本章のみ『他原作とのクロスオーバー要素』が含まれます。
ストーリー上はそこまで大事な話ではないので、クロスオーバーを好まない読者の方は本章は飛ばして読んでください。
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以上、よろしくお願いします。
交流試合編 プロローグ
僕の……僕たちの目の前では、ある人物が頭を下げている。
「ごめんなさいっ! 私が余計な事を言ったばかりに!!」
それはうちのクラスのヒロインこと姫路瑞希。
そして、彼女が謝っている原因となっている人物。それは……
「瑞希ちゃん、謝る必要なんて無いわ!
もう一度言わせてもらうわよ。空凪くん、きみに決闘を申し込むわ!!」
聖条学園の3年生の三つ編み少女。
"文学少女"こと
私が平謝りする事になった発端はつい昨日の事です。
休日だったので私は1人でこの街の図書館に来ていました。
目的は、お料理関係、お菓子関係の本を探す為です。
「どうして失敗してしまうんでしょう。大体レシピ通りに作ってるはずなのに……」
空凪くんに指摘されて以来、塩酸だけは使わないようにして代わりに硝酸や硫酸を使って塩基性の食材の中和をするようにしているんですけど、空凪くんからは毎回のように『ゴミ箱にダンク』と言われてしまいます。
せめて空凪くんのテストをパスして明久くんの口に入るくらいにはしたいのに……
う~ん、酸性や塩基性の食材に関する記述が少ないですね。この本はハズレでしょうか?
しばらくは色々な料理本を調べていましたが少し疲れてきました。折角図書館に来たのだから別の小説でも読んで気分転換する事にします。
ん~、これにしましょうかね。あくまでも気分転換なので30分くらい…………
「あら? 瑞希ちゃん? 瑞希ちゃんじゃない!」
はっ! 思わず没頭してました。30分なんてとっくに過ぎてます。
ってあれ? 誰か私を呼んだような……
顔を上げて辺りを見回すと……見知った顔が見えました。あのいかにも"文学少女"な風貌、忘れられるはずもありません。
「遠子さん」
「久しぶり、瑞希ちゃん」
この人は聖条学園の3年生、天野遠子さん。
こことは別の図書館で知り合いました。時々本の感想の交換をしてるんです。
ってアレ? 私は誰に説明してるんでしょうか……
「ここは聖条学園から結構離れてるはずですけど……」
「ふっふ~ん、"文学少女"として、図書館は一軒たりとも見逃せないわ」
「遠子さんらしいですね。
あら? そちらの方は……」
よく見たら遠子さんの後ろに似たような制服の男子が居ました。
と言うか、今更ですけど休日なのに制服……? 文芸部の活動の一環なのでしょうか?
「瑞希ちゃん、この子は文芸部の後輩で、
「そうでしたか。初めまして。姫路瑞希です。文月学園の2年生です」
「あ、こちらこそどうも。井上心葉です」
なんだかすごくまともそうな人です。Fクラスの皆さんとは全然違います。
この人も遠子さんみたいに本の虫なんでしょうか?
……あれ? 他の人はいらっしゃらないのでしょうか? 部の活動みたいなのに。
男子と一緒にわざわざ隣町まで……もしかしてデートなんでしょうか?
「どうしたのかな姫路さん。何だか妙な視線を送られた気がするんだけど」
「あっ、すいません。何でもないです」
「そう? ならいいけど」
「それより瑞希ちゃん、何を読んでいたの? あら? お料理の本?」
「え、ええまぁ。私、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけお料理が苦手なので……遠子さんはどうですか?」
「うっ、私も……得意ではないわ。心葉くんは?」
「僕ですか? せいぜい家庭科で習った事ができるくらいです」
「そうですか……」
知識豊富な遠子さんに教えてもらえたらって思ったんですけど……私と同じように苦手みたいです。
何とかならないですかね……
「瑞希ちゃん、お菓子の本が多いみたいだけど……もしかして男の子にあげるの?」
「えっ、ええ、そうなんです」
「なるほど、つまり瑞希ちゃんはその男の子の事が好きなのね!」
「ふぇっ!?」
「ちょっ、遠子先輩!? 直球過ぎませんか!?」
「心葉くんは黙ってて!
いい瑞希ちゃん、その男の子が好きならちゃんと想いを形にしなきゃダメよ! 素直に話せなかったせいで悲恋に終わってしまう物語なんていっぱいあるんだから!
完璧なものじゃなくて良い。多少美味しくなくても一度ちゃんと送る事が大事なのよ!!」
「は、はぁ……」
と、遠子さん、す、好きって……いや、確かにそうなんですけど、そうなんですけど!
「遠子先輩。姫路さん完全に固まっちゃってますよ。まずは落ち着いて下さい」
「い、いえ、大丈夫です。遠子さんの言いたい事も分かります。分かるんですけど……」
「どうしたの? 分かってるなら早速行動あるのみよ!」
そうなんだけどそうじゃないんです。遠子さん!
「その……行動はしたんです! お菓子を作って渡す事はしたんです!!」
「え? そうなの? それなら良かったわ」
「いや、遠子先輩待ってください。解決してたら姫路さんはこんな所で悩んでません。
渡す事はしたけど何かあった……のかな?」
「はい、井上くんの言う通りです。
お菓子を渡して……いえ、渡そうとしたら空凪くんが一口齧った後、毎回ゴミ箱に捨てちゃうんです……」
「何ですって!? 瑞希ちゃんが真心込めて作ったお菓子を捨てるですって!? なんて酷い人なのその人は!!」
「そ、空凪くんは悪くないんです! 私の腕が悪いだけなんです……」
「そんな人をかばうなんて、何て良い子なの瑞希ちゃん!
でも、100歩譲って瑞希ちゃんの腕が悪かったとしても、捨てるだなんてあり得ないわ! 最低限、完食すべきよ!」
「えっと……遠子先輩。その空凪くんは一応味見はしてるんですよ? 美味しくなかったなら仕方ない部分が……無くもないでしょう」
「何言ってるの心葉くん! 完食したら死んじゃうとかならまだしもそうでないならちゃんと食べるべきよ! もしかしたら美味しくなかったのはその1つだけかもしれないでしょ?
心葉くんだって自分が真心込めて書いた三題噺が3文字だけ読まれて燃やされたら嫌でしょう!?」
「先輩に渡してる三題噺に真心は込めてないしそれとこれとは話が違うような……」
「同じ事よ! 安心して瑞希ちゃん。私たちに任せて!
古今東西の恋愛小説に精通した私たちがこの問題を解決して見せるわ!」
「え、いや、あの、遠子さん?」
「遠子先輩!? 僕まで巻き込まないで……」
「ほら、心葉くんもやる気満々よ!
だからね、瑞希ちゃん。あなた達が上手くいったら2人の初々しい様子を是非ともお手紙にして欲しいの!
きっととっても甘くて美味し……いいえ、瑞希ちゃんの恋を末永く見守ってあげたいのよ!
アフターフォローも含めて、全て任せてちょうだい!!」
「え、ええ……」
遠子さんの勢いに押された私は頷く事しかできませんでした。
凄くキラッキラしてる遠子さんとは対照的に遠い目をしている井上くんの姿が、何だかとても印象的でした。
「と言う訳で、ファミ通文庫の公式コラボアンソロジー2巻が元ネタの話だ。
本のタイトルは……『"文学少女"はガーゴイルとバカの階段を登る』とかいう3流なろう系なフインキが感じられる代物だ」
「いや、なろう系タイトルって言ったら長いのはその倍は長いから……
それに、4作品のタイトルを混ぜてるからこれでも最低限でしょうに。せいぜい動詞の『登る』を削れるかもってくらいで」
「まぁ、そうだな。本書は当時のファミ通文庫レーベルでの2トップであるバカテスと文学少女のコラボが2話、それ以外の話が3話ほど収録されている。
本話の元ネタは1話目の話。『文学少女』シリーズの野村美月先生が執筆した話だから普段のバカテスよりもバカ成分薄目、殺意薄目な話だな」
「バカテスには珍しい真っ当なラブコメが見られ……いや、これって真っ当?
読んでみると吉井くんが虫の息になってるし」
「……真っ当に言葉を話せる程度の状態止まりだ。殺意薄目だろ?」
「確かに普段の原作に比べたら薄いけど……」
「……比較的真っ当ではあるが……まぁ、バカテスだな。
作風は若干変わっているものの、面白さは本物だ。いつものバカテスのノリを期待して読むとちょっと違和感がある可能性が無きにしも非ずといった所か」
「……学園モノであるってくらいしか共通点の無い全然違う作品をここまで上手く纏められるって、プロって凄いわ」
「まぁ、細かい事は原作を読んでみるといい。
本作ではそれに僕の介入というアレンジが組み込まれている。
もし僕が居たらどういう展開になったかってね」
「なるほどね」
「次は……文学少女とその後輩の解説でもしておくか。
原作本編ではシリアスな内容が多いんで言動もそれに見合ったものになっているが、番外編では遠子先輩は結構なアホの子だったりするし、心葉くんは苦労人だ」
「雑な説明……大体合ってるけど」
「遠子先輩は後輩から妖怪呼ばわりされている。何故なら、本を文字通りの意味でムシャムシャと食べるからだ」
「本の虫……」
「正確には物語や想いが込められた紙を食う。ラブレターなんかも大好物だな。
補足しておくと、どっかのヤギみたいに読まずに食べる事は無い。文章を読んで、想いを読み解いて、それを食べるというのが彼女の食事だ。
本話で……と言うか原作でもそうだが、遠子先輩がやたらと張り切ってるのは正義感だけでなく欲望も混ざっている」
「……やっぱりこの世界が割と似合ってるんじゃないかしら?
「……さぁな」
「では、明日もお楽しみに!」