戦姫絶唱シンフォギア 輝ける星の聖剣   作:茶久良丸

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今回書いてて一番辛かったです。好きなキャラが孤軍奮闘する姿はいつ見ても泣けてきます。
それでは続きをどうぞ!


預けられた夢

 セイバー達は走る。目指す場所は私立リディアン音楽院。響と翼の案内で着いたそこは学園と言うには程遠い廃墟と介していた。

 

「未来ー!みんなー!」

 

 響が友人達の名を叫ぶ。だが返ってくるのは廃墟の間をすり抜ける冷たい風のみ。

 

「っ!アレは!」

 

 セイバーが何かに気づく。校舎の上、何者かが立っている。遅れて響達もそれに気づく。そして彼女達はその人物をよく知っていた。

 

「櫻井女史!?」

「フィーネ、お前の仕業か!」

 

 翼とクリスが別々の名を口にする。

 

「…フフフフ、ハハハハハ!」

 

 女性が笑う。まるで全てが滑稽だとでも言うかのように。

 

「そうなのか…!? その笑いが答えなのか、 櫻井女史!」

「あいつこそ、あたし達が決着を着けなきゃいけないクソッタレ!フィーネだ!」

 

 クリスの叫びとは裏腹に眼鏡を投げ捨て、まとめ上げていた髪をほどく女性。するとまばゆい光が女性を包み込む。やがて光が収まりその女性の本来の姿が現れる。

 黄金の[ネフシュタンの鎧]を身に纏ったフィーネがそこにはいた。

 

「…嘘ですよね、そんなの嘘ですよね?だって了子さん、私を守ってくれました」

 

 目の前の現実に理解ができずわなわなとフィーネに問いかける響。フィーネは響に鬱陶しそうな目を向けながらその問いに答える。

 

「あれはデュランダルを守っただけのこと。希少な完全状態の聖遺物だからね」

「嘘ですよ…。了子さんがフィーネと言うのなら、じゃあ本当の了子さんは…?」

「櫻井了子の肉体は、先だって食い尽くされた。いえ、意識は12年前に死んだと言っていい」

 

 まるで自分では無い他人の話をするかの様にフィーネはゆっくりと語る。

 

「先史文明期の巫女フィーネは、遺伝子に己が意識を刻印し、自身の血を引く者が[アウフバッヘン波形]に接触した際、その身にフィーネとしての記憶・能力が再起動する機能を施していたのだ。12年前、[風鳴 翼]が偶然引き起こした[天羽々斬]の覚醒は、同時に実験に立ち会った[櫻井 了子]の内に眠る意識を目覚めさせた。その目覚めし意識こそがこの私」

「貴女が了子さんを塗りつぶして…」

「まるで過去から蘇る亡霊!」

 

 フィーネの語りに驚愕と怒りを(あらわ)にする響と翼。それを無視し語りを続けるフィーネ。

 

「フィーネとして覚醒したのは私一人ではない。歴史に記される偉人・英雄、世界中に散った私たちは[パラダイムシフト]と呼ばれる技術の大きな転換期にいつも立ち会ってきた」

「シンフォギアシステム…!」

 

 翼が転換期の切っ掛けとなった存在()の名を言う。だがフィーネは的外れと笑うのみであった。この時、響達はフィーネに目線が集中していために気づかなかった。隣にいたセイバーの眉間が僅にだが寄っていた事に。

 

「そのような玩具、為政者からコストを捻出するための福受品に過ぎぬ」

「お前の戯れに、奏は命を散らせたのか!」

「アタシを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのもソイツが理由かよ!」

 

 フィーネが頬を吊り上げ愉快そうに笑う。

 

「そう…、全てはカ・ディンギルのため!」

 

 大地が揺れる。フィーネの後ろから神々しく輝く巨大な塔が現れる。フィーネはそれを愛おしそうな目で見つめる。

 

「これこそが、地より屹立(きつりつ)し天にも届く一撃を放つ…。荷電粒子砲[カ・ディンギル]!」

 

 天高くそびえ立つそれ(カ・ディンギル)を響達は見上げる。

 

「カ・ディンギル!コイツでバラバラになった世界が1つになると?」

「ああ!今宵の月を穿()つことによってな!」

 

 フィーネは空に浮かぶ(あかつき)を指さしならがそう答える。

 

「月を!?」

「穿つと言ったのか!?」

「なんでさ!?」

 

 疑問でしかなかった。月を穿つ事で何故世界が一つになるのか。

 

「私はただ、あの御方と並びたかった…。その為にあの御方へと届く塔をシンアルの野に建てようとした…」

 

 フィーネが再び語る。だが先程までとは雰囲気が違った。フィーネの表情はどこかしおらしく感じられた。

 

「だが、あの御方は人の身が同じ高みに至ることを許しはしなかった…。あの御方の怒りを買い雷霆(らいてい)に塔が砕かれたばかりか、人類が交わす言葉まで砕かれる。果てしなき罰、[バラルの呪詛]をかけられてしまったのだ…」

 

 フィーネの表情が変わる。まるで親の仇の如く見つめるそれは月であった。己の拳を月に向け握り締め怒りをあらわにするフィーネ。

 

「月が何故古来より不和の象徴と伝えられてきたか…。それは、月こそが[バラルの呪詛]の源だからだ!人類の相互理解を妨げるこの呪いを!月を破壊することで解いてくれる!そして再び世界を1つに束ねる!」

 

 フィーネの思惑、その目的が明かされた瞬間であった。

 

「呪いを解く!?それはお前が世界を支配するって事なのか?安い、安さが爆発しすぎてる!」

「永遠を生きる私が余人に歩みを止められることなどあり得ない」

 

 フィーネは己の目的のため全く引く気が無いことがはっきりと伝わる。

 

「…フィーネ、貴女は大きな勘違いをしている」

 

 そこに先程から沈黙を保っていたセイバーが声を発した。

 

「勘違い?この私が一体何を勘違いしていると?」

「貴女にお聞きします。貴女の今までの行動は全て貴女の言うその殿方の側へ行くための布石であると?」

「無論だとも。私の望みはただ一つ、あの御方の側に行く。この愛になんの矛盾もない!」

「であるのなら、その愛こそ貴女の勘違いです」

 

 セイバーはキッパリとフィーネに宣言した。

 

「何だと…?」

「貴女はそれを一途な純愛と思っているのでしょう。しかしそれは依存と言う名の呪いです」

「呪いだと!?余人ごときがこの私の愛を否定し[バラルの呪詛]と同質と言うか!」

「この世界は今を生きる若者達のモノです。貴女の身勝手なエゴ()を押し通す為に潰して()いはずがありm」

「黙れ黙れ黙れ!!」

 

 フィーネの叫びがセイバーの言葉を遮る。

 

「貴様に何が分かる!私のあの御方への思いを、愛を、心を何を理解できると言うのだ!」

 

 その台詞と共にカ・ディンギルが輝き始める。

 

「どのみちカ・ディンギルは既に起動状態!私の目的はほぼ達成も同然!貴様に止められるものか!」

「止めてみせます。私が…いえ私達が!」

 

 セイバーは響達を見る。響達もセイバーの視線に気づき各々頷く。

 響達は覚悟を決め聖詠を歌う。

 

「Balwisyall nescell gungnir tron」

「Imyuteus amenohabakiri tron」

「Killter ichiival tron」

 

 響達がシンフォギアを纏いセイバーと共にフィーネに挑む。

 今世界の命運を別ける戦いが切って落とされた。

 

━━━━━━━━━━

 

 私達がフィーネとか言う女性に挑んでから大分時間がたった気がする。どちらも一歩も引いてない。と言うか四対一で全く引かないフィーネがとてつもなく強い。原因は分かっている。あの黄金の鎧(ネフシュタンの鎧)だ。アレに備わっている再生能力がこっちの攻撃を全て無効にされてしまう。

 打開策が無いまま時間が過ぎている内にフィーネの後ろにある巨大な塔(カ・ディンギル)の輝きが増しているのが分かる。[直感]スキルがアレ(カ・ディンギル)の発射準備がもうすぐ整うのを伝えてくる。

 

 もうこうなったら四の五の言ってられない!

 

 [風王鉄槌(ストライク・エア)]でフィーネとか言う女性を吹き飛ばして[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]の真名解放で砲撃を止めつつあの塔(カ・ディンギル)を破壊するしかn

 

「よぉ」

 

 と私が色々考えていたところでクリスちゃんが私に声をかけてきた。

 

「お前もしかしてあの馬鹿デカイ塔(カ・ディンギル)の攻撃止めようって腹じゃねぇか?」

 

 へ、何でバレたの?

 

「図星って顔だな。別にお前が考えそうな事を読んでみただけだ。ピシャリだったみたいだがな」

 

 クリスちゃんがちょっとドヤ顔決めて言ってきた。考えを読まれるのはちょっと不愉快だけどそれなら話が早い隙は私が作るからクリスちゃん達はフィーネの足止めをおn

 

(わり)ーがソイツはアタシに譲れ」

 

 は?いやいや何言って…

 

「知らなかったとはいえアレ(カ・ディンギル)を作るのにアタシも加担しちまった。ならその責任は取らねぇといけねぇ」

 

 クリスちゃんが神妙な面持ちであの塔(カ・ディンギル)を見ながらそんなことを言う。いやでも、君みたいな十代を利用したのはあのフィーネって女の人なんだしクリスちゃんが責任を感じることは…

 

「それにこれ以上お前に貸しを作りたくないんでね」

 

 ニカッと歯を見せながら余裕そうな笑顔を私に見せてくるクリスちゃん。

 だけど目が違った。私はその目を知っている。

 あの青色の子…[風鳴 翼]って子が自爆技(絶唱)をする前に私に向けた“覚悟のある”目だ。

 

「アタシのパパとママは歌で世界から戦争を無くして平和にするって夢があった。それはアタシの夢でもある。アタシの歌でアレ(カ・ディンギル)の砲撃を止める。だから平和にするって夢はお前に預けていいか?」

 

 真っ直ぐと私を見つめるクリスちゃん。駄目なのは分かってる。こんな青春真っ盛りな年頃の女の子をわざわざ死に追いやるなんて許容出来るわけがない。

 でも、彼女(クリスちゃん)の言葉と顔を見てしまったら…

 

「…分かりました。貴女の夢、確かに預かりました」

 

 断れる訳がないじゃないか!

 

 私は[魔力放出]で一気に加速し、先程から響ちゃん達の相手をしているフィーネに強襲をかける。フィーネも私の動きに気付いて響ちゃん達を手に持った鞭と蹴りで二人を弾き飛ばして迎撃の体勢を取る。

 

「やあぁぁ!!」

 

 上段から縦一線に[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]をフィーネに叩き込む。もちろん事前に読まれてしまったので鞭で防がれ鍔迫り合いの状態になる。

 

「フッフッフ…。どうした、止めるのではなかったのか?カ・ディンギルは発射体制に入った最早止めることは不可能。所詮、貴様など私の前では余人の域を越えんのだ!」

 

 勝ち誇った様子のフィーネは私にそう豪語する。

 

「また勘違いをしましたね」

「何?」

「言った筈です()ではなく私達(・・)で止めると!」

「…!?あの小娘(クリス)はどこだ!?」

 

 今更になってフィーネが気づく。だけどもう遅い。お探しの子(クリスちゃん)は既にミサイルで遥か上空にいる。そして…

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el baral zizzl」

 

 彼女(クリスちゃん)(絶唱)が空高くから聞こえてきた。それと同時にあの塔(カ・ディンギル)からエネルギー弾が発射される。エネルギーは真っ直ぐ一直線に月に進む。

 だがそれを防ぐ様に月の側からも一線の光が向かってくる。光は(カ・ディンギル)から放たれたエネルギー弾とぶつかってその進みを止めた。

 

「一点集束!押し止めているだと!?」

 

 フィーネが動揺している。私はその隙を逃さず鞭との鍔迫り合いを弾きフィーネの腹を[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]で横一線に斬り付ける。

 

「ぐっ!」

 

 フィーネの上半身と下半身が真っ二つ割れる。にも拘らず、空中に投げ出された上半身は吸い込まれる様に下半身に戻っていき、切断面はまるでビデオの巻き戻しみたいに再生していく。

 やっぱりこれじゃ決定打にならないか。

 もっと質量のある攻撃で再生出来ないようしないとダメだと私は確信する。

 やがて月の側から放たれた光が押し負け始め、最後には消えてなくなった。(カ・ディンギル)から放たれたエネルギー弾は月に当たったらしい。でもそれはフィーネの思っていた結果と違ったみたいだ。月を見続けているとの一部が砕けていくのが分かった。

 

「仕留め損ねた!?僅に逸らされたのか!?」

 

 本命であった月の破壊は未遂になった。そして空からキラキラと光輝くモノが月から落ちてきた。

 

「あ…」

「あぁ、ああ…」

 

 響ちゃん達もそれを見る。それはとても見覚えのあるモノで同時に余りにも残酷な事実でもあった。

 

「クリス…」

 

 そう、彼女(クリスちゃん)だ。全身ボロボロの彼女はそのまま森の中へと落ちていった。

 私は拳を握り締める。あの時無理にでも彼女の要求を無視して強行していればこんな事には…。

 いや、後悔はしちゃ駄目だ。彼女(クリスちゃん)はこの結末を分かっていてそれを望んで私もそれを分かっていてその要求を呑んだ。ここで後悔したら彼女(クリスちゃん)の勇姿を否定することになる。

 ならどうするべきか?そんなの決まっている。

 

 彼女(クリスちゃん)に預けられた夢を叶えてやらなければならない。

 

 [約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を握る力を一層強くしつつ私はフィーネを睨み付けるのであった。

 

 

 




後二話くらいで無印は完結だと思います。
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