戦姫絶唱シンフォギア 輝ける星の聖剣   作:茶久良丸

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ちくしょう、最終回なんて書かなきゃよかった!
メッチャ長くなったし、遅くなった!
本当に申し訳ありません!
長いので誤字・脱字が多いかもしれません!

それではG編最終回をどうぞ!


六つの音楽と星の光

「ガングニールに適合する…だと…!?」

 

 マリアのガングニールを身に纏った響をマリアが驚愕の眼差しで見る。それは偶然が生み出した奇跡か、それとも必然か…。だが事実として現に響は再びシンフォギアを纏うことに成功した。

 

「うわぁぁぁ!」

 

 そこにウェル博士が悲鳴をあげながらその場を逃亡しようとする。

 

「っ!?ウェル博士!」

 

 セイバーは[疾走する白銀の装甲騎兵(モータード・キュイラッシェ)]を降りウェル博士を捕らえようと手を伸ばす。(すんで)の所でウェル博士が階段を踏み外した事でセイバーの手はウェル博士を捕らえられず空を切る。

 ウェル博士はそのまま転げ落ち、全身を地面に叩き付ける。

 

「こんなところでぇ…!終わる…ものかぁ!!」

 

 ウェル博士は最早人の物とは思えないほど変化した左手を使い地面に穴を開け、そのまま下の区画に逃亡する。

 この時、遺跡の中に突入していた弦十郎と緒川が到着するも間に合わず見逃してしまう。

 

「響さん!そのシンフォギアは!?」

「マリアさんのガングニールが、私の歌に答えてくれたんです!」

 

 緒川の疑問に響が答える。

 

 すると突如フロンティアに地震が発生する。

 

『重力場の異常を計測!』

『フロンティア、上昇しつつ移動を開始!』

 

 イヤホン型の通信機から藤尭と友里の声が響く。

 

「今のウェルは…、左腕をフロンティアとつなげる事で、意のままに制御できる…」

 

 響の前で崩れ落ちていたマリアが現状を説明する。

  

「フロンティアのコアは、ネフィリムの心臓…!それを停止させれば、ウェルの暴挙も止められる…!お願い、戦う資格のない私に変わって…お願い…!」

 

 その表情には先程までの気迫は無く、項垂れていた。親愛なるナスターシャ教授を殺され、戦う力であるガングニールも失ったとあれば無理もない状態であった。

 それを聞き届けた響は…

 

「調ちゃんにも頼まれてるんだ、マリアさんを助けてって。だから、心配しないで!」

 

 微笑みながらそうマリアに告げた。

 すると階段の下から何かの破壊音が響く。響とセイバーは確認するため下を覗いてみると、弦十郎が地面に拳を打ち込み崩落させ人が余裕で入れるほどの亀裂を空けていた。

 

「師匠!」

「ウェル博士の追跡は、俺たちに任せろ!だから響君とセイバーはm」

「「ネフィリムの心臓を止めます!」」

 

 響が握り拳を胸の前で作り、セイバーは[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を[騎士王の宝財(ゲート・オブ・キャメロット)]から取り出し第二霊基になりながら答える。

 その答えに少しだけ口角を上げた弦十郎は直ぐに引き締まった表情に戻る。

 

「行くぞ!」

「はい!」

 

 踵を返した弦十郎は緒川と共に亀裂の中に飛び込む。

 

「ヒビキ、私達も」

「あ、ちょっと待ってください!」

 

 それを見送ったセイバーは響と共に行動を開始しようとするが、響はそに待ったをかけ再びマリアに目線を合わせる。

 

「待ってて!ちょーっと行ってくるから!」

 

 そう笑顔でマリアに告げた響はセイバーと共に遺跡の外へと駆け出す。

 マリアはその二人の背中を神妙な面持ちで見つめるのであった。

 

 浮遊する瓦礫を足場にしながら跳躍するセイバーと響は翼とクリスの二人と合流を果たす。クリスの手にはウェル博士が所持していた[ソロモンの杖]が握られていた。 

 

「翼さん、クリスちゃん!」

「立花、セイバー!」

「すみません、ウェル博士の確保に失敗しました」

「なに気にするな。怪我の功名と言う訳ではないが立花が戦力として戻ってきてくれたのだからな」

「はい、もう遅れはとりません!だから…」

「あぁ、一緒に戦うぞ!」

「はい!」

 

 翼と響がそんな会話をしている中、セイバーはどこか気疎い表情のクリスと対面する。

 

「その…なんつーか、…悪かった。勝手にあんな事して…」

「えぇ、とても心配しました。せめて一言相談をして欲しかったです」

「あぁ…」

「結果的に[ソロモンの杖]は回収できましたが私を含めた戦友達を裏切ったのは事実です。ですので貴女(クリス)には罰を与えます。またこのような独断専行が無いように」

 

 セイバーは渋面(じょうめん)でそうクリスに告げた。それを聴いた響は慌ててクリスを弁護する。

 

「ま、待ってくださいセイバーさん!クリスちゃんは[ソロモンの杖]を取り返すために!」

「いいんだよ。実際アタシは仲間(先輩)を背中から撃っちまったんだ。元から無罪放免なんて期待しちゃいねぇよ」

「立花、これはけじめの問題だ。雪音がそれを望んでいる以上、我々は口出しできん」

「でも翼さん!クリスちゃんは…」

 

 それでも弁護を続ける響。しかし当の本人であるクリスには聞き入れてもらえず、翼の言葉もありそのまま押し黙ってしまう。

 

「ではクリス、私から貴女に対する罰を言い渡します」

「あぁ、煮るなり焼くなり好きにしな」

 

 クリスは投げ遣りな言葉を発しながらもながらもその態度は真剣そのものであり、その瞳はセイバーに真っ直ぐに向けられていた。

 

「今度私と共に料理を作りましょう」

「………は?」

 

 予想外の罰の内容にクリスは破顔する。

 

「以前からクリスには自炊が必要だと考えていたのです。簡単なモノでも作れるようになれば自身の健康管理にも繋がりますし、何より料理が出来ない娘は殿方に(この)まれまs」

「お、おい、ちょっと待て!何だよそりゃあ!」

 

 力説を語るセイバーをクリスは動揺しながら止め、説明を要求してきた。

 

「何と言われましてもこれが私からクリスに与える罰ですが?」

「それのどこが罰だよ!なんでお前(セイバー)と料理しなけりゃならねぇんだ!」

 

 クリスはまるで茹だったタコの様に顔を真っ赤にする。

 セイバーは先程までの渋面(じょうめん)とは打って変わって優しく微笑む。

 

「簡単な事です。私もヒビキ達と同じくクリスを信じていましたから。始めこそ動揺から疑ってしまいましたが、クリスの性格を考えればあの行動にも訳があると分かりました。貴女(クリス)は誰よりも優しく、責任感がありますが一人で抱え込み過ぎるのが欠点です。だから、また次があるのなら今度は私達に何か言ってください。必ず貴女の力になりますから」

 

 セイバーはクリスの頭に手を乗せ優しく撫でる。クリスは少し恥ずかしそうにしながらも嫌がることはしなかった。かつて幼い自分の頭を同じように撫でていた母親の姿がセイバーと重なったからだ。

 

「まぁ本音を言ってしまえば、一度クリスと肩を並べて台所に立ちたかった想いがあったのも事実です」

「…そうかよ」

「はい。あぁそれと、ヒビキにツバサ、二人はクリスに何か罰はありますか?」

 

 唐突にセイバーが響と翼に話を振ってきた。

 

「ふむ、そうだな。ならば以前のファミレスでの会食、アレを受けようではないか。わだかまりも解けた事だしな」

「そうゆうのでいいなら今度、未来と一緒にデートしよクリスちゃん!ずっと前からクリスちゃんに合う服とか選んでみたかったんだよね!」

「はぁ!?なんでお前らまでアタシに命令してんだ!つぅーかなにしれっとその権利与えてんだお前(セイバー)!」

「二人も被害者ですし…。何よりツバサは背中から撃たれてる訳ですから当然の権利なのでは?」

「ぐぬぬぬ…!」

「後これはクリスに対する罰ですので 貴女自身(クリス)に否定権もありませんよ?」

「だぁあもういい!受けりゃいんだろ受けりゃ!」

 

 クリスはやけくそとばかりに怒鳴り付ける。その光景にセイバー達は少しだけほくそ笑むのであった。

 

『四人とも聴こえるか?』

 

 そんな時、イヤホン型の通信機から弦十郎の声が響く。

 

『仮設本部の解析結果にて高質量のエネルギー反応地点を特定した!恐らくそこにフロンティアの炉心、心臓部があるに違いない!装者たちは、本部からの支援指示に従って急行せよ!』

 

 手短ながらも要点を伝え終えた弦十郎は通信を切る。

 

「行くぞ!この場に(ガングニール)(イチイバル)、そして(天羽々斬)聖剣(エクスカリバー)を携えているのは私達だけだ!」

 

 翼の号令と同時に走り出すセイバー達。だがその行き先途中で突如地面が盛り上がり始める。

 

「な、何!?」

「今さら何が来たって!」

 

 やがて土は人に類似した形となる。それは以前セイバーが撃退した筈の[ネフィリム]、その進化態の姿であった。

 

「■■■■■■!」

 

 ネフィリムは雄叫びと同時に肩部からミサイルらしき物をセイバー達に発射する。セイバー達は各々散開しそれを回避する。

 

「あの時の自立型完全聖遺物なのか!?」

「にしては張り切りすぎだ!」

 

 ネフィリムから放たれる炎の塊を避けつつ応戦するセイバー達。隙をみた響と翼が拳と(つるぎ)をネフィリムに叩きつける。

 

 ドゴッ! ガキュイン!

 

 だがネフィリムの皮膚は固く傷一つつけられない。

 

「なら全部乗せだぁぁぁ!!」

 

 それを見たクリスは両手のガトリングと腰部の小型ミサイルを一斉発射する。瞬間的な火力がネフィリムの体を覆い尽くす。

 だがそれを嘲笑うかの様にネフィリムは健在していた。それどころか反撃とばかりに炎の塊がクリスに向け放たれる。

 

「やぁぁぁ!」

 

 だがセイバーが[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を振るい、炎の塊を真っ二つに両断する。炎の塊はセイバーとクリスの両端を通り抜け遥か後方で弾着、爆炎が上がる。

 セイバーは[魔力放出]で加速しネフィリムに肉薄、右の膝間接を狙い[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を振り下ろす。

 

 ジャキン!

 

 狙い道理ネフィリムの右膝を切断、緑色の血液が吹き出る。そのままネフィリムが体勢を崩し倒れ…はしなかった。

 

「なっ!?」

「再生しただと!?この短時間に!」

 

 切断された筈の右足はモノの数秒で再生していた。ネフィリムは右腕をセイバーに向け振るい叩き潰そうとする。

 

「ちぃっ!」

 

 セイバーは舌打ちをしつつも跳躍することでそれを回避するが、今度は左腕を伸長しセイバーを捕らえようとするネフィリム。

 

「しつこい!」

 

 跳躍したことで空宙にいたセイバーは[魔力放出]で強引に体を捻り左腕を回避する。

 捕縛に失敗したネフィリムは伸長した左腕を戻そうとする。だがその腕に緑色に淡く光る糸状の物が巻き付き、上空から半楕円形に反らされた刃が落ちてくる。

 

「デェス!」

 

 独特の叫びと共に落とされた刃は見事にネフィリムの腕を切断する。それと同時に円盤形のノコギリがネフィリムの腹を裂く。緑色の血液を吹き出しながら悶えるネフィリム。そして響達の前に降り立つ人影が二つ…

 

「シュルシャガナと…」

「イガリマ、到着デス!」

 

 調と切歌であった。

 

「来てくれたんだ!」

「とは言え…、コイツを相手にするのは結構骨が折れそうデスよ」

 

 振り向いた響達の目の前には既に再生が終わり、五体満足のネフィリムが立っている。二人(調・切歌)の援軍が来たからと言ってまだまだ楽観出来ない状況が続いていた。だが…

 

「だけど歌がある!」

 

 声が響く。皆が振り向くとそこにはマリアが立っていた。その表情はセイバーと響が接していた時とは違い、凛とした顔つきになっていた。セイバー達は浮遊している岩を渡り、マリアの元へ集まる。

 

「マリアさん!」

「もう迷わない…!だって、マムが命がけで月の落下を阻止してくれている!」

 

 マリアが空を見上げる。月へと向かい天高く飛び去ったナスターシャ教授がいる管理ブロックがマリアの眼に写る。

 感傷に浸っている瞬間、ネフィリムが炎の塊をマリア達のいる岩に放つ。

 

 ドガァァァン!

 

 派手な爆発によって広範囲に爆煙が広がる。一見すればセイバー達は爆発の直撃を受けたと思うに違いない

 だが結果は真逆であった。

 

「Seilien coffin airget-lamh tron」

 

 歌声が鳴り響き、爆煙が晴れる。姿を表したそこにはシンフォギアを纏う際に発生するバリアフィールドによって守られているセイバー達がいた。

 

「調がいる……。

 切歌がいる……。

 マムもセレナもついている。

 皆が居るなら、これくらいの奇跡…、

 安いもの!!」

 

 一糸まとわぬ姿のマリア高らかにそう吼える。

 その姿を見たネフィリムは再びマリア達に向け炎の塊を放つ。炎の塊は真っ直ぐ一直線にマリア達の元へと向かう。だが命中はしなかった。

 何故なら…

 

「[風王鉄槌(ストライク・エア)]!!」

 

 突然の暴風が炎の塊の真正面に現れる。風は炎の塊を押し返し、射出元であるネフィリムに命中させた。

 

 ドガァァァン!

 

「■■■■■■■■■!?」

 

 自身の放った攻撃をあろうことか自分で受けてしまい困惑と驚愕が入り交じった雄叫びをするネフィリム。

 

「彼女達の邪魔はさせません!」

 

 バリアフィールドの先頭に立っているセイバーがネフィリムにそう告げる。

 

「ひかれあう音色に、理由なんていらない」

「…っ」

「アタシも付ける薬が無いな…」

「それはお互い様デスよ」

「調ちゃん、切歌ちゃん!」

 

 翼が調と、クリスが切歌と、響が調と切歌の手を握る。

 

「貴女のやってる事、偽善でないと信じたい。だから近くで私に見せて。あなたの言う人助けを…、私達に…」

「うん!」

 

 迷い無く頷く響。六人の歌が美しい音色を奏でながら調和していく。

 だがそこにまたしてもネフィリムの邪魔が入る。ネフィリムは全身を怪しくそして禍々しく光らせ何かしらの攻撃体制を取った…

 次の瞬間。

 

「[約束された(エクス)勝利の剣(カリバー)]!!!」

 

 ネフィリムの元に黄金に輝く一撃が炸裂する。それはネフィリムを文字道理縦に真っ二つにしてみせた。

 セイバーの放った[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]がその正体である。無詠唱で放った事で威力が半減し、撃破には至っていないものの、ネフィリムの攻撃を妨害する程度であれば十分過ぎる一撃であった。

 

「六人じゃない、私達が束ねたこの歌は…

 七十億の絶唱おおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 折り重ねたフォニックゲインは奇跡を呼び、響達六人は限定解除状態(エクスドライブ)へと至る。光輝く美しい両翼を背に天へと上るその姿は正しく人々の希望そのものであった。

 

「響き合うみんなの歌声がくれた!

 シンフォギアだあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 虹色に煌めく流星がネフィリムに向かって走る。

 ネフィリムはセイバーによって真っ二つにされた体の再生が終わった直前であった為に身動きが取れずにいた。

 そのままネフィリムは流星に貫かれ、虹色の竜巻と共に跡形もなく消滅するのだった。

 

━━━━━━━━━━

 

 響ちゃん達の放った、虹色の竜巻でネフィリムは再生出来ないくらい粉々…、と言うか消えてなくたった。

 とりあえずこれで心臓部に行くための障害を排除できた。っと思ったんだけど、どうやら厄介事はまだまだ続くみたいだ。

 

 弦十郎さんからの通信をまとめると、

 追い詰められて自暴自棄なったウェル博士がフロンティアとの接続を断ち切ってネフィリムを暴走状態に陥らせたらしい。ネフィリムはフロンティアを取り込むことでエネルギーの最大温度を上げることができ、最終的に一兆度ぐらいになるとのこと。

 

 あっの野郎…最後の最後まで他人に迷惑かけやがって…。せっかくマリアさん達と協力する事が出来たのに…。

 

 はっ!?いかんいかん!落ち着け私、冷静になれ!今はあのメガネ(ウェル博士)の事よりも目の前の事に集中しないと!

 

 自分を落ち着かせつつ私は目の前に起こっている現象に目をやる。

 フロンティアを取り込んだネフィリムが禍々しい赤い光を放ちながら姿を変えていく。

 

 ちなみにだけど今私は[痛哭の幻奏(フェイルノート)]を使って空を飛んでいる。ネフィリムを足止めするために[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]の真名解放をブッパしたわけだけど、その時の魔力消費がやっぱりバカ高くて[魔力放出]で飛ぶにはちょっと心許(こころもと)なかったので仕方なく[痛哭の幻奏(フェイルノート)]を使っている。

 まぁ無詠唱でのブッパだったからある程度は消費を抑えられたし、セイバーの[竜の因子]のお陰である程度は魔力を生成出来るからまだまだ戦えなくはないんだけどね。

 

 なんて反れた話をしてる間にネフィリムが人型の形になった。

 

「再生するネフィリムの心臓…!」

 

 うん、何て言うかどっかで見たことあるな…。あんまり知らないけどウル○ラマンの怪獣であんなのいなかったっけ?

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

「たぁぁぁぁぁぁ!」

 

【終Ω式 ディストピア】

【終虐・Ne破aァ乱怒】

 

 とかなんとか考えてたら調ちゃんと切歌ちゃんがネフィリムに突っ込んで行った。

 

 てか調ちゃん、それ完全にロボットだよね!?そのギア前にノコギリって言ってなかった!?

 

 私が困惑してるなか二人はネフィリムの体を切り裂いたけどすぐに再生した。しかも…

 

「「ああっ!!」」

 

 調ちゃんと切歌ちゃんが突如苦しみ出す。二人のからだからそれぞれピンクと緑のオーラみたいなモノがネフィリムに吸収されていく。

 

「聖遺物どころか、そのエネルギーまで喰らっているのか!?」

「臨界に達したら地上は!」

「蒸発しちゃう!」

 

 だとしたら不味いな…。シンフォギアのエネルギーすら吸収出来るなら私の魔力も持っていかれる可能性がある。迂闊に攻撃できない。

 しかも私の使ってる武器(宝具)は完全聖遺物、もし不手際でネフィリムに取り込まれでもしたら一気に臨界までいっちゃう。そんな事になれば一貫の終わりだ。何か対策を考えないと。

 

「バビロニア、フルオープンだぁぁぁ!!」

 

 その時、クリスちゃんが[ソロモンの杖]を使って宝物庫のゲートを出現させる。

 

「バビロニアの宝物庫!?」

限定解除(エクスドライブ)の出力で、[ソロモンの杖]を機能拡張したのか!?」

 

 ゲートはどんどん大きくなっていく。だけど巨大なネフィリムの体が入るにはまだ少し大きさが足りない。

 

「ゲートの向こう、[バビロニアの宝物庫]にネフィリムを格納できれば!」

「人を殺すだけじゃないって!やってみせろよ!ソロモン!!」

 

 開いたゲートに吸い込まれる様にゆっくりとだけど確実に[バビロニアの宝物庫]の中へと入っていく。

 だけどネフィリムもそれに抵抗してくる。大きい図体に似合わず右腕を素早く振り、[ソロモンの杖]を持っているクリスちゃんに向け殴りかかってきた。

 

「避けろ!雪音!」

「っ!?がっ!!」

「クリス!!」

 

 回避が間に合わなかったクリスちゃんはモロに命中してしまう。私は[風王結界(インビジブル・エア)]を応用して風を足元に集中させ、[痛哭の幻奏(フェイルノート)]を使って音の衝撃を発生させる事で空を滑空して、飛ばされたクリスちゃんを受け止める。

 

「大丈夫ですかクリス!」

「悪い!杖はどこだ!?」

 

 クリスちゃんが手放した[ソロモンの杖]はマリアさんが取っていた。

 

「明日をぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 マリアさんがゲートを更に大きくして、ネフィリムがすっぽり入る程の大きさになった。だけど抵抗を続けるネフィリムはマリアさんを捕らえようとする。マリアさんも必死で避けようとするけど指先から出てきた触手に捕まってしまう。

 

「格納後、私が内部よりゲートを閉じる!ネフィリムは私が!」

「自分を犠牲にする気デスか!?」

「マリア!!」

「こんな事で、私の罪が償えるはずがない…。だけど、全ての命は私が守って見せる…」

 

 どうやらマリアさんは心中の覚悟みたいだ。あれがきっとマリアさんなりのケジメの付け方なんだろうと思う。

 だけど…

 

「それじゃ、

 マリアさんの命は、私達が守って見せますね」

「っ!?」

 

 そんな事、あの子(響ちゃん)が見過ごすわけがないんだよね。

 私達はマリアさんの元に集う。

 

「貴女達…」

「マリア」

 

 私はマリアさんに声をかける。

 

「貴女の覚悟、尊敬に値します。ですが死を覚悟する前に生きる希望を捨ててはなりません。貴女には貴女を想い慕う大切な人達が居るのですから」

「…案外貴女もお人好しなのね」

 

 マリアさんが少しだけ微笑む。

 

「英雄でない私に世界なんて守れやしない。でも、私達…。

 私達は、一人じゃないんだ…」

 

 

 やがて私達はネフィリムと共に[バビロニアの宝物庫]の中へと入っていく。中はおびただしい数のノイズがそこらじゅうにウヨウヨしてた。

 

「うおおおぉぉぉ!!」

 

 先陣を切ったのは響ちゃん。響ちゃんは右腕を槍状にギアを変形させて腰のブースターでノイズの群れに突撃する。

 

「うおおおぉぉぉ!!」

「うりゃあああぁぁぁ!!」

 

 それに続く様に翼さんが足に付いているギアを巨大化、回転させながら突っ込む。クリスちゃんはありったけのミサイルを辺り一面に発射する。

 

 私も負けてられない。それに仕込み(・・・)も今終わったところだ。

 [痛哭の幻奏(フェイルノート)]を構えた私は詠唱を唱える。

 

「痛みを歌い、()きを奏でよ!これこそ我が騎士の矢!痛哭の幻奏(フェイルノート)!!!」

 

 詠唱を終えると同時につま弾いた弦が真空の刃となり、辺りのノイズを一斉に撃破していく。響ちゃん達がノイズに突っ込んで行った時に、辺りに[痛哭の幻奏(フェイルノート)]の糸をあちこちに仕込ませ、それを一斉につま弾いただけなんだけどね。

 

 なんて宝具の解説をしていた隙に調ちゃんと切歌ちゃんがマリアさんを救出していた。

 

「一振りの杖ではこれだけの数を…、制御が追いつかない!」

「マリアさんはその杖(ソロモンの杖)でもう一度宝物庫を開くことに集中してください!」

「何!?」

「外から開けられるのなら、中から開ける事だって出来るはずだ!」

「鍵なんだよ!そいつ(ソロモンの杖)は!」

 

 なるほど確かに。ネフィリムはもう[バビロニアの宝物庫]の中に入ってる。後は(ソロモンの杖)を掛ければ閉じ込める事が出来るって事か。

 

「セレナァァァ!」

 

 マリアさんがそう叫びながら[ソロモンの杖]を起動させ、地上に戻るためのゲートが開いた。

 

「脱出デス!」

「ネフィリムが飛び出す前に!」

「行くぞ雪音!」

「おう!」

 

 皆がゲートに向かって急ぐ。だけどその前にネフィリムが立ち塞がって来た。

 

「迂回路はなさそうだ」

「ならば、行く道は一つ」

「手を繋ごう!」

 

 響ちゃんが翼さんとクリスちゃんの手を、調ちゃんが切歌ちゃんがそれぞれ手を繋ぐ。

 

「マリア」

「マリアさん」

 

 響ちゃんと調ちゃんがマリアさんに手を差し伸べる。マリアさんは胸元から白銀に輝く剣を取り出して、それを天へと投げる。

 

「この手、簡単には離さない!」

 

 マリアさんそう宣言しながら二人の手を繋ぐ。それを見た私は響ちゃんとマリアさんの繋いだ手の上に自分の左手を被せるように繋ぐ。

 

「行きますよ、準備はいいですね!?」

「はい!」

「えぇ!」

 

 響ちゃんとマリアさん、そして私は繋いだ手を高らかに上げる。それと同時に私は右手に持っていた[痛哭の幻奏(フェイルノート)]を[騎士王の宝財(ゲート・オブ・キャメロット)]に戻し、[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を取り出す。

 

「「「最速で!

   最短で!

   真っ直ぐに!」」」

 

 マリアさんの投げた白銀の剣が光の粒子になって私達を包み込む。響ちゃんとマリアさんのギアの一部が外れ、それぞれ巨大な金と銀の腕になって今の私達と同じように手を繋ぐ。

 

「「「一直線にいいいぃぃぃぃぃぃ!!!」」」

 

 金と銀の両腕は私達を守る鎧の様に展開して、ネフィリムに突っ込む。ネフィリムも触手を出して私達を行かせまいとする。

 私は右手に持った[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を進行方向とは逆に構え詠唱を唱える。

 

「この灯りは星の希望!地を照らす命の証!聖剣よ、少女達に力を!

 [約束された(エクス)勝利の剣(カリバー)]!!!」

 

 [約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を推進剤代わりにし、黄金の輝きを身に纏い私達は加速する。

 

「「「「「「「おおおおおお!!!」」」」」」」

 

【Vitalization】

 

 両腕はそのままネフィリムの胴体を貫通しゲートに向かって真っ直ぐ一直線に向かう。ゲートをくぐり抜け地上に戻った私達はそのまま砂浜に激突する。

 

 ズドォォン!

 

 衝撃で散り散りになる私達。その近くに[ソロモンの杖]も突き刺さってた。

 

「杖が…!すぐにゲートを閉じなければ…まもなく、ネフィリムの爆発が…!」

 

 だけど皆さっきの技の負荷で動けない。私も二発目の[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]で魔力が底をついた影響で動けずにいた。

 

 くそ…!やっぱり一日に二度も[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を射つのは無理があったか…!

 

「まだだ…!」

「心強い仲間は、他にも…」

「仲間…?」

 

 そうか…、そうだったね。私達にはまだ、仲間がいた。

 

「私の…親友(日だまり)だよ…」

 

 そう…未来ちゃんだ。未来ちゃんは砂煙を全力疾走して[ソロモンの杖]に一直線だ。

 やがて[ソロモンの杖]を手にすると同時にゲートに向かっておもいっきり投げ入れる。

 

「お願い!閉じてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 投げられた[ソロモンの杖]は真っ直ぐゲートに向かって飛んでいく。

 

「もう響が…、誰もが戦わなくていいような…、世界にぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 未来ちゃんの願いに答えるように[ソロモンの杖]が光だす。そしてネフィリムが爆発すると同時にゲートの中に[ソロモンの杖]が入り、ゲートが閉じていく。

 

 まるで何事も無かったかの様な静けさを感じ、私達は戦いの終わりを実感した。

 

━━━━━━━━━━

 

 フロンティアでの戦いから数時間後。もう太陽も傾いて海岸線の向こうがオレンジ色に輝いている。

 

 さてと、私も動ける位には回復したし弦十郎さん達と一緒に事後処理しないと。

 

 と、踵を返すところで…

 

「アーサー王!アーサー王!アーサー王ぅ!!」

 

 何か聞きたくない声が聞こえてきた…。

 振り向いたら両腕に手錠をかけられたウェル博士がこっちに走ってきていた。後ろには自衛隊の人達がウェル博士を捕まえようと追ってきている。

 

 ウェル博士は私の足元にで両膝を着いて両手を重ねてまるで神様に祈るみたいな姿勢を取る。

 

「かつてブリタニアにて当時のローマ皇帝を討ち取りヨーロッパ全てを手中に治めた王の中の王!その冒険譚(ぼうけんだん)は現代においても今だ語り継がれる程に民に愛される存在!貴女こそ僕が憧れた英雄の姿そのもの!

 どうか、この私めに裁きを!愚かな私めに罰をお与えくださいぃ!!」

 

 裁き…ねぇ。この際、私の正体が何でバレたかはどうでもいい。大方私達が戦ってる所を何処かで覗き見して勘づいたんだと思うから。

 

 だけど裁きとなると話は別だ。

 今までこの人(ウェル博士)がしてきた事を思い返すとかなり腹が立つ。実際、今すぐ切り殺してやりたいと思っている自分がいるのも確かだ。

 だからこそ…

 

「…いいえ。私は貴方を裁きません」

 

 この人(ウェル博士)が最も望まない事をしてやろう。

 

「ゑ…」

 

 呆けた顔になるウェル博士。まるで何を言っているのか分からないって顔だ。私はそれを無視して続ける。

 

「私には貴方を裁く義務も、権利も、する気すらもありません。

 貴方は変革を望んだ革命家でなく、世界を破滅しようとした破壊者でもなく、まして英雄としてでもなく、”人”として裁かれなさい。私から言える事はそれだけです」

 

 私は踵を返してウェル博士に背を向け歩き始める。それと同時に追い付いた自衛隊の人達にウェル博士が拘束される。

 

「あ、あ、あ、あの男と同じ事をぉぉぉ!!!

 殺せ!僕を殺せ!英雄にしてくれぇぇぇ!!!」

 

 後ろからそんな叫びが聞こえる。大方そんな事だろうと思った。自分が死んで誰かに英雄視されたかったんだろう。だから私は逆に生きる事を選ばせた。あれだけやっといて死んで全部チャラなんてさせない。無様に生き恥をさらして死ぬまで赤っ恥をかいてもらう。

 言っちゃえばこれは嫌がらせだ。ウェル博士が最も望まない嫌がらせ。

 

 心の中で「ざまあみろ」と言い放ちながら私は砂浜で対話している響ちゃん達を見る。皆とても晴れやかな顔をしている。

 

 うん、あれこそ私が見たかったモノだ。

 

 自然と私も頬が緩くなる。月の軌道についてもマリアさん達の協力者のナスターシャ教授の命懸けの行動で正常に戻りつつあるとの事だ。だけどその影響で月の[バラルの呪詛]が再起動、人類の相互理解が遠のいたらしい。

 

 だけど私は大丈夫だと思っている。だって目の前に今、心が通じあって和解した子達がいるんだもん。

 

 彼女達の未来を守るために、私は戦い続けよう。

 

 聖剣を握れなくなる、その時まで…。

 

 私は強く心にそう誓った。

   

 

 




後書き考えてて気づいたんですけど、分割して前編・後編とかにすりゃあ良かったんじゃないかって…。
私(茶久良丸)って本当バカ…。

次回は絶唱しない小話集です。いや~気軽でいいな~(フラグ)

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