やっぱコンディションって大事なんですね。
なんて考えつつ列に並ぶ作者(茶久良丸)なのでした。
それでは続きをどうぞ!
破壊された箇所からもくもくと煙が上がる中、未来はエネルギー弾を放った場所に制止していた。
「やめるデスッ!調は仲間!あたしたちの大切なn」
『仲間と言い切れますか?僕たちを裏切り、敵に利する彼女を、月読 調を仲間と言い切れるのですか?』
切歌の叫びはウェル博士の冷徹な反論に掻き消されてしまう。
「違う…、あたしが調にちゃんと打ち明けられなかったんデス…。あたしが調を裏切ってしまったんデス…!」
「切ちゃん!」
項垂れる切歌に翼の肩から降ろされた調が声をかける。
「ドクターのやり方では弱い人達を救えない!」
『そうかもしれません。何せ我々はかかる災厄に対してあまりに無力ですからね。シンフォギアと聖遺物に関する研究データはこちらだけの占有物ではありませんから。アドバンテージがあるとすれば…、せいぜいこの[ソロモンの杖]!』
すると再び艦隊内に無数のノイズが出現する。ウェル博士が[ソロモンの杖]を起動し、ノイズを呼び出したのだ。
「ノイズを放ったか!」
「クソったれが!」
悪態を付きながらもクリスは跳躍し両手のガトリングと腰部のミサイルでノイズの迎撃に入った。
その隙に未来が円形の鏡を解除してその場を離れようとしていた。
「っミク!」
「でぇぇぇぇぇぇい!!」
セイバーが未来を追おうとすると切歌が急接近し鎌を凪ぎ払おうとしていた。セイバーは迎撃の為[
ガキュン!
セイバーが迎撃する前に翼が切歌の鎌を止める。
「セイバー!小日向を追ってくれ!」
「ツバサ!?しかし…」
「案ずるな、この程度の窮地乗り越えずして防人を名乗れようか!」
「っ…」
「行け!!」
「分かりました。ここをお願いします!」
セイバーは踵を返し未来の後を追う。やがて駆逐艦の船橋の上に未来を見つけたセイバーは海面から跳躍し同じく船橋上に着地すると未来と相対する。
「ミク…」
「…」
二人の間に数秒の静寂が生まれる。すると未来が再び鈍器の様な武器を取り出しセイバーに向ける。セイバーもそれを見た瞬間[
「ミク、貴女を斬りたくはない。ギアを解除して帰りましょう。ヒビキ達のいる所へ」
「…帰れません。私にはやる事があるんです」
未来が目元バイザーを開き、光の無い目でセイバーを見る。
「やる事…、それは?」
「このシンフォギアを使って新しい世界を作るんです。その新しい世界には争いが無い、誰もが笑顔でいられる世界なんです。私は新しい世界を作って響が戦わなくてもいい世界を作るんです」
「ミク…、それはヒビキが望んでいる世界なのてすか?」
「響が戦わない世界です。響だってそれを…」
「それは傲慢ですミク。ヒビキが望んでいるのは貴女と共に歩む
「悲しむ…、どうして…」
「貴女が戦っているからです」
「…っ」
セイバーの言葉に微弱ながらも戸惑う未来。
「ミク、ヒビキがどうして戦い続けていられるか知っていますか?他人である誰かの為に傷付き、倒れ、挫けてもなお立ち続ける彼女の心情に貴女への思いがあるからです!貴女と言う居場所があるから彼女は戦い続けることができるんです!」
「でもそれじゃ響が傷付くだけです。私が響を戦いから解放します。例え私が死んでも」
「ミク!!」
「セイバーさん!!」
問答の中、背後から響のセイバーを呼ぶ声が聞こえた。セイバーは振り向き、いつの間にか浮上していた仮設本部の船橋の上に響がいることを確認する。
「ヒビキ!?何故そこに!」
「セイバーさん、未来の事私に任せて貰えませんか!」
「しかしヒビキ、貴女の体は!」
「私、セイバーさんを信じてます!!」
「っ…!」
響がセイバーに向けそう叫び、セイバーは押し黙る。響の顔はいつかの覚悟を決めた顔であった。
「翼さんも、クリスちゃんも、師匠も、二課のみんな信じてます!だから私が信じてる様にセイバーさんも私を信じて下さい!」
「ヒビキ…」
セイバーは一度、目を閉じてからゆっくりと開けた後、[
「分かりました。ミクの事、ヒビキにお任せします。ただし一つだけ約束してください」
「…」
「必ず二人で帰って来てください。これは王命です。破ったら極刑ですよ」
「はい!」
セイバーは響に向かって少し微笑むとすぐに仕切り直し、翼とクリスの支援に向かう。
その間、眩しい光と共に巨大な遺跡が海から浮上して来るの目撃する。
「一体アレは…」
セイバーが驚愕している中…
バンッ! バンッ!
と、銃声が響いた。
既にノイズが全滅していることを確認していたセイバーはクリスのギアから響いた物と思い、銃声がした駆逐艦に向かう。
だがたどり着いたそこには…
「サヨナラだ…」
と言って
ガキュ!
「どう事ですかクリス!ツバサを背後から撃つなど!」
「どうもこうもねぇよ。テメェらに嫌気が差したから乗り換えようってハラなだけだ」
「クリス!」
「でりゃぁぁぁ!!」
セイバーとクリスの問答の途中で切歌が背後から鎌を上段に構えセイバーの背中を狙う。
「ちぃ!」
セイバーは舌打ちをしながらも振り返り、鎌が振り下ろされる前にがら空きになった切歌の腹部めがけて[魔力放出]で加速した右片足飛び蹴りを食らわせる。
ドボウッ
「ガハッ!?」
切歌の体が見事にくの字に折れ、そのまま足を引き伸ばし切歌を駆逐艦の壁に叩き込むと同時に、切歌を踏み台に右足の裏に[魔力放出]を施すことで今度はクリスに向かって跳躍する。
「やぁぁぁ!」
ガキン!
「ぐぅっ!!」
上段から振り下ろされた[
「何故ですクリス!何故!」
「今は退いてくれ…」
「っ!」
クリスがか細い、しかし確かに聞こえるようにそうセイバーに告げた。セイバーはその声を確かに書き留め、一旦バックステップで距離を取る。
「…」
「…」
互いの目を見合うセイバーとクリス。やがてセイバーは翼を肩に担ぎ、戦線を離脱するのだった。
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時間は進み、二課仮設本部メディカルルームにて救助された未来が無事に意識を取り戻したと言う連絡が一同に入る。
「未来!!」
部屋に入ると同時にベッドから上半身を起こしていた未来に抱きつく響。
「小日向の容態は?」
「[LiNKER]も洗浄。ギア強制装着の後遺症も見られないわ」
「良かった…、ホントに良かった~!」
満面の笑みで喜ぶ響、その後ろで顔を見合わせ微笑む翼・友里・セイバーの三人。皆が未来の無事を心から喜んでいた。
「響、その怪我…、私のせいだよね…」
「うん。未来のおかげだよ」
「え?」
「ありがとう、未来」
感謝される事に困惑する未来に友里が響のレントゲン写真を見せる。そこには心臓に刺さっていた筈のガングニールの破片が綺麗さっぱり消えていた。
「あの
「小日向の強い想いが、死に向かって疾走する立花を救ってくれたのだ」
「私が本当に困った時、やっぱり未来は私を助けてくれた。ありがとう」
「私が…響を…」
その事実に一瞬暗い顔をする未来。そこにセイバーが近寄る。
「ミク」
「セイバーさん…、ごめんなさい。私セイバーさんにも…」
「いいのですミク」
セイバーは未来を抱き寄せ頭を撫で始める。困惑する未来はセイバーの顔を見る。優しい表情をしたセイバーの顔が未来の目に写る。
「無事に帰ってきてくれた…、それだけでいいのです。お帰りなさい、ミク」
その言葉に未来は両手をセイバーの背中に回し涙を流す。
「ごめんなさい…、ごめんなさい…、ごめんなさい…」
何度も謝罪を繰り返しながらセイバーのスーツのシャツを涙で濡らしていく未来。セイバーはただ静に未来の頭を撫で続け、響達はそれを暖かな表情で見守るのであった。
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「まだ安静にしてなきゃいけないじゃないか!」
「ごめんなさい。でも、居ても立ってもいられなくて…」
作戦指令室にやって来た未来ちゃんを怒る弦十郎さん。まぁ病み上がりの体を押してきてるからね。そりゃ怒るよ。
「クリスちゃんが居なくなったと聞いたら、どうしてもって…」
「確かに、響君とクリス君が抜けたことは作戦遂行に大きく影を落としているのだが…」
「でも、翼さんに大事が無かったのが本当に良かった。セイバーさんが守ってくれたおかげです」
友里さんがそう称賛してくれるけどちょっと違うと思う。翼さんの検査結果を見せてもらったけど背中を撃たれた時の傷が明らかに急所から外れていた。あの距離で背後から翼に気付かれずに急所を外すなんてクリスちゃんの腕を考えたらまずあり得ない。
それにあの時の「今は退いてくれ…」って言葉…。きっとなにか事情、もしくはクリスちゃんなりの考えがあると私は睨んでいる。だから私はクリスちゃんを信じる事にした。いやたぶん二課の皆も裏切ったなんて考えて無いんだろうけどね。
そんなことを考えていると仮設本部が大きく揺れ始める。
「広範囲に渡って海底が隆起! 我々の直下でも押し迫ってきます!」
倒れそうになった響ちゃんと未来ちゃんを支えてあげながら藤尭さんの報告を聞く。そのまま仮設本部は海上に出てきた遺跡[フロンティア]の地表に上げられた状態となった。
さらに月の軌道を計測した結果、どうやら月にアンカーを打ち込んだ事で[フロンティア]を浮き上がらせ、さらにそれによって月の落下も早まったらしい。ますます分からなくなる、[F.I.S]は人類の救済を目的にしているのにこれでは因果応報になっている。
ただ一つだけ分かることもある。これには恐らくウェル博士の独善が絡んでいる。もしかしたら[F.I.S]そのものがウェル博士に利用されているのかもしれない。だとしたら止めないといけない。それが出来るのは今、最も動けて近い私達なのだから。
そして弦十郎さん立案の作戦の元、翼が単機で先陣を切る事になった。まだ情報が不足している上に[F.I.S]がどう動くか分からない為、私は仮設本部で待機して温存する作戦だ。
「翼、行けるか?」
「無論です」
「翼さん!」
「案ずるな。一人でステージに立つ事には慣れた身だ」
翼さんがライダースーツに着替えて出撃して行く。翼さんもきっとクリスちゃんの事には疑問を持ってるはず。ならクリスちゃんの事は任せて大丈夫だ。
「Imyuteus amenohabakiri tron」
【騎刃ノ一閃】
翼さんがバイクを駆りながらノイズをバッサバッサと切り裂いていく。
「さすが翼さん!」
「しかしこちらの戦力はセイバーさんを除いて装者一人。この先どう立ち回れば…」
「いえ、こちらの装者は一人じゃありません」
「ギアのない響君を戦わせるつもりはないからな」
「戦うのは私じゃありません」
そして指令室に連れて来たのはあの
「捕虜に出撃要請ってどこまで本気なの?」
「もちろん全部!」
響ちゃんが笑顔でそう言うけど調ちゃんは少し顔を背ける。まぁいきなりじゃ信じられないよね。
「貴方のそういう所、好きじゃない。正しさを振りかざす偽善者の貴女は…」
「私、自分のやってる事が正しいなんて思ってないよ。以前大きな怪我をした時、家族が喜んでくれると思ってリハビリを頑張ったんだけどね…、私が家に帰ってから、お母さんもお祖母ちゃんもずっと暗い顔ばかりしてた…。それでも私は自分の気持ちだけは偽りたくない。偽ってしまったら、誰とも手を繋げなくなる」
これは多分、以前報告書で見た二年前の響ちゃんの事だと思う。内容は正直見ていて気分の良いものではなかった。でもそれがあったからこそ今の響ちゃんがいたんだと思う。
「手を繋ぐ…、そんな事本気で…?」
「だから調ちゃんにもやりたい事をやり遂げて欲しい。もしもそれが私たちと同じ目的なら、少しだけ力を貸して欲しいんだ」
「私の、やりたい事…?」
「やりたい事は、暴走する仲間達を止めること。でしたよね?」
緒川の言葉に調ちゃんは少しだけ涙を見せて背中を向けた。だけど…
「皆を助けるためなら、手伝ってもいい」
そう言ってくれた。やっぱり敵わないな響ちゃんには。何処までだってとことん信じ抜くんだもん。すると調ちゃんが私に近付いてくる。
「貴女の言ってた事…、今なら少しだけ分かる気がする。何も知らないで…知ろうとしなくて決めつける事なんて出来ない。だから、ちゃんと知りたい。
そっか。なら私から言える事は一つだ。
「そう思う事が出来ただけで貴女は以前より大きく成長しました。どうかその思いを忘れないで下さい。そいていずれ貴女と同じ待遇の者に今度は貴女が助言をしてください。同じ過ちを繰り返さないために」
「…ん」
ちょっと恥ずかしそうに頷いてくれる調ちゃん。
「だけど信じるの?敵だったのよ?」
「敵とか味方とか言う前に、子供のやりたい事を支えてやれない大人なんて、かっこ悪くてかなわないんだよ」
そう言いながら弦十郎さんは調ちゃんにシュルシャガナのペンダントを渡す。
「コイツは可能性だ」
「相変わらずなのね…」
「甘いのは分かってる、性分だ。
…ん?」
あれ、なんかさっきの会話に違和感ない?調ちゃん、弦十郎さんと対面するの初めてだよね?なのに相変わらず?どゆこと?
なんて考えていると響ちゃんが調ちゃんの手を取って走り出す。
「ハッチまで案内してあげる!急ごう!」
手を引かれて付いて行く調ちゃん。
この時、私は響ちゃんの考えていそうな事を察していた。けどそれをあえてスルーした。
そして予想道理、調ちゃんがシンフォギアを纏って出撃して行く中その背中に響ちゃんを乗せていた。
「何をやっている!?響君を戦わせるつもりはないと言ったはずだ!」
『戦いじゃありません!人助けです!』
そのまま響ちゃんは調ちゃんと一緒に仮設本部から離れていく。
「これは困りましたねゲンジュウロウ」
「セイバー?」
「出撃要請を出したとはいえ、捕虜と非戦闘員が戦闘中の現場に出てしまいました。
「お前…まさか分かっていて見逃したな?」
「さぁどうでしょうか?」
私は少し頬を吊り上げ飄々と笑う。弦十郎さんには悪いけど今のこの状況で本部でゆっくり待機なんて出来ない。一刻も早く事態の終息に行きたい。でも響ちゃんみたいに勝手に出て行ったら後で面倒ごとになる。だからいい建前を作った。
すると弦十郎さんは右手を頭に抱えながら「はぁ…」とため息をつく。
「意外と食えない所があるんだなセイバー」
「策を講じられなければ王などやってられませんから」
まぁ
「まったく、
セイバーお前に新たな任務を伝える。現場にて行動中の月読 調君の監視、ならびに非戦闘員である響君の護衛だ。すぐに向かえ!」
「承知しました。
私は作戦指令室を飛び出し出撃ハッチまで走る。
ハッチに到着と同時に隅に置かれていた灰色のカバーで被われた
漆黒の色に所々メタリックな銀色が目立つ
私はそれに股がりポケットからキーを取り出して差し込み捻る。馬の
『セイバーさん、ハッチ前方にノイズ反応無し!何時でも行けます!』
「了解しました。ヒビキ達までのナビをお願いします!」
イヤホン型の通信機から藤尭さんの報告を聞きながらアクセルを数回捻ってエンジンを空吹かしして一気全開、ハッチから飛び出す。
悪路を走るのは初めてだけど急がないと!
私は速度を上げて響ちゃん達の元に向かうのだった。
これが恐らく年内最後の投稿になる思います。
後二話ほどでG編終わるのちょっと悔しい。
なんて作者(茶久良丸)の心情はどうでもいいですね!
それでは皆さんよいお年を!