戦姫絶唱シンフォギア 輝ける星の聖剣   作:茶久良丸

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皆さんすっかりお忘れだと思いますが“アイツら”が久しぶりに登場します。
てかタイトル見たら一発で分かります。

それではどうぞ!


絶唱しない小話集 GXのちょっと(まえ)

《ナマモノの屋台》

 話は切歌と調がリディアンに潜入した頃まで戻る。

 

「調~、もうちょっとだけデスから~」

「ダメ。私達の目的は食べ歩きじゃないよ切ちゃん」

 

 切歌の駄々を否定しながらツカツカと歩いて行く調。この二人の目的はリディアンにいる響達のシンフォギア(聖遺物)を奪うことであった。

 だかリディアンでは音楽祭が開催され、学内の生徒が出店などの出し物を出しており、切歌はそれにつられて食べ歩きをしていた。

 

「ならせめて後一個!一個だけ買ったらちゃんとするデス!だからお願いデス、調~」

「…はぁ~、しょうがないなぁ切ちゃんは」

「やったーーーデス!!」

 

 切歌のおねだりに折れた調はどこか嬉しそうな顔をする。

 

「さ~てどのお店に…およ?何だか良さげなのを見つけたデスよ調!」

 

 すると切歌がある出店を見つけ指を指す。調は切歌が指差した出店を見る。

 そこには…

 

「いいかお(みゃー)ら!セイバーさんがバイトを辞めたことによりウチの集客率は6割減、売り上げは5割も切り、本編での出番は絶望的ににゃったにゃ!まさに火の[羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)]!このままだとウチが潰れるのは避けられにゃいFate(運命)!よってここで出店を開いて少しでも売り上げに貢献するのにゃ!!そしてあわよくば本編での出番を[妄想心音(ザバーニーヤ)]するにゃ!!」

 

 出店のカウンターで仁王立ちをして高らかにそう告げていた二足歩行する謎の生命体(ネコ)がいた。

 

「フッ、絶頂とは深淵のカウントダウンだ。だが人は目の前の栄光に常に飛び付き、足元の瓦解には眼を向けない。それこそ人の愚かしさの証。そしていざ崩れ落ちた際に必ずこう叫ぶのだ、『どうしてこうなった』と」

 

 その謎の生命体を前にタバコを口に加えながら意味深な事を語る黒い謎の生命体(ネコ)と、

 

「いくつになっても昔の恋は引きずるモノよ。新しい恋の影に必ずその人の影を重ねてちゃうから。だから貴方の事は愛せないの私があの人を忘れられないから」

 

 その隣にこれまた意味深な事を語るピンク色の謎の生命体(ネコ)と、

 

「うんうんうんっ!」

 

 その隣に激しく首を縦に振る謎の生命体(ネコ)と、

 

「りり、リアルJKがいる学校で屋台とか、は、犯罪臭だ、だだ漏れなんだな」

 

 その隣に挙動不審にそんな事を語る謎の生命体(ネコ)がいた。

 

「…」

 

 調は絶句した。名状しがたい二足歩行するネコを見て、「何だアレ…」と思ったからだ。

 

「あそこに決めたデス!」

「切ちゃん、何だか怪しいお店だよ。よく分からない…人?ぽいのが開いてるみたいだし」

「え~、でも~…」

 

 切歌が再び駄々を捏ねる。すると調の視線の先に翼が歩いているのが見えた。

 

「切ちゃん、あれ」

「およ?あぁー!作戦も心の準備も小腹満たしもできてないのに鴨もネギもないデスよ!」

「とにかく追うよ切ちゃん!」

 

 そう言いつつ二人は翼の後を追った。

 

━━━━━━━━━━

 

 そして時間は進み、響達に決闘を申し込んだ後の事。

 

「し、調!帰る前に食べ損ねたあのお店の食べ物を食べたいのデス!」

「切ちゃん、今は早く戻らないとだよ」

「でもお祭りは今日までなのデス!だからお願いデス!調ぇ~」

 

 涙目で訴えてくる切歌。その表情に「うっ」と来た調はガックリと肩を落とす。

 

「…はぁ~、しょうがないなぁ。最後のお店だけだよ?」

「やったーデス!そんな調が大好きデス!」

 

 喜びを全身を使って表現する切歌に調は苦笑を漏らす。そしてそのまま出店があった場所まで移動する。だがそこには…

 

「君たち許可取ってないよね?何で出店開いてるの?」

「違うんですにゃ。これには冥界より深ぁ~い事情があって…」

「事情云々よりも許可がいるよね?ここ学校の敷地内だからね?普通に犯罪だからね?」

 

 恐らく学校の先生と思われる職員に正座で怒られている謎の生命体(ネコ)達がいた。

 

「とりあえず君たち警察に引き取ってもらうから」

「いや~それだけは勘弁を…と、油断させて!

 [体はネコで出来ている(I am the bone of my cat )]!」

 

 謎の生命体(ネコ)が詠唱を唱えた瞬間、謎の生命体(ネコ)の足がロケット噴射口となり遥か空へと飛んでいく。

 

「にゃ~はっはっはっ!さらばにゃ!!」

「フッ、切り札とは切れてこそその意味を果たす。故に切る頃合いを見据え過ぎてはいけない。切り札を切った瞬間、それは切り札では無くなってしまうのだから」

「女はね、常に武器を隠し持っているのよ。それがどんな物かはその人のセンス次第だけど、必ずそして確実に落とそうとしてくるわ。まぁ落ちるかどうかはその日次第だけどね」

「うんうんうんっ!」

「か、かか隠し武器とかロマンの、か塊なんだな」

「どうでもいいけど君ら見捨てられたの分かってる?」

「「「「ゑっ?」」」」

 

 置いてかれた謎の生命体(ネコ)達が空を見る。先ほど飛び立った謎の生命体(ネコ)はそのまま何処かに逃げていった。

 

 そこから先は謎の生命体(ネコ)達の阿鼻叫喚がその場を支配していた。

 

「…行こうか切ちゃん」

「…そうデスね」

 

 その光景を目にし、調と切歌はその場を後にした。

 

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「て言う事があったのデス!」

「ふ~ん、そうだったの。それにしてもその謎の生命体(ネコ)って何だったのかしらね?」

「結局分からず終いだった」

 

 と、収容所でそんな話をしているマリア達。盛り上がりに欠けたのか話はすぐに次の話題に切り替わる。

 そんな会話を扉越し聴いていた人物が一人。

 

(明日にしよ…)

 

 その日、事情聴取と言う建前のメンタルケア兼雑談を明日に見送ったセイバーなのであった。

 

━━━━━━━━━━

《セイバーさんと引き抜き》

 とある日。

 

「ぐぬぬぬぅぅぅ~…」

「…」

 

 私の目の前で翼さんが唸り声を上げてる。うん、分かるよ。どんな状況だよって話だよね。

 事の発端は数分くらい前。新設した仮設本部の中で訓練をしていた時の事。

 

「セイバー、少し頼みがあるのだが」

 

 翼さんから私にそう言ってきた。翼さんから頼み事をされるなんて珍しいからちょっと驚いた。

 

「頼みですか?私で出来ることなら構いませんが」

「すまない。実は[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を握らせてほしいのだ」

「[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を?」

 

 これまた唐突に突拍子のないお願いだなぁ…。取りあえず何でか理由を聞いてみる。

 

「うむ、数多くあるアーサー王物語の武勇に必ず登場するその()。防人であり、歌姫(うため)であり、なにより(つるぎ)である私にとっては心踊らない訳がないのだ!」

「はあ…」

 

 分かる様な分からない様な…。たまに出てくるこの翼さんの変なテンションは何なんだろうね?

 

「以前から頼みたいとは思っていたがなかなか機会がなくてな。今日ようやく果たすことが出来た!」

 

 翼さんがちょっと目をキラキラさせながら私を見てくる。

 そんなに握りたかったの…?あぁそういえば二課に入りたての頃、ノイズと戦ってる時にこっちをジーと見てた翼さんがいたっけ。信用されてないのかなぁ~って思ってたけど、アレって[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を見てたのか。

 

「まぁそれくらいでしたら構いませんが」

「本当か!!」

 

 グイッと迫る翼さん。近い近い近いから。

 とりあえず私は[騎士王の宝財(ゲート・オブ・キャメロット)]から[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を取り出して、先端を床に突き刺した(・・・・・・・・・・)

 

「どうぞ」

「う、うむ」

 

 恐る恐る[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]の握り(グリップ)を掴む翼さん。

 てか翼さんニヤけるのメッチャ我慢してる。新しい玩具買って貰った子供じゃないんだから。

 

「では、いざ!」

 

 翼さんが床に刺さった[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を引き…抜けなかった。

 

「ん?ふん!…ふんぬ!ぬうぅぅぅ~!!」

 

 全身全霊の力を使って引き抜こうとしてるけど[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]は抜ける気配がない。

 

 あれ?おっかしいなそんなに深く刺してない筈だけど?

 

「ハァ…ハァ…な、何故だ…」

 

 翼さんも息切れしながら疑問に思ってる。

 

「…ハッ!フッフッフッ…なるほどそう言う事か。人が悪いなセイバー…!」

 

 へ…、急にどうしたの翼さん?

 

「これは私が聖剣(エクスカリバー)を握る資格があるかどうかを選定する試練と言う訳だな!」

 

 ゑ…?

 

「伝承における[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]は王としての才有る者しか抜けぬ選定の(つるぎ)。こうして敢えて床に刺して渡したのは私がこの剣(エクスカリバー)を振るうに値するかを図るためだったのだな!」

 

※諸説ありますが[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]と

[勝利すべき黄金の剣(カリバーン)]は同一の物として扱われてい

たりします。

 

 …いや、…あの、ドヤ顔で名推理みたいな事言ってるけど…、単に私が無意識にそうやっちゃっただけで特に意味は無いんです…。

 

「この風鳴 翼、一人の(つるぎ)使いとして甘んじてその試練受けようではないか!!」

 

 ヤバイ…。完全に防人スイッチ入っちゃってる…。こうなると基本何言っても止まらないんだよなぁ翼さん…。

 

「ゆくぞ[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]!防人の生きざまと覚悟を篤と見るがいい!!」

 

 で、そう意気込んでから数分後(冒頭)

 

「ハァ…ハァ…フン!…だはぁ!ハァ…ハァ…フン!くっ…ぐぬぬぅぅぅ…!だぁ!ハァ…ハァ…」

 

 全身汗だくで悶えてる翼さんの姿があった。何度も引き抜こうと踏ん張ってるけど[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]は全く微動だにしない。私が引き抜いて手渡そうと提案しても何か意固地になって断るし、後半に至っては足に付いてるギアのブースターまで使って抜こうとしてもうなりふり構っていられないレベルまで来てるし。

 

 プシュー

 

「お~す、遅れて悪ぃn…何やってんだ先輩?」

 

 と、ここで学校の用事(委員会の手伝いとか)で遅れてたクリスちゃんがやって来た。

 

「ゆ…雪音か…」

「なんでセイバーの剣持ってそんな汗の濡れ鼠になってんだ?」

「それについては私が説明を」

 

 クリスちゃんに事の経緯を説明する。するとクリスちゃんは呆れ顔でため息をついた。

 

「んだよ先輩。たかが剣一本抜くのにそんなに苦戦してんのか?」

「むっ、そう言うなら雪音もやってみるがいい」

 

 あ、翼さんちょっと癪に触ったのかな?なげやりな言い方になってる。対してクリスちゃんは余裕そうな顔をでギア(イチイバル)を纏って[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]の前に立った。

 

「へっ、こーゆーのはただ力任せに引っ張りゃいいってもんじゃねぇんだ。要は力の入れ方だ。刺さってる箇所を支点にして左右交互に力を入れてやりゃあ(おの)ずと…あれ?」

 

 クリスちゃんが自分で説明した抜き方を実践してるけど[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]は全く動く気配がない。

 

「ぬ…、くっ!この…!ぐにぃぃぃ~…!クソっ!この野郎ぉ~…!」

 

 クリスちゃんが左右に体を振りながら[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を抜こうとする。

 で、しばらくして…

 

「だはぁ…、ハァ…ハァ…。クソ…何でだぁ…」

「それ見ろ、雪音でも抜けぬではないか」

 

 数分前の翼さんと同じ状態になるクリスちゃん。てかなんで翼さんはちょっと得意げなの?

 

 プシュー

 

「すみませーん!立花 響只今来ました!」

 

 と、今度は何時もの用事(レポートの再提出&補習)で遅れてた響ちゃんがやって来た。

 

「て、なんでクリスちゃんセイバーさんの剣握ったままそんなに汗だくになってるの?」

 

 つい数分前にクリスちゃんが言ったような事を言う響ちゃん。案の定、私が説明をする。

 

「え~、クリスちゃんこんな先っちょしか刺さってない剣も抜けないの~?」

 

 なんか響ちゃんニヤニヤしながらクリスちゃんを煽ってる…。

 

「ハァ!?んじゃテメェは抜けるって言いてぇのかよ!」

「まっかせなさい!これでも師匠に鍛えられてそこいらの子より力はあるからね!」

「ほぉ、それは是非とも見てみたいものだな」

 

 なんかもう趣旨変わってない?元々翼さんが[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]握りたいって言ったから始めたのにいつの間にか力比べになってない?

 んで翼さんは何でまた得意げなの?

 

「よし、それじゃあ見ててね!」

 

 と、意気揚々とギア(ガングニール)を纏いながら[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]の前に立つ響ちゃん。

 そのまま足を肩幅に開いてちょっと前のめりになりながら握り(グリップ)を両手で掴む響ちゃん。

 

 ちょっと待って、何か猛烈に嫌な予感がする。

 

「待ってくださいヒビキ。その姿勢はいけn」

「いっきまーす!せーの!」

 

 私の制止も聞かず[約束された勝利の剣(エクスカリバー)]を引き抜こうとする響ちゃん。

 そのまま思いっきり体を仰け反り…

 

 ゴギッ

 

「「「あっ…」」」

 

━━━━━━━━━━

 

 その後、響ちゃんは一週間ベッドで寝たきり状態となった。原因はぎっくり腰との事。

 

 私は貴重な装者を負傷させた責任を取って、響ちゃんの介護を未来ちゃんと一緒に付きっきりですることになった。

 響ちゃんが完治後、私は心に誓った。

 

(今後は頼まれても宝具の貸し出しとかしない様にしよ…)

 

 と。

 

 

 




今後もアイツらの出番はほぼ無いと思われます。そもそも作者(茶久良丸)ですら存在をすっかり忘れてました。

響ちゃんに関しては作者(茶久良丸)の実話がちょっとはいってます…。腰はマジでキツイッス…。
後あくまでギャグのネタとして書いているので難しく考えずに受け入れてくれれば幸いです。

予定として幕間の物語をもう一本ほど書いてGX編に行きたいと思っております。
今後もこの作品をよろしくお願いします。m(_ _)m

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