マジカル・ジョーカー   作:まみむ衛門

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お久しぶりです。

二年目九校戦のラストにて、「それはこれ以上、語られない話である」なんて書きましたが、実際はそのあとの展開は脳内でうすぼんやりと出来ていました。ただ、あれ以上長いと完結できるか不安なのと、そもそも当時原作がまだ完結しておらず先行き不透明と言うことで、書くつもりはありませんでした。

今回は、そんな脳内でうすぼんやりと浮かんでいた、高校生編ラストの展開を少しずつチラ見せしながら、少し変わった形式で、本編中の主だったキャラ・オリジナルキャラクターの紹介をしようと思います。

なお、原作の展開からは大きく外れてますので、ご了承ください。


ツイッターアカウント作りました。裏話や告知がメインです。マシュマロやリプで質問にもお答えしています。
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USNA軍諜報部報告書 日本国の学生魔法師の戦力評価(2098年3月)

※これはUSNA軍による、日本国に属する学生魔法師を調査した報告書を、四葉家諜報部が秘密裏に手に入れ、和訳したものである。

 

 2096年からその萌芽が見え始め、2098年に本格化し、すぐに終結した国際テロ未遂事件、通称「ラグナロク事件」があった。

 

 大亜連合を中心として世界各国大小の組織を隠れ蓑として活動していた、世紀末に世界が滅ぶという「予言」を信奉する狂信者団体『アルマゲドン』による、世界で一斉に核兵器を放ち人類を滅ぼそうとした事件である。

 

 世界各国様々な場所に秘密基地を作り、さらに秘密裏に実用的な核兵器の大量生産を行っていた。また様々な組織に入り込んで洗脳・支配を広げていて、軍隊や兵器を思うままに動員することも可能であった。

 

 全体で計画を定め、世界で同時多発的に、2098年2月15日にテロ行為を開始。核ミサイルの発射、様々な組織・設備への破壊行為、軍隊を動員しての大規模侵攻などを行う。

 

 それらは無事防げたが、その阻止においては、世界中の魔法師、それも学生の活躍が目立った。USNA軍のアンジー・シリウスの、アメリカ国内の秘密核発射施設を単身で無力化した活躍は、記憶に新しいだろう。

 

 そのため、世界各国の学生魔法師についても、より一層の調査と警戒を要することは自明である。そこで諜報部では、各国の学生魔法師について調査し、概要と影響度をまとめることとした。

 

 ここには、魔法大国であり、同盟国でありながら仮想敵国でもある日本国の、主な学生魔法師について、それぞれの評価を改めてここに記す。

 

 総合評価は、S、A、B、Cの四段階とする。

 

 基準はそれぞれ

 

・S

 国家間・地域間の戦争において、単独でその趨勢を決定づける力がある。戦略級またはそれに匹敵する魔法師

 

・A

 国家間・地域間の戦争において、単独で戦場の趨勢を決定づける力がある。戦術級またはそれに匹敵する魔法師。スターズ一等星級と同等程度

 

・B

 軍属の魔法師・魔法兵士の中でも、特筆すべき能力がある。戦場に現れたら警戒を要し、各隊員に周知する必要があるレベル。スターズ隊員と同程度

 

・C

 学生にして、一般的な軍属魔法師と同レベル

 

 なお各評価に「特別」とついた場合は、本来はそれよりも下の評価を当てるべきだが、そのランク相応の脅威度・影響力が限定的にある場合である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・遠藤高安

 

 評価・C

 

 第三高校・一科・二年

 

 日本の伝統的な儀式でありスポーツでもある相撲のレスラー。

 

 儀式要素のほうには古来から魔法師が関わっており、そこに代々かかわる一族の出。

 

 精神的には未熟だが、体格・筋力・魔法力は軍属魔法師と比べ遜色ない。

 

 ラグナロク事件の際には、国防軍基地に侵入しようとする暴徒をケガさせることなく抑え込むことに貢献。

 

 

 

 

・百谷祈

 

 評価・C

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学に進路決定済み。

 

 日本国の魔法師名家である百家の一角・百谷家の次女。

 

 兄(後述)同様、射撃魔法の名手。反射神経と咄嗟の判断力に優れる。

 

 ラグナロク事件の際には、遠距離にある時限爆弾の配線を正確に打ち抜いて停止させ、商業施設の防衛に成功。

 

 

 

 

・百谷博

 

 評価・特別C

 

 国立魔法大学魔法学部・二年

 

 百谷家の長男。体が弱く運動能力もさほどではないが、魔法力に特に優れる。

 

 ラグナロク事件の際は臨時的に後方支援を担当しており目立った活躍はないが、その能力は軍属魔法師と遜色ないと見られ、特別Cとした。

 

 ただし問題行動が多く、軍属にはならないと見られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・吉祥寺真紅郎

 

 評価・B

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学に進路決定済み。

 

 加重系魔法のカーディナル・コードを発見した若い研究者。両親は佐渡侵攻にて亡くしており、一条家に保護されている。

 

 特筆すべき活躍は、後述の井瀬文也・中条あずさと協力して、数々の魔法工学的功績を打ち立てたこと。戦略級魔法『海爆(オーシャン・ブラスト)』や、隠蔽された核兵器を核反応が起こる前に検知する機械『N2』の開発において、主たる役割を担った。

 

 魔法力・戦闘能力も高く、『不可視の弾丸』の名手。より警戒を要すべき相手である。

 

 技術面での影響力が非常に高く、特別Aとする案もあったが、戦闘能力が限りなくCに近いため、Bとする。

 

 国際魔法師協会魔法工学賞を受賞。『N2』はこの事件を防ぐうえで中心的役割を果たした。

 

 井瀬グループ(後述)の主要メンバー。

 

※注

 

国際魔法協会賞

 

ラグナロク事件の際に、国際魔法師協会から見て目立った活躍をした魔法師に贈られた賞。

 

なお各国支部では、自国の魔法師に対して、支部賞を贈っている場合がある。

 

 

 

 

・十七夜栞

 

 評価・B

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学に進路決定済み。

 

 総合的な魔法力と運動能力に優れる、実戦的な魔法師。

 

 尖閣諸島の小島に秘密裏に建設されたミサイル基地に四十九院沓子(後述)と協力して乗り込み、機能停止させた。

 

 百家に属するが、養子である。

 

 

 

 

 

・四十九院沓子

 

 評価・B

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学魔法文化学部に進路決定済み。

 

 明治時代に表向きは断絶した、神道と水が得意な古式魔法の名家・白川伯王家を前身とする百家・四十九院家の出身。

 

 その出自の通り、水に関する魔法を得意としており、基本古式魔法師だが、現代魔法の扱いにも優れる。

 

 テロ事件での活躍は先述の通り。水の古式魔法を活かして、離島への速やかかつ隠密な上陸に成功し、また周辺の海水を多量に操って、基地自爆による火災を食い止めた。

 

 

 

 

 

 

 

・五十川沙耶

 

 評価・B

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学に進路決定済み。

 

 移動魔法の名家である百家・五十川家出身。その出自の通り、陸空海問わず、小規模高速高機動移動を得意とする。

 

 極度の方向音痴という致命的な弱点を持ち、かつ気弱で臆病と、戦闘魔法師には向かない。

 

 ただし後方支援や運搬などでは、軍属魔法師も敵わないほどの力を発揮する。

 

 テロ事件では、滝川和美(評価B)と協力して、二人だけで海上の船団を大きく攪乱することに成功。後述の横浜防衛に大きく貢献した。

 

 なお、森崎駿と恋人関係である。

 

 

 

 

 

 

・五十里啓

 

 評価・B

 

 国立魔法大学魔法工学部・一年

 

 魔法陣を筆頭とする魔法工学の名家である百家・五十里家の出身。その出自の通りの得意分野がある。

 

 中条あずさ(後述)に代わり、第一高校の生徒会長を務めたため、同期を筆頭に様々な組織との深い関係構築が結ばれている。

 

 数々の施設・基地へのテロリストによる襲撃を、彼が開発した高度な防衛設備によってしのいだ。

 

 一般人・民間人の命を守った数は多く、国際魔法協会特別平和賞を受賞。

 

 千代田花音(後述)の婚約者である。

 

 

 

 

 

 

・六十里颯太

 

 評価・特別B

 

 第三高校・一科・二年

 

 放出系魔法に関して名を上げた百家・六十里家の出身。得意分野はその出自の通りで、学力と魔法干渉力、運動能力に優れる。なお六十里家は、十師族である「八」系統の傘下である。

 

 能力的にはC相当だが、我が国が開発した戦略級魔法『ヘビィ・メタル・バースト』を井瀬文也より与えられて使用する。

 

 本来の使い方は出来ず、『ブリオネイク』のような魔法兵器を用いてビーム上に放つことしかできないが、生半可な魔法防御や重戦車を容易に破壊する力を持ち、戦術級相当の火力を出せる。

 

 この火力の危険性、および我が国の戦略級魔法を与えられており機密的に重要で、我が国への影響力は潜在的に高いため、特別Bとした。

 

 テロ事件においては、ニュージーランドにて、後述の真壁菜々と協力して、発射直後の複数核ミサイルの無力化に成功。『ヘビィ・メタル・バースト』によるミサイルの破壊を担当した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・黒羽亜夜子

 

 評価・A

 

 第四高校・一科・二年

 

 日本最悪かつ裏・表ともに最大級の影響力を持つ四葉家の分家・黒羽家出身。黒羽文弥は双子の弟。

 

 実働部隊として暗殺・諜報で活躍するほか、中学三年生のころから、四葉を代表して外国や様々な組織との裏交渉・相談を担当してきた。

 

 高い戦闘能力を持ち、特に警戒すべきは、スターズ内でも並ぶ者がいないほどの干渉可能領域の広さである。それを利用した『極致拡散』は、どのような場面においても脅威。

 

 テロ事件においては、弟と協力し、主に北海道地域の複数秘密基地の破壊工作で活躍。豊かな自然資源を守りながらの手際のよい破壊工作だったため弟とともに国際魔法協会から環境賞の受賞を打診されたが、弟とともに断った。

 

 

 

 

 

 

 

 

・黒羽文弥

 

 評価・A

 

 第四高校・一科・二年

 

 四葉家の次期当主候補になるほどの魔法力を持つ。体格以外のこれと言った弱点が無く、総合力に優れる。

 

 特に脅威なのが、黒羽家特有の精神干渉系魔法である。詳細は不明だが、洗脳されテロリストに協力させられて戦闘をした元USNA軍人によると、「魂に直接太い杭を打ち込まれたような痛み」とのこと。

 

 活躍は先述の通り。

 

 高校では風紀委員を務めており、就任三日で校内の暴力的問題行動が根絶された。

 

 

 

 

 

 

 

・千代田花音

 

 評価・A

 

 防衛大学校・一年

 

 百家・千代田家出身。その中でも特に干渉力に優れ、特徴である『地雷原』の威力は十師族級。

 

 地上戦においては随一の破壊力を持つ。また身体能力も高く、『地雷原』抜きでも評価Bは下らない。

 

 五十里啓のサポートを受けながら、単身でサハラ砂漠に隠された複数基地の破壊に成功した。

 

 

 

 

 

・鬼瓦桜花

 

 評価・A

 

 防衛大学校・一年

 

 体質上魔法力に優れているわけではないが、規格外の肉体を持ち、魔法を併用した白兵戦においては、呂剛虎や井瀬文雄、千葉修次に匹敵する。

 

 その体質は、サイオンが体から離れないというもの。十三束鋼(評価B)と同じ体質だがより症状がひどく、一般的な魔法はほぼ扱えない。

 

 ただし纏うサイオンの密度が高く、ほぼ全ての魔法を跳ねのけ、魔法式を殴れば『術式解体』が可能である。

 

 女性でありながら身体能力が突出して高く、USNAどころか世界中でも彼女を越える人間はいない。

 

 また、声を「体」と捉えることで、大声を増幅させる振動系魔法『鬼轟咆』という遠距離攻撃手段もある。本気で放てば広範囲を破壊し、対象を強烈な体内振動により無力化ないしは死に至らしめる、戦術級魔法。

 

 テロ事件においては、単身でテロ組織の相本拠地である大漢本部の大半を無力化した。

 

 国際魔法協会の白兵戦闘賞を受賞。

 

 なお各スポーツ団体の間では、彼女が規格外すぎるためバランスが崩れるからとスカウトを控えるという紳士協定が秘密裏に結ばれているが、あまり守られていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・綾野遊里

 

 評価・A

 

 国立魔法大学魔法学部・一年

 

 万能な魔法力に優れ、魔法力だけならば、七草真由美に匹敵する。

 

 身体に生まれつき重い障害を患っており、車いすが無ければ単独での移動がままならず、戦力にはならない。

 

 ただし陣地での移動する必要がない防衛戦では、無類の活躍を誇る。

 

 また元生徒会長であり、かつその人当たりの良さから人脈が広く、仲間やシンパが多い。なお現在使っている車椅子は、2096年より、定期的に井瀬親子のサポートを受けている。

 

 魔法協会横浜支部へ侵攻する船団の上陸阻止に貢献。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・七草真由美

 

 評価・A

 

 国立魔法大学魔法学部・二年

 

 十師族でも随一の影響力を誇る『万能』七草家の長女。その名に恥じない万能の魔法力を持ち、国際魔法競技会でも、複数種目で圧倒的力を見せつけ金メダルを獲得した。

 

 また元生徒会長で、特に権限を振るったこともあり、パイプが多い。

 

 ただし胃腸の持病を抱えており、過度のストレスに晒すことは避けられているため、影響力は限定的ともいえる。

 

 ラグナロク事件においては、父親と肩を並べて、自身も参戦しつつ七草家の指揮を執り、関東一帯の破壊行動すべてを、最小限の被害で止めた。国際魔法師協会日本支部特別賞を受賞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・千葉エリカ

 

 評価・A

 

 第一高校・二科・三年生(卒業見込み)、防衛大学校に進学決定済み

 

 千葉家出身。

 

 鬼瓦桜花程の規格外の肉体を持っていないにもかかわらず、世界で十本指に入る白兵魔法師。

 

 長い刀を使った数々の魔法剣は速度と破壊力に優れ、正面先頭をした場合、単身で戦車や戦闘機を含む兵団を壊滅させることが可能と推定されている。反面、一般的な魔法力は低く、遠距離攻撃の手段も少ない上に、鬼瓦桜花のような特筆すべき防御手段もない。

 

『アルマゲドン』の隠し玉の一つである、大阪市都市部に出現した、『蓋』をさらに発展させた巨大兵器を、単身で破壊した。これにより、推定10万人の命が助かったと試算されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・吉田幹比古

 

 評価・A

 

 第一高校・一科・三年生(卒業見込み)、国立魔法大学魔法文化学部に進学決定済み

 

 神道系古式魔法の名家・吉田家の出身。神童と言われるほどの才能があり、一時はスランプにもなっていたが、克服した。

 

 PTSDを克服し一等星級に昇進したネイサンと同等の力を、学生の身で持っている。

 

 柴田美月と協力して、京都市内に76個設置された時限式魔法爆弾すべてを発見し、無効化に成功。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・服部刑部少丞範蔵

 

 評価・A

 

 防衛大学校・一年(主席)

 

 不得意が無く全ての魔法を高水準で扱える、総合力に優れた魔法師。戦闘能力は一等星級に匹敵し、評価Aの中では、最も警戒するべき魔法師の一人。

 

 複数魔法を組み合わせて別の現象を起こす技術を得意としており、戦術の幅が広い。基礎戦闘能力も高水準にまとまっている。

 

 原子力発電所への破壊工作を防ぐ際に、中心的な役割を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・西城レオンハルト

 

 評価・A

 

 第一高校・二科・三年生(卒業見込み)、防衛大学校に進学決定済み

 

 硬化魔法と得意とする白兵魔法師。極薄のシートを固めることで、世界で最も切断力の高い斬撃を繰り出すことができる。

 

 戦闘能力は他の評価Aに比べたらやや劣るが、その切断能力は活用幅が広く、影響力は高い。

 

 基地に突撃する際、強化合金による防御扉を一撃で切り裂くことで、複数基地での迅速な解決に貢献した。

 

 仮に我が国への侵略戦争に彼が参加した場合、防衛成功率は最低30%以上下がると推定される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・一色愛梨

 

 評価・特別A

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学に進路決定済み

 

 白兵戦闘に優れるが、他A評価に比べたら明確に劣り、評価B相当。

 

 ただし、二十八家である一色家が得意とする『神経電流攪乱』は、重傷を負わせることなく無力化するうえで大変優秀な魔法であり、『稲妻(エクレール)』を用いた高速機動と併用することで、単身によって戦場を支配することが可能であるため、特別Aとする。

 

 テロ事件においては、洗脳された多くの市民を怪我させることなく無力化・保護に成功し、人道的な作戦成功に大きく貢献。国際魔法師協会日本支部特別平和賞を受賞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・七草泉美

 

 第一高校・一科・二年

 

・七草香澄

 

 第三高校・一科・二年

 

 評価・双方特別A

 

 どちらも優れた魔法師だが、戦闘能力は高く見積もってもB相当。

 

 ただし双子の性質を利用した乗積魔法により、大規模な戦術級魔法を行使することができ、広範囲を一瞬で攻撃することが可能。

 

 また、半径10メートルほどと小規模だが、戦略級魔法『シンクロライナー・フュージョン』も実戦で成功させており、これも戦術級の中でもさらに高い威力を誇る。将来的に戦略級魔法師になる可能性もあり。

 

 七草家出身の影響力も加味すると、特別Aが妥当と言える。

 

 ちなみに七草香澄は井瀬文也に長いこと懸想しているが、未だに届いていない様子。

 

 父親・姉から二人での指揮から外れた行動を許され、千葉県沿岸部にて大規模な上陸作戦を食い止めることに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・真壁菜々

 

 第三高校・一科・二年

 

 評価・特別A

 

 八壁家の数字落ちである真壁家の出身。

 

 家柄とは関係なく、現象の変化を止める、状態維持の魔法を得意とする。その突出度は高く、全ての系統において、アンジー・シリウスが得意とする放出系に匹敵する。

 

 その特性から、核融合を止めて核兵器を無力化することが非常に得意。

 

 当然、テロ事件では世界中を飛び回って、核兵器を何十回と無力化した。

 

 核兵器の使用・発動を阻止するのは魔法師という存在の国際的な至上命題であり、このテロ事件で魔法師が活躍したのは、核兵器が世界中で使用されるとなった時、魔法師が世界中で一致団結したからである。

 

 その先頭に立った彼女の活躍は世界中から注目され、単身で二十八家相当の影響力を持つ。

 

 戦闘能力は高く見積もっても評価Cだが、その影響力から、低く見積もっても特別Aが妥当。

 

 国際魔法協会による平和賞、魔法師模範賞を受賞。さらに世界で唯一高校生にして常任委員就任を打診された。なお、そちらは断っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・森崎駿

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、防衛大学校に進路決定済み。

 

 評価・特別A

 

 ボディガードとして名をはせており、会談に訪れた我が国の大統領の臨時SPを務めた経験もある名家・森崎家の長男。

 

 世界でトップの魔法行使速度を誇っている。また、射撃魔法の命中精度もとても高い。反面、干渉力と可能工程数は、そこそこ優秀程度に留まる。

 

 速度は圧倒的だが複雑な魔法や強力な魔法が使えないため、単純な戦闘能力はB相当。

 

 ただし、その速度と精度を活かした『サイオン粒子塊射出』により、ほぼ全ての魔法師は、CADによる魔法行使がほぼ不可能となる。そのためCADを使わない魔法で対抗せざるを得ないが、そうなれば完全に速度で負けて無力化される。

 

 また非魔法師相手でも、魔法抵抗力を持たない場合は一方的に攻撃が可能である。

 

 一方で、魔法抵抗力や『サイオン・ウォール』があれば、さほど怖い敵ではない。

 

 よって、限定的状況下においては、単身で戦場の魔法全てを無効化することも可能という規格外のスキルを持つため、特別A評価とする。

 

 テロ事件においては、軍属含むプロ魔法師15人を相手に、単身で魔法全ての行使を許さず一方的に制圧し、井瀬文也の作戦に貢献。

 

 井瀬グループの主要メンバー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・十文字克人

 

 国立魔法大学魔法学部・二年

 

 評価・S

 

 十師族・十文字家の事実上の当主。

 

 全ての攻撃を防ぎ全てを薙ぎ払う攻防一帯の究極魔法『ファランクス』の使い手であり、単身で戦場を一瞬にして支配し、戦争そのものをゆがめる力を持つ。

 

 戦略級魔法のような一瞬にして広範囲を破壊する力は持たないが、移動しつつ魔法を振るえば、戦略級相当の破壊を生み出すのは容易。

 

 アマゾン基地より発射され、リオデジャネイロへと雨のごとく降り注いだ多量の爆弾・ミサイル(核兵器ではない)を、ブラジル所属の戦略級魔法師であるミゲル・ディアスと協力して防ぎ、何百万もの命を救った。

 

 ブラジル名誉国民、国際魔法協会平和賞・模範魔法師賞など数々の名誉を打診されたが、すべて断っている。

 

 この時以降、超大規模な魔法連続行使が祟ったのか、学校を休みがちで家には医者が出入りしており、あまり姿を現していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・司波深雪

 

 第一高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学魔法学部に進路決定済み。新入生代表。

 

 評価・S

 

 四葉家の次期当主。

 

 莫大なサイオン量と干渉力を持ち、また複雑な魔法も難なくこなすこともできる。アンジー・シリウスをして「サイオンコントロールと速度でほんのわずかに勝っている以外は完敗」と言わしめる魔法師。

 

 特に停止・冷却に関わる振動系が得意で、『ニブルヘイム』『停止領域』『インフェルノ』といった超高等魔法のみならず、艦隊を機能停止にする事実上の戦略級魔法『氷河期(グレイシャル・エイジ)』を使用可能。また戦術級の中でも特に危険度が高いと目されている精神干渉系魔法を使う可能性も確認されている。

 

 白兵戦を得意とする魔法師や軍属プロにはかなわないが、身体能力も非常に高く、隙が無い。

 

 また、もはやオマケ程度でしかないが、元生徒会長であり影響力が大きい。その容姿と立ち居振る舞いと実力から彼女を慕うものは多いのも特徴。

 

 核兵器を複数積んだインド方面の艦隊を、『氷河期』によって一瞬で無力化に成功。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・一条将輝

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、防衛大学校に進路決定済み。新入生代表。

 

 評価・S

 

 十師族である一条家の長男にして次期当主。魔法の総合力はアンジー・シリウスや司波深雪と肩を並べるほど。

 

 より実践的な魔法師で、低コストながら高い破壊力・殺傷力を誇る『爆裂』を得意とする。その干渉力はとてつもなく、ソーサリー・ブースターを直列繋ぎした『情報強化』を簡単に打ち破る。

 

 液体の操作に優れていて、液体すべてが彼の強力な兵器である。戦場に現れたら、後述の魔法がなくとも、その戦術級魔法だけで戦場どころか戦争の趨勢を左右することができる。

 

 また、その莫大な干渉力を生かして、戦略級魔法師にもなっており、二種類使いこなす。

 

 一つは吉祥寺真紅郎が開発した『海爆(オーシャン・ブラスト)』。広範囲で大量の『爆裂』を同時に起こし、大爆発にする。『チェイン・キャスト』を用いており、ほぼ『トゥマーン・ボンバ』と同じ仕組み。

 

 もう一つが、井瀬文也が開発した『TSUNAMI』。壁状に大量の水を隆起させる魔法を『チェイン・キャスト』によって並べて、あえて時間差調整をせず発動。順々にせりあがる大水が、大艦隊をも押し流す。

 

 後者は要求される干渉力が突出して高いため使用者の負担が重く、使うのは厭われている。

 

 ただし、ラグナロク事件においては『TSUNAMI』が使用された。

 

 広範囲爆発攻撃である『海爆』は、敵艦隊と戦闘中であった仲間を巻き込む可能性があった。そのため、規模や方向をその場で調節し、アドリブで起動式と魔法式を変えたうえで『TSUNAMI』を発動、仲間を一切巻き込むことなく、中国方面の敵艦隊を一瞬で全滅させた。

 

 井瀬グループの主要メンバー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・司波達也

 

 第一高校・魔法工学科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学魔法工学部に進路決定済み。

 

 評価・S

 

 最強の魔法師、極東の魔王、生死を司る神、破壊神、現世界チートマジシャン、ワンパンマン、さすがですお兄様、格闘漫画に混ざったドラゴンボール、ラスト・リベリオン、なろう総合ランキング1位の主人公、など様々異名を持ち、それに恥じない能力を持つ。ちなみに異名のほとんどは井瀬文也が考えたもので、その軽妙さから人口に膾炙した。主にインターネット上で異名大喜利の様相を呈している。なお、司波達也本人はとても嫌がっている模様。

 

 通常の評価基準となる魔法は、基本的には高校生レベルですら「劣等生」と言わざるを得ない。

 

 ただし非常に賢く、数多の新技術・新魔法を開発しており、『トーラス・シルバー』として魔法工学を牽引する。学業成績は当然、常にトップである。

 

 また、なんらかの技術により、短い工程の魔法ならば、森崎駿を越える速度で使用することができる。工程が短い簡単かつ単純な魔法でも十分様々な面で利用が可能であり、さほどの制限にならない。

 

 さらに、規格外のサイオン保有量を持ち、究極の対抗魔法と言える『術式解体(グラム・デモリッション)』を何十連発しても余裕であるほど。

 

 そして何よりも特徴的なのが、生まれながらに持った魔法、『分解』と『再成』である。

 

『分解』は組み合わさったありとあらゆるものをその名の通り分解することができる。部品単位・器官単位での分解のみに留まらない。

 

 この世のものは全て分子・原子・電子・陽子・中性子といった細かい粒が結合して成り立っている。その単位まで分解が可能なため、この世のすべてのものを極小単位まで分解し、事実上の消滅をさせることが可能。これは『雲散霧消(ミスト・ディスパーション)』と呼ばれている。

 

 また、対象は現物質だけではなくサイオン・プシオンに関するものも可能で、魔法式を直接分解することも可能。魔法式はイデアに裸のまま露出しているため、それを分解する『術式解散(グラム・ディスパーション)』を防ぐことはまず不可能である。

 

 つまり、『雲散霧消』による消滅を防ぐには魔法的防御をするほかないが、その防御は絶対に『術式解散』で無効化される。

 

 彼の分解に対抗するには、井瀬文也たちが使う『多重干渉』や十文字家の『ファランクス』が必要となる。ただしこれらに対しては、『バリオン・ランス』という中性子による攻撃が通ってしまう。これは『中性子バリア』でしか防ぐことができないが、そのバリアは『術式解散』で簡単に無効化できるため、彼の攻撃を防ぐ術は皆無である。

 

 そしてこの『分解』の究極系と言えるものが、戦略級魔法『マテリアル・バースト』だ。

 

 この世のものが持つ質量は、全てエネルギーが固定化したものである。その固定化を分解することで質量は一瞬で純粋なエネルギーとなり、大爆発を巻き起こす。反物質による対消滅をも超えるエネルギー効率を持ち、発動までの時間も一瞬で、破壊力が自慢の『ヘビィ・メタル・バースト』が豆鉄砲に見えるほどの威力を誇る。使える人物が彼以外にいないことを除けば他の戦略級魔法を全ての面で圧倒する、最強の魔法である。

 

 もう一つの魔法が『再成』。

 

 対象のエイドスを最大24時間前までさかのぼり、そのエイドス情報を投射することで、その状態へと戻す魔法である。対象そのもののエイドスを使用しているため、魔法抵抗力や修正力は一切影響を及ぼさない。

 

 これにより、大破壊されたものを一瞬にして元の状態に修復し、瀕死の人間を瞬く間に蘇らせることが可能。またこれは自身が傷ついた場合は自動的に発動することが伺える。莫大な保有サイオン量があることからエネルギー切れはなく、事実上の不死身である。

 

 またその身体能力も一流で、魔法抜きの運動能力・戦闘力は、鬼瓦桜花や井瀬文雄に匹敵する。

 

 つまり、世界トップの身体能力を持つ人物が、数多の新技術・新魔法を開発し、簡単にあらゆるものを消滅せしめ、あらゆるものを蘇らせることが可能で、世界最強の戦略級魔法を使うことができる、ということである。四葉からの情報提供によると、地球を破壊する規模を持つ巨大小惑星が接近してきた際は、『マテリアル・バースト』の一撃で破壊し、地球を救ったようだ。

 

 さらに、本人の影響力も見逃せない。

 

 秘密裏に「司波達也グループ」と呼ばれている集団がある。これは司波達也と信頼関係・利害関係を深く結んだ仲間のことである。司波深雪・七草真由美を筆頭に、評価BからA相当の同級生・先輩・後輩・関係者・一流魔法師・軍人・科学者などが、それぞれ事情を抱えつつも彼の仲間である。

 

 以上を考慮すると、当然、評価Sとなる。もはやこのランクですら足りない。

 

 ラグナロク事件においては、世界中で活躍する魔法師たちの総指揮的な役割を務め数多の作戦立案の中心となった。

 

 また魔法師の移動・活動をサポートする多種の新技術・新発明・新魔法を開発し、ほぼ全ての作戦に大きく貢献。

 

 さらに自身も、世界中で発射された核ミサイルを、『マテリアル・バースト』を使う際に使用する超長距離精密照準兵器『サード・アイ』をさらに発展させた兵器『天網』を使うことで捕捉し、『分解』によって無効化した。

 

 さらには、日本国防軍で開発されていたが危険性から凍結された『隕石爆弾(ミーティア・ライトフォール)』の技術を強奪・再開発したことによって引き起こされた巨大隕石の来訪を、『マテリアル・バースト』によって破壊し、地球を破壊から再び救った。

 

 この数々の活躍により、国際魔法師協会平和賞・模範魔法師賞・魔法工学賞を含む様々な賞を授与された。現在は世界中でマイノリティとなり軍事利用されることが多い魔法師を救うために、大規模なエネルギープロジェクトを進行中であるという不確定情報がある。

 

 なお、妹の司波深雪とは恋人関係である。

 

 彼が存在する限りは、彼の周囲および日本国に手出しをするべきではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・中条あずさ

 

 国立魔法大学魔法工学部・一年

 

 評価・S

 

 座標や出力など変数入力部分において誤差がほぼ無いほどの精密な魔法力を持つ。干渉力・速度・可能工程数もハイレベルではあるが、超一流とまではいかない。また、精神干渉系に突出した力を持つ。

 

 元生徒会長ではあるが転校によって退任したため、影響力はさほどない。

 

 身長はとても低く、運動能力は同年代の非魔法師を含む女子の中でも平均未満。控え目で気弱で臆病なため、戦闘魔法師には向かない。反射神経、動体視力なども、学生魔法師の域を出ない。

 

 魔法工学の面では特に優れており、司波達也・井瀬文雄・井瀬文也・吉祥寺真紅郎と比肩しうる。自身が扱う精神干渉系魔法を開発。また、大規模魔法技術『ジョーカー』(後述)、『N2』、魔法師移動システムなどの開発に大きく貢献した。

 

 魔法戦闘能力は、身体能力・性格・反射神経などが大きく足を引っ張るが、知略・戦略に優れ、また魔法力も高いため、欠点を差し引いても軍属魔法師相当の力を持つ。

 

 ここまでだと評価は高く見積もっても特別Bが妥当だが、このランクにいるのは、最も得意とする精神干渉系魔法が脅威だからである。

 

 広範囲に強い干渉力・効果を持つ精神干渉系魔法を使用することが可能。無差別情動干渉系魔法『梓弓』、2096年2月にアンジー・シリウスを負かした『スウィート・ドリームス』、精神干渉系魔法を無効化する『抱擁』、魔法的・科学的・生体的・精神的問わず洗脳を解除する『目覚め』、都市クラスの範囲に強い干渉力で群衆の精神を落ち着かせる『アガペー』など多種多様である。

 

 未だ悪用されたことはないが、もし彼女が『アガペー』と同様の範囲で、悪意ある精神干渉系魔法を使った場合、都市クラスの範囲にいる人間すべてが、睡眠や戦意喪失などによる無力化をされ都市機能が停止することになる。これだけならまだ良いが、最悪の場合、それだけの広範囲の人間が「洗脳」され、敵になることすらあるだろう。

 

 その効果は単純な破壊をもたらす戦略級魔法を越えるほどの影響力があるのは確実である。その潜在的かつ十分あり得る可能性を考慮して、評価Sが妥当である。

 

 ラグナロク事件においては、利用された人々の洗脳解除、戦意喪失による無血無力化、井瀬文也・森崎駿と行った突入作戦においての敵戦力の無力化で、大きく貢献した。

 

 また、先述の隕石落下作戦と同時に行われた、群衆煽動による大都市・ニューヨークにおける大暴動を企図した作戦を、大都市圏を覆う超広範囲を対象とした無差別精神安定魔法『アガペー』によって防いだ。

 

 国際魔法師協会平和賞を受賞。

 

 なお、井瀬グループの主要メンバーである。

 

 また、井瀬文也とは物心がつく前からの幼馴染である。非常に仲が良くて距離も近く、互いの間にパーソナルスペースはほぼ無い。

 

 井瀬文也とは恋人であるとの不確定情報がある。手をつないで歩いていた、道端で抱き合っていた、間接キスを気にせずお互いに食べさせ合っていた、二人で寄りかかり合いながらバスで寝ていた、二人きりで遊んでいた、ほぼ毎晩一緒に寝ている、などの確かな情報があり、恋人関係であるという噂の信頼度は高いが、不確定の域を出ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・井瀬文也

 

 第三高校・一科・三年(卒業見込み)、国立魔法大学魔法工学部に進路決定済み。

 

 評価・特別S

 

 我が国にとって特に因縁深い魔法師である。ここで改めてその特徴を振り返ろう。

 

 まず基礎能力。全ての系統に関してハイレベルであり、干渉力は他の超一流に比べれば数歩劣るが、行使速度と実践的に使用可能な魔法の複雑さは群を抜いており、その総合力は、学生どころか、軍属やプロと比べても十本の指に入る。

 

 一方で、四葉家からの情報提供によると、精神干渉系は干渉力が「ゼロ」であり、大きな欠点となっている。ただし、精神干渉系のエキスパートである中条あずさが常にそばにいるため、特別有効なカードにはなり得ない。

 

 また、一ノ瀬家が不祥事を起こして数字落ちしたのが井瀬家である。各々が勝手に名前を付けて呼んでいるが、人体の表面に刺激を加えて様々な効果を起こす魔法を得意とし、そのせいか人体にも非常に詳しい、というのも四葉家からの情報提供である。

 

 普段の生活は、いつもと変わらず、好き勝手気ままに生きている。卒業間近にもかかわらず度を過ぎた悪戯をして退学寸前まで行くほど。問題行動が多く、軍属にはならないと考えられる。

 

 また、魔法工学においても、世界トップを牽引する。

 

 父親・井瀬文雄は、CAD販売を中心とした魔法大企業『マジカル・トイ・コーポレーション』の設立に関わった一人であり、なおかつ世界をにぎわす『キュービー』その人。その遺伝と教育によるものか、父親や、『トーラス・シルバー』の司波達也、『カーディナル・ジョージ』吉祥寺真紅郎と張り合えるほどの知識・技術・経験を持っている。同社のエース魔工師『マジュニア』としても有名である。

 

 USNA軍魔法開発部によると、彼単身で魔法開発部の機能の半分は賄えるほどだ、という証言もある。

 

 ソフト・ハード両面でトップの技術を持つが、中でも、新たな魔法や他者の秘術を実戦レベルで使えるまで開発する能力に優れている。新技術・新発見・研究室レベルですら成功しない最新技術など、ふんだんに使用されており、そうした技術の粋が安価なおもちゃとして流通していることが、日本全体の魔法師レベル底上げにもなっている。

 

 主な再現魔法は、『分子ディバイダー』『術式分解』『ヘビィ・メタル・バースト』『仮装行列』『トゥマーン・ボンバ』『爆裂』『深淵(アビス)』『地雷原』『流星群(ミーティア・ライン)』など、そうそうたる面子が、枚挙に暇がない。

 

 オリジナル魔法・技術の開発もしており、カメラセンサー式自動CAD、『斬り裂君』、汎用飛行魔法、超貫通力魔法ライフル『ゴルゴ』、それを小型化した拳銃『ノビタ』、完全思考操作型CAD、戦略級魔法『TSUNAMI』、『ジョーカー』などがある。

 

 そして何よりも特徴的なのが、「複数個のCADを用いた『パラレル・キャスト』」である。

 

 通常『パラレル・キャスト』は約100年になる魔法師の歴史において両手の指で足りる程度にしか例がなく、USNA軍の歴史上にも実戦レベルの使用者は存在しない。

 

 だが彼の場合は、それをCAD二つどころか、数十個も同時併用することができる。

 

 これを活かして全身に、それぞれの魔法専用の超小型CADを仕込み、専用たる性能によって、汎用型と同じ種類の魔法を特化型を越える速度・精度で使用することができる。万能の魔法力と相まったそれは、単独でプロ魔法師10人分の魔法を行使できるという記録すら残っている。

 

 このスキルは、攻守両面で活躍する。

 

 まず攻撃面では、何十種類もの戦術級を含む魔法攻撃がほぼ同時に襲い掛かってくるため、魔法師単体ではまず攻撃を防ぐことができない。単一の魔法でほぼ全ての魔法を防ぐことができる『身守り』『ファランクス』ならばなんとかなるが、『ゴルゴ』『ノビタ』による攻撃はそれらを貫通する。

 

 また守備面でも、状況に応じて多種の魔法を高速で使い分けることができるため、非常に安定する。複数の魔法を投射直前の段階でとどめておく超高等技術を習得しており、後出しで対抗魔法を繰り出すこともできる。また交渉の末我が国から手に入れた『仮装行列』もあるため、直接干渉する魔法も効きにくい。

 

 次に白兵戦闘能力について説明しよう。

 

 体格は小学生並で筋力や骨格も平均未満であり、身体能力は魔法師平均よりやや劣り、スタミナは平均未満。評価はCにすら満たない。

 

 ただしそれらを高速移動魔法や汎用飛行魔法で補うことで、高速戦闘を可能とする。また近接戦闘をしながら複数の完全思考操作型CADによる嵐のような魔法攻撃もできるため、脅威となる。

 

 そして、我が軍の中で「井瀬グループ」と呼ばれる、日本国では「司波達也グループ」に次ぐコネクションがある。

 

 幼馴染・親友である、中条あずさ、森崎駿、一条将輝、吉祥寺真紅郎は全員強力な魔法師だ。父親は井瀬文雄で、巨大な組織力を持つ『マジカル・トイ・コーポレーション』の力も振るえる。またその異常性はある種のカリスマもあるのか、先輩・後輩・同級生・大人問わず――普段は悪戯ばかりで冷ややかな目線を浴びているが――いざとなったら助けてくれる人が多い。また何かしらの交渉があったのか、あの四葉が井瀬文也とその周囲を裏で警護しているという不確定情報もある。その影響力は計り知れず、また危険である。

 

 以上を踏まえると、わが軍において、単身で彼に確実に勝てるのは、アンジー・シリウス以外にはいない。戦場に現れれば、その趨勢を単独で決めることができるため、Aは確実である。

 

 ただし欠点として、魔法の規模の小ささがある。戦術級魔法を複数、同時に何十個と使えるが、一つ一つの破壊力・破壊範囲が低く、多人数の軍属魔法師が戦う戦場を、単身で引っ張るには、他の評価A相当に比べたら時間がかかりすぎる。ただし時間をかければかけるほど被害は爆発的に広まるため、影響力は、A同等と見て間違いはない。

 

 ではなぜ特別Sなのか。それは、彼のみが使える単独大規模魔法合成技能『ジョーカー』によるものである。詳しくは添付資料を参考の事。

 

 テロ事件においては、大活躍を見せた。

 

 北京にある第二本部でありながら最大の核兵器施設でもある基地へと、仲間と一緒に突撃。敵の最大戦力が集められている中で、森崎駿・中条あずさと協力しながら大立ち回りを見せる。

 

 しかし、突撃までの準備が遅れたせいか間に合わず、合計25発の核ミサイルの発射をすべて許してしまう。攻撃目標地もばらばらでありもはや防ぐのは不可能かと思われたが、開発した『ジョーカー』により、全ての無力化を成功した。

 

 国際魔法師協会より、司波達也・真壁菜々・中条あずさと並んで平和賞を贈られる予定だったが、前日にホテルで父親とゲームの勝敗をめぐって大喧嘩して複数設備を破壊し、あげく寝坊して式典に遅刻したため、取り下げられた。

 

 

 

 

 

添付資料・単独大規模魔法合成技能『ジョーカー』について

 

 何十個もの専用CADを用いた同時魔法発動によって、中規模程度の魔法を重ねることで大規模魔法にしたもの。

 

 事前に周辺に設置した空中ドローンとそれに仕組んだカメラセンサーによってリアルタイムで高速移動する核ミサイル全ての座標を追い、距離に効果を左右されない魔法をそれらに行使する。

 

 まず減速・加速・移動・振動によってミサイルが持つ推進力や熱を軽減したうえで、全てを一か所に集める。次に領域型の核反応停止魔法で無力化したうえで、減速を併用することで衝撃を抑えつつすべて落下させる。その後、領域型の放出・収束・移動・加速系の複合魔法で、完全に核融合が起きないようにミサイル全体を改造し、未来永劫の無力化をする。最後に放射能が漏れないように障壁魔法で覆う。

 

 この一連の流れは、実際に先述の事件で使われたものである。

 

 ただし、これは、あくまで使用例の一つに過ぎない。

 

 これは魔法ではなく、「魔法技能」である。

 

 多数設置されたセンサーによる情報を元に、広範囲を対象として中規模程度の魔法を、多量の専用CADで同時に多量に使用する、というのが『ジョーカー』の中核だ。

 

 つまり、超広範囲に、多量の中規模魔法を同時に行使することができるということである。

 

 本人によると、一部の戦略級魔法を後出しで防御することが可能であるとのこと。

 

『マテリアル・バースト』『ヘビィ・メタル・バースト』『隕石爆弾』のような高すぎる威力を持つものは無理だが、中規模の魔法を多量同時に発動して大規模破壊を生み出す『トゥマーン・ボンバ』『海爆』『氷河期』や、発動から効果発生までに時間がかかる『アグニ・ダウン・バースト』『シンクロライナー・フュージョン』は防げるらしい。

 

 前者は一つ一つの中規模魔法を無効化することで、後者は効果発生までの過程を妨害することで、防ぐことが可能としているのだと推測される。

 

 このように、『ジョーカー』は、限定状況下ながら、戦略級魔法を彼単身で防げる可能性が高い。その影響力は、戦略級魔法師に準ずるだろう。

 

 

 

 

 

 

 そしてここからが本題である。

 

 

 

 

 

 

 

 これを利用すれば、多量の魔法を同時に発動して超大規模の破壊を生み出す戦略級魔法『トゥマーン・ボンバ』『海爆』と同じ仕組みで、同等以上の破壊を生み出すことができるのである。

 

 しかも従来の戦略級魔法と違って、『ジョーカー』は、彼が使える魔法全てに転用が可能である。つまり、系統・効果・仕組み・発生時間など、事前に情報がないということだ。また、状況に応じて使い分けることも可能と言うことである。

 

 まとめると、戦略級魔法と同等の効果を生み出すことができる上、さらに彼が使える魔法全てでそれができるため、事前にどのような魔法でそれが為されるのか予想がつかず、一方で彼は状況に応じて使い分けることができる、ということである。

 

 その名の通り、井瀬文也の「切り札」であり、「ワイルドカード」である。

 

 ただし実際にどこまでできるかは未確定であり、評価Sの重要度を鑑みると、一旦判断は保留として、特別Sに留めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、懐かしいものが出て来たわね」

 

 2100年某日、四葉家邸宅にて書類整理をしていた真夜が、一つの資料に目をとどめた。

 

 二年前に、世界中で巻き起こった同時多発超大規模テロ事件。一歩間違えれば、本当に地球が滅んでいただろう。

 

 だが、それらは魔法師たちの活躍によって食い止められた。四葉家や真夜も、権力・利害・裏表といったしがらみ全てを無視して全力で協力せざるを得なかった。未だにあの時の過労を思い出すと全身に疲労感がどっと湧き出てくる。無意識に腹部をさすりながら、ため息をついた。

 

 この資料は、その直後に作られたものだ。2098年3月。司波達也・深雪、井瀬文也たちが魔法科高校を卒業する月である。国軍の諜報部が作ったものにしてはやたらと情緒あふれた――当然皮肉である――文章になっているが、それだけ、日本の学生魔法師たちの影響力が強い、ということだろう。

 

 読み進めて――大掃除で昔の漫画をつい読んでしまうのと同じことがまさかの真夜にも起きているのは気にしてはいけない――いくうちに、笑いがこみあげてくる。特に達也、あずさ、文也の項目は傑作だ。達也は仕方ないとして、文也とあずさについては、少しばかり過大評価であろう。警戒するに越したことはないが、あの二人に、それほどの力はないというのが、四葉の見立てだ。あれだけ大規模な事件があった直後だから、作成者はパニックになっていたに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 そう、もう二年が経った。

 

 

 

 

 

 

 達也たちは大学生活に慣れ、それぞれ好き勝手やっている。達也と深雪はメイジアン・カンパニーを立ち上げて世界を股にかける大プロジェクトを実行し、魔法師の地位を変えた。ラグナロク事件において魔法師の地位は大きく向上したが、結局のところは軍事的側面で大きく向上しただけに過ぎない。達也と深雪は、軍事以外の魔法師の大きな価値を生み出した。

 

 文也たちもそれぞれの道を歩んでいる。

 

 将輝は将来国防を引っ張る身として防衛大学校で活躍。本来警察的役割であるため警察学校や魔法大学に進学するのが通例なのだが、森崎駿は、森崎家の文脈を離れ、新たな可能性を見出して防衛大学校へ進学し色々やっているらしい。

 

 文也・あずさ・真紅郎ら魔法工学部に進学した三人は、何やらとんでもないことをいろいろやっている。達也の壮大な計画にも、金のにおいを察知した文也が絡んで、一枚かんでいるらしい。また達也はこの三人を将来発足する予定の魔工院の外部講師として招くつもりらしいが、文也については未だにこんなやつを誘うべきか悩んでいる、という話も聞いている。いつのまにかずいぶんと仲良くなったようだ。

 

「……真夜様、お楽しみの所申し訳ございませんが」

 

 そんなことをしていると、信頼できる執事の葉山が、背後から話しかけてきた。ずいぶんと遠慮なく言ってくれるようになったものだ。

 

「あらごめんなさい、つい読み込んでしまって。すぐに戻るわ」

 

 悪いと思っていないが、口先だけで謝罪をする。こんな雑用ではあるが、機密文書だらけであり、当主である真夜の最終チェックが欠かせないため、さぼっているのが迷惑なのは確かだ。

 

「いえ、そちらはもう構いません」

 

 だが、どうやらさぼっていたこと自体は問題ではないらしい。

 

 では、なぜわざわざ呼びに来たのか。

 

「お客様がお見えになっております」

 

「あら、もうそんな時間なのね」

 

 いつの間にやら、約束の時間になっていた。真夜はすくっと立ち上がり、葉山を従えて客間へと向かう。書類整理は後回しだ。

 

「いらっしゃいませ、こんな山奥までわざわざご足労ありがとう」

 

 客間のドアを葉山に開けさせ、客人と目が合うと同時、妙齢の女性らしい妖艶な笑みを浮かべて挨拶をする。世の男性を虜にするような笑みだが、彼女の人となりを知る場合、何かしらの恐怖を覚えるだろう。そして真夜もそれを自覚して、分かる者が見れば分かるような笑みを浮かべている。話は変わるが、動物の世界では、笑顔は威嚇らしい。

 

「いえ、もう慣れていますから」

 

 やや緊張をはらんだ声で、客人の女性が頭を下げながら挨拶を返す。

 

 いや、女性と表現するべきかは微妙なところだ。

 

 その女性の身長は低めで童顔であり、真夜とはまた違ったチャーミングな魅力を醸し出している。少女と言った方が良いかもしれない。しかしながらずっと前から彼女を知る真夜としては、ここ数年すっかり大人の魅力も出始めた彼女を、もう女性と捉えている。

 

 その客人は、七草真由美だ。

 

「こちら、父より手紙を預かっております」

 

 彼女が差し出したのは、七草家当主・弘一からの、真夜にあてた手紙である。真由美は七草家の代表として正式に外部と折衝役を任されることとなった。彼女の役目は、こうして四葉家と深い接触をすることだ。

 

「ありがとう。あとで読ませてもらうわね」

 

 当主からの直接の手紙ともなれば、前置きの長ったらしい挨拶以外は重要なことが書いてある場合が多い。事実、今回も相当重要なあれこれが書いてあるだろう。だが、今この場で読むようなことはしない。

 

 理由は簡単、長ったらしい挨拶以上に面倒くさい内容が、さぞ中につらつらと並んでいることが明らかだからである。

 

 弘一は真夜の元婚約者である。あの悲劇に強い責任を感じていることもあり、弘一の心は、常に真夜を追いかけたままだ。お互い立場があるのでさほどのアプローチは今までなかったが、二年前のテロ事件をきっかけに、読まないわけにはいかない重要な内容とセットで、ラブレターめいたものを贈ってくるようになったのだ。

 

 あの事件では、お互い立場を忘れて魔法師同士が協力して事の解決に当たった。いがみ合い・騙し合い・殺し合い・化かし合いが基本なのが魔法師同士だが、この事件で手を取り合ったことで、様々な勢力が融和ムードになったのである。昔の関係が忘れられない弘一は、これをチャンスと見て、アプローチをかけているのだ。

 

 正直言って、気持ち悪い。

 

 真夜とて女性なのであの色男から未だに懸想されるのは悪い気分ではない。だがそれ以上に、いつまでストーカーまがいのことをするのだろうという気色悪さを感じる。しかも、その手紙を持たせているのが、後妻の娘でまだまだ多感なお年頃であろう真由美だ。デリカシーの欠片もない。愛娘・香澄と同じで、なんちゃらは盲目と言う奴だろう。大の大人がこうなると、ここまで気持ち悪いものなのだろうか。

 

 同じことは目の前の真由美も思っているようで、何回か会ううちに、微妙にシンパシーを感じるようになった。そう考えると、ずいぶんと自分も丸くなったものだな、と思いつつ、真由美と本題の前の長々とした前置きの応酬をする。

 

(それにしても、この子も可哀想ねえ)

 

 真夜としては、正直自分こそが元凶なのだが、同情せざるを得ない。

 

 真由美の立場は、文也たちと四葉が殺し合ったあの夜から、今もまだ微妙なままだ。

 

 達也と深雪は可愛がっていたお気に入りともいえる後輩だ。一方、あずさこそ一番かわいがっていたものの、文也はクソガキ。恨みが大きいだろう。だが一方で彼は、妹の命の恩人でもある。

 

 これだけでもかなり厄介な立場だというのに、文也と達也たちは、お互いを殺し合うほどの敵対関係となった。

 

 しかも恐ろしいことに、それぞれバックには、十師族でも随一の軍事力を持つ一条家と、闇の影響力と最恐の手勢を持つ四葉家がいるのだ。

 

 そこに、七草家の長女である真由美は、乱入した。

 

 自ら考えて文也たちの仲間につき、四葉家の大規模作戦に対抗し、敵対する。四葉と正面から敵対するというのは、あの当時では、もはや死と同義だ。しかもその中心人物こそが、達也と深雪であった。

 

 そして文也の策略により四葉が全く手を出せなくなったとしても、真由美は、あの下劣卑劣卑怯変態極まりない作戦の庇護には入れない。あくまで乱入者であるというのもそうだし、その庇護に入るということは、七草家が一条家と正式に組んで四葉家と敵対するということだ。日本魔法師界どころか、日本が割れてしまいかねないだろう。

 

 そしてそんな事態を阻止するために、七草家の長女でありながら、真由美は父・弘一を中心とした自身が所属するはずの勢力を騙し、情報を徹底的に隠した。

 

 四葉家と敵対し。文也や一条家からも守られず。自身が属するはずの七草家すら騙す。

 

 彼女は、地獄のような立場にずっといたし、今もいるのだ。

 

 なんとなく弘一ならそれを察しているだろう。確信がないから放っておいてるだけだ。それだというのに真由美を四葉家とのメッセンジャーに抜擢するというのは、意地が悪すぎやしないだろうか、と真由美が初日には同情したものである。

 

 そんなことを考えながら話している間に、前置きどころか、家同士の本題も終わってしまった。

 

「……それで、その」

 

 しばらくの沈黙ののち、真由美が遠慮がちに口を開く。

 

「今回も、お願いしたいのですが……」

 

「ええ、構わないわ。何日分?」

 

「とりあえず、二か月分ほど」

 

 確かにそれぐらい必要だろう。今回は前回に比べてずいぶん間が空いた。きっと、「切らして」いるだろう。

 

 真夜はそれを了承し、葉山に取りに行かせる。事前に準備していたので、持ってくるのは早かった。

 

「はいどうぞ。また何かあったら遠慮なく言ってね?」

 

 四葉家と七草家との話は終わりで、今は真夜と真由美、個人の関係の話だ。幾分か親し気に、大きな紙袋を手渡しする。

 

「ありがとうございます」

 

 真由美も心の底から感謝を示し、深々と頭を下げた。

 

 なんとも意外なことに、両者の間には、あまり表には出せないが、確かなシンパシーが生まれていた。

 

「最近体調の方はどうかしら?」

 

「頂いているこれのおかげで、少しずつ良くなっています。夜中に痛みで起きることも少なくなってきました」

 

「羨ましいわ。若いと回復も早いのかしら」

 

「そんな、真夜さんもまだまだお若いですよ」

 

「お上手ね」

 

 表面的なおだて合いの会話だが、二人の顔に浮かぶ笑みは、先ほどまでの営業スマイルではなく、心からの笑みだ。背後の葉山がなんだか痛ましいものを見る目をしているが、気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お互い、『胃に穴があいた』仲間ですもの。いつでも相談に乗るわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二年前。

 

 真夜はあの大事件でさんざんに働く羽目になり、事後処理にも奔走した。それと同時に達也と深雪は四葉家から離れて会社をぶち上げると堂々宣言し、文也たちも大小さまざまな好き勝手をはじめ、その対応にも追われた。そして今も、いろいろ苦労は続いている。

 

 そんな中でついに、真夜の胃に、ストレスと過労から、穴があいてしまったのだ。

 

 真由美もまた、文也と香澄と四葉に関わるあれこれのせいでストレス過多により穴が空いた身。

 

 訪ねてきた初日に苦しそうにしている真由美を見かねて、自分が愛用している特別製の胃薬を譲ってから、二人の間に、確かな友情が生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然、そんな二人の苦労と友情を知る由もなく、今日も、達也たちも文也たちも世界も、好き勝手に動いていた。




読んでいただきありがとうございました。

なお、現在、『呪術廻戦』の二次創作『夜明けと晴天』を連載中です。本編はすでに完結まで投稿し、これから番外編を投稿していく予定です。もしよろしければ、ぜひそちらもお読みください。

https://syosetu.org/novel/260771/

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