【三次】 みほエリを見たかった俺はこの先生きのこれるのだろうか? 作:米ビーバー
今回のお話にはスピンオフ作品「リトルアーミー」及び「リトルアーミーⅡ」
に関する若干のネタを含みます。
たぶん該当作品を読む楽しみが減ることはないと思われますが、念のため該当作品を読んでおくことをお勧めします。
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風にきらめくのはプラチナブロンド。長い髪がサラサラと揺れる。
手にはそれなりに値打ちモノのティーカップ。
白磁のような肌に薄く笑みを浮かべて、表情は余裕を持って。
立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿に百合の華を連れて。
そう、その姿こそ聖グロリアーナの隊長―――
「―――そこのアナタ。わたくしの“天翔エミ”になりなさい」
「…………なんで?」
>> Otheres
「冬の親睦試合に参加する連中への諜報活動?」
「そうよ」
“コーヒーショップ”
天翔エミとアッサムが【GI6の諜報員として】秘密の会話を行う際の集合場所である。地下にはGI6の本部が存在しており、その諜報活動が聖グロリアーナ女学院の勝率に貢献していると言えばその重要度はわかるものだろう。なお表向きのお店は表通りに店を構える珈琲専門のカフェテリアである。
そんなコーヒーショップで顔を突き合わせて相談をしている二人がGI6の諜報員アッサムと、諜報員(バイト)の天翔エミである。
「色々な学園の情報を手に入れて各学園ごとの戦力差を分析、対策を打ち出して綿密に作戦を練り上げるのがグロリアーナの流儀だからね。エミには囮としての天性の才能があるわ」
「持ち上げられて悪い気はしないんですけどね……」
乗り気ではなさそうなエミではあるが、アッサムが提示する報酬を聞けば首を縦に振るだろうという確信がアッサムにはあった。
なにせ目の前の見た目幼女の姿をした少女は割と常にお金に困っている。
アッサムの見立てでは、だいたいの支出のメインになっているのは各種サプリメントとトレーニング用の器具であり、それもひと段落すれば落ち着くと踏んでいたのだが、よくわからないけれどそれなりの金額を貯蓄に回しているのだ。それもあってエミは諜報員としてまだまだバイトを続けているのである。
なので今回も少女は提示された金額に、やや悩む素振りを見せつつも結局任務を受ける方向で決着を見たのだった。
******* O to E
――月――日
アッサムに呼び出されてコーヒーショップで密談するのにも慣れてきた。
あとスパイ活動の方にも慣れてきた。以前の失敗を踏まえてヒートテック機能付きの全身ラバースーツを着込むようになり、海中に落ちても万全といういで立ちになったのだが―――全身タイツみたいなピッチリした黒のラバースーツに腰にワンポイントでスカーフみたいな腰布巻いてるスタイルで脱出する展開多すぎない?俺見つかってから力技で逃げる展開多すぎない?
――月――日
すごいことに気づいてしまった。これは発想の転換による奇跡の発見と言えよう。
“俺が諜報活動を引き受けて活動している間、ダージリンと接していなくて済む”
――月――日
諜報活動はアルバイトなのでちゃんと勤務手当がつく。その勤務手当は働いて生活費を稼ぎ、学園に通い、戦車道のためのトレーニングを行う俺にとっての生命線……ライフライン……ッ!!無理……ッ!断るとか……ッ!!
という意図を込めてダージリンに熱弁するときちんとOKが出た。実際アルバイト禁止されたら俺学費をどこから工面したらいいかも考えなきゃいけなくなってたからね。是非もないよね!(ノッブ感)
まぁそうなったらとりあえずマチルダ会なりなんなりから資金提供してもらいつつXデーまで過ごして、学費の支払いを理由に学園艦降りて野に下るんだが。正直な話目的の日で行動を起こしたとして、その結果が成功にしろ失敗にしろもう聖グロにいる必要性ないからなぁ……成功すればあとは適当に過ごしつつみほエリを眺めてればいい。失敗した場合は聖グロからさっさと逃げ出して大洗に飛び込み営業しないといけない(使命感)
――月――日
そんなわけで
やってきました―――学園艦!!
なんていう名前なのか覚えてないが聖グロと同時期に補給に寄港した学園艦に乗り込む。カバーストーリーとしては以前黒森峰に潜入したときと同じ金髪のカツラとアッサム似のメイクでアッサムの妹に成りすましていくスタイルで学園艦都市を闊歩してみる。
この依頼を受けたのはダージリンから逃げる目的もあるが―――もう一つ目的がある。
名前も朧げなこの学園艦には、原作には出てこないが重要なキャラが登場する学園がある。
―――ベルウォール女学園。
「リトルアーミー」において小学生時代のみぽりんに勇気を与え、夢を与え、目標を与えて今のみぽりんの基礎を作り上げた少女、中須賀エミが「リトルアーミーⅡ」で帰国して編入・再起を図る場所であり、大洗ルートでのみぽりんが踏襲するかもしれない世界線のひとつである。
つっても件の中須賀エミがやってくるのはみぽりんが大洗で優勝を果たした後なので、今は盛大に時期を外している。俺もみぽりんも未だ中等部なので中須賀エミもドイツから戻ってきていない。
ただしそれは「中須賀エミ」に限った話である。
ベルウォール学園にはもう一人、みぽりんと彼女と一緒にⅣ号に乗り込んだメンバーの一人、柚本瞳がいる。それを確認する必要性が俺にはあるのだ。
理由?決まってるだろう
―――大洗ルートに入る入らないにかかわらず起きるかもしれない世界線の確認だ(迫真)
もしもこの世界線が【リトルアーミー】に準拠しているなら中須賀エミとの再会がのちのイベントトリガーとしてやってくる可能性がある。その場合冬季大会―――所謂【最終章】の世界線とはルートを違えてしまうことになる。
問題はそのルート分岐が『みぽりんが黒森峰に残る場合』でも起きるのかどうか?という話だ。
リトルアーミーⅡの再会からの中須賀エミとの試合は、みぽりんが大洗で自分の戦車道を見つけたからこそ生まれるドラマである。それが黒森峰に残ったみぽりんを相手でも生まれるとしたら―――中須賀エミがまんじりと姉の影から抜け出せない黒森峰の雰囲気の中でエリカに頼りつつ生きるみぽりんを見てどう感じるかは想像もできんし、その結果何が起きるかなんて予想もつかない。が、どう控えめに考えてもろくでもない未来が待っていると思われる。
みぽりんの重荷を外してエリカとラブラブゆりゆりてぇてぇしてて欲しい。
そんな俺と世界の切なる願いが否定されるべきではない。が、ルートという運命が避けることができないものであるならば、それはどうしようもない。できることと言えば事前にそれを確認して対応策を打ち出しておくくらいのものなのだ。
これはそのための潜入捜査である。
――月――日
なんかへんなのがいた。
******* E to K
その日私は、運命と出会った―――。
私の名前は
ここ、西呉王子グローナ学園中等部のキャプテンにして、メインスポンサーでもあり―――そして、聖グロリアーナ公認ダージリンファンクラブプラチナメンバーでもある。
ダージリン様に恋焦がれ、その姿に近づきたい一心で聖グロのPJデザインをもとにグローナのPJのデザインを一新し、戦車も英国戦車を購入するために英国圏に交渉を行っている。
副官のモカにはアッサム嬢の立ち居振る舞いを教育し、よりダージリンに近づけるように努力を行っている。
そんなわたくしに、まだ足りないものがあるのです。
「―――だから、わたくしの“
「……なんで?」
不思議と嫌な顔を見せる目の前の幼女につきつけた指を戻してカップの中身をくいと傾ける。その所作にも目の前の幼女は不思議と嫌そうな顔を見せた。
“あの”天翔エミのポジションに立つことができる栄誉だというのに不思議な事ですこと……
目の前で目をぱちくりとさせてこちらを見上げている金髪の少女に声をかけたのは偶然だった。けれど振り返った彼女の姿を見て私は確信した。
―――この少女が必要だ と。
「ダージリン様をダージリン様足らしめている要素を集める必要があるのです。
なので貴女には成って頂きたいのですよ。
―――わたくしだけの『天翔エミ』に」
「お断りします」
私の提案を跳ねのける少女の、かきあげて剥き出しにされたおでこに無言でマネーカードをぺちこんと投げつける。
「一先ず手付ですわ。その金額で本日の練習試合に付き合いなさい。わたくしの采配を直で見て、そして心酔なさいな。そしてわたくしのブリュンヒルデになりなさい」
やや強引だが、お金で解決できる部分はそれなりにどうにかできる。切っ掛けがどうあれ、己の魅力で心酔させれば問題などないのだから。
******* K to E
なんでお前がここにいるんだよ(震え)
一瞬素でダージリンが俺のスケジュールを把握したうえで追っかけてきたのかと思ってしまった。そんくらいダージリンの行動力に恐怖している俺である。
そういえば「リトルアーミー」時空ならばこの女もキーマンの一人だったなぁと考えを改めてみる。
キリマンジァロ
何の酔狂かダージリンに憧れてダージリンに成りきるために私財を導入して学園内の戦車を英国産のモノにそっくり入れ替え、聖グロで使われてる茶器を揃え、聖グロのPJをパク……リスペクトしたPJに変更・発注し、さらには髪型もダージリンそっくりにしたうえ副官のモカにアッサムのコスプレを強要するある意味やべぇファンの一人である。
いやぁ初見でビビり散らかしてしまった自分が恥ずかしい件。
そういえばベルウォール学園のある学園艦は複数の学園が戦車道をやってるタイプの学園艦で、艦内予選で代表校を決めるって言う設定だっけ……?
まぁそれはそれとしてなんやねんその「私のぶりゅんひるで」ってなんやねん……(大事なことなのでry)
おかしくない?俺ただのモブ装填手よ?俺ダージリンの片腕って思われてるのおかしくない?俺どっちかというとパイセンに引きずり込まれて聖グロ戦車道の闇に片脚突っ込む羽目になっただけでダージリンには一方的に絡まれてるだけの被害者モブですよ???
そう考えたうえで自分の立ち位置を再確認した結果―――
―――やはりここ最近ダージリンが俺にベタベタ絡みまくってるのが原因だと結論が出た(おのれブリカスが!!!)
ダージリンが事あるごとに俺を傍らに置いて距離感の見えてない態度でベタベタと執拗な嫌がらせを繰り返しているのが周囲からみたらイチャラブめいた空間に見えているらしい。まことに遺憾である。
「私のブリュンヒルデになりなさい」と再度命令されてきたのを「お断りします」した結果、札束(マネーカード)でビンタされた件。このクソ成金ムーブ、いやらしい……ッ!!でも一日バイトする感覚で受けるなら悪くない……ッ!!悔しい……ッ!!
とりあえず「来年中等部に上がる予定の小学生」という説明をしたうえで、それでも結局は同じ戦車に乗るだけという約束で雇われることになった。
小学生に札束ビンタして
「お姉ちゃんについてきなさい(はぁと)」
って、よくよく考えると事案ではなかろうか?(思案)
******* E to K
―――戦車に慣れていないからだ。
―――小学生を乗せていたからだ。
―――練度が足りていないからだ。
理由を挙げればいくらでもあった。けれどそんなもの『言い訳にもなりはしない』。
油断。ただその一言に尽きる。
格下相手の練習試合。中等部に新たに購入した英国戦車たちの試乗のようなものというノリで行われたそれは―――結果として実に惨たらしい結果となった。
まだ練度の足りない防御陣が食い破られ、反転した敵部隊と挟撃された部隊が壊滅した。結果本隊が孤立し、先遣隊は反転を余儀なくされる。フラッグ戦でフラッグ本隊が孤立などいい笑い種だ。こんなみっともない姿をよりにもよってダージリン様の姿で晒してしまうなんて……よりにもよって雄姿を見せようとした相手に見せてしまうなんて……
―――なんという無様なことか。
現実は孤立無援。先遣隊が戻ってくる前に、挟撃で部隊を壊滅させた敵部隊が合流してこちらに襲い掛かってくるだろう。いかに重戦車ブラックプリンスといえど、数の前に逃げ場はないし、何より重戦車は鈍足が過ぎる。偵察車輛も居ない状況ではどこから襲ってくるかもわからない相手を前に、戦う術もない。
「―――万策尽きました。モカ、投降の準備を」
幸いこれは練習試合。フラッグに乗せているのは年端も行かない小学生。こんな状況に付き合わせてしまったせめてもの償いとして、恐怖を与えるのは本意ではない。投降準備の指示を下していると。
「いや、こんな状況程度で諦めてんじゃねぇよ」
そんな声が聞こえた。
ハッチを跳ね上げて軽快に外に飛び出したのは―――件の小学生。
「こんな格言を知っているかい?
ニヤリと口の端だけを歪ませて、戦車を蹴って駆ける。ペリスコープを開けば、木の幹を蹴って飛び上がり、木々の枝から枝へと猿の様に飛び移るPJ姿の少女が見えた。
それからしばらくの間、あっけにとられた私の前に木々を蹴って戻ってきた少女が何事もなかったかのように装填手の席に座った。
「敵影左方向30度、距離は2500。車輛はどれも中戦車で3輛」
手短に告げる少女の声にハッと気を取り戻す。どうあれ、今は試合中なのだ。
「照準、左方向。木々で周囲は見えづらいはずです。しっかりと狙って―――」
「いや、狙わなくていいよ。撃ちまくって散らしてしまえばいい。前から戻ってきた味方が挟み撃ちにしてくれるだろ」
下から聞こえたのはまたも少女の声。装填席で装填手の代わりに座席についてこちらを見上げている。少女の言うことは尤もな話だ。ブラックプリンスの装甲と砲撃による威嚇で時間を稼げば、先遣隊の行動まで間に合う“かもしれない”。
「私はさぁ、見たいものがまだ見れてないんだよ。だから協力は惜しまない」
やる気に満ち溢れた瞳。その力強い瞳に少女が小学生なのかと疑問に思うも、そんな場合ではないと思い直す。
まだこの少女に見せていないのだ。
―――
「装填は任せろ」
ぐっと腕を曲げてパワーアピールをする少女は、愛らしさよりも頼もしさを感じさせた。
―――その後の顛末は、在り得ない展開の連続であった。
重戦車としてオードナンス17ポンド砲を搭載したブラックプリンスは、都合5秒に1発ほどの間隔で砲撃を繰り返し、その速度に恐怖した敵集団が浮足だったところに後方から反転した先遣隊が襲来。これを撃破し逆に敵本体を孤立せしめた。
その後は危うげもなく包囲殲滅を完成させ、結果として私は、キリマンジァロの采配ここにありという栄華を見せつけたのだ。
その裏側で果てしない借りを小学生相手に作ってしまったのだけれど。
その後も大変という言葉では表せない出来事があった。
少女の姿が戦車から忽然と消え失せていたのだ。脱ぎ捨てられたPJだけが彼女がたしかに存在した証となっていた。
その後学園艦内で捜索を続けたが、小学生であれだけの装填をする戦車道候補生。噂にならないはずがないというのにその少女の影すらも見つけられなかった。
まるでそんな少女最初から存在しなかったかのように煙のように消え失せてしまった彼女のその有様に。
―――俄然、火が付いたとも言える。
絶対に見つけ出して見せよう。そして絶対に手に入れて見せよう。
私にあれだけの恩を着せておいて逃げおおせられると思っているのだろうか?
とんでもない。
是非欲しい。
彼女が手に入るのならば、きっと私はより高みに至れるだろう。誰もが認めるキリマンジァロへと至れるだろう。
******* K to E
試合に見学で参加できる。しかも試合中の戦車の中で。
という在り得ない好待遇で参加できるって話だったんで乗り込んでみた。
結果的になんか見ごたえあるシーンもない状況で早々に諦めようとしてたんで
「まだ俺の見たかったもの(ブラックプリンスの戦闘データとか)見てないんですけどぉ!?」って言ってみたら反骨心に火が付いたらしい。
ついでにいい勝負を演じてデータ収集捗るわぁ、したかったので装填席を譲ってもらってややセーブしつつホイホイ装填し続けてみた。
が、よくよく考えてみたらこんな装填するやつそんなホイホイ小学生にいるはずねーだろ という事実に気づいた俺は、颯爽とPJを脱ぎ捨ててこっそりと逃走を成し遂げたのだった。
そんなわけで潜入捜査は(割と)クソミソな結果に終わったのである。
そして俺は『リトルアーミー時空の確認』という最も重要なミッションを達成してなかったことに気づき、一人自責の念でピロシキするのであった……。
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