Lostbelt No.8 「極東融合衆国 日本」   作:萃夢想天

6 / 49
どうも皆様、水着サーヴァントと二年越しのマーリンPUという
地獄のガチャ期間をいかがお過ごしでしょうか?

私はもうPU2の沖田・メルト・兎王しか希望がありません。
水着武蔵? ペルソナカーミラ? PUBG刑部? 知らない子ですね(白目)


どうか皆様のカルデアに水着鯖とグランドろくでなしの祝福があらん事を。


さて今回は、日本異聞帯の首相たちとの会談後からスタートします。
独自の思想論が盛り込まれているので、気を悪くされたらすみません。
早いところ他のクリプターとの過去話とか書きたいんや……でもこれからまた
しばらく忙しくなりますので、更新頻度が少々落ちますがご容赦ください。


それでは、どうぞ!





第一章四節 根を落としたんだけど、水やり必要無いの?

 

どうも、緊張による腹痛を魔術でどうにか出来ないかと本気で考えるゼベル・アレイスターです。

 

クリプター会議に引き続き、ようやく異聞帯の国会を乗り切ることができて一安心してる最中だ。

魔術師としても凡夫だった俺には上流階級とのお付き合いなんてほぼ無かったし、重要な魔術の

秘伝の継承とかも無かったから、緊張する場面とかに滅法弱いんだろうね。そう自己判断する。

 

気が小さいってのも間違っちゃいないがな。自分で認めるのは癪なので否定したい部分でもある。

 

そんなわけで自分のやるべき事をやりきった今の俺は、実に清々しい気分を味わってるわけよ。

苦しみの後の解放感といったら、この世のあらゆる法悦に勝るとも劣らんと思う訳であって。

だいたいつい三か月前まで魔術師兼雇われ世界救済御一行だった俺が、いきなり滅んだ可能性線

世界を運営しろって、いくらなんでも無茶が過ぎるわ。報酬は復活の前払い? そーでしたね。

 

クリプターとして世界を作り直せっていう使命感は、申し訳ないけど強くないどころか薄い。

ただ、義務としてやるつもりが無いだけであって、やる気そのものはしっかりある。ここ大事。

世界を救うはずだったチームの一員だからやるんじゃなく、俺が俺だからって個人的な理由さ。

 

これはヒナコ以外のクリプターには言ってないが、そもそも俺は人間という(・・・・・)種自体が嫌いだ(・・・・・・・)

 

前々からずっと思っていた。地球上に数万を超える種の生命が生存を許されている中で、どうして

人間という種族だけが星の全域で繁栄したのか。いや、繁栄を許されてしまったのだろうか、と。

 

進化の過程で、生物は様々な道筋を経て多様化していった。空に、陸に、海に。地球という星の

環境下において、全ての生命は独自の系統樹を発展させていき、それは今もなお途絶えていない。

しかし、人間という種族だけは、この生命の系統樹において例外だ。人は、種の進化を放棄した(・・・・・・・・・)

 

ジャイアントパンダ、という種がいる。動物園で人気の白黒ツートンカラーのもふもふ熊さんは、

飼育下という条件では、笹を食べる草食動物となる。一般的なイメージはほとんど草食だろう。

だが、野生の環境ではジャイアントパンダは雑食性なのだ。笹を齧る時もあれば、鳩を噛み千切り

捕食する事もある。何が言いたいか? 要するにこの種族は、まだ進化の過程にあるという事さ。

肉食から雑食へ、雑食から草食へとな。そして、食性が変われば当然、肉体の構造も変わる。

 

全ての生命は、適応するという能力を生まれながらに持っているわけだ。当然、人間も。

けれど人間は、この能力に従う事をいつからか止めた。進化し続ける生命の義務を、放棄した。

 

考えてみてほしい。人間は太古の昔、他の生物に勝つ為に、敢えて爪と牙という最大の攻撃手段を

自ら捨てて、代わりに知恵を磨いた。物を投げ付ける、投擲という肉体の動作を武器に昇華させ、

爪を失った代わりに指の使い方を工夫し始め、道具の製作を始めた。これが人類種の転換点だ。

 

人は、人という種族自体の進化を、この時点で諦めた。生み出したものの発展を代替えとして。

 

自然界において、「生存し、種を残す為に能力を進化させた」という本能こそが自然体である。

サバンナのガゼルやインパラに生えている角は、襲い来る肉食獣を狩る為の武器などではなく、

逃げて生き延びる為の時間稼ぎとしての迎撃用であり、同時に異性の気を惹く役割を兼ねる。

生存する為に角を振り回し、結果的にそれが突き刺さり敵を殺してしまうケースも少なくない。

しかし、明確な殺意によるものではないのだ。そう、決して、「敵を殺して生存する」といった

害意に満ちた指向性での進化は、自然界においては有り得ないし、有り得てはいけないのである。

 

なに? 猛毒を持った生物は、だと? その発想が間違いだってんだ。順序が逆なのさ(・・・・・・・)

 

一番説明が楽なのは、フグだな。魚のフグだ。アレは内臓の一部に猛烈な致死性の毒を持ってる。

けれどフグという種族は、体内で生成される猛毒を、攻撃に使わない。これが何故か分かるか?

答えは、「攻撃の為に身に着けた能力じゃない」からだ。あれはそもそも、自衛の為のもんだ。

他の生命に対する警告を兼ねた自己防衛強化の為の猛毒。それがフグ毒の正体であるとする学説が

幾つも存在している。実際、大型の魚類のほとんどは、どれだけ空腹でもフグだけは口にしない。

 

そんで、毒を持つ生命の内、毒を自らの意志で扱う種族は、進化によって生き方に変革が起きた

証拠だ。元々食われない為に溜め込んだ毒が、実は狩りにも使えるんだとどこかのタイミングで

気付いたんだろう。そうした一部の変革の種が生き残り、世代を超え、やがて遺伝子に「正常」と

認められた事で進化が完了したってわけさ。毒を溜めるより、使った方が生存確率が上がるんだと

遺伝子が認めた証拠が、今の進化の結果だ。ハチ然り、タコ然り。外敵が多い奴ほど、そうなる。

 

 

長くなったが、要は生命ってのは常に進化し続けているっていう事が言いたかったんだよ俺は。

パンダの話もそうだし、猛毒生物の話もそうだ。星に生存を許された生き物は、この瞬間でさえも

進化を止めてないんだ。種を断絶させない為にと、彼らは必死で生きて、先へ繋ごうとする。

 

でも人間はどうなんだ? 有史以来、人間の文明は発展し続けたが、人間という種は(・・・・・・・)進化したか(・・・・・)

 

肉体の構造は環境に合わせて変化したか? 骨格は変わったか? 臓器の機能は向上したか?

外敵に襲われない為の能力に特化したか? 獲物を捕らえる為の力は増強したか? 全て、否だ。

 

それどころか、人間は文明を発展させ続けるばかりで、種としては退化し始めてすらいる。

進化を放棄して発展を得た。発展によってあらゆる種の生命を凌駕し、繁栄を獲得した。

その果てに人間という種は驕り高ぶり、やがて星そのものを貪り、緩やかに破滅へ歩んでいる。

 

これが人間が繁栄した結末だというのなら、人は繁栄などする(・・・・・・・・)べきではなかった(・・・・・・・・)

 

自分たちを育んだ星すら食い物にするような害獣は、他の生命に絶滅させられて然るべきだ。

 

だから俺は、人間という種族そのものが、大嫌いだった。

 

 

つーわけで、この日本異聞帯なら汎人類史よりもマシな未来を目指せそうなので、一念発起した

俺は努力を惜しまないのでした。ヒナコほどじゃないが、俺の人間嫌いが分かってもらえたかな。

なんだろうな、ヒナコとは違うベクトルの「嫌い」なんだろうね、俺の場合。方向性の違い?

アイツの場合は「蚊と同列の害悪、滅ぶべし」って感じ。俺のは「うわ、ゴキブリじゃん」的な

感じの嫌悪感なんだと思ってる。いない方がいいって意味では合致してるけど、ガチさが違う。

 

さて、せっかく晴れやかな気分だったのに自分から暗くなるような話題はおーわり。やめやめ。

もっと楽しくいかなきゃな。せっかく(見た目だけは)究極の美を体現したサーヴァントと契約

出来てるんだし、おまけに互いの利害は一致してるし。役得役得。従順なのもなお良しってね。

 

本会議場を溜息と共に退室した俺は、そのままの足でサーヴァントたちと別れた別室へ向かおうと

していた。そんな時、国会議事堂の正面エントランスが何やら騒々しい事に気付き、近付いた。

 

 

「おーい、どうかしたのかー?」

 

「こ、これは、アレイスター特別顧問! ちょうど良かった!」

 

 

シャンデリアやらカーペットやらで豪奢にして荘厳な空間であるはずのエントランスでは、

サングラスに黒服でかためた「SPっぽさドバドバ」な人でごった返しているのが見える。

近くにいた黒服に声をかけると、慌てた様子で、しかも俺と分かると安心した表情を浮かべた。

 

 

「首相が本会議場に向かわれてすぐ、こちらの方が『くりぷたあとやらに合わせろ』と言って

議事堂内へ入ってきてしまいまして………侵入者用の警報を鳴らそうかとも考えたのですが」

 

「仮にも侵入されてんだし、鳴らすトコでしょそこは……」

 

「で、ですが、相手は日本人(・・・・・・)ですし」

 

「__________あー、ハイハイ。そうね。君は日本人じゃないもんね、ダメだよね」

 

 

状況の説明をオロオロと語る黒服。彼のサングラスの奥の瞳が青色であると気付き、対応の

杜撰さも仕方が無いと諦める。この日本異聞帯は、あらゆる対外戦争に勝利し続けた最強の日本。

つまり、日本に根付く民こそが最上位であり、海外からの移住民はそれ以下の平民という地位が

暗黙の了解として広まっている。それがこの日本異聞帯においての常識だった。つい最近までは。

 

これ以上騒ぎが大きくなるのも面倒だし、あまり首相たち国会運営に携わる連中に嗅ぎ回られる

ような事も避けたいので、ひとまずこの場を落ち着かせなくてはならん。立場を利用するかね。

 

俺はこの三か月間、上手く立ち回る事で相応の権力を手に入れた。日本人ではない魔術師の俺でも

有能であると相手に見せつける事で価値を高め、今では政治に口出しできる「特別顧問」様だ。

日本人の大半からは白い目で見られてるが、日本人以外からは期待の星のような視線を向けられる

こともしょっちゅうある。ちょっとした有名人なわけよ、俺。そんじゃこの場は預かるとするか。

 

 

「黒服のみなさーん、そちらの方はこの特別顧問に面会をご希望みたいなんでね。お客様扱いで

頼みますわ。そんなわけなんで、お客様を応接室へお連れしてもらえる? ホラ急いで急いで」

 

「は、ハイ!」

 

 

黒服たちを急かして、さっきからこちらを貫きそうなほど鋭い視線で油断なく見つめてくる強面の

男をエントランスから強制的に動かす。あまり人の目に入れたくないから、迅速に事を運ばせる。

俺の号令に従順な黒服に連れられ、国会議事堂に現れた謎の男は、無言のまま案内についていく。

ぞろぞろと動く人だかりの背中が曲がり角で見えなくなる瞬間、別室から二人の人影が飛び出す。

 

 

「殿! ご無事か!」

 

主人(マスター)!」

 

 

鎧武者と艶美な美女、ランサーとフォーリナーだ。ライダーが飛び出してこなかったのは多分、

キャスターが止めたんだろう、よくやった。下手打って手の内を晒す愚は犯したくないからな。

アイツは気分が盛り上がると口が軽くなるタイプだから、うっかりでこちらの情報を漏らされる

とか、考えるだけで腹が痛くなる状況を作りそうで怖い。それを見越して室内に留まるように

したんならグッジョブだガリレオ。そのままライダーと楽しいお喋りを続けていてくれたまえ。

 

ランサーは既に戦闘状態に移行してるし、フォーリナーも戦う気満々な顔してるな。

慌ててくれてるのは嬉しいが、こんな国の政治の中枢でドンパチやられると困るのはコッチだ。

問題ない事を伝えて警戒を解くよう命じる。ランサーは槍を下げ、フォーリナーも力を抜いて

くれたようだ。それでも二人の顔色は晴れない。その視線は、応接室のある方向へ向いている。

 

 

「主人、今のは……」

 

「ああ、言われなくても分かってる」

 

 

本当に突然だったから、護衛であるランサーが出遅れるのは仕方ない。いや仕方ないじゃ困るが。

国会に出席する為に武力の非保持アピールでサーヴァントを連れて行かなかった、俺のミスだ。

入口から堂々とやってくる胆力にも驚くが、何よりあの男、俺の目でステータスが見えた(・・・・・・・・・)のだ。

 

 

「間違いなく_________________サーヴァントだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしちゃってすみませんね、どうも」

 

「いや。此方こそ、かたじけない。形が変わったとはいえ、幕府の中枢へ土足で踏み入った無礼、

お詫び申し上げる。しかし、此方にも事情がある故、何卒」

 

 

あの後、フォーリナーとランサーを伴って応接室に赴いた俺は、中で茶を点てて待っていた男と

話し合いを始めた。今でもサーヴァントのマスターである俺には、男の周囲にステータスとして

各パラメータの数値が目視できる。サーヴァントの典型例に当てはめるならば、コイツは恐らく。

 

 

「頭を上げてくれよ。最優のクラスたるセイバーのサーヴァント(・・・・・・・・・・・)に頭下げられるとは恐縮だ」

 

「……………………」

 

 

瞬間。エアコンなんて使ってないのに、室内の温度が急激に低下したような感覚に曝される。

肌を刺すような、気迫、と呼べるものなのかは分からんが、とにかく一瞬で思考がギュッと

締め付けられる錯覚に見舞われた。なんだコイツ、何をした? 睨んだだけで威圧したのか?

 

後ろを見なくても、待機させていたランサーが槍を強く握ったのが音だけで伝わってきた。

マジかコイツ。ランサーが槍をいつでも振るう事が出来る状態にさせられたほど、強いってのか。

冗談キツイぞオイ。こっちのランサーは、日本で三本の指に入る(・・・・・・・・・・)槍を持つ(・・・・)英雄だぞ。

 

緊張で腹がジクジクと痛みを訴えてくるが無視する。相手は突出した欠点や短所が見られない

パラメータを持つ、推定【剣士(セイバー)】の英霊で、まず間違いなくランサーよりも実力が上だろう。

裏を返せば、それだけの力を持った相手が話し合いの席に応じた。なら、引き込むしかねぇ。

 

声が極力震えないように努めつつ、互いが対等であると自分を誤魔化しながら話を続ける。

 

 

「………どうした、お客様。大層迫力のある御顔に皺が寄ってるようだが?」

 

 

背後からフォーリナーの感心した様な吐息が微かに聞こえた。目の前の男は鋭い視線をそのままに

視線を俺から一切ブラさずに、威厳と達観に満ちた声色で問い返してきた。

 

 

「無礼を承知で問いを反す。其方、儂が剣客の英霊せいばあ(・・・・)であると、如何様に見抜いた?」

 

 

一つ一つの言葉が、物質的な重みすら感じさせるこの存在感。いや、言葉にも人を動かす力がある

という事を分かってる感じか、この男。武力だけじゃなく、知力ですらこっちを圧倒するってか。

いよいよ笑えない冗談だぜこの状況。最悪、戦闘になった場合、今の手勢だけで勝てるって確信が

抱けない。いや、今は話し合いに応じてる。ここで答える事が、突破口になるはずだ。

 

 

「見抜いたも何も。アンタが腰に括り付けてるソイツは、ただの御飾りじゃないだろう?」

 

「ふむ。そうか、其方は儂が刀を帯びておる故、剣客であると。そう戯言をほざくのだな」

 

 

さっきの発言で確信出来たのは、コイツが間違いなくセイバーだという事だけ。それだけだ。

他には俺の目で見る事が出来るステータスや使用できるスキルについてだが、それが実際にどう

扱われるのかまでは分からない。こんな少ない情報だけで、どうやってこのセイバーをこちら側に

引っ張り込めるだろうか。ん? ちょい待ち。セイバー、アンタ今なんて言った?

 

 

「刀を持ってるからセイバーだと見抜いた、って訳じゃないが…………違うのかい?」

 

 

戯言、戯言? 俺の推察が、アイツからは戯言に聞こえた? って事は、セイバーじゃないのか?

いや、違う。今のはそういう意味じゃないはずだ。なら、どういう意図があってそう判断した?

まさか。このセイバー、俺がステータスのパラメータからセイバーだと見抜いたのを見抜いた?

 

 

「…………………………」

 

 

声にならない驚愕に対する答え合わせをするように、セイバーは無言で俺を視線で貫く。

 

あぁ、そうかい。今のは、俺を試したんじゃなく、試させたのか。無駄だと分からせる為に。

どれだけ巧妙に欺こうが、本音を隠そうが、意味が無いんだと実際に示してみせたわけか。

なるほどね。ここからは小細工無しで腹割って話せと、嘘偽り騙し欺きは効かねぇ、と。

 

そいつはありがたい。その方が気が楽だ。腹痛に悩まされるよりずっといい。

 

 

「_____________解に至ったか、くりぷたあの若造」

 

「ああ、お陰様で。腹括らせてもらったぜ、恩に着るよ」

 

 

緊張が幾分かほぐれて、上手く舌も回るようになった。さては最初からこれが狙いだったな。

精巧に作られた仮面のような強張った表情が消え、うっすらとだが笑みを浮かべるセイバーを

軽く睨みつける。コイツの場合、剣と頭、いったいどっちの切れ味の方が上なのかね。おお怖。

 

 

「ではくりぷたあよ、先の非礼の詫びとして、貴殿の問いに答えよう。貴殿が推したとおり、

儂は剣客の英霊である。この日本の歪みを正すべく、人の世の叫びが儂を此処へ呼んだのだ」

 

「……つまり、汎人類史が、白紙化された地球の意志が、アンタをこの異聞帯に召喚した?」

 

「左様」

 

 

セイバーの話に、俺が疑問に思っていた事の答えがあった。そうか、そういう事だったのか。

異聞帯とは未来を諦められて閉ざされ捨てられた、有り得ざる可能性の世界。消えて然るべき

泡沫の世界が蘇って地球全土を席巻するとなって、慌てて星の意志が介入してきたってわけか。

 

よしよし、いいぞ。このセイバーは使える。頭の冴えも武力も、その全てが一級品だ。

こちら側には武力も知力も足りてなかったからな。ガリレオも参謀としちゃ充分なんだが、

アイツにはやってもらいたい事が多過ぎて、これ以上負担をかけられない状態だったし。

 

何としてもこちらに加わってもらわなければ。改めてそう決意する俺に、セイバーが問う。

 

 

「………ふむ。ある程度は読めた。然らば貴殿、これを最後の問答とするが、構わぬな?」

 

「あ、ああ。こっちが聞きたい事は、アンタが俺を完全に認めてから。そういう事だろ?」

 

「是非も無く。良い面だ若造、では問うぞ」

 

 

最後の質問、というより品定めみたいな感じだが、これさえ乗り切れば良いようだ。

今の話の流れなら、彼に認めてもらう事さえ出来れば、こちらからの質問にはおおよそ答えて

くれるらしいし。クリプターである俺を探してたのも、野良サーヴァントでは単独での現界が

難しいので仮契約が可能な魔術師を探してたと考えれば説明がつく。ここが第二の正念場か。

 

 

「刀は人を斬る道具。刀を振るうのは人を殺める時。然らば、人を斬らぬ剣士は(・・・・・・・・)不要か(・・・)?」

 

 

セイバーの放つ最後の問いかけに、その中に隠された真意に気付こうと、必死に思考を回す。

 

カタナって、日本の剣だよな。そんで、剣を振るうのは人を殺す時。その通りだな、うん。

問題は一番最後の言葉だ。人を斬らない剣士が不必要か、と。役割を果たせるか否か、か?

いや違う。これもそういった表面的な意味合いじゃねぇな。さっきと同じ、物事の本質自体を

見極めろって言いたいのかもしれん。カタナの本質? 剣の本質? いや、剣士の本質か。

 

俺が尋ねられたのは、「役割を果たせるか」じゃなく、「役割を果たさない」という事。

 

後は、ごちゃごちゃ考える必要は無い。既にセイバーが言ったように、小細工なんて使わずに

本音で向き合って自分の言葉で、自分の価値観を示せばいい。俺の考えを、俺の言葉で伝える。

いま求められているのはそれだけだと信じ、熟考の間をおいてから胸を張って答える。

 

 

「俺は魔術師として生まれ育ったんでね。ブシドーだとかそういうのは知識として知ってるだけ

なんだよ。その本質がどうとか、それについてどう思うかとか、聞かれても分からねぇんだわ」

 

「……………………」

 

「それでも、人を斬らない剣士が不要だとは、俺は思わない」

 

 

セイバーの目がほんの僅かに揺れ動くのを、真正面から対峙する俺にはハッキリと見えた。

 

 

「……………何故、そう思い至った?」

 

「カタナは人を斬る為に作られた道具かもしれんが、それ以外の使い方が出来ない訳じゃない。

人の生活を豊かにするべく作られた物が、逆に命を奪う為に使われる事だってあったけどさ。

使い手次第だろ、結局は。そういう使い方をする奴が満足するなら、それでいいんじゃねぇか?」

 

「………………ならば貴殿は、人の血に濡れぬ剣が、戦の場にて必要になると御思いか?」

 

「俺も詳しくは知らないが、日本のサムライには『カツジンケン』とかいうスタイルがあった

みたいだぜ? 人を活かす為の剣、だとか何とか。殺さず生かす為に必要な剣も、あるんだよ」

 

「________________御見事」

 

 

自分の考えを、思いを、飾らず剥き身のままで口にした。誤魔化しでも虚飾でもない、心からの

言葉でなきゃ、セイバーには届かないし、届けられないと感じたから。思いの丈を語り尽くした。

 

テーブルをはさんだ反対側のソファに座るセイバーは、ただ一言を述べて深々と頭を下げる。

 

 

「妾の与り知らぬ下民の話ではあったけれど、見事な語り口でしたわ。流石は妾の主人」

 

「殿の御言葉、某の五臓六腑に染み渡り申した! 呷り酒よりなお熱く我が喉を焼く程に!」

 

 

後ろで立たせていたランサーとフォーリナーからも激励の言葉をかけられた。ありがとよ。

少し照れ臭さを噛みしめていると、下げていた頭を上げたセイバーが、厳粛な面持ちに変わる。

 

 

「儂の剣は、此度の人生を終えるその幕切れまで、貴殿に捧げると誓いまする」

 

「ッ! 本当か、セイバー⁉」

 

「然り。我が今生の忠義を御受け取り下され。この『不殺の剣客』の命、如何様にでも」

 

 

セイバーの固い決意を表す様な鋭い視線が、俺を射貫く。けど、今度は肌を刺す感覚は無い。

あるのは、充足感と安心感だけだ。完全に信頼を得られたわけじゃないだろうが、それでもこの

サーヴァントの面子に、セイバーが加わってくれるのは本当に助かる。素直に嬉しいぜ。

 

これで我がクリプター側には、ランサー、ライダー、キャスターに加え、セイバーが参入した。

戦闘力としても現段階でランサーを凌ぐ実力を有し、その知慧は参謀として申し分ないだろう。

盤石とまでは言い切れないが、かなり安定してきた。このままいけば、計画完遂も夢じゃない。

 

やれる。これなら、やれる。

 

この日本異聞帯と、このサーヴァント集団なら、俺とフォーリナーの計画が達成出来る!

 

やってやろうじゃねぇか。俺たちが、新たに星の歴史を作り変える、そんな大偉業を!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはそれとして、後でカドックとヒナコに謝っとかなきゃな。

 

 

 

 






いかがだったでしょうか!


ここにきて新戦力、セイバーがクリプター側に加入しました。
彼は黒服たちが躊躇したように、日本出身の英霊のようですが、果たして。


前書きにも記載しましたが、これから少々忙しくなると思われる為に更新頻度が
落ちると思われます。何とか更新は続けますが、ご理解のほど、お願いします。

ご意見ご感想、質問などお気軽にお寄せください。


PS.水着メルトの可愛さにやられた。課金必死。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。