることの出来ない体に造られて生まれてきた、人造人間(デザイナーベビー)である。

そのうえ、アニムスフィアが極秘裏に行っていた人体実験の影響で、普通の人間や魔術師

以上に体へ負担がかかっているのだと。その日は何もかもに怒りをぶつけたっけ。

オルガマリーにもキツくあたって泣かせちまって、次の日ひたすら頭下げたんだよな。

 

 

「…………………」

 

 

つまり、本来であれば人理修復が完了するかしないかという瀬戸際で、マシュは死ぬ。

そうならないのがおかしいという状態だったのに、何故か彼女は今でも生きている。

奇跡でも起きたのか。それは知らん。しかし、彼女が今日まで獲得してきた思いの全てを、

彼女の抱いた感情の全てを、その主張を、俺たち「課してしまった者」は受け止めねば。

 

 

「そういうわけだ。なに、計画の第二段階に移りさえすれば、向こうも逃げざるを得ない。

 セイバー、まもなく準備は整うんだったな?」

 

「然り。政府高官、役人たちに急がせもうした。数日中には、無事建造が叶うかと」

 

「数日、か。まぁいいだろ。ってことで、それだけの間でいいから」

 

 

最近は内政の方へ重用させてもらってるセイバーから、計画の移行状況についての進行具合を

聞き出す。どうやら第二段階へ移るには、数日待たねばならんようだが、数日なら許容範囲よ。

未だ納得のいかない顔で俺を睨むランサーたち。どう説得したものかと頭を捻るしかない俺。

 

そんな俺たちを一歩引いた距離から見つめていたキャスターが、ぽつりと言葉をこぼす。

 

 

「………待つのではなく、自分から対話に向かえばいいのではないかな…?」

 

 

―――――あっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、ついに来たか! 我が帝国の誇る陸軍支援部隊よ! 待ちかねたぞ!」

 

 

会話するお地蔵様こと道祖の『神の通り道』を使って、いなくなったカリギュラと合流した

私たちカルデアは、そこで出会ったキャサリンという少女の母親を尋ねようとしていた。

しかし、異聞帯の日本を囲う『壁』の中へ踏み込んでみれば、中国異聞帯にいきなり現れた

二騎のサーヴァントと他のサーヴァントが交戦しているとノーチラスから通信が入った。

 

私はマシュとジル・ド・レェ、そして合流したカリギュラに、その場に大勢いた市民と思しき

人たちを守るよう指示。そこで、市民を庇い立つ謎のサーヴァントに遭遇。彼に力を貸して、

とりあえず市民を戦闘に巻き込まないよう努めた。やがて二騎は撤退し、今に至る。

 

さて、どうしたものか。

 

 

「えっと、私たちは帝国……? の、陸軍でもなんでもないのですが…」

 

「朕の招集により馳せ参じた諸君らに褒美を取らせたいが、生憎帝国は財政難でな。許せよ」

 

「あ、あの……?」

 

「だが雌伏の時もここまで! 帝国陸軍がここに集った今、国家を不当に統治せしめる逆賊を

 誅罰することが叶うのだ! 我が帝国国旗が勝利にはためく日は近い! 褒めて遣わすぞ!」

 

 

マシュがおそるおそる訂正を試みるも相手にされず、それどころか会話の成立すら怪しい。

このパターンは覚えがある……はっは~ん、さてはバーサーカーだなオメー(マスター歴2年)

言葉は通じても会話が通じていないこの感じは、すごく覚えがある。主に苦労の記憶として。

 

真面目なマシュでは埒が明かないとみて、通信越しにホームズが対話を持ち掛ける。

 

 

『失礼ながら皇帝陛下。我々の話を聞いていただけますでしょうか?』

 

「む? なんだ、遠方からの通信か? 流石は我が帝国陸軍、装備も充実しているようだ!

 よいぞ、許そう。朕に申してみるがよい。陸軍の予算を増やすことも検討してやろう」

 

『ありがとうございます。では陛下、まずは御身の身元を明かしていただけますか?

 援軍として参じながら、相手が皇帝を騙る不届き者であっては始末が悪い』

 

「朕を愚弄するか⁉」

 

『偏に御身を案じてこそ。愚かな申し出をお許しください、陛下』

 

 

するすると紡がれる言葉に、口を閉ざしてしまう。流石は探偵、口八丁とはこの事か。

 

それにしても、この人がキャシーの言っていた「こーてーおじさん」なのかな?

確かに見た目はおじさんって感じだけど、こーてー……皇帝って感じはしないんだよね。

 

茶系のちょび髭を蓄え、紺色の古びた軍服をまとい、何故か手には日本の番傘……番傘?

ここは日本だし、もしや日本の偉い人とか? 目の色とか髪の色は日本人離れしてるけど、

金時とか玉藻の前とかの前例もあるし、その辺は判断材料にはならない。

 

となると、日本の皇帝ってことか。日本の皇帝って、それ天皇ってことじゃないの⁉

 

 

「先輩。あの方は、いったいどなたなのでしょう?」

 

「日本の皇帝ってことは、天皇なんじゃない、かな?」

 

 

ホームズの説得が続く中、私とマシュは小声で小太りの推定バーサーカーさんの正体を

推測してみる。まぁ私は歴史学に明るくないから、具体的に誰かまでは分からないけど。

 

そうしているうちにホームズの交渉が成功したようで、謎のサーヴァントはそれに応じた。

 

 

「朕こそは、栄えあるアメリカ帝国の唯一皇帝! 【ジョシュア・ノートン一世】である!」

 

 

自らを皇帝と豪語する男は、しかし私の知る他の皇帝や王の持つ威厳や覇気を感じさせない。

なのに、何故だろうか。彼という皇帝に従う臣下になってもいい、と思ってしまうのは。

 

どこか気の抜けたような印象を抱かせるジョシュアさんを見ていると、通信が入る。

 

 

『アメリカ帝国だと? なにをふざけたことを言っとるんだソイツは。アメリカは合衆国、

 つまり多くの国家が連なる集合体だ。建国以来、帝政になったことなど一度も無いわ!』

 

「え? そうなんですか?」

 

『ゴルドルフ君はなんだかんだ真面目だからね~。彼の事を知らないのも無理ないか』

 

「ダヴィンチちゃんは知っているんですか?」

 

『もっちろん! けど、だからこそ驚いてもいる。まさか彼が英霊になるなんてね』

 

 

ゴルドルフ新所長の言葉は、目の前にいる皇帝を否定するもの。しかし、そばで聞いていた

ダヴィンチちゃんは彼の存在を知っているらしい。彼女が驚くほどの人物のようだけど。

 

 

『ジョシュア・ノートン。それは、自分をアメリカ帝国皇帝だと最期まで信じ抜いた男さ。

 当然だけど、アメリカは一度も帝国になってなってないし、皇帝がいたこともない。

 完全な民主制の国だもの。けれど、彼という皇帝は()()()()()()()()()()()()()()

 

「ど、どういうこと?」

 

『立香ちゃんに分かるように言えば、自分を皇帝だと思い込んでいる商人のおじさん、だよ。

 色々突っ込みたいのは分かるけど、まぁ時間もないし掻い摘んで要点だけ解説しよう!』

 

 

そこから、ダヴィンチちゃんによる【ジョシュア・ノートン一世】について講義が始まった。

 

彼はもともと良家の商人だったが、一度の失敗から資産も家族も何もかもを奪われ、失う。

やがて精神崩壊寸前まで追い詰められた彼は、何故か自分を「アメリカ帝国の皇帝」であると

宣言したという。これが、存在しないはずのアメリカ帝国と、そこを収める皇帝の誕生だ。

 

当然、彼に地位も権力もない。当時のアメリカ議会に宛てた命令なんかも尽く無視されて、

日々の生活すらも貧しいもの。およそ皇帝と呼べる生き方ではなかったとされていたそうな。

しかし、彼のいた町の新聞社や町の人々は、彼の存在を「面白い人」として受け入れていった。

 

彼は皇帝として、様々な勅令を下した。その殆んどは受領されなかったものの、市井の人々が

平和に明るく暮らすための配慮に満ちた命令ばかりで、それが町の人々に好意的に映って、

町全体が彼を「私たちの皇帝ノートン一世」として、大々的に担ぎ上げだしたという。

 

常に誰かを慮り、人々を思いやる皇帝。そんな彼の最期は、病死だった。

本来ただの一市民であるはずの彼の死を、町の人々のみならず彼を知る全ての人が惜しんだ。

寄付金は瞬く間に集められ、国葬に匹敵するほど豪勢な告別式が執り行われることとなる。

彼の葬儀に駆けつけた人々の行列は、三万マイルにも及んだと公的な記録が存在する。

 

 

『彼について、こんな言葉が残されている。当時の新聞社が彼の死を悼む号外を書いてね。

 曰く「彼は誰も殺さず、誰からも奪わず、誰も追放しなかった。彼と同じ称号を持つ人物で、

 この点で彼に立ち勝る者は一人もいない」と記されるほど、彼は人々に愛されたんだよ』

 

『まるで慈愛の化身のようではないか………』

 

「さながら聖人のような方なのですね!」

 

「そんな凄い人だったなんて知らなかった…」

 

『彼は本当の皇帝でもないし、歴史的な快挙を成したわけでもないから、今の学校教育じゃ

 教えたりしないんじゃない? クリスマスに街路樹をライトアップするっていうアレ、

 考えたのはノートン皇帝だったらしいよ。町の明るさが犯罪発生率低下に繋がるとかで』

 

 

ダヴィンチちゃんの即席英霊講座を終えた今では、目の前にいる彼の印象が変わっていた。

皇帝ノートン、まさに人々を導き救おうとした英雄そのもの。英霊になるのも頷ける。

 

私たちが皇帝についての知識を深めた頃合いになって、()()()()が会話に参加してきた。

 

 

「……それは妖術か呪術の類か? おかしなものだ、透けた小人が見える」

 

 

そこにいたのは、二騎のサーヴァントを相手に何もせず立つだけの皇帝ノートンや背後の

市民たちを一人で守り抜いていた、凄腕の女性だった。顔立ちはアジア系だろうか。

 

身長は私よりも高く、すらっとしたスレンダー美人。白いチャイナ服みたいなのがセクシーだ。

いやセクシーかどうかはどうでもいい。鋭い眼光や物言いといい、挙動からビシバシと気迫が

伝わってくる感じがする。雰囲気的にはケルトの女傑にして影の国の女王【スカサハ】師匠に

近いだろうか。女軍人って言葉がピッタリくるようなその人は、こちらを睨みつけている。

 

 

「先はこの者らを救わんとした働き、見事であった。陳謝しよう。しかし、それはそれだ。

 まずは何者かを聞かせてもらおう。まだ敵でないという証拠はないのだからな」

 

『ひぃ……そこの女性の眼、何故か酷い既視感(デジャヴ)を感じるのだが……』

 

 

キッと音が聞こえそうな視線が私たちを射貫く。新所長、幼少時代を思い出して震えてるな?

きっとムジーク家謹製のホムンクルス教育でしごかれた当時を、思い出しているんだろう。

 

 

「私たちはカルデア。この異ぶ……日本の外、汎人類史を取り戻しに来た者です!」

 

「……汎人類史、だと」

 

 

そんな所長はほっといて、私はその女の人に来歴を明かす。けど、キャシーや他の人たちが

いる前では異聞帯の事は言えなかった。これからカリギュラが話すのだとしても、私では

うまく話せる自信がなかったから。内心の葛藤も知らない女の人の目が、急に見開かれた。

 

 

「お前たちが汎人類史の使者なのか?」

 

『使者かどうかはともかく。私たちは汎人類史から此処へやって来た。そこは間違いない』

 

「………あの喚び声の通りだな」

 

『喚び声?』

 

「いや。よい、小生(わたし)はお前たちを、そして先の無辜の民を守らんとしたお前たちの戦いぶりを

 信じよう。生前も主君に仕えた身だ、英霊になっても変わらん。カルデア、共に参ろう」

 

 

何やら私たち、というより汎人類史に対して反応を示した女性は、まとわせていた剣呑な

雰囲気を掻き消して、手を差し出してくれた。鋭い瞳は穏やかで優し気な丸みを帯びる。

 

私は彼女の手を取り、そのまま簡易的な仮契約を彼女との間に結んだ。

シャドウ・ボーダーの電力が変換された魔力が、パスを通じて彼女へ流れるのを感じる。

右手に宿るカルデアの令呪に赤い輝きが灯ったのを確認して、改めて向き直った。

 

 

「仮とはいえ、契りを交わした者には、臣下としての礼を尽くさねばなるまいな。

 では。今この時より我が身、我が技、我が力、そして我が忠を主人たる其方へ捧げん」

 

「…………うん。ありがとう」

 

「そして、我が命と共に我が真名()を預けまする。我がクラスはアーチャー。真名を

(せつ) 仁貴(じんき)】と申す。天に仕えし四聖獣が一角、玄武を司りし将にございますれば」

 

 

瞳を閉じ、右手の拳を左の掌で包むような拝礼をする女性、薛仁貴は名を明かす。

 

異聞帯へ足を踏み入れる度に、その世界では私たちの味方をしてくれる英霊がいるのかすら

分からないから、実を言うとすごく不安な気持ちだった。カルデアの召喚に応じてくれた

ジル・ド・レェやカリギュラのおかげで不安は薄れたけど、こうして力を貸してくれる味方が

いてくれるというのは、本当に嬉しい。こうした一期一会の繋がりを、私は大切にするんだ。

 

薛仁貴は私にサーヴァントとして仕えると表明すると、背後にいたノートンを見やる。

 

 

「我が新たなる主君、マスターよ。どうかこの気狂いも助けてはもらえないだろうか」

 

「勿論そのつもりだけど、どうして?」

 

「かたじけない。この男、気が触れているのか元よりこうなのか。おかげで話すらまともに

 通じる気配がなく。しかし民らを案じ、このおかしな国へ反旗を翻さんとする行いだけは

 頑なに成そうとする。短くない日々を共にした間柄故、今更見放すことも憚られる……」

 

「そっか。アーチャーは優しいんだね」

 

 

アーチャーから、ノートンに力を貸してほしいと頼まれた。私たちはそもそもキャシーの

母親たちを呼び集めていた人物、つまりノートンに会うのが目的だったわけで。

目的も果たせたし、彼がはぐれ英霊であることも分かった。なら、こちらとしても力を合わせる

ことを拒否なんてするはずもなく。願ったり叶ったりだ。彼がそれを拒まなければ、だけど。

 

 

『しかし、あの薛仁貴が女性とはね~。この手の展開にも流石に慣れてきちゃったよ』

 

「……そりゃレオナルド・ダ・ヴィンチがモナ・リザになってるくらいだし」

 

『てへ☆ ま、歴史への反論はこの際おいておこう。まずは皇帝陛下に伺おうか』

 

「うん」

 

 

自分を女児化ボディを「万が一」に備えて作り出すとかいう万能の天才(へんたい)がいるくらいだしね。

ダヴィンチちゃんのことはさておき、薛仁貴の要求を果たすとしよう。こうなったらいっそ、

ノートンとも仮契約を結べないだろうか。ジル・ド・レェとカリギュラの分を含めてもまだ、

還元魔力に余裕はあったはず。よし、そうと決まれば早速勧誘だ。

 

まだ独り言を呟いているノートン皇帝に近付き、私はいつものように落ち着いて話しかける。

 

 

「あの、ノートン皇帝陛下!」

 

「陸軍よ、空を撃て! 今まさに飛び立たんとするあの―――ん? どうした、少女よ」

 

 

狂っている、という情報通りというべきか。バーサーカーのような言動の彼に提案する。

 

 

「もしよかったら、私と契約を結んでもらえますか? 仮契約ですけど……」

 

「ふむ。契約か。なるほど、朕が所有する帝国陸軍といえど、そこには公的契約が必須か!

 見落としていたな、許せよ少女。皇帝ノートンの名の下に、契約の締結を認めよう!」

 

 

なにやら誤解、というか独自解釈をしているようだけど、彼なりに納得してくれたようだ。

 

私が差し出した右手を、使い古されて色落ちした手袋越しで握られる。契約は成立した。

パスから魔力の流れを知覚し、それを受けたことでノートンの状態もマスターである私の

眼に表示されるようになった。さっき契約した薛仁貴のステータスも閲覧出来ている。

 

 

 

 

 

 

サーヴァント・クラス『バーサーカー』

 

真名・【ジョシュア・ノートン一世】

 

属性 : 混沌・善

 

各能力値・パラメーター

 

「筋力 : E」 「耐久 : C+」 「敏捷 : E」 「魔力 : E」 「幸運 : C」 「宝具 : EX」

 

 

保有スキル

 

『皇帝特権(偽) : EX』 『清貧勅令 : A+++』 

 

『貧者の見識(狂) : B』 『狂化 : EX』 『第二位階聖者 : C』 

 

 

宝具

 

【??? : EX】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーヴァント・クラス『アーチャー』

 

真名・【薛 仁貴】

 

属性 : 秩序・悪

 

各能力値・パラメーター

 

「筋力 : C」 「耐久 : B」 「敏捷 : A」 「魔力 : D」 「幸運 : B」 「宝具 : B」

 

 

保有スキル

 

『単独行動 : A』 『白衣の奇功 : B』 

 

『玄武の忠臣 : B』 『一矢五甲貫 : C』

 

 

宝具

 

【??? : B】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の目に映るサーヴァントたちの情報は、どちらも目を見張るものだった。

 

ノートン皇帝はやはりバーサーカーだったが、こちらのカリギュラがバーサーカーしてない分、

差し引きゼロと考えていいと思う。主に私の負担的な。バーサーカー(に近いキャスター含め)

三人は流石に対処しきれないからね。カリギュラが理性を取り戻していることがありがたい。

 

彼らの宝具についての情報がないことを尋ねると、それは封印していたからだという。

ノートンの宝具はともかく、薛仁貴は何度も異聞帯側のサーヴァントと戦闘をしたらしく、

正体を読み解かれる原因となり得る宝具を自ら封印したのだそうな。それでも相手が強く、

スキルを上手く使って宝具級の攻撃をして難を逃れたことも、一度や二度じゃないとのこと。

 

 

「でも、二人も仲間になってくれたのは嬉しいよ。本当に」

 

「はい。お二方は、とても心強い味方です!」

 

「そう言っていただけると小生としても救われる。既に過ちを犯した身としては……」

 

 

薛仁貴は口調こそ固いままけど、こちらを信用して契約をしてくれたし、スキルを見ても

平均的なアーチャーとして見劣りしていない。まだ未知の多い日本異聞帯を攻略する上で、

間違いなく大きな助けになってくれるだろう。それはノートン皇帝も同じだ。

 

新たな仲間を迎え入れたことだし、キャシーも母親と再会できたようで一先ず安心した。

当初の目的のうち、半分は達成できたわけだし、残りの半分も速やかに実行しなきゃ。

そう、異聞帯に生きる人々に、私たち汎人類史との生存競争を伝える。苦しい話を。

 

ただ、これは私じゃなくカリギュラが果たしてくれる。そういう手筈になっている。

いつもなら絶対任せられないけど、今回は大丈夫。何故なら、理性が戻っているからね!

 

バーサーカーは理性を犠牲に力を得るクラス。そんな彼が理性を取り戻せばどうなるか。

口調、佇まい、それらから感じる名君の風格。かのローマ皇帝に任せれば大丈夫。

 

 

「それじゃ、バーサーカー。いや、もう二人いるんだっけ。ならもう真名でもいっか」

 

「そうですね。同じクラスの方がいらっしゃる現状では、仕方がないかと」

 

「だね。それじゃあ、カリギュラ! 異聞帯の人たちに話を……カリギュラ?」

 

 

話し合いを進めてもらうべく振り返ると、両手をわなわなと振るわせるカリギュラの姿が。

威風堂々たるローマの皇帝を体現していた彼にあるまじき様子だが、どうしてか今の彼に

見覚えがあるように思えてならない。そう、あれはまるで、抑えていた何かが溢れるような。

 

手先の痙攣が肩を震わせるほどのものに変わっていき、様子の変化は顕著に表れた。

 

 

「ネロオオォオオオオォオオ‼‼」

 

 

否、顕著に表れ過ぎていた。

 

 

「―――なんで?」

 

 

理性なき皇帝の咆哮が轟くなか、私の疑問に答えてくれる人は、やはりいなかった。

 

 

 

 

 

 

 









いかがだったでしょうか?


もう少し先に延ばそうかとも考えましたが、
後半の勢いも考えて此処で真名を一気に二人も御開帳!
さらにスキルも大公開! 宝具はもう少し待っててね!


それでは次回をお楽しみに!


ご意見ご感想、並びに質問や批評などお気軽にどうぞ!


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