ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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――さぁ、見せてちょうだい

――あの輝きを、あの色を

――あの……私を魅了してやまない黄金を





9. 再臨

 

 

 

 

 モンスターの調教こそ見ていないが、屋台や出し物で賑わう道を、ベルとヘスティアは歩いていた。道を行きかう人々、色とりどりの飾りに商いに勤しむ商売人。全てが小さな村で暮らしていたベルには新鮮な光景だった。

 

 

「調教も成功しているようだし、ベル君も楽しんでいるようだし!! 今年の祭りは良いこと尽くめだね!!」

 

 

 ヘスティアはハイテンションにそういう。その言葉に嘘偽りはなく、彼女は満面の笑みを浮かべていた。その後ろからベルは微笑みながらついていく。最早ぱっと見では、はしゃぐ妹を見守る兄貴分といったところか。

 先を歩いていたヘスティアは唐突に止まると、ベルに振り返った。

 

 

「そう言えば君の頼まれごと、財布の少女は見つかったのかい?」

 

「いえ。一応探してはいるのですが、まだ見つかってないですね」

 

「まぁ気長に探そう。もしかしたら気づいて酒場に帰っているかもしれないし」

 

 

 そういってまた先を歩こうとしたヘスティアの腕を、ベルは突然つかんだ。その顔には先ほどまでの笑顔はなく、眉間に皺が寄せられている。そしてその視線は、闘技場のほうへと向けられていた。

 

 

「ベル君? どうしたんだい?」

 

 

 怪訝そうなヘスティアに応えず、ベルは黙って闘技場を見つめていた。そしてその答えはベルからではなく、別のところから得られた。

 

 

「モンスターだぁぁぁぁぁあああ!?!?」

 

 

 闘技場から多くの人が叫び、恐れ、逃げてきていた。それだけで非常事態だと理解してしまう。本来捕縛されているだろうモンスターが逃げ出し、街で暴れているのだ。

 そしてベルたちの近くに一匹のモンスターが現れた。それは本来第11階層に生れ落ちるだろうモンスター、真っ白な体毛に覆われた巨大なゴリラを思わせる肉体。

 

 

「シルバーバックか……」

 

 

 ベルがつぶやくと同時にモンスター、シルバーバックは一度お大きく吠え、標的に向けて一歩踏み出した。その視線の先にいるのは、ベルの隣にいるヘスティア。

 

 

「ッ!! 神様、失礼します!!」

 

 

 それに気づいたベルはヘスティアを抱え、シルバーバックから離れるように走り出した。後を追うようにシルバーバックは、咆哮を上げながら二人を追いかけ始めた。始めこそ道行く人々が巻き込まれそうになったが、ベルがわざと人がいないところに向かっていたため、被害は抑えられていた。

 とはいえ、いつまでも逃げ続けるわけにはいかないだろう。現にベルのいく道は一本道となり、逃げる場所がない。そしてついに行き止まりに行きついた。目の前には鉄の格子状の門があり、それが閉じられているために逃げ場を失っている。

 

 

「神様、ごめんなさい」

 

「え?」

 

 

 ベルはヘスティアを下すと扉をこじ開け、ヘスティアを入れてすぐに閉じた。ついでに簡単に開けられないように、(かすがい)を変形させて扉を固定する。

 

 

「ベル君、いったい何をしてるんだい!!」

 

「神様、すぐに終わらせてきます」

 

「無理だベル君!! いくら君がアギトでも、シルバーバックが相手じゃ……」

 

「彼らも無理やり連れてこられて気が立っている。これ以上被害が増える前に、せめてここで奴を止めないと」

 

「でもそれで君が怪我したりしたら……」

 

 

 非力なヘスティアでは変形された扉を開くことは出来ない。だから言葉以外ではベルを止めようがないが、その言ノ葉も今のベルには意味を為さない。

 

 

「この先の通路を行けば、僕たちのホームに繋がっています」

 

「そういう問題じゃないんだよベル君!! ここは高レベル冒険者に『こんな!!』……!?」

 

こんな訳も分からない状況で、これ以上人々の、神様の笑顔が消えるのを見たくない!! だから、見ててください!! 僕の、変身を!!

 

 

 ベルはそう言うとついにヘスティアに背を向け、構えを取った。同時に腰に巻かれる一つのベルト。そして眩い輝きと共に姿を現したのは、体を黄金に彩った一人の戦士。無限の可能性を秘めた金。

 

 

「これが、AGITΩ(アギト)……」

 

 

 ヘスティアは思わず目を見張った。話は幾度も耳にしているが、実際にアギトを見るのは初めてである。その一切無駄のない造形に見惚れてしまっていた。

 

 

「ハァァァァァァァ……」

 

 

 長く息を吐くアギトの角と目が、徐々に光を増していく。同時に彼の右腕にはエネルギーが集まり輝きだした。勝ちを確信したのか、アギトを見ても反応しないシルバーバックは、一際大きな雄たけびを上げ、ベル/アギトに向かって駆け出した。

 

 

「……ハァッ!!」

 

 

 そしてベルに向かって拳を振り下ろそうとしたとき、ベルは右腕を一気に振りぬいた。

 一瞬の交錯、お互いに拳を振りぬいた状態で固まる。やがて動いたのはシルバーバック。胴体が上下に袈裟に斬られ、全身を塵に還らせて消滅し、あとに残ったのは彼の核であった魔石のみである。

 

 

「……ベル君。君はまさか」

 

「……」

 

 

 ヘスティアの問いかけに、ベルは黙して語らない。黙ったまま鎹を外し、扉を動くようにした。しかしそれだけでわかった。彼はこのまま町へ行き、他のモンスターと戦いに行くのだと。

 

 

「……どうしても行くんだね?」

 

「……はい」

 

「わかった。ただし、これだけは約束してほしい。絶対に無茶をしない、生きて帰ってくること」

 

「はい」

 

「僕を……独りにしないでくれ」

 

「……はい!!」

 

「じゃあ、いってらっしゃい!!」

 

 

 ヘスティアに見送られ、ベルは一気に駆け出した。100メートルを約5秒で走る速さは伊達ではなく、すぐにヘスティアからは見えなくなった。

 

 

「……死なないでくれよ、ベル君」

 

 

 そうつぶやくとヘスティアは街に繰り出し、避難誘導を手伝うために駆け出した。下界に降りて非力となった神と言えど、己にできることをするために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは……ミノタウロスのときの」

 

 

 騒ぎを聞きつけ、祭りのメインストリートに駆けつけたアイズの目に映ったのは、次々と撃破されていくモンスターだった。勿論アイズたちが潜るような深層のモンスターはいないものの、駆け出し冒険者ならば問答無用で帰らぬ人になるほどの強いモンスター郡である。

 

 

「やっぱアギトやったか……」

 

 

 彼女の隣に立つロキも、モンスターを屠る戦士を見て、静かに呟く。全ての攻撃を避けるか受け流すかをし、決定的なダメージは一切受けていない。無駄のない動きで追撃を加え、拳打や蹴脚で止めを刺す。魔石に目もくれずに、次のモンスターに向かうさまは、見方によっては狂戦士(バーサーカー)の様にも映るだろう。

 

 

「……まぁ見た感じ()()()()()()()()訳やなさそうやし、ここはあいつに任せよか」

 

「うん。じゃあ私はみんなのとこに」

 

 

 アイズはそう言うと持ち前の身体能力を駆使し、急いで他のファミリアメンバーのもとに向かった。

 

 

 

 







何故か奇跡的な一日2更新。でも本来ならば、この話中にアレが出るはずだったんですが、何ともうまくいかないものです。
加えて原作展開をすっかり忘れてしまって、ランクアップタイミングを読者様に訂正していただく始末。お恥ずかしい限りです。

それではまた次回、お会いいたしましょう。

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