それでは続きをどうぞ!
「そんな…。せっかく仲良くなれたのに…。こんなの嫌だよ…、嘘だよ…」
響ちゃんがその場に崩れる。無理もない。私だって本当なら今すぐにでも大声を出して泣きたい。でも今はそれよりもやることがある。
「自分を殺して月への直撃を阻止したか。ハッ、無駄なことを。見た夢も叶えられんとは、とんだグズだな!」
目の前で
「嗤ったのか…?命を燃やして大切なものを守り抜くことを!お前は無駄とせせら笑ったか!?」
翼さんも同じ怒りを感じて刀の切っ先を
だがここで…
[直感]スキルが新たな脅威を知らせてくる。
「…それがっ」
「立花…!?」
「ヒビキ…!?」
その場に座り込んでいた響ちゃんを見る。そこには以前と同じように全身真っ黒のアンリマユのようになった響ちゃんがいた。
「夢ごと命を、握りつぶした奴の言うことかぁぁぁぁ!!!」
響ちゃんの雄叫びが響く。それはもう人の声ではなく獣の叫びのようだ。
「融合したガングニールの欠片が暴走してるのだ。制御の出来ない力に…。やがて意識が塗り固められていく」
フィーネがそんな事を言う。正直今の私には何一つさっぱりで理解が出来ない。だけど目の前に起こっている事態は理解できる。アレは響ちゃんではなく響ちゃんの形をした別の何かだ。
響ちゃんはそのままフィーネに突撃をかける。フィーネは鎧に付属していた鞭で迎撃する。響ちゃんの拳はそのまま弾かれ響ちゃん自身も吹き飛ぶ。
「最早人に非ず。人の形をした破壊衝動」
悔しいがフィーネの言うと通りだ。今の響ちゃんは自分を制御出来て無い。恐らくフィーネに対する憎悪だけで動いている。
響ちゃんが再びフィーネに飛び掛かる。フィーネは鞭で形成されたバリヤの様なモノを作る。
【ASGARD】
響ちゃんの拳がバリヤによって防がれる…かに思えたがバリヤは拳の威力に耐えきれず破られそのままフィーネに襲いかる。
「立花!」
「ヒビキ!」
私と翼さんが叫ぶ。やがて土煙が晴れていくとそこには頭から胸にかけて縦に真っ二つに避けたフィーネがいた。だがフィーネはこちらを目でとらえると飄々とした笑みを浮かべる。
私と翼さんはフィーネを無視して響ちゃんを探す。そしてフィーネから少し離れたの後方にその姿を見つけた。
「もうよせ立花!これ以上は聖遺物との融合を促進させるだけだ!」
翼さんが響ちゃんを制止させようと説得する。だが響ちゃんはその声が届いていないのか、はたまたその声を理解していないのか翼さんに敵意を向けてくる。やがて響ちゃんが翼さんに突撃する。
「■■■■■■■■■■!!」
「ぐっ!」
私は響ちゃんと翼さんの間に割って入り[
「いけませんヒビキ!それ以上憎悪に飲まれては戻れなくなる!」
「■■■■■■■■■■!!」
駄目だ、やっぱり聞こえてない。完全に自我が無くなってる。こんな事とは言えないけど今響ちゃんと戦ってる余裕は無い。[直感]スキルが
「■■■■■■■■■■■!!」
こうして暴走している響ちゃんもほっぽり出す訳にはいかない。クソ、何だこの板挟み状態。どちらか片方を投げ出すなんて私には出来ない。だけどどらか一方を諦めなければ事態は解決しない。
どうすれば、どうすればいい!?
響ちゃんの拳をいなしながら考えを巡らせる。ふと視線に入る翼さんの姿。
そうだどうして私一人で解決しようとしてたんだ。
「ツバサ!」
「!?」
翼さんがこっちを見る。
「ヒビキを押さえていただけますか!?私はその間に
「カ・ディンギルを!?どう言う事だセイバー!」
「あの塔の閃光は一度だけで終わるものではありません!再び光放つ前に私が破壊します!」
「っ!?セイバー貴様、やはり気付いていたか!!」
フィーネが体を再生しながら驚いている。どうやら再生中は動くことが出来ないみたいだ。なら好都合。今のうちにあの塔を破壊する。
「そうか…。ならば[カ・ディンギル]の破壊は私が勤めよう」
…え、今何て言った?
「
私には分かる。翼さんは
「しかしっ!」
「…私には友がいた。正に唯一無二の友とも言える存在が。彼女は命を賭してある者を救った。それが立花なんだ。ならば今度は私が救う番だ」
「だからと言って早死にする理由にはならないはずです!」
「案ずるな。今日に折れて死んでも、明日に人として歌うために…、
[風鳴 翼]が歌うのは
翼さんはあの時と同じ“覚悟のある目”をしている。そしてやっぱり…
私はその目を見てしまったらそれを無下にすることは出来ない。気持ち自体は変わってない。でも彼女達の覚悟を無下にすることがどうしても出来ない。もしかしたら
「…貴女に武運を」
「
翼さんはそう答え、[カ・ディンギル]に向かって走る。そこに体の再生が終わったフィーネが立ちはだかっていた。私は響ちゃんを蹴飛ばしてフィーネの元に[魔力放出]を用いて急接近する。
「おのれ!むざむざと破壊させてなるもn」
「はぁぁぁ!!」
「っ!?」
そしてそのままフィーネの胸の中心に[
フィーネはそのままカ・ディンギルと衝突し、衝撃で落ちてきた[カ・ディンギル]の一部と共に瓦礫に埋もれる。
これでフィーネの方はとりあえず保留。後は…
「■■■■■■■■■■!!」
響ちゃんが此方に迫ってくる。やろうと思えば以前の様に気絶させる事は出来るはずだ。でもそれは違うと思う。
なら私の取る行動は一つだ。
響ちゃんが右腕を突き出し突っ込んで来る。私はそれを…
バシュンッ!
「■■■■■!?」
「ヒビキ…、貴女は言いましたね?この拳は誰かと手を繋ぐためだと。ならその様に扱ってはいけない」
私は響ちゃんを抱き締める。割れ物を扱うように優しく、それでいて離さないように強く。
「貴女がクリスを思ってそうなってしまったのは分かります。ですがそのあり方はクリスを…貴女自身を傷付けている」
左の脇腹が熱くなる。響ちゃんの拳を受け止めたからだと思う。多分血も出てる。だけどそんな事はどうでもいい。今響ちゃんをこうして止められているなら。私の思いが届いたのか響ちゃんは私の腕の中で大人しくなっている。
そして…
「立花あああああ!!!」
私の背後から響ちゃんの名を叫ぶ翼さんの声が轟いた。
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気づいた時、私はセイバーさんの腕の中にいた。どうしてそうなったのかは分からない。でも
「翼さん…」
翼さんが
ドガジャンッ!
どこかで何かが壊れた音がした。目線を向けるとそこには
「何処までも忌々しい!月の破壊は[バラルの呪詛]を解くと同時に重力崩壊を引き起こす。惑星規模の天変地異に人類は恐怖し、そして聖遺物の力を振るう私の元に帰順するはずであった!痛みだけが人の心を繋ぐ絆、 たった一つの真実なのに!それを…それをお前は!お前達は!!」
足音を立てて
「
セイバーさんが
「セイバー…!貴様が…貴様こそが私の計画における最もなイレギュラーだった!突如として現れては私の思い描く筋書きを
了子さんが鬼の形相でセイバーさんを睨んでいた。
「本来なら貴様を亡き者にしてから[カ・ディンギル]を起動する手筈だった!だが米国の犬どもの邪魔が入り計画を前倒す羽目になり、そしてこのような結末となり果てた!こうなれば最早貴様の正体も使役している聖遺物もどうでもいい!貴様とその小娘を殺しこの恨み晴らさせてもらう!!」
「させません…!例えこの身砕けたとしても!」
セイバーさんと
「ぐぅっ!」
端から見ている私でも分かった。明らかにセイバーさんが押されている。その原因はきっと
「フン!」
「ふうぅっ!」
「ぐっ…ぐうぅ…」
セイバーさんがフラついて膝を突きそうになるのを透明な何かを杖が代わりにして必死に耐えている。
「どうして…、どうしてまだ立ち上がれるんですか…?」
聴かずにはいられなかった。二年前、奏さんが私を守るために絶唱を歌った時と同じ背中がセイバーさんと重なったからだ。
「ハァ…ハァ…、夢と思いを…託されました…」
肩で息をしながらだけどはっきりとセイバーさんが言った。
「クリスからは夢を…ツバサからは思いを…託されました…。私は…それを…託された者としてそれ…に答える義務があるのです!」
ボロボロの体に力を入れて立ち上がるセイバーさん。
「ヒビキ…、本当に折れて…しまったのですか?本当に諦めて…しまったのですか?」
「だって、翼さんも…クリスちゃんも…学校も…皆居なくなって…、私の戦う理由はもう…」
「本当にそうなのでしょうか…?」
「え…?」
「ハァ…ハァ…、貴女が思ってる以上に…貴女を支えてくれる人は傍にいるのですよ…。
セイバーさんがそう私に言ってくれる。その間に
「クッフッフッフ、セイバー…貴様の言葉はまるで甘い毒の様だな?聞き触りの良い御託を並べて
それに対してセイバーさんは…
「…フッ」
セイバーさんもまた、
「…?貴様何故笑う?」
「いえ、…貴女があまりにも滑稽な事を言うのでつい頬が…緩んでしまった」
「滑稽だと…!この私を!?」
「貴女は言いましたね?技術の転換期に立ち合ってきたと…。ならばその技術を産み出したモノ達に…貴女と同じ共通点がある事を貴女は知っているはずだ…」
「共通点?私と同じ…?何だそれは!?」
「分かりませんか?貴女と同じ様に、
すると
「チッ、耳障りな…何処から聞こえる、この不快なうt…歌だと…!?」
そう、歌が聞こえる。そして私はこの歌を…歌声を知っている。そうだ、セイバーさんの言う通りだった。私を想って支えてくれる人達がこんなにも近くに…傍に居てくれてたんだ。
「はぁぁ!!」
「ぐっ!?」
セイバーさんが透明な何かで
「ヒビキ」
不意にセイバーさんが私を呼ぶ。私は顔を上げてセイバーさんを見る。セイバーさんも振り向いて私を見ていた。その時、朝日が昇っていたんだと思う。セイバーさんの背中を光が写し出して神様や仏様の様な後光が照らしていた。
私はそれを…その時のセイバーさんの姿を
例えるなら
それくらいにセイバーさんは綺麗だった。
「問おう。
「まだ…
私は拳を握る。
「
「まだ…
私は足に力を入れる。
「
「
私は立ち上がった。
バーンッ!
私の周りにシンフォギアを纏う時に現れるバリヤフィールドが現れる。
「まだ戦えるだと?
何を支えに立ち上がる?
何を握って力と変える?
鳴り渡る不快な歌の仕業か?
そうだ、お前が纏っている物は何だ?
心は確かに折り砕いたはず…?
なのに、何を纏っている?
それは私が作った物か?
お前が纏うそれは一体何だっ!?
何なのだっ!?」
難しい事は私には分からない。でもこの体に纏う
これは…
「シ・ン・フォ・ギ・アァァァァァァァァ!!!」
少女達は天高く飛び立ち、
騎士はそれを高らかに見上げる。