戦姫絶唱シンフォギア 輝ける星の聖剣   作:茶久良丸

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ぐだぐだ邪馬台国
最早、戦国も新撰組関係ねぇーじゃねーかよ!と突っ込みを入れつつ楽しくイベント攻略中の作者(茶久良丸)です。
今回、恐らく(ほぼ確実に)予想されてた展開が来ます。
それではどうぞ!


抜剣 そして―――

 強化型シンフォギアが完成し翼とクリスが現着したことで状況が一変する基地施設。

 

「おっ!新しいお仲間カ?」

 

 セイバーと鍔迫り合いを続けているミカの注意が翼達に向く。

 

「はぁぁぁ!!」

 

 その隙を突きセイバーが[魔力放出]を一気に吹かす。不意打ちをくらいカーボンロッドが砕けるミカは衝撃で後方へと吹き飛ばされ施設の外壁に叩き込まれる。

 

「畳み掛けるぞ!」

「おう!」

 

 それに乗じ、翼とクリスがミカに追撃をかける。

 

【蒼刃罰光斬】

【MEGA DETH FUGA】

 

 居合い術から放たれた斬撃と大型ミサイル二発による集中攻撃。それらは間違いなくミカに向かって直撃した。爆破地点から黒煙があがりミカの姿が一時的に見えなくなる。翼とクリスはセイバーの隣へと降り立つ。

 

「ツバサ、クリス」

「待たせたなセイバー。ここからは防人が助太刀する」

「っても今終わっちまったかもだけどよ」

 

 余裕そうなクリスが広角を上に上げる。だが油断も隙もない。警戒は続けていた。実際アルカノイズに対して揚げ足を取られたのはそれが原因なのだから。

 

 やがて爆煙が晴れる。そこには翼とクリスの一撃により倒れ伏すミカの姿…ではなく、錬金術による障壁によって無傷のミカと…

 

「面目ないゾ」

「いや、手ずから凌いで分かった…。オレの出番だ」

 

 その主であるキャロルであった。

 

「アレがキャロル・マールス・ディーンハイム…」

「ラスボスのお出ましとはな」

「だが、決着を望むのはこちらも同じ事!」

 

 キャロルの姿を目視した三人は己の武器を構え直し改めて臨戦態勢を取る。

 

「全てに優先されるのは計画の遂行。ここはオレに任せてお前は戻れ」

「分かったゾ!」

 

 キャロルの命令を受けミカはその場で跳躍、懐から転移用のテレポートジェムが入れられた結晶を手元で割り瞬時に離脱する。

 

「とんずらする気かよ!?」

「案ずるな、この身一つでお前等三人を相手するぐらい、造作もない事」

「その風体でぬけぬけと吠える」

 

 『自分一人で事足りる』と明らかな挑発をするキャロル。逆に翼はキャロルの幼い容姿を盾に挑発し返す。

 

「なるほど。なり(姿)を理由に本気が出せなかったなどと言い訳される訳にはいかないな」

 

 その挑発をキャロルはあえて受けた。キャロルは左手を真横に掲げ魔方陣を展開する。

 

「ならば刮目せよ!」

 

 陣から現れたのはハープらしき紫の弦鳴楽器。キャロルはそれを手に持ちまるで自然体の様に楽器の弦を掻き鳴らす。戦闘中には似つかわしくない弦から鳴り響く美しい音色がこだまする。するとキャロルを中心に眩し光が溢れだし、その姿を一瞬だけ隠す。そして光が収まると、そこには成人女性ほど成長したキャロルが[ファウストローブ]と呼ばれるプロテクター、[ダウルダブラ]を纏った状態で立っていた。

 

「これくらいあれば不足はなかろう?」

 

 自身の急成長した胸部を揉みしだきながら挑発するキャロル。さらに続けて…

 

「精々楽しませろよ?あの出来損ないの小娘共(・・・・・・・・・・・)の様に簡単に散られては面白くない」

 

 プッツン(・・・・)

 

 そう告げてきた。

 

「テメェ…!」

「言うに事欠いて月読達を出来損ないと罵るか…!」

 

 あからさまの挑発であったが調達を馬鹿にされ怒りを覚える翼とクリス。だが翼達より強い怒りを覚えている人物が一人いた。

 

「やあぁぁぁぁぁ!!」

「ッ!?セイバー!?」

 

 セイバーが唐突に[魔力放出]で急加速、キャロルに一気に肉薄し[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]を上段から振り下ろす。キャロルも両手の指先から弦鳴楽器の弦を伸ばし[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]を受け止める。

 

 ガキュイ!

 

 ぶつかり合った聖剣と弦は激しい火花を飛ばす。

 

「まずは貴様からか!面白い!」

 

 [約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]と[ダウルダブラ]の弦が弾け合いセイバーとキャロルとの間に一旦距離ができる。キャロルは陣を形成し錬金術による攻撃を仕掛けようとする。逆にセイバーは手にしていた[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]を[騎士王の宝財(ゲート・オブ・キャメロット)]に戻し代わりに別の剣を呼び出す。だがセイバーがその剣を手にする瞬間を狙ってかキャロルの展開した陣から錬金術によって構成された火と水が渦を巻きながらセイバーに向かって放たれる。

 

 ドゴーン!

 

 激しい爆発と共に黒煙が上がりセイバーの姿が見えなくなる。だが次の瞬間…

 

「ハァァァ!」

 

 黒煙の中からセイバーが飛び出しキャロルに一直線に突っ込んでくる。

 

「チィッ!」

 

 キャロルは舌打ちをしながらも再び[ダウルダブラ]の弦で防御の体制に入る。

 

 ガキュイ!

 

 二度(にたび)ぶつかり合う(つるぎ)と弦。だがこの一撃は違っていた。

 

「なっ!?[ダウルダブラ]の弦が燃えている(・・・・・)!?」

 

 そう。キャロルが防御の為両指から展開した弦がセイバーの剣とぶつかり合った瞬間燃え始めたのだ。

 

 キャロルはセイバーの持つ剣を見る。セイバーの手には[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]ではなく、出し渋っていた[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]が握られていた。

 そしてその(ガラティーン)炎が渦を巻きながら迸しっていた(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 セイバーはキャロルの攻撃を受ける直前、[騎士王の宝財(ゲート・オブ・キャメロット)]から[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]を取り出し[聖者の数字]を発動させていたのだ。これによりセイバーは通常時の三倍の戦闘力を獲り、さらに[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]から放たれる灼熱の炎による攻撃が追加された。

 

 キャロルの両指から伸びている弦が焼き切れ、[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]はキャロルめがけ振り下ろされる。

 

「ぐっ!」

 

 キャロルは思い出を焼却し錬金術で強度を高めた[ダウルダブラ]の弦を両指から新たに精製し防御する。

 

 ガキュイ!

 

 三度(みたび)ぶつかり合う(つるぎ)と弦。強度を高めた事で弦は焼ききれず[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]を受け止めている。だが…

 

「ウオォォォ!!」

 

 セイバーは一撃でダメならと二撃・三撃と続けて斬撃を与え続ける。キャロルも反撃に移りたがセイバーの斬撃による応酬が激しく、防御を怠れば間違いなく致命傷になりうる一撃を弦で防御する他なかった。やがて[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]を受け止め続けていた弦は消耗し燃え始める。

 

(オレの思い出を焼却して強化した[ダウルダブラ]の弦が押される!?これが完全聖遺物のスペック…!いや、その性能をフルに使いこなすコイツ(セイバー)のポテンシャルも凄まじい…!)

 

 内心セイバーを称賛すると同時に恐怖するキャロル。そして当のセイバーは…

 

(どうして…どうして私は何時も守れないんだ…!)

 

 己の所業を悔いていた。

 

(何時だってそうだ…。手を伸ばせば届くはずの所にいるのに…。なのに…何時も壊れてしまう…!守りたいと…救いたいと…助けたいと思っているのに…!)

 

 セイバーの脳裏に過ぎるのは己の不甲斐なさによって傷を負う響達の姿。

 時に響がミカによってギアを砕かれる姿。

 時に翼がギアを砕かれ倒れ伏す姿。

 時にマリアが[ガングニール]を纏い、血みどろとなる姿。

 そして調と切歌がミカによってギアを砕かれる姿。

 

 セイバーにとってはどれ一つとっても己の失態の結果と認識していた。

 

(どうしてだ…!

 どうして!どうして!!どうして!!!)

「ウオォォォォォォ!!」

 

 己の怒りと悲しみを[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]に乗せ、キャロルにぶつける。それがあまりにも自分勝手で愚かしい事だとはセイバー自身がよく分かっている。

 

 だがぶつけずにはいられなかった。

 

 セイバーの中にある責任感が自分自身を律しなければならないと突き動かす。

 剣を振るうには理由が必要だ。

 ならば己の怒りと悲しみに据え置きしよう。

 今のセイバーにあるのは『この事態を引き起こした主犯であるキャロルを倒さなければならない』と言う想い(強迫観念)のみであった。

 

 セイバーの猛攻は果てしなく続き、ついにその時がきた。

 

 [転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]を弦で受け止め続けていたがついに弦が斬撃と炎に負け焼き切れる。切れた瞬間両手が広がり無防備な胴体がさらけ出されるキャロル。その隙を逃さずセイバーは[魔力放出]で一気にキャロルの懐に入り込む。

 

(しまっt)

(獲った!)

 

 懐に入り確実に[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]の一撃を入れられる所でセイバーは確信する。キャロルは新たに弦を精製しようと試みる。だがすでに遅い。間違いなく弦を精製する前にセイバーの[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]の方が速くキャロルの体に一撃入れられる。それも致命的な一撃をだ。

 そしてそのまま[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]がキャロルの胴体めがけて振り下ろされる。

 

 その瞬間であった。

 

 シュウゥ…

 

 [転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]の刀身から炎が消えた(・・・・・)

 

「なっ!?」

 

 突然の事態に動揺が走るセイバー。

 

 [転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]の炎が消えた原因、それは[聖者の数字]にあった。セイバーは今、[聖者の数字]によってその戦闘力を三倍にまでに底上げしていた。だが[聖者の数字]には弱点がある。

 

 効力が発動する条件は9時から12時、15時から18時の区間のみであること。

 

 発電施設が襲撃された時刻がおよそ15時半過ぎごろ、そして戦闘が始まって既に二時間以上が経過し、現時刻は18時丁度。[聖者の数字]の効力がまさにその瞬間切れたのだ。

 

 そしてその好機をキャロルは見逃さない。自身に向け振り落としていた[転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)]を片手の指先から弦を伸ばし、ぶつける。

 

 ガキュイ!

 

 打ち勝ったのはキャロルの弦である。

 動揺に加え、[聖者の数字]の効力が切れた事で戦闘力が落ちたセイバーでは[ダウルダブラ]の弦を押し返す事は出来なかった。(ガラティーン)を両手で持っていたセイバーは弾かれた事で強制的に上に上げられ、無防備な胴体がむき出しとなる。

 

 形勢逆転。キャロルは透かさず伸ばした弦を螺旋状に回転させドリルの形状にし、錬金術で形成された風を纏わせセイバーの胴中に突き刺す。

 

 ドスンッ!

 

「ガハッ!?」

 

 直撃。防御も出来ずまともに受けた一撃によりセイバーの体は後方に吹っ飛ばされ、施設の外壁に突っ込む。

 さらにキャロルはだめ押しとばかりに錬金術で形成した四大元素(アリストテレス)による攻撃がセイバーに向かって放たれる。

 

 ドガーン!

 

「グアァァァァァ!!」

「「セイバーッ!!」」

 

 セイバーの悲鳴に翼とクリスの叫びが響く。翼達は先ほどまでのセイバーの猛追に圧倒されその様子を観戦するしかなかったが、セイバーがキャロルの反撃を受けた事で思考が戻ったのだ。

 

 やがて外壁から上がった土煙が晴れる。そこには蒼い衣と白銀の鎧(第二霊基)が土や砂で汚れボロボロの姿となったセイバーがうつ伏せで倒れていた。

 

「ぐっ…ぐぬぅ…」

 

 だがまだ意識はあったらしく[騎士王の宝財(ゲート・オブ・キャメロット)]から[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]を取り出し、それを杖代わりに起き上がろうとする。

 

「まだ…だ…私は…まだ…。わた…し……は…」

 

 だが奮闘虚しくセイバーは再び倒れ、そのまま意識を失ってしまう。戦う意思の現れだろうか、[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]は握られたままである(・・・・・・・・・)

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 セイバーが倒れた事を確認しキャロルは肩で息をしながらも一時の安堵を得る。

 

(想定を遥かに越える量の思い出を焼却した…!向こう(セイバー)に何かしらのアクシデントがあったらしいが、それがなければ間違いなく()られていた…!)

 

 自身が幸運を拾った事を冷静に分析しながら息を整えたキャロルは、目線を翼達に向ける。

 

「次は貴様等だ」

「おのれ…、よくもセイバーを…!」

アイツ(セイバー)の分もたっぷりと利子付けてやらねぇとな…!」

 

 翼とクリスはお互いを見合い頷くと己のギアのマイクユニット(ペンダント)に手を伸ばす。

 

「フン!弾丸(たま)を隠しているなら見せてみろ。俺はお前等の全ての希望をブチ砕いてやる!」

「付き合ってくれるよな?」

「無論!一人で行かせるものか!」

 

 覚悟を決めた二人は左右に枝分かれした形になったマイクユニット(ペンダント)の両端を押し込む。

 

「イグナイトモジュール!抜剣!!」」

 

━━━━━━━━━━

 

「私ね将来はお花屋さんになりたいの!」

 

 私の目の前にいる少女がそう私に答える。その表情は満面の笑みを浮かべている。きっと彼女は将来、花屋になれる事を信じているのだろう。未来に疑いがなどないのだろう。

 

「貴女は何になりたいの?」

 

 彼女が私に問う。私は…

 

 答えない。

 

 いや、答えることが出来ない。なぜなら私には未来を創造が出来ないからだ。これと言った夢や目標が思い付かず、ただ今を生きているだけの存在だ。

 私は彼女に微笑みその問いを誤魔化した。彼女は私がただ笑った事に疑問を持ちながらもすぐにそれを忘れ、別の話題に変えていく。

 

 きっと私にだってその内、彼女の様に夢を持つことが出来る筈だ。根拠の無い保身で自分を立てた私は後になってそれを後悔した。

 

 歳を重ねる。無知な子供だった皆が大人に近づいていく。そして皆が考える。自分の将来を。明日(未来)への不安と期待を胸に自分の道筋を各々が色んな形で悩んでいた。そんな中で私は…

 

 ただ孤独に座っているだけだった。

 

 分からない。

 どうして私は皆とは違うんだ…。どうして私は夢を抱けないんだ…。どうして私は何もないんだ…。

 

 どうして―――、どうして―――、どうして―――

 

 

 

 

 

『まったく…見ておれんな』

 

 声がする。暗く、重く、鋭く、荒く…何より深い悲しみを感じる声だ。

 

「だ、誰…」

『私が誰か、お前が問うか…?お前が一番良く知っていると言うのに…。フッ…まぁ良い。小娘どものおかげで私も出やすくなった。頃合いか』

 

 体の力が抜ける。

 いや、どちらかと言うと私が体から抜けていく様(・・・・・・・・・・・)な感じがする。

 

()われ。それ(・・)は私が貰う。貴様の役目は終わったのだ。さぁ、もう目を閉ざすがいい。せめて私の中で優しい夢を見て眠れ』

「ま……て………」

 

 過ぎ去っていく背中に届くはずの無い手を伸ばす。背中はやがて影に消え、私の意識は闇へと落ちた。

 

━━━━━━━━━━

 

「信じよう!胸の歌を!シンフォギアを!!」

「ヘッ!この馬鹿()に乗せられたみたいでカッコつかないが…」

「もう一度行くぞ!」

「イグナイトモジュール!」

「「「抜剣!!」」」

 

 響達三人が己のギアのマイクユニット(ペンダント)に手を伸ばし、両端を押し込む。マイクユニット(ペンダント)は空中で変形し鋭利な針の様になる。針は響達の胴中に向かって一直線に落ち、そのまま響達を貫く。

 

「「「グアァァァァァ!!!」」」

 

 [ダイスレイフ]により心の闇が増幅され、暴走状態となる。禍々しい漆黒のオーラが響達を包み、想像を絶する苦しみが身体中を蝕む。

 

(未来が教えてくれたんだ…!力の意味を…!背負う覚悟を…!だから、この衝動に塗りつぶされて…)

 

 しかし響達の意思は強く、呪いに抗い続ける。

 そして…

 

 (((なるものかぁぁぁ!!!)))

 

 響達は呪いを()ね除け、己の力に換えてみせた。各々のシンフォギアが漆黒に染まり鋭利な突起が身体中に張り巡らされる。モジュールの起動と同時にトリオ曲が施設内に響き渡る。

 

『モジュール稼働!セーフティダウンまでのカウント、開始します!』

 

 [ニグレド]、[アルベド]、[ルベド]からなる三段階のセイフティーが起動し999カウントの制限時間が始動する。

 

 

 

 

 

 だが!

 

『待ってください!モジュールは起動しましたが各装者のギア出力、想定の五割ほどしか出ていません!』

『何だとっ!?』

 

 友里の報告に驚愕する弦十郎。そしてそれはイグナイトを成功させた響達装者も同じである。

 

「一体何が起きている!?」

「まさかあの野郎(エルフナイン)、アタシ達をハメるつもりで!?」

「そんな事ないよ!エルフナインちゃんは私達の為に!」

 

 イグナイトモジュールの責任者であるエルフナインを疑うクリスを響は弁護する。

 

『出力尚も低下中!それと同時に未確認のエネルギーが上昇中!場所は…

 

 装者の真後ろ(・・・・・)です!!』

 

 藤尭の報告に装者達がすぐさま振り向く。

 そこには…

 

 禍々しい漆黒のオーラを身体に纏うセイバーがそこに立っていた。

 

「セイ…バー…さん…?」

 

 響がセイバーの名を恐る恐る口にする。だがセイバーに反応は無く、俯いているためその表情は見えない。

 すると突如…

 

 ドゴォォォン!

 

 セイバーから漆黒の魔力が溢れだし、セイバーを包み込む。やがて漆黒の魔力から(まゆ)の様なモノが現れ、膨張し始める。やがて膨張し続けた(まゆ)は弾け中にいたであろうセイバーが再び姿を表す。

 

 だがそこには響達の知るセイバーではなかった。セイバーの特徴とも言えた美しいブロンドと白人特有の透き通る様な白い肌は更に白さを増し、まるで血の気の無い死人色になり。蒼い衣と白銀の鎧(第二霊基)は魔力と同じ漆黒に染まり、鎧にはまるで血管が張り巡らされたかの様な深紅の模様が施されている。そして何よりも目立ったのがセイバーの目元を覆うように付けられた鎧同様の色と模様のバイザーと右手に握られている漆黒の[約束されたの勝利の剣(エクスカリバー)]であった。

 

 真逆。何もかもが真逆で禍々しいセイバーの姿に響達は恐怖した。

 

「…」

 

 そんな響達を余所に漆黒に染まったセイバーは仁王立ちをするキャロルを見据える。

 

 

 

 




それは求られながらも
否定された存在

次回『漆黒の緋王(ひおう)

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