戦姫絶唱シンフォギア 輝ける星の聖剣   作:茶久良丸

26 / 40
明けましておめでとうございます!
そしてセイバー、モーションリニューアルおめでとう!
こうしてセイバーの作品を作ってるとこういった知らせもとても嬉しく思います。
今年も作者(茶久良丸)と作者の書いた作品をよろしくお願いします!

それでは続きをどうぞ!


その()は…

 藤尭さんのナビにしたがってフロンティアを走り続ける私。

 にしても走りづらい。このバイク(V-MAX)ただでさえ真っ直ぐに走らせるのにも苦労するのに鋪装(ほそう)されてない悪路を走るのがこんなにも難しいなんて。おかげで急ぎたいのに全然スピードも出せてない。

 

『セイバーさん!前方に響ちゃん達が!』

 

 とかなんとか考えていると藤尭さんの声がイヤホン型の通信機から響く。

 前を見てみるとギアを纏っている調ちゃんと制服姿の響ちゃん、そしてその正面の遺跡の上にギアを纏った切歌ちゃんがいた。

 

 私はバイク(V-MAX)を横にスライドさせ、右足を地面に押し込みながらブレーキをかける。壮大に砂利と土煙を上げながら響ちゃんの隣に丁度止まる。右足メチャ痛いけどこうでもしないと止まれないからね。

 

「ヒビキ!」

「セイバーさん!」

「あら、丁度お迎えも来たみたいね」

 

 あれ?何だろう調ちゃんから感じるこのどこか懐かしくて、モヤモヤする感じ…。

 

「貴女も私も色々と言いたい事はあるでしょうけど今は先に進みなさい。この星の未来がかかってるんでしょ?」

 

 …うん、何となくだけどこの人が誰なのか分かった気がする。確かに急がないとイケない状況だ。だけど彼女(・・・)だとしたら訊かないとイケないことが一つある。

 

「ならせめて一つだけ問います、貴女(・・)は何故そこにいるのですか?」

 

 私の問いに彼女(・・)は「フッ…」と少しだけ頬を上げて答えた。

 

「千年以上も悪役やってきて今さら胸なんて張れないけど、一度くらいは守ってみたいじゃない世界ってものを。それに…この世界は今日を生きる彼女達のもの(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

なんでしょ?」

 

 うん、そっか。それが訊けたのならきっと信じて大丈夫だ。

 

 胸のモヤモヤが取れいくのを感じながら私はバイク(V-MAX)のハンドルを握り直す。

 

「ヒビキ、乗ってください!」

「はい!」

 

 響ちゃんがバイク(V-MAX)に股がって私のお腹に両腕を回し掴まる。それを確認した私はアクセルを全開に回す。後輪が砂利によって軽いスリップを起こしつつも走り出す。

 

「させるもんかデス!」

 

 切歌ちゃんが私達の妨害をしようとする。けどそれを彼女(・・)…いや多分あれは調ちゃんが阻止してくれる。

 私はそれを横目で感謝しつつ中枢へと向かう。

 

 だけどここで問題が起きる。私にじゃない、バイク(V-MAX)の方にだ。

 さっきからバイク(V-MAX)から変な音が聴こえる。多分無理矢理に鋪装されてない砂利道を強引にしかも全速力で走ってるから無理が来たんだろうと思う。もしかしたらさっきのブレーキでフレームも歪んできてるかも。このままだと中枢にたどり着く前にマシンがおじゃんになりそうだ。

 

 仕方ない、出来るかどうか分からないけどアレ(・・)をやってみよう。

 

 私はバイク(V-MAX)に[魔力放出]を応用して魔力を送り込み、送り込んだ魔力をある形(・・・)に変換する。

 

 するとバイク(V-MAX)に変化が現れる。

 

 エンジンは蒼い炎を帯びて、車体はセイバーの鎧を彷彿させるような白銀のボディーへと生まれ変わった。

 ここまで言えば分かると思う。そう、私は/zeroでセイバーがライダー(イスカンダル)の[神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)]に追い付くためにやったあの即席魔改造をやったのだ。

 正直上手くいくか分からなくて今までやらずにいたけど本番一発で成功して良かった。

 名前無いと不便だしとりあえず[疾走する白銀の装甲騎兵(モータード・キュイラッシェ)]とでも名付けておく。

 

「え、えぇぇぇ!?バイクが変わった!?何これ!!」

 

 後ろの響ちゃんが急にバイク(V-MAX)の姿が変わってビックリしてる。まぁだろうね。だけど多分また驚くことになると思う。

 

 私はダメ押しとばかりに自分の前方に向かって魔力を送り込む。

 

「[風王結界(インビジブル・エア)]!」

 

 本来なら[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]の真名を隠す為の宝具を応用して空気の壁を作って、バイク(V-MAX)にかかっている空気抵抗を格段に減らした。これでバイク(V-MAX)の速度を上げられる上にフレームの負担も軽減できる。

 本当なら人間が呼吸出来るギリギリのレベルまで空気抵抗を減らしたかったんだけど今後ろに響ちゃんがいるからある程度は加減している状態だ。

 

 で、その響ちゃんはと言うと…

 

「ふおぉぉぉぉぉぉ!?!?」

 

 急激に加速が上がった状況に理解が追い付けず、困惑しまくってた。とにかく跳ばされないようにする為に私のお腹に回した両腕を目一杯力を入れて掴まる。そしてそれによって私のお腹が全力で締め上げられる。

 

 ちょっと響ちゃん!?いくらサーヴァントの体でも割りと本気で苦しいからもうちょっと何とかならない!?

 

 てな事考えてたら中枢へと続くと思われる一番大きな遺跡が迫ってきた。遺跡には長く続く階段があり、内部に侵入するには階段を上る必要がある。

 

 ここでちょっとしたバイク知識。

 実はバイクで階段を上るのは難しい事だったりする。階段を昇る時タイヤの当たる面積が極端に少なくなって摩擦が取れず、一段上がるごとにガタガタと揺れてしまってバランスが取りづらいからだ。その上、私の乗っているバイク(V-MAX)は完全スポーツ車なので元々こう言った砂利道なんかを走るように作られてない。

 

 本当なら遺跡の前でバイク(V-MAX)を降りて普通に上るのがいいんだけど如何せん時間が無い。

 なのでもうちょっとバイク(V-MAX)に無理をしてもらう。

 

 遺跡の階段が我前に迫って来たと同時に、右グリップに備え付けられた[NITRO]と書かれたボタンを勢いよく押す。

 

 プシュー、バボンッ!

 

 空気の抜ける様な音と共にマフラーから爆発音が轟く。それと同時に瞬間的に速度が上がっていく。さらに私は後輪部分から[魔力放出]を後ろから押し出す感じに放出して加速に拍車を掛ける。

 

 狙い道り、バイク(V-MAX)はまるでロケットの様に階段を上っていく。なんでロケットと例えたかと言うと現状バイクがほとんど浮いてる状態だからだ。それを[魔力放出]で階段に車体を押さえつけて後ろの[魔力放出]で押し出す完全なゴリ押しで上っているからだ。

 

 ちなみに響ちゃんは…

 

「んんんんん!!」

 

 私に離れるもんかと言わんばかりにしがみついてる。もう完全に私の背中に顔を埋めている状態だ。そして私のお腹の締め上げもとんでもない事になっている。

 

 ふんごぉぉぉ!?響ちゃんマジで勘弁して!それ以上のプレスは色々と出ちゃうからぁ!具体的に言うと出撃前に食べたおにぎり三十個くらい(魔力補給)が出ちゃうからぁ!!

 

 悶える私の気も知らず響ちゃんの締め上げは増すばかり。私は日頃の訓練で鍛えられた腹筋を張り何とか堪え忍ぶ。

 

 やがて階段を上りきったバイク(V-MAX)は頂上で二メートルほど飛び上がってから中枢へ続く道に着地する。着地の瞬間バランスを崩しそうになったけど[魔力放出]で何とかバランスを取ってそのまま道なりに走らせる。

 

 この向こうにウェル博士が…。

 

 一抹の不安が私を過る。果たして私はウェル博士と再び対峙して平静を保っていられるのか…。またあの時の様に激昂してしまわないか…。

 

 そんな不安を胸に私はアクセルを捻るのであった。

 

━━━━━━━━━━

 

「そんなに遺跡を動かしたいのなら!アンタが月に行ってくればいいだろ!!」

 

 ウェル博士がフロンティアのコンソールを操作し、ナスターシャ教授のいる管理ブロックごと射出、月へ向け打ち上げられる。

 

「マムっ!」

「有史以来、数多の英雄が人類支配をなし得なかったのは、人の数がその手に余るからだ!だったら支配可能なまでに減らせばいい!ボクだからこそ気付いた必勝法!英雄に憧れる僕が英雄を超えて見せる!!」

 

 月に向かって飛び続ける管制室を眺めながらウェル博士はそう言い放ち高らかに笑う。

 

「よくもマムを!!」

 

 起き上がったマリアはガングニールのアームドギアである槍を呼び出しウェル博士に向け構える。

 

「手に掛けるのか!?この僕を殺す事は、全人類を殺す事だぞ!」

 

 切っ先を向けられたにも関わらず高慢な態度を崩さないウェル博士。だがその余裕はすぐに消え去る。

 

「殺す!!」

「っ!?うぇぇぇぇぇぇ!」

 

 マリアはそのまま槍を中腰に構えウェル博士に向け突撃する。自信かそれとも自惚れか、怯むと思われたマリアの反応がまるで真逆な事に動揺し悲鳴を上げるウェル博士。

 

 そのまま一直線に槍がウェル博士に突き刺さろうとした…その時。

 

 ヴオオオオオオオ!

 

 コンソールに続く階段から甲高いエンジン音と共に勢いよく飛び出してた白銀の(バイク)が現れた。

 その(バイク)の背に股がっているのは黒いスーツを纏った金髪の女性と制服姿の少女。[疾走する白銀の装甲騎兵(モータード・キュイラッシェ)]に股がったセイバーと響であった。

 

 セイバーは[魔力放出]を利用し前輪を先に着地させジャックナイフの状態となり、着地と同時に後輪の真横から更に[魔力放出]を行う。前輪を支点に[疾走する白銀の装甲騎兵(モータード・キュイラッシェ)]がその場でターンし、マリアの槍が後輪に付けられた魔力の鎧と衝突する。

 

 ガキュン!

 

「ぐっ!」

 

 [疾走する白銀の装甲騎兵(モータード・キュイラッシェ)]の重量と[魔力放出]よる加速が合わさり大質量の塊とかしたそれは正しく鈍器と言って差し支えなく、マリアの槍を意図も容易く弾き返した。

 

 そのまま[疾走する白銀の装甲騎兵(モータード・キュイラッシェ)]は270度ジャックナイフターンをし、マリアに対面するように制止する。

 

「ちぃ、そこをどけ!融合症例第一号と予想外(イレギュラー)!!」

「違う!」

 

 響は[疾走する白銀の装甲騎兵(モータード・キュイラッシェ)]から降り、マリアの前に立ちはだかる。

 

「私は立花 響、十六歳!融合症例なんかじゃない!ただの立花 響が、マリアさんとお話ししたくてここにきてる!!」

「お前と話す必要はない!マムがこの男に殺されたのだ!ならば私もコイツ(ウェル博士)を殺す!世界が守れないのなら、私も生きる意味は無い!!」

 

 マリアは再び槍を構えウェル博士に向け突貫を行う。

 だがそれは途中で止められてしまう。響とセイバーの手が槍の先端部分を掴みその動きを止めた。

 手のひらに刃が食い込みポタポタ血が滲み出る。

 

「お前達…!」

「意味なんて、後から探せばいいじゃないですか」

「生きる意味が無いと貴女は言った。それは間違いです。貴女にはあるはずだ。貴女を想い、貴女が想う大切な人達が!」

「「だから、生きるのを諦めないで(ください)!!」」

 

 すると響の胸の内に歌詞が流れ込んでくる。響はそれを歌い上げる。

 

「Balwisyall Nescell gungnir …」

「聖詠!?何のつもりだ!」

「トロォォォォォォン!!」

 

 その歌にマリアのガングニールの槍が消滅する。いや、槍だけではないマリアが纏っていたギアその物が解除され美しい金色の粒子へと変わる。粒子は室内全てを満たし、きらびやかな幻想を作り出す。

 

「何が起きているの…!

 こんな事ってありえない…!

 融合者は適合者ではないはず!? 

 これは貴女の歌、胸の歌がして見せた事!?

 あなたの歌って何!?

 なんなの!?」

 

 マリアは響に問い続ける。

 

「いってくださいヒビキ!貴女の心、全てで!!」

 

 セイバーは響に激励する。

 

 そして響はその声に答える様にその名を叫んだ。

 

「撃槍!ガングニールだぁぁぁぁぁぁ!!!」

  

 

 

 




少女の歌に槍は答え。
騎士はそれを誇らしく見守る。

次回G編最終回

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。