勇者よ、人間性を獲得せよ   作:じーくじおん

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仕事忙しくて辛い・・・・・・息抜きでたまにはダクソやろうかな・・・・・・十万ソウルロストした(落下死)・・・辛み・・・気を取り直そう・・・・・・

畜生!また十万ロストしやがった!お前はいつもそうだ!
このソウルロストはお前の人生そのものだ!
誰もお前を愛さない!!




EP14 冒涜的な存在

「これより、槍の勇者モトヤス様と盾の勇者ハベルの決闘を執り行う! 勝敗はトドメを刺す寸前まで相手を追い詰めるか、本人が敗北を認めることで決めるものとする!」

 

 決闘の進行を勤めている大臣の声が、コロシアムと化した広い城庭に響き渡る。テラスには勇者同士の闘争に期待を膨らませた貴族達が、席を空けることなくひしめいていた。その中には、事の顛末を不安げに眺めるラフタリアと、彼女のことを思って傍に付いているソラールの姿も見られた。

「ここまで大きな騒ぎになるなんて・・・私の所為でこんな・・・・・・」

 

「ラフタリア殿。今はただ、貴公の主人を信じて待つほかない。なぁに、貴公は間近でハベル殿の力をみてきたのだろう? 少なくとも、俺はハベル殿に対して一切の心配はしていないがな! ウワッハッハッハ!」

 

 あれから獣耳をシュンと垂れ下げ、自分を責め続けるラフタリアを見かねてか、ソラールはいつもの如く気丈に振る舞ってみせた。朗らかに笑う彼の暖かい気遣いに触れた彼女は、「ありがとうございます」と彼に微笑みながら一言礼を口にする。しかし、尚も彼女の表情から完全に曇りが取れることはなかった。

 

「この決闘はオルトクレイ=メルロマルク国王陛下並びに、三勇教・教皇バルマス様の立ち会いの下に執り行われる正当なものである!!」

 

 おおーっ!! と貴族等の歓声が上がる中、ソラールはこのふざけた茶番を作り上げた元凶の一人である国王を睨み付けた。もはや彼の中に国王に対する忠義の心は薄れ、疑わしさだけが渦を巻いている。何故そこまで盾の勇者ばかりを邪険に扱うのか・・・ハベルが化物以前の問題である気がしてならなかったのだ。

 

 彼なりに考えを巡らしていると、向かい合う城庭の扉がギギギッと鈍い音を立てながらゆっくりと開かれた。そうして二人の勇者が城庭に姿を現し、お互いに顔を合わせる事となる。

 

 またもや貴族達の歓声が挙がる中、ちらほらと槍の勇者に向けて黄色い応援の声が掛けられる。彼の仲間や女性貴族等の声が届けられると、良い具合に酔いが覚めた元康は鼻の下を伸ばす醜態をさらさず、爽快な笑みを浮かべて客席へと手を振っていた。颯爽とした対応を見せる槍の勇者に、更にテラスから甲高い歓声が募っていく。

 

 一方、これから決闘だというのに全く緊張感を持っていない元康に、ソラールや対峙しているハベルは頭を抱えて大きな溜息をついていた。そんな彼ら不死の気持ちなどつゆ知らず、何やら頭を抱えているハベルを見て、元康は余裕な表情を向けた。

 

「どうだ、この歓声の殆どが俺に向けられてんだぜ。化物のお前には決して味わうことのない最高の応援だ。皆の期待があるからこそ、俺はお前には負けられない! 皆の想いに応えるため・・・何よりラフタリアちゃんのためにもな!!」

 

「・・・・・・言いたいことはそれだけか?」

 

 「あぁ!?」とイラつきに満ちた声を漏らす元康に構わず、ハベルは『黒騎士の剣』と『黒騎士の盾』を展開し、彼に向けて頭を下げて一礼をする。対する元康は突然の彼の行動に不審を抱き、咄嗟に四聖槍を構えてしまう。

 

「・・・・・・何を怯えている? これは私の世界における決闘の前の習わしだ」

 

「ああ、そういやお前はソラールと同じ異世界の住人だったな。いいか! 俺はあの災厄の波でテメェの世界を救った勇者であるソラールと共に戦った。こそこそ村の端っこで雑魚を処理して、手柄を横取りしようとした臆病者と違ってな!」

 

「・・・・・・だからなんだと?」

 

「テメェ如きに負ける道理は無いって事だよ!」

 

 ハベルの前で力強く宣言し、自身に気合いを入れた元康は槍をクルクルと回しながら両手に持ち直し、試合開始の合図を待った。ハベルも手元の盾と剣を構え、ようやく緊迫とした空気が二人の間に訪れた瞬間であった。客席も二勇者に呼応してか、唾を飲み込む音が聞こえるほど静まり返り、動静を見守っている。

 

「では・・・・・・・・・・・・始めぇ!!」

 

「うおぉぉぉぉーーー!!!」

 

 進行を勤める大臣の号令が城庭に響き渡ると同時に、雄叫びを挙げながら元康がハベルへと突撃していく。そしてある程度の距離が詰まると彼はその場で跳躍し、全体重を『四聖槍』へと乗せて渾身の突きを放った。

 

 ハベルは盾を構えて真正面から受け止めると、元康は素早くその場に着地し、円を描くように槍を振り回しながら攻め続けた。怒涛のような槍の連撃が襲いかかるも、ハベルは尚も盾でこれを受け続ける。端から見れば正に貴族等が予想していたとおり、槍の勇者による一方的な展開であった。

 

「くらえ!《疾風突き》!!」

 

 四聖槍の宝石が光り輝き、矛の部位にエネルギーが集中される。連撃の締めと言わんばかりに槍の勇者の攻撃スキルが炸裂し、ハベルの盾を直撃する。ガァン! と武器同士がぶち当たる音が城庭全体へと響き渡ると、元康はすぐさまハベルから距離を取った。激しい彼の攻めの姿勢に、会場のボルテージは更に上昇していく。槍の勇者の戦いにその場の貴族は残らず興奮しっぱなしであった。

 

 しかし、そんな城庭内の雰囲気とは裏腹に、当の本人である元康は額に汗をかきつつ眉をひそめていた。攻め続けているはずなのに、スキルの一撃を確かに加えたはずなのに、何故こうも手応えが無いのか、どうしようもない違和感が彼の心中に広がっていた。

 

「・・・・・・これが・・・貴公が持つ槍の勇者の力だと?」

 

「・・・だったら何だってんだ」

 

「・・・・・・何というか・・・ああ、そうか・・・あのソラールが言い淀むほどだものな・・・・・・確かに納得だ。よもやこれ程とは・・・・・・血を知らぬ者の、何と哀れな事よ・・・」

 

 突然構えを解いては何やらブツブツと言葉を並べるハベルに、元康は警戒して槍を握る手に力がこもった。すると、彼はおもむろに右手の真っ黒な大剣をどこぞに仕舞うと、今度は真っ黒な盾もただの『四聖盾』へと変換した。

 

「てめぇハベル! いったい何のつもりだ!」

 

「・・・・・・この決闘、私は盾以外の武器を使わない」

 

「なぁ!? 真面目に戦え! こいつは決闘だぞ!」

 

「・・・・・・そうか」

 

 不意に放たれた彼の突拍子もない言動に、対峙していた元康だけでは無く、城庭にいた全ての人物――剣の勇者を除く――に波紋が広がった。彼の言葉を槍の勇者に対する侮辱と捉えた貴族等は、言われた本人よりも憤慨していた。

 

「神聖な決闘を何だと思っているんだ!」

「きっと勝てないと分かったから、ふざけているだけなんだわ!」

「槍の勇者様ー! そんな奴早くやっちまえー!!」

 

 罵詈雑言の嵐が降り注ぐ中、ハベルはあろう事か四聖盾を構えること無く棒立ちのままだった。それは戦法と言うには程遠く、槍の勇者の出方を黙って見ているだけである。自分を見下し蔑むかのような彼の態度に、元康は顔を真っ赤にして目をギラつかせながら感情のまま槍に魔力を込めた。

 

「ふざけやがって、後悔させてやる! 《乱れ突き》!!」

 

 元康から突き出された矛が、あまりのスピード故に矛先が幾重にも分かれてハベルの方へと飛んでいく。しかしいくら早さがあって乱れようとも、それが刺突である事に変わりない限り、ハベルにとっては悪手でしかなかった。

 

 彼はその身に纏う重厚な鎧で刃を受けつつ、適当なタイミングで盾を振り抜ける。何気なしに振るわれた盾に元康の矛先がかち合い、連続して攻撃していたはずの彼は堪らず体勢を崩した。

 

 ぐうぅ!? と予想だにしていない衝撃が彼の体を走り抜け、その場に膝を突いてハベルを目の前に隙を晒してしまう。だと言うのに、ハベルは未だ無防備な元康へと攻撃を仕掛ける気配はない。尚もただ黙って立ち尽くす彼の様は、槍の勇者が立ち上がるのを待っているかのようであった。

 

「・・・・・・何の真似だ!?」

 

「・・・貴公、腕だけで振り回しても威力は出ない。盾を持たぬのであるならば、槍をしっかり両手で持ち、踏み込む際にある程度体重を掛けねばならんだろう」

 

「・・・・・・はぁ?」

 

 いったい誰が予想できただろうか、ハベルはよりにもよって決闘の最中に武器の指南を始めた。彼からしてみれば、この世界に来てからゲームの要領で独学で振り回していた元康を見かねてのことだった。他の勇者を導きたいというソラールの意思を汲んでの、彼なりの善意でもある。それが彼にとって最大級の侮辱であるとは思いも知らずに・・・・・・。

 

「・・・・・・くそっ!!」

 

 元康はがむしゃらに立ち上がり、ハベルの助言を無視して愚直な程に真っ直ぐな突きを繰り出した。先程の弾き(パリィ)が懲りていないのか、彼はテンポ良く刺突を繰り返していく。退き際を知らないというソラールの言葉が頭によぎりつつ、ハベルは四聖盾で受け流しながら、またも適当なタイミングで槍を弾いた。

 

「貴公・・・刺突に一辺倒だからこうなるのだ。槍の使い方を工夫しろ。突くばかりでなく斬り払って見せろ。・・・・・・ああ、それとだ。先程から攻めに欲張り過ぎだ。もう少し相手の出方を見てから―――」

 

「うるさい黙れ!!」

 

 ドタッと無様に尻餅をつく元康にハベルは継続して助言を呈すも、応える気のない元康は構わず四聖槍を手に持って再度刺突を連発する。彼の攻めが続く最中、何度口にしても変わらない元康の姿勢に、いったい誰のためを思って言っているのか、とハベルは徐々に苛立ちが募っていた。如何にラフタリアが素直で良い子であったか、教える身としては対極である。

 

「クソ! 何でこんな、盾のくせに! こんなはずは―――」

 

「違うと言っているだろうが!」

 

 遂にしびれを切らしたハベルが右手を握って拳を作り、繰り返される刺突をものともせずに元康の顔面へとぶち込まれた。鎖が何重にも巻かれた頑丈で重厚な籠手から繰り出される殴打が、元康の顔へと吸い込まれるように直撃し、全身が投げ出されるように吹き飛ばされる。

 

 きゃーっ!とテラスから悲鳴が聞こえるも、彼はふらつきを見せながらも立ち上がった。殴られた頬が赤く腫れ、口元からタラリと血を流す槍の勇者に貴族等のざわつきは絶えなかった。未だハベルに対して「盾のくせに」「卑怯者め」と罵倒する声が聞こえるが、その他多くは自らが思い描いていた理想像とあまりに乖離している現状にある種の恐れを抱いていた。誰がどう見ても、槍と盾の勇者の差が歴然であった為である。

 

 その場の誰もが、何かの間違いだと現実を認めずに槍の勇者・北村元康の逆転を願うも、彼が攻撃を仕掛けては受け流され、時折素手による一撃だけの反撃をもらうという、正に一方的な展開が続くばかりであった。

 

 

 

 

 

「・・・凄い・・・・・・槍の勇者様が、まるで赤子のように」

 

「言ったであろうラフタリア殿。心配をするなら、むしろモトヤス殿の方なのだ。我らの世界において未熟な槍ほど、手玉に取りやすいモノもないからな。場数を踏んでいるハベル殿なら尚更だろう」

 

 会場を支配している悲壮な雰囲気とは裏腹に、ラフタリアとソラールはそれぞれの不安をぬぐい去り、どこか安心した心地で観戦していた。

 

「それにしたって、ここまでとは誰も思いませんよ。本当に同じ四聖勇者なのか怪しくなってくる程に・・・」

 

「まあ、貴公と違ってモトヤス殿には教え導く者が誰も居なかったからだな。血を知らぬ平和な世界から召喚されたというのも大きいが、勇者の道を選んだ以上はそうも言ってはいられまい。なに、一度痛い目を見て懲りればどうとでもなるさ・・・・・・俺もそうであったしな」

 

「・・・え? ソラール様も・・・ですか?」

 

「勿論だとも。はじめから強さを手にしている者はいない。皆が未熟な中で、示された導きにどう従うかで決まっていくものだ。今はああでも、モトヤス殿だってきっと大成するはずだ。なんと言ったってこの俺ができたのだからな!」

 

 なんともにこやかに話すソラールだが、ラフタリアは苦笑を浮かべていた。人の気持ちを考えられずに余計なことばかりをする自己中心的な槍の勇者が、盾の従者であり亜人である自分を案じ、傍に付いて尚且つ余計な不安を払ってくれる剣の勇者様のように成れるとは、例え天地がひっくり返ろうとも考えられなかった為である。

 

 一方、彼らとは反対側のテラスにて貴族等の悲惨な雰囲気に混じり、一人不穏なまでに苛立ちを募らせるものがいた。片方の手で自身の赤毛をクルクルといじくり、もう片方の指の爪を苛ただしげに噛みながら、彼女は鋭い眼差しを城庭に向けていた。

 

 ハベル自身の戦いを間近で眺め、実際に殺されそうになった彼女だからこそ、現状の光景について頭がお花畑な貴族ほど予想していないわけではなかった。しかしそれでも苛立つのは、よもやこれほどまで埋めようのない差があるとは思ってもいなかったのだ。

 

 だからといって、おいそれとこのまま槍の勇者の醜態をさらし続け、挙げ句の果てに盾の勇者になぶられた槍の仲間という汚名を被る気は毛頭ない。隣で泡を食って青ざめているばかりの騎士団長に向けて舌打ちを放った後、彼女は懐から魔力増強の薬水を取りだし、ひと思いに飲み干した。空になった小瓶を騎士団長へと乱暴に投げ捨て、彼女は立ち上がってどこへとなく姿をくらますのであった。

 

 

 

 

 

「ガハッ! ク、クソ・・・盾職(シールダー)なのに・・・反則だろ・・・・・・」

 

 地面に転がされ続け、華やかな銀鎧の下には痣が広がるほど、元康は打ちのめされるばかりである。しかし尚もこうして立ち上がり続けるその根性に、ハベルは素直に感心を抱いていた。ラフタリアを守りたいという心や覚悟だけはその若さを持ってしても一丁前なのだろう。

 

「大体、何なんだよ! その鎧は!! 石の鎧のくせに傷一つ付いていないとかチートも良いところじゃねえか!」

 

「チー・・・ト? よく分からぬが貴公、ずっと勘違いしているようだが、これは“岩”の鎧だ」

 

「どっちだって良い! ぐぅ・・・」

 

 大声を出すだけで痛みが全身に走るほど、既に元康の体は限界を迎えようとしていた。

 

「・・・・・・貴公、もう分かったであろう。大人しく降参せよ・・・何度挑もうが貴公の腕ではあまりに―――」

 

「うるさい! 男には退けないときがある、それが今だ! 俺が諦めたら、ラフタリアちゃんはこの先ずっと奴隷として剣を持ち続けることになる。そんなのは絶対に間違ってるんだ!」

 

「・・・・・・そうか、では仕方がないな」

 

 碌に教えを聞こうとせず、愚直な攻めを繰り返すだけの彼に対してハベルはおもむろに溜息をつくと、ソウルを集中して左手の四聖盾を変化させる。すると、彼の手元に現れた新たな盾を見て、元康は思わず自分の目を疑ってしまう。それは盾と呼ぶにはあまりにも異質で、見る者全てを威圧するほどの存在感があった。彼が展開したソレは、円周に鋭いトゲが多量に付着した巨大な木製の車輪であった。

 

「お、おい待てよ・・・盾以外の武器は使わないんじゃなかったのか」

 

「何を言うか、貴公。これも立派な盾だ。・・・もっとも守備に関して脆弱ではあるが、この見た目に違わぬよう、対人において有効である事に変わりない」

 

 何に対して有効なのか、それはハベルが『骸骨車輪の盾』をギュイン! とおぞましい音を立てながら回転させることで全てを物語っていた。尚も車輪を回転させ、明確な殺意を放ちながら近づいてくるハベルに、元康は初めて死の恐怖を覚えた。それによりただでさえ痛みと疲労でふらついていた両脚に、濃厚な死の恐怖からの震慄が加わると、彼は立つことすら叶わない状態となった。

 

 四つん這いとなってハベルに背を向け逃れようとする元康の姿は、もはや勇者の名に恥ずべきものだ。だが亡者であるハベルに哀れみの心など、とうに持ち合わせていない。助言を聞かず、指導に限界を感じたハベルは早々にこの茶番を終わらせようと、寸止めのつもりで車輪を元康の鼻先まで振り下ろそうと大きく身構えた。

 

 ギュイン!! とわざわざ大きな音を立てて回転させながら『骸骨車輪の盾』を振り下ろそうとした・・・・・・その時である。

 

 

 

 後頭部に大槌を振り下ろされたかのような衝撃が、ハベルの兜を直撃した。幾多の攻撃をロードランで体感してきた彼でさえ、今までで受けたことのない衝撃にハベルは完全に不意を突かれ、体幹を大きく崩してしまう。振り下ろした車輪は止まることなく、元康の顔面すぐ横の地面を抉った。

 

 衝撃の正体はロードランの地には存在しない風系統の魔法である。この世界における風魔法の真髄は相手に傷を負わせる威力に在らず、対象を吹き飛ばす衝撃に在る。魔力増強によって衝撃を増した風の魔弾は、直立していたハベルの後頭部にカウンター気味で直撃した。

 

 ハベルの鎧は重厚な見た目に違わず相手の物理・魔法など全ての攻撃と呼べるモノの威力を殺し、その身に降りかかる衝撃をいとも容易く吸収してしまう。増強された魔弾の衝撃が幾度もハベルの脳を揺らし、脳震盪を起こした彼は堪らずその場に膝をついてうずくまってしまった。

 

 

 これを好機と捉えた元康はすぐさま体勢を立て直し、四聖槍へと更に魔力を集中させていく。四聖武器の証である宝石がこれ以上ないほど真っ赤に光り輝き、槍の矛先からバチバチとエネルギーが漏れ出しているのが分かる。

 

―――まだレベルが足りなくて一日に一回しか使えない貴重な必殺スキル。けどここで使わなきゃいつ使うってんだ! ラフタリアちゃんのためにも、ここで確実にしとめる!

 

「これが、俺の、全力だぁぁぁーーー!《流・星・槍》ぉぉぉーーーーー!」

 

 ありったけの魔力が込められ、四聖槍から放出された星の力を司る膨大なエネルギーの波がハベルを飲み込んだ。意識が薄れゆく最中にハベルは『骸骨車輪の盾』を構えるが、彼自身が述べたように車輪盾は攻撃を防ぐために用いるにはすかすかであり脆弱なのだ。当然受け能力も惰弱であり、碌にダメージを軽減することなくエネルギーの波の中で役目を終えた。

 

 閃光が城庭を覆い、客席からの視界が回復するまで僅かな時間が掛かった。そうして光が収まり、皆の視界が元通りになると、彼らの目に映った光景の先でハベルはまだ立っていた。鎧の所々が煤け、確実にダメージが入っているにも関わらず直立不動を貫いている。

 

 戦いを知らぬ貴族でも分かるほど膨大なエネルギーを受けながら、尚も倒れぬ石鎧の怪物に、貴族等は正に化物とハベルを恐れ始めた。すると客席の端から「ハベル様ッ!」と悲鳴に近い声が聞こえた次の瞬間、いつの間にか肉迫した元康が、流星槍の残光を纏った四聖槍をハベルの兜目掛けて突き上げた。

 

 皮肉にもハベルの教えの通り、両手に持ち替えて足を踏み込ませ、体重を乗せた重い刺突が直撃する。甲高い音が城庭に鳴り響き、ハベルの兜が宙に放られる。彼の醜く冒涜的な素顔が皆の前に晒されながら、彼はゆっくり仰け反っていった。

 

 

 

 

「か、勝った・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝者!!槍の勇者・北村元康―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――匂い立つなあ・・・」

 

地の底から響くような暗い声が大臣の声を遮り、吸い込まれるように元康の耳に入る。反射的に目線を向けると、仰け反ったハベルが体勢を維持したままである。そして不意に足を踏みならし、常人では考えられぬような体勢から直立に立て直していた。

 

「・・・・・・たまらぬソウルで誘うものだ・・・・・・えづくじゃあないか・・・・・・」

 

 彼の手に持つ四聖盾の宝石が、どこまでも深い深淵の如き暗闇に染まっていく。彼の真っ暗で冒涜的な瞳もソレに呼応するかのよう、徐々に赤みを増していく。赤黒く、まるで青ざめた血のように染色した彼の目は、真っ直ぐ元康を見つめていた。そして、彼はゆっくりと槍の勇者に向かっていく。

 

「クッ! この死に損ないが!」

 

 息を切らしながら、彼は無防備なハベルへと向かって刺突を繰り出す。だが、ハベルは手元の四聖盾で弾きもせず、代わりに鎧へ命中した槍の柄を片手で掴み挙げた。元康は両手で引き抜こうとするも、片手のはずのハベルにはビクともしない。

 

 そして、ハベルは柄をグイッと引き寄せて元康との距離を限界まで詰めると、彼の右手がおぞましく赤黒い光を放ち始めた。そのままハベルは貫手の如く彼の胴体へと突き出した。銀鎧を砕き、ズブリと皮膚を裂き、しかしながら鮮血が飛び散ることはなく、ハベルの右手が元康の体を貫いた。

 

「・・・ソノ・・・・・・ソウルヲ・・・・・・ヨコセェェェェェ!!」

 

 その姿は、まごう事なき亡者であった・・・・・・。

 

 

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