勇者よ、人間性を獲得せよ   作:じーくじおん

15 / 31
すいません、仕事が忙しいときの投稿ペースはこんな感じになります。最近は少し落ち着きを見せているのでまたペースを戻したいもんです・・・。折角沢山の評価とお気に入り登録者数を獲得してモチベはあるのに時間は無いって言うね...。辛いもんです。



EP15 行く末

 その瞬間、まるで誰もが声を奪われたかのように、客席にいた者達は残らず静寂へと包まれていた。決闘の進行を執り行う大臣の勝利宣言がなされ、誰もが安堵していたというのに・・・・・・希望から絶望へ・・・・・・その場の殆どの者達は顔を青白く豹変させながら、あまりの事態の急変に思考が追いつかず、目の前の出来事にただただ絶句するばかりであった。

 

「ぁ・・・・・・ああ・・・・・・っ・・・・・・」

 

 槍の勇者の掠れた声が、現在静まり返った城庭に訪れるただ一つの音である。彼は今も尚冒涜的な姿を晒すハベルにナニかをされていた。常人の理解の範疇とうに超えた彼の所業。ハベルの赤黒い右手は元康の体にねじり込まれ、まるで求めているモノが見つからず懸命に探すかの如く、彼の内部をかき回すようしきりにまさぐっていた。

 

 もしもの事があればと、城庭へと入場した扉の向こう側には何人もの王国騎士達が控えていたが、誰も槍の勇者を助けようと責務を果たす者は居ない。テラスにて青ざめている貴族同様、死が身近に迫っているこの状況下で、普段から掲げているはずの恐怖に打ち勝つ『勇ましき騎士道』をこぞって捨て去っていた。

 

 場の殆どが冒涜的なハベルによる現状に多大なる忌避感を覚え、名状し難い恐怖に打ちのめされ、槍の勇者・北村元康を見捨てる形となった・・・・・・その時である。

 

「うおぉぉぉぉぉーーーー!!」

 

 客席から飛び降り、けたたましく荒々しげな雄叫びを放ちながら二人の間に割って出る勇猛果敢な者がいた。彼は手にした円状の盾を構えながら突進し、元康をハベルから遠くへと突き飛ばした。そしてすぐさまハベルへ蹴りを入れて怯ませると、手に直剣を出現させて亡者と化した彼へと対峙する。

 

「け、剣の勇者! 剣の勇者じゃないか!」

「剣の勇者のソラール様が助けてくれたわ!」

「やっちまえー! 剣の勇者様ー! 頑張れー!」

 

 彼らの前に突如として現れ、太陽の如く後光の差す新たな希望、無骨なバケツヘルムを被った『剣の勇者』ソラールの出現に会場の空気は一変する。

 

 また、そんな彼らを横目に突き飛ばされグッタリとしている槍の勇者のもとに、ソラールに続く形で城庭へと降り立ったラフタリアが駆け寄った。彼女はソラールから受け取った『女神の祝福』なる聖水を手にしながら、彼の身に傷らしきものが見当たらないことに首を傾げる。顔にはいくつかの痣があって腫れており、腹部の鎧は確かに砕かれているも、そこから覗いている皮膚はなんて事のない綺麗な状態であった。しかし、顔色は今にも生死を彷徨うかのように青ざめており、未だ意識が戻らない事もあってか、彼女は元康の口へと薬瓶の口を突っ込んで無理矢理含ませた。

 

 一方、先程とはうって変わり膨大な量のソウルと人間性を感知したハベルは、すぐさま標的をソラールへと変更する。右手を更に赤黒く変色させながら組掛かり、ソラールはコレを『太陽の盾』で受け止める。

 

「ソウル・・・・・・ニンゲンセイ・・・・・・ヨコセェ・・・ヨコセェェェ!!!」

 

「クッ・・・・・・ハベル殿・・・・・・」

 

 ガリガリと盾に組み付くハベルが迫る中、ソラールはバケツヘルムの下で苦渋の表情を浮かべていた。今のハベルは間違いなく、呪われたロードランの地に溢れかえる亡者そのものであった。不死人が一度こうなれば元に戻る術はない。唯一救済の方法があるとすれば、僅かなソウルを宿す呪われたその身体を灰燼に帰すのみ・・・・・・。それを可能とするのは、この世界で唯一ソウルを操る術を持つ不死人たるソラールだけである。

 

「だが・・・・・・俺は・・・・・・ッ!!」

 

 ソラールは渾身の力を込めて盾を押し出し、ハベルとの距離を取る。怯んだ彼に太陽の直剣を向けようとするが、未だ覚悟は定まっていなかった。

 

 かの地ではその方法しか知らなかった。だからこそ、火継ぎの使命とは別に名も知らぬ亡者と化した者達を楽にしてきた。だが、今の自分はどうだ? ここは自分たちの知る世界『ロードラン』では無い、ましてや自分は偽りの太陽に妄信していた無力なあの頃の自分ではない。同じ勇者の加護を受けたハベル殿を救うやり方とて・・・きっと何か別のやり方があるはずだ・・・・・・。

 

 ソラールはそのまま剣を振るわず、尚もひたすらソウルを求めて向かってくるハベルを盾のみで受け流し続けた。彼を救う方法が・・・彼を手に掛ける以外の、ラフタリアを悲しませない方法を、持ち前の発見力を活用しながら全力で、必死に、探し続けた。

 

「ガァァァァーーーー!」

 

「ぐぅっ!?・・・・・・んん?」

 

 何度か振り払いつつも組み付かれ、不意に赤黒い拳から一撃をもらったその時である。ハベルに触れたソラールの身体からソウルが漏れ出し、ハベルの左手に装備された『四聖盾』へと流れ着くのが見えた。そして、僅かではあるが黒く淀んだ四聖盾の宝石が緑の光を放ち、本来の輝きを取り戻さんとするその様を・・・。

 

―――イチかバチか・・・・・・それでもハベル殿を手に掛けるよりはッ!!

 

 ソラールは両手の武器を収納し、ハベルと丸腰で向き合った。ソウルを求めて猛り狂うハベルを前に、自殺行為としか取れない行動を見せたソラールに、傍観していた全員が思わず息を呑んだ。

 

「ヨコセェ・・・ソウルゥゥゥーーーーー!!!」

 

「ソラール様ッ!!」

 

 ラフタリアの叫びも虚しく、ハベルの突き出された赤黒い拳を、ソラールは抵抗することなく真っ向から受けた。抵抗する意思も見せなかったためか、ハベルの右手はホーリーシンボルの描かれた鎧を砕くことなく、するりとソラールの身体の中へと入っていく。そうして、彼の右手は今まで以上におぞましい輝きを放ちながら、ソラールの中を食い荒らしていった。

 

「・・・ヲヲ・・・・・ヲヲヲヲヲッ!!」

 

「ぐぅぅッ!? そ、そうだハベル殿、好きなだけ喰らうが良い」

 

 身体に巡る激しい苦痛、人間性だけではなくソウルすらも吸い取られていく感覚が剣の勇者を襲う。身体の中を掻き乱される不快感と共に全身を駆け巡る激痛、想像を絶する苦しみに耐えつつも、ソラールはハベルの体を抱き留め、尚も吸精を続けさせた。 そうして、彼の思惑は叶うこととなる。

 

「・・・・・・ソラー・・・ル? ・・・・・・ッ!?」

 

 四聖盾の宝石が完全に輝きを取り戻すと同時に、ハベルの自我が目覚めた。彼は状況を理解する前に己の右手を引き抜き、ソラールから離れていく。理性の伴った彼の声色を聞いたソラールは安堵に加え、ソウルや人間性を吸われたからか全身の力が抜け、その場にドタッと腰を突いた。

 

「ふう・・・なんとかなったな。戻って何よりだ、貴公」

 

「・・・ソラール・・・私は・・・何を・・・・・・ああ、そんな・・・・・・私は・・・」

 

「・・・まあ、貴公・・・なんだ、気にすることはない。誰も死人は出なかったのだ。それで良いではないか」

 

 流石のソラールも疲労が募っているためか、声にいつもの覇気は見られなかった。そう言って彼はチラリと槍の勇者の方へ顔を傾けると、「あれ、俺、どうしてたんだっけ・・・」と、丁度彼も意識を取り戻していたところであった。ラフタリアに託した『女神の祝福』の効果もあり、先の決闘における怪我や痣は全快している様子である。

 

「おお、どうやらモトヤス殿も起きたようだな。ああ、それとハベル殿。先の決闘だが、ハベル殿には悪いが引き分けといこうじゃないか。お互い様というやつだ。それに、その方が面倒も後腐れも無くて済むというものだ。違うか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 決闘に横やりを入れた愚か者が居るということ、そしてハベルの暴走による勇者殺人未遂、それらを考慮したソラールからの妥協案に、ハベルの方からの反応は見られない。しかし、それが不服からの無反応というわけではないことを、ソラールは察していた。やがて、ぼうっと立ち尽くすハベルに慌ただしい様子でラフタリアが駆け寄るが、心配の念を語る彼女に対しても反応は鈍いモノであった。

 

 そして、事態の収拾を察知した貴族等が途端にざわつき始めた。意識を取り戻し、無傷な様子の槍の勇者の安否を心配する声もあったが、その多くはハベルに対しての誹謗中傷である。この場にいる貴族の中で、もはや誰も彼を勇者どころか、人間としてみる者はいない有様である。

 

「剣の勇者ソラールよ! よくぞ盾の勇者を諫めてくれた。やはり盾は想像以上の化物であったな。決闘の勝敗が付いたにもかかわらず、あまつさえ槍の勇者を殺そうなどとは・・・」

 

 そんな貴族等の様子を見かねてか、今まで玉座にて傍観に徹していたはずのメルロマルク国王がいつの間にか城庭の方へと護衛の騎士達と槍の勇者の従者等を連れて降り立っていた。国王は槍の勇者のもとへと足を運び、状況を未だ理解しきれていない元康の肩に手を当て、決闘の勝利を労っていた。

 

 王の宣言に貴族等は勿論のこと、槍の勇者の仲間である女性冒険者等もホッと一息を吐き、彼の下へと甘い声を出しながら駆け寄った。やはり槍の勇者が負けるはずはないのだと、ある意味で事実から逃避をしていたのだ。周囲の雰囲気を察知したソラールは、今度こそ・・・と意気を巻いて腰を上げる。

 

「お言葉ですが陛下! 先の決闘は決して勝敗を付けられるような物ではございません! 確かにハベル殿がモトヤス殿を殺そうとしたことは、褒められたことではございません。しかし、彼がそうなったのも偏に、神聖であるはずの決闘に水を差した愚か者の所業にございます!」

 

「・・・・・・ほう? それはいったいどういう事かね、ソラール殿」

 

 眉をひそめ、いぶかしげに目を細める国王陛下にソラールは尚もたたみかける。

 

「説明するまでもないことです! 誰かがハベル殿に向けて魔法を放ちました。魔弾の角度から言って南のテラスの方からでしょう・・・・・・まず糾弾すべきはその魔法を放った者から―――」

 

「・・・はて・・・ソラール殿、魔法とはいったい何のことだ?」

 

「なっ!?」

 

 わざとらしく首を傾げる国王のその態度に、ソラールの思考は一瞬だけ停止しかけた。まさか・・・と嫌な予感が頭をよぎり、彼は周りの貴族等に向けて声を張り上げた。

 

 「俺は確かにこの目で見ました! 何者かがハベル殿に向かって魔法を放ったんです!客席にいた貴族の方々とて、そこまで目が悪いわけではないはずです! 第一、ハベル殿のよろめき具合があまりに不自然だとは思わないのですか!!」

 

 ソラールが必死になってテラスの貴族等と目を合わせながら語りかけるが、貴族等の表情を見るにそれが如何に無駄なことであるかを思い知った。彼らはこぞってキョトンと呆けた顔をさらしていた。本当に、ソラールの語ることが理解できないのだ。それもそのはず、風魔法を、よりにもよって戦いを知らぬ貴族等に判別しろと言う方が、ちゃんちゃらおかしいのである。犯行に及んだ者はそこまでのことを考慮して、わざわざ得意でもない風魔法を選んだのだ。

 

 貴族等が頼りにならないと知ったとき、彼は頼みの綱である自信の従者達に目を向けた。だが、彼らはソラールと目が遭うとどこか気まずそうにそっぽを向いた。周りの王国騎士達も同様に、目線を合わせまいと地に顔を向けている始末である。彼らの擁護をするならば、国王陛下に逆らい、化物である『盾』と与しているとされることになるような結末は避けたかったが故である。

 

「ソラール殿、お主の噂はいろいろと耳にしておる。困窮している我が民達のためにその身を挺して働き、そこらのゴロツキや罪人にさえ更正の機会を与えたと・・・・・・。噂に違わぬ、まさに太陽のような男よ。だが、時には厳しさも必要なのだ。現に、このような血も通わぬ化物にお主の優しさはまるで伝わらんだろう」

 

 まるで小さな子に言い聞かせるように諭す国王の口ぶりに、周りの貴族達もソラールの行動に納得し始める。国王の言うとおり、剣の勇者一行は波がおこるまでの間、冒険者として依頼をこなしていただけではなく、困っている者がいれば無償で依頼を叶え、薄汚い野盗やならず者を相手にし、実力の違いを分からせた後に太陽の・・・・・・生きることに対する素晴らしさを説き、その何人かを真っ当な生き方へと改正させていった。彼は正に、御伽噺の四聖勇者と同等の・・・いや、それ以上の働きぶりと人間性を見せつけていった。

 

 そして、彼は旅の道中で必ずと行って良いほど、『盾の勇者』に対しての汚名を払うよう人々に言い聞かせたのだ。彼は化物ではなく、我々と同じ人間だと・・・。だが、彼の人間性を知る人々にとって、それもまた彼自身の慈善運動だろう、としか受け取ってもらえなかったのだ。

 

 現状も正にその事象に等しく、彼自身の優しさがハベルという怪物を庇っているに過ぎない、と貴族達の中では認識されてしまった。例えそれが、ソラールの嘘偽りない訴えだとしても、彼の成し得た人望によって虚言としか捉えられなくなってしまう。どこまでも真っ直ぐで我武者羅な剣の勇者がそんな事実を知るはずもなく、再三にわたって抗議の声を挙げるも、それが届くことはなかった。

 

「でも本当にあの化物に勝ってしまうなんて、流石は槍の勇者ですわね! モトヤス様、私、思わず惚れ直しちゃいましたわ!」

 

「あ、ああ・・・当然! 俺は真の勇者・・・だからな・・・」

 

「うむ! その気概見事である。流石は我が自慢の娘()()()()が選んだ勇者だな!」

 

 元康の方へと身をすり寄せ、猫なで声を出す()()()に向かって、国王は元康の肩に手を当てながらとんでもないことを口走った。ソラールは今までに無いほどの驚愕を抱きながら、彼らを凝視してしまう。

 

「・・・い、今・・・何と・・・・・・?」

 

「ん? ああ、そう言えばソラールは知らなかったのか。マインは特別扱いされたくないからって、仲間決めの時は偽名を使って一冒険者として潜り込んでたんだよ。俺も彼女が王女様だって知ったときには驚いたなぁ」

 

「私だって勇者様達と一緒に世界を救いたかったんです。この国から波を退けたい、それは王族でなくとも国を愛している者であれば当然のことですから。ただ手をこまねいて王城で待っているだけだなんて、私にはできなくって・・・その・・・こんな私は、はしたない・・・でしょうか?」

 

「そんなことないさ! マインの志は立派だ! 君のことを否定する馬鹿がいたら、俺がすぐにぶっ飛ばしてやる!」

 

「まぁ・・・・・・モトヤス様・・・・・・」

 

 見ているこちらが頭の悪くなるような茶番劇の前に、ソラールは今にも腸が煮えくりかえる思いである。謀に疎い太陽の騎士でも理解が及ぶほどの彼女のあまりにお粗末な悪意、それがまかり通ってきた理由が、まさか国を挙げての事だったとは・・・。

 

 ハベルは正に、目の前に突如として現れた都合の良い怪物、自らのお気に入りの勇者を引き立てる役目しか持たぬ哀れな道化に過ぎなかった。いくらソラールが何を訴えても、結果は変わらない。むしろあの謁見の間でハベルがソラールを庇い、自ら泥を被らなければ、彼らにとって都合の良い怪物はソラール自身になっていたかも知れないのだ。

 

―――全てはお気に入りの勇者に取り入り、勇者として相応しい武勲を立てるためだけにこんな事を・・・・・・愚王の不自然なまでの態度の正体は家族に在ったか・・・・・・この決闘とて最初から結果は・・・・・・何故だ・・・どうして・・・ハベル殿が貴様等にいったい何をしたというのだ!!

 

 じんわりと血が滲むほど、ソラールは自身の拳を震えるほど強く握りしめる。悪意の固まりを目にしたソラールに、もはや王に対しての敬意は底をついていた。

 

「ただいまの決闘により、盾の勇者が使役していた奴隷は、槍の勇者によって解放された! これより、奴隷紋を解除すべく儀式を行う! 亜人よ、こちらへと来るが良い!」

 

 決闘を取り仕切っていた大臣が宣言すると、茶番の元凶である騎士団長がニヤニヤと卑しい表情を浮かべながらラフタリアにむけて手を差し伸べた。だが、彼女はその手を取ることなく、儀式のために用意された簡易な祭壇へと、どこか億劫そうな面持ちで足を進めた。

 

「ら、ラフタリア殿、すまない。このようなことになるとは・・・・・・」

 

「良いんです、ソラール様の所為ではありません。むしろ、私はソラール様に感謝の想いしかありません。ハベル様を取り戻せたのは、他でもない貴方じゃありませんか」

 

「し、しかし、貴公を・・・」

 

「・・・私が奴隷紋を解除した程度で、ハベル様の下から去ると本気で思ってるんですか?」

 

「・・・・・・・・・ああっ!!!?」

 

 彼女が舌をぺろりと出して茶目っ気たっぷりな笑顔を見せると、ソラールは先程の怒りがどこかえ吹き飛ぶほどの衝撃を受けた。

 

 周りの雰囲気に流されてすっかり失念していたが、今回の決闘はラフタリアの奴隷関係の解除にある。だが、まともな視野を持つ者なら分かるとおり、彼女とハベルの関係は奴隷云々とは程遠く、正に従者として相応しい距離感であった。そんな彼らに対して、今更奴隷で騒ぐ方がどうかしているのだ。この決闘を持ち込んだ彼女らの思惑が最初から破綻していたことに、どこまでも真っ直ぐなソラールはようやく気が付いた。

 

「ああ・・・ああ・・・そうか・・・そうであったな・・・まったく、これだから俺は短慮だの、がさつだの、馬鹿だのと言われるのだ。ハベル殿も、既に気が付いていた・・・・・・か・・・・・・?」

 

 自分の思慮の浅さに呆れつつ、バケツヘルムを抱えながらハベルの方を見やるソラール。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、視線の先に、かの重厚な岩鎧の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ!? は、ハベル殿!? ハベル殿!!」

 

 ソラールは慌てて彼の名を叫んでは辺りを見渡すも、どこにもその姿は無かった。唐突な剣の勇者の行動に周りの観衆も盾の勇者がいつの間にか姿をくらませたことに気が付いた。ラフタリアの獣耳を持ってしても、彼がいつこの場から離脱したか分らないほどに、彼はさっぱりと消えてしまった。

 

「おい、盾の化物が居ないぞ。あいつ、逃げたのか?」

「臆病者の名は伊達じゃなかったな、剣の勇者には悪いが居なくなってせいせいした!」

「こんな事になるのなら、盾の勇者なんて最初から召喚しなければ良かったのよ!」

「盾の勇者なんてこの国に必要ない、即刻処刑すべきね!」

 

「・・・まさか・・・・・・クソッ!! 間に合ってくれよ!!」

 

 貴族等の罵詈雑言が飛び交う中、何としてもハベルを見つけなければと決意を抱き、彼は背後の扉へと向かって駆け出した。

 

「ソラール様! 私も―――」

 

「おい待て、どこに行こうというのだ。まだ儀式は終わってないのだぞ!」

 

ソラールに続こうと駆け出したラフタリアであったが、彼女の行動を察した騎士団長は咄嗟に腕を引き、彼女をその場に留めた。

 

「くっ!! 離して! 貴方なんかに構っている暇は!!」

 

「なんて事だ、奴の奴隷の呪いがここまで強いなんて・・・・・・ラフタリアちゃん、今すぐ元の君に戻してあげるからね」

 

騎士団長に必死な抵抗を見せる彼女を見かね、元康もその手を貸した。

 

「違うって言ってるでしょう! ハベル様! ハベル様ァァーーー!!」

 

悲痛な従者の叫びが、主人に届くことはなかった・・・・・・。




ソラールさんは必ず次回活躍させますから·····物語にはほら、緩急というものが大事でしょう·····ね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。