それではどうぞ!
《セイバーさんとマリアの癖》
どうも皆さん、いかがお過ごしでしょうか?セイバー(中身一般人の私)です。
今回はシャトルを救出した後の事を色々と話すよ。
まずは私の所属していた二課なんだけどシャトルを救出する時に国連からの許可を得て国外にも活動ができる超常災害対策機動部タスクフォース[
次に私の事。フロンティアの戦いから数ヶ月ぐらい後に英国政府から二課と日本政府に要請があった。
内容は簡単に言うとこんな感じ…
・二課に所属しているアーサー王
(以下“甲”と呼称)の身柄の要求
・甲の保有する完全聖遺物の即時英国への返還
・甲に関する二課並びに日本政府が知り得る
情報の開示
てな感じだった。他にも細々とあったけどよく覚えてないから割愛する。
どうして英国がこんな要求をしてきたか?それほウェル博士が原因だった。ウェル博士はあの後国連の事情聴取で私がアーサー王であることを暴露したらしい。しかもフロンティアで録ったと思われる戦闘データと一緒にだ。米国とか他の国は壮大な馬鹿話として扱ってケラケラ笑ってたけど、英国政府だけマジに捉えちゃったらしい。
まぁそうだよね。思っきし[
ただ分かんないのが私が持ってる聖遺物の
その事を含めて緒川さんに調べて貰ったら、英国首相とかは純粋に
まぁ世の中良い人間と悪い人間がいるからね、仕方ないっちゃ仕方ない。
で、その事を弦十郎さん報告してどうするかを聞いてみたら…
「こういった事に関して俺が一番信頼できる人物に頼んどく」
と言われた。
それから数週間後、英国からの要求は取り消しとなった。
理由はこんな感じ…
・英国政府がアーサー王(以下“甲”と呼称)
と呼称する者は元二課所属のエージェント
戸籍上においても甲などではない。
ウェル博士の証言は精神的に不安定で
確証性がなく、証拠としては不十分である。
また乙を甲とするならば何故性別が女性で
あるかの説明を英国政府側に要求する。
・甲が所持しているのは完全聖遺物ではなく
アンチノイズプロテクター[RN式回天特機装束]に
装備されている聖遺物の欠片である。
また甲の使用する[RN式回天特機装束]に
搭載されている聖遺物の返還を
要求するのであればその聖遺物を英国政府が
保有していた際の記録を即時日本政府に
提示する事を要求する。
・甲に関する情報は日本政府が国連に提示した物が
全てであり、乙に関する情報も同様である。
てな感じ。
まぁなんて言うか嘘半分真実半分って所だよね…。特に聖遺物に関してはほとんど作り話だし。資料でしか見たことないよ[RN式回天特機装束]なんて…。
あ、[RN式回天特機装束]っていうのは簡単に言うと、歌の代わりに
おっと話が逸れちゃったね。ともかく日本政府は英国政府に上記の要求をしたけど英国政府は何一つ証明出来なかったみたい。
まぁ当然と言えば当然だよね…。
てな訳で私の問題はなんとか解決した。今回の事に助力してくれた人はなんでも弦十郎さんのお兄さんらしい。今度会ってお礼が言いたい。
さて最後にマリアさん達についてだ。
マリアさん達は国連に連行された後、米国政府に死刑を言い渡されたんだけど日本政府がフロンティア事件の経緯を全て国連に報告した事で、米国は公式的にマリアさん達を死刑にするために[F.I.S.]で行っていた非人道的な人体実験の経緯も説明しなくちゃいけない立場になった。なので米国は[F.I.S.]の存在そのものを無かった事にして、マリアさんの行動自体は…
『実は彼女は国連のエージェントで武装組織[フィーネ]にスパイとして潜入捜査を行っていた』
て言う筋書きが作られた事でマリアさん達は国連指導の特別保護観察の建前で監視下に置かれる事になった。
ただ国連エージェントと言う肩書きは言っちゃえば自由の無い立場だと言える。国連は司法取引で共犯者の切歌ちゃんと調ちゃん、ガングニールを渡した響ちゃんの将来を盾にしたらしくて、マリアさんは国連のプロパガンダとしてアイドル活動をしなくちゃいけなくなった。今は世界各地を点々としてチャリティーライブをしている。
てのがシャトルの救出した後に起こった事の全てだ。
で、それを踏まえた上で今私が何をしているのかと言うと。マリアさんのマネージャーだ。
もちろんこれにも裏がある。
弁明状国連所属になったマリアさんだけど、それをよく思ってない人達も国連の中にはいる(特に米国)。
なのでそういったのからマリアさんを守るために元二課のエージェントである私がマネージャー兼護衛として側にいることになってる。
ちなみに国連の人達には難癖つけられたけど武装組織[フィーネ]の行動が日本国内で起こった事を理由にマリアさんには日本側の監視も必要なのだとそれっぽい言い訳をした。それでも米国は国連の護衛だけで十分だとか言ってきたので、奥の手として武装組織[フィーネ]が決起してから証拠隠滅の為に日本に無許可で武器による武力制圧の実行とその失敗、[フィーネ]との秘密会談によって発生したスカイタワーでの
あの時の米国は[F.I.S.]の機密を守るために躍起になってたらしくてだいぶバタバタしてそうなったとのこと。まぁ内容が内容だからね。いくら米国でも国連加盟国に良い顔はできるモンじゃない。
よし、一通りの説明は終わったかな?
ともかく色々な厄介事を何とか片付けて、今日も世界の為に身を粉にして私は働いているのだった。
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で、さっき説明したマリアさんのマネージャーの件だけど、別段翼さんのマネージャーをやってた時としてることはあんまり変わってない。チャリティーライブの企画を考えたりTVの取材を受けたりでちょっと翼さんより忙しいかなってぐらい。
あ、でもちょっと違う所もあった。
スゲェーよ…、最高級ホテルの最上階貸し切って、ドレスコードで来てる人皆高級そうなドレス着て、見るからにセレブって人ばっかりだ。出されてる料理も一流の物がケータリング式で並んでる。やっぱスゴいんだなマリアさん。伊達に全米チャートでトップに出るだけの事はあるよ。なんか私スゴく場違いな気がする。
「これはこれは
「あら、ありがとう」
向こうの方ではマリアさんが色んな有名人や業界の偉い人とお話をしてる。やっぱ世界が違うってやつなのかなぁ…。
…おっと、私の[直感]スキルが何かを感じ取った。私は[直感]スキルが指し示す方角を見る。上品そうなスーツを身に纏った男の人がマリアさんに近づこうとしていた。私は自然な感じでその人の前に立って通せんぼをする。
「…なんだね君?邪魔だよ」
「失礼。マリア・カデンツァヴナ・イヴのマネージャーをしている者です。申し訳ありませんが彼女との会談をお求めならお引き取りを」
「なに?たかがマネージャーが誰に物を言っている。私以外にも話している人物がいるじゃないか。ならb」
「お引き取りを…!」
「っ!?ちっ…!」
舌打ちをしながら離れていく男の人。間違いなくマリアさんの事をよく思ってない人がまわした刺客だね。さっきのが私がこんな場違いな所にいる理由だ。私の[直感]スキルで件の相手を炙り出して[カリスマ]スキルで追い返す。マリアさんを守る為だからね、場違いな空気ぐらいは我慢しないと。
さとて、そろそろお開きの時間だ。
私はある人物に目を向ける。その人はさっきから挙動不審にキョロキョロと周りを見渡して人の目が無いことを確認している。私はその人物に気付かれない様にゆっくりと近づく。そしてその人物が懐に手を入れた瞬間…
スッ…
ガシッ
「マリア、何をしているのですか?」
「セ、セイバー…これは違うのよ」
「何がどう違うのか一から十まで説明を要求します」
そう、その人物とはマリアさんの事だ。マリアさんは懐から取り出したタッパーと菜箸で料理を積めようとしていた。しかもこれが初犯じゃなくてケータリング式の会食の時に必ずやっているらしい。調ちゃんと切歌ちゃんから話聞いててよかった。
「ほ、ほら…育ち盛りの調と切歌に栄養のあるもの物を食べてもらおうと…」
「すでに二人にはS.O.N.G.から生活に支障がない様、給金が出されてます。あの二人なら無駄な浪費をする事もしないでしょう。料理も出来ますしその心配は無用かと」
「で、でも…万が一な事も…」
「定期的にS.O.N.G.内で検診を受けています。万が一な事があれば直ぐにでも対応出来ますし、私が日本に戻った時には料理を作りにも行ってます」
「…あ!今日のお酒のおつまm」
「私が作ります…!」
マリアさんの言い訳を悉く論破してしていく。なんでそこまでしてやりたがるの?
「ともかく
「あぁ~…」
私がタッパーと菜箸を奪い取るとマリアさんが残念そうな声を上げる。全く、マリアさん今の自分の立場分かってる?今は国連のエージェントって肩書きなんだからそれ相応の振る舞いをしないとなんだからこんな貧乏人みたいな事しないでよ。
なおこれを境に会食の毎に私とマリアさんとでこんなやり取りが繰り返される事をこの時の私は知る由も無かった。
え、それで結局料理はどうしたかって?私が責任持って食べたよ、全部。
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《セイバーさんと小さな一歩》
ある日の事、私は諸事情で日本に戻って来ていた。まぁ理由はもちろんS.O.N.G.関連の事なんだけど説明がめんどくさいから割愛する。
で、仕事が終わってから私はある人物達の所に来ていた。
「キリカ、野菜は切り終わりましたか?」
「終ったデース!」
「ではその野菜をこちらのボールに入れてください」
「合点承知之助デース!」
切歌ちゃんが元気良く答えてくれる。そう、今私は調ちゃんと切歌ちゃんの自宅に来てる。マリアさんを含めて二人とも[フィーネ]にいた頃は中々食生活で苦労していたらしい。なので二人の健康管理の為に日本に来た時はこうして二人のために料理を作りに来てる。
あ、ちなみにだけどクリスちゃんは最近自炊が出来る様になったから料理しに行く事はちょっと減ったけどしなくなった訳じゃないから。私としてもクリスちゃんと肩を並べて料理するの楽しいし。この間もハンバーグの作り方を教えて欲しいって言われて凄い嬉しかったな~。
おっと話が逸れた。
まぁぶっちゃけちゃうとまた私がお節介を焼いてるって話ってだけなんだよね。あぁ、あともう一つ目的がある。
「あの…セイバーさん、肉じゃがのお肉は牛肉でいいんですか?」
「いえ、肉じゃがの肉に指定はありません。豚肉でも牛肉でも、なんなら鶏肉でも問題ありません。今日は牛肉が安かったのでそれを使用するだけです」
「そう…なんですか…」
「はい。シラベはそのまま牛肉を色が変わるまで炒めてからキリカが切った野菜を入れてください」
「分かりました…」
ぎこちなく答える調ちゃん。私のもう一つの目的は調ちゃんと仲良くなる事だ。切歌ちゃんとはすぐに打ち解けたんだけど調ちゃんとはなんかまだ壁がある感じなんだよね。このギクシャクしたのを何とかしたくてこうして会う機会を作ってるんだけど中々上手くいかないんだよなぁ…。まぁこればかりは時間を掛けないと何とも出来ないからね。諦めずに根気よくいこう。
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「およ?セイバーさん、このバターはなんデスか?」
「これですか?これは肉じゃがの煮崩れ対策のモノです。一緒に煮込むとバターに含まれるペクチンと言う成分が煮崩れを防止してくれるのです」
「でも、味が濃くなったりしないデスか?」
「醤油とお酒の量を調整すれば問題ありません。むしろじゃがバターの様な風味になって食べやすくなりますよ」
「ほ~、セイバーさんは物知りデース!」
切ちゃんとセイバーさんが楽しそうにそんな会話をしている。フロンティアの戦いの後、死刑判決を受けていた私達を助けてくれた日本政府や二課(現S.O.N.G.)の人達のお掛けでF.I.S.にいた頃には考えられないほど充実した毎日を送れている。正直感謝してもしきれないほどだ。そしてそれはセイバーさんに対してもだ。こうして私達を気遣ってお料理をしに来てくれている事も凄く感謝している。
でも、私はそれを口に出来ないでいる。
フロンティアの事を含めて色々な面で迷惑をかけた後ろめたさが邪魔をして素直な気持ちを伝えられない。特に響さんに関しては『偽善者』と言ったことを謝りたい。後から響さんの身の上を色々と知って私は自分が恥ずかしくなったと同時にセイバーさんに言われた事が心の中でこだまする。
上っ面だけで人を判断してそれを偽善者と罵る私こそ偽善者以前の邪悪、全くその通りだ。今からでもあの時に戻って自分自身を殴り飛ばしてやりたいと思うほどだ。
セイバーさんと会話する時、そんな幼稚な羞恥心の所為でどうしても壁が出来てしまう。どうにかできないモノかと悶える一方だ。
「――ベ?聞――ま―か、シラベ?」
「へ…?」
ふとセイバーさんが私を呼んでいた。一瞬だけ反応が遅れてしまう私。
「もう牛肉の色が変わっているので野菜を投入してください」
セイバーさんに言われ持っていた鍋を見てみる。全体の色が黒く変わった牛肉がそこにはあった。私は少し慌てて切ちゃんが切ってくれた野菜の入ったボールを取り、鍋の中に入れる。
「どうかしましたか?」
「あ…えっと、すみません…」
理由を言える筈もなく謝ってしまう。同時に自己嫌悪が私を襲う。
するとセイバーさんが私の後ろに回り、右手を鍋を持っている私の右手に重ねた。客観的に見て後ろから抱き締められている様な体勢になっている。
「始めの内は皆戸惑うものです。無理もありません」
きっとセイバーさんは私が始めて作る肉じゃがに戸惑ったのだと思われたんだろう。『違う』と言えれば良かったがその言葉が喉から出てこない。
「少しずつ、自分のペースで良いのです。一歩一歩確実に踏み出せていれば何時かは向かうべき場所に辿り着けるのですから」
セイバーさんの言葉が心に刺さる。きっと本質は違うのだろうけど。
自分のペースで確実に…。
そうすれば何時かは行けるのかな?私が
なら…
「あの…、セイバーさん」
「何ですかシラベ?」
「その…、もし…もし良かったら何ですけど、今後も私が知らない料理をしに来てくれる時に色々と教えてもらえませんか?」
最初の一歩。ほんの少し…例え半歩でもいいから進みたい私の気持ちから出た、小さな一歩だ。
少しうつ向きなぎらも横目でセイバーさんの顔を見る。目が少し見開かれ驚いてる様に見える。だけど直ぐに優しく微笑む。
「えぇ、シラベが良ければ是非」
その一言を聞き、私の少しだけ心が穏やかになる。この一歩はきっとちゃんと前に進んでるモノだと分かったからだ。
「であればシラベは私の弟子二号になりますね」
「二号?」
「えぇ、一号はクリスですので」
「そうなんだ…」
クリス先輩も料理をするんだ…。なら話が合うかもしれない。
そんなことを考えていると…
「とーう!」
ドンッ
不意に切ちゃんがセイバーさんの背中に飛び付いた。少しだけビックリする。
「キリカ?」
「えへへ~、何やらセイバーさんが調に抱き付いてるのでアタシはセイバーさんに抱きついたのデース!」
「調理中の鍋を持った相手に後ろから抱き付くのはどうかと思いますよ?」
「ごめんなさいデース!」
悪びれの無い切ちゃんの謝罪に「やれやれ」と呆れながらも微笑むセイバーさん。
何時か私も切ちゃんみたいになれると良いな。
そう思いつつ今はこの一歩を大切にしようと心から思った。
その日始めて作った肉じゃがは、思っていた味とはぜんぜん違っていたけどとても美味しく出来た。
コロナでお店が何処もかしこも閉まる中、この作品が少しでも読者の皆さんの暇潰しになっていれば幸いです。
次回から本格的にGXが始まります!お楽しみに!