ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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――邪悪なる者あらば、黄金に包まれ打ち倒さん

――邪悪なる者あらば蒼き力を宿し、嵐の如く薙ぎ払わん

――邪悪なる者あらば紅き力を宿し、焔の如く斬り払わん

――邪悪なる者あらば三位一体となり、火旋の如く打ち払わん

――邪悪なる者あらばその剛腕に猛熱を纏い、紅炎にて灰塵に帰さん

――邪悪なる者あらば光輝へと目覚め、白銀の輝きで天へと還さん

――邪悪なる者あらば■■■■、■■■■■■■■ん





12. 嵐の前の

 

 

 

 朝の鍛錬を終えて日も少し昇ったとき。今日は探索を休むと決めていたベルは、適当にオラリオを散策するための準備をしていた。街に来てから結構な時間は経っているが、まだまだ散策し足りない。知らない道、知らない店、それらを見つけることが、ここしばらくのベルの趣味となっていた。

 因みにだが、今回の散策の主目的は、武器防具の新調である。ベルは基本的に、ダンジョン内でも変身せずに戦闘を行っている。エルロードやロードの中には、戦闘以外の雑事をできる者もおり、ベルも最低限の手入れはできる。それでもオラリオに来る前から使っていたものも消耗し、いい加減ガタが来ていた。

 一旦ギルドに向かったベルは、そこで仕事をしているエイナに近寄った。

 

 

「おはようございます、エイナさん」

 

「おはようベル君。どうしたの?」

 

「ええ、ちょっと武具店について聞きたいのですが」

 

「武具店?」

 

 

 ベルの問いに首をかしげるエイナ。しかしよくよく考えると、ベルの小刀や防具、籠手は古い。整備しているのは分かるが、そろそろ限界が来たのだろうとうかがえる。新調するという彼の判断は間違っていない。

 そこでふとエイナは考える。今日は珍しく、午後から仕事が入っていない。下手な店を紹介するより、自分も同伴したほうが、高品質を取り扱っている店も紹介できる。冒険者はいつも死と隣り合わせ、しっかりとした道具を使ってもらわなければならない。

 

 

「それなら午後から私が案内できるけど、どう?」

 

「え? いいんですか?」

 

「うん。丁度午後から休みだし……怪物祭の時とか任せっきりになっちゃったからね」

 

「そうですか……ならお願いしてもいいですか?」

 

「うん、任せて!!」

 

 

 ベルの承諾も貰い、エイナは急いで今日の仕事を終わらせた。無論一切手を抜かず、何故かいつも以上に完璧に仕事を終わらせたことに、エイナの同僚が首をかしげたのは些末事。

 街の一角にある噴水のそばでベルが本を読んでいると、私服に着替えたエイナが近寄ってきた。赤いミニスカートにクリーム色のトップス、首元の黒のリボンがアクセントとなっている。そして業務中にかけている眼鏡がなく、元々整った顔がより鮮明に把握できる。

 ベルはそんなエイナを前に呆けてしまった。

 

 

「あれ、ベル君どうしたの?」

 

「え? あ、いえ、何でもないです」

 

「そう? じゃあいこうか」

 

 

 そう言い、二人並んで歩きです。目指す場所は、「ヘファイストス・ファミリア」の武具店。あらゆる鍛冶職人と、彼ら彼女らの鍛え上げた武具の数々が集まる場所だから、ベルに合うものもほぼ確実に調達できる。

 

 

「ベル君は何が欲しいの?」

 

「そうですね。手甲がもうボロボロなんでそれを。あと胸当てがもう整備じゃ隠し切れないほどガタが来てますし、この小太刀も新調したい」

 

「結局全部なのね……」

 

「あと新しく使いたい武器がありまして……」

 

「君はウェポンスペシャリストにでもなるつもりかな?」

 

「いえ、野ばらになるつもりはありませんよ?」

 

 

 苦笑を浮かべながらも、しっかりした足取りでベルの前を歩くエイナ。あとをついていくように歩くベルの姿は、見る人によれば、姉についていく弟の様にも思えるだろう。

 そんな生暖かい視線を受け乍らエレベーターを降りた先には、数々の武具が並んでいた。名剣、名刀と評価されてもいいような逸品が多量に陳列されている。その煌びやかさに、ベルは若干気圧されていた。

 

 

「駆け出し冒険者はよく高額なほどいい武器があるって考えがちだけど、中には掘り出し物があったりするの」

 

「高額だと『不壊属性(デュランダル)』とかの特性とかついてまうすね? じゃあそういった付与が無ければ普通の武器と変わらないんですか?」

 

「違うよ。そういった武器はそう言った高ランク、高技量の鍛冶師が鍛えてるだけあって、等しく質も高い。それに使っている材料も珍しいものだったり、質のいいものだったりするからね。それに付与が加わると更に値が張っちゃうかな」

 

「成程。安いのはいわば駆け出し鍛冶師の試作品、その代わり丹精込められた作品のために、中には逸品も混ざっていると」

 

「そういうこと。さぁベル君、まずはどんな防具がいい? プレート? 帷子? レザー?」

 

 

 それからエイナはベルに一つずつ防具をあてがっていくが、いまいちベルに合う防具が見つからない。これは別にベルが我儘を言っているのではなく、彼の戦闘スタイルを鑑みたエイナがベルと相談しながら決めていった結果である。

 そんなとき、ベルはふと視界の片隅に一つの木箱を収める。なんてことはない、ちょっとした防具が一式入りそうな木箱。しかしふたを開けた瞬間、何故かベルは運命を感じることになった。

 

 

「それは……クロッゾ? どこかで聞いたような……」

 

 

 エイナが制作者の銘をみて、首をかしげる。しかしベルはそれを気にせず、箱から胸当て、脛当て、手甲全てを取り出し、身に付けていく。偶然か必然か、防具の形は、変身後の彼の生態鎧と似たような形をしており、彼の動きを阻害するようなものではなかった。

 

 

「……気に入りました。これにします」

 

「それにするの? でも……うん丈夫そうだし、君の動きも問題なさそうだね。じゃあ武器はどうするの?」

 

「小太刀は無難なものを。あと新しい武器は……」

 

 

 ベルはそう言うといくつか小太刀を握って最もシンプルなものを選び、次に長物のコーナーに向かうベル。その様子にエイナは疑問に思う。確かにロキ・ファミリアの団長フィンの様に、低身長でも槍などを使う冒険者はいる。しかし基本的に長物はしなやかで且つ爆発力のある筋肉を持ち、加えて比較的身長が高めの者が扱いやすい。低身長だと、武器の遠心力や重さなどで、体が流されてしまう危険性があるからだ。武器に振り回されるなど、冒険者にとっては致命的である。

 そしてベルだが、変身前は残念ながら余り身長が高い方とは言えない。年齢もあるだろうが、エイナよりも低いために、余り長物には向かないのだ。

 そんな視線がエイナだけでなく、他の客や店員から向けられている中で、ベルは一つの武器を手に取った。長さはベルの胸程までで、長物にカテゴリされる棒よりも、杖に分類されるような武器である。その両端は不自然に太くなっているが、それが何故長物と共に置かれているのか。

 

 

「すみません、これを試したいのですが」

 

「これをかい? 坊主ならショートブレードとかカトラスが合いそうだけどなぁ」

 

「サブウェポンなら小太刀がありますので。メインが欲しいんですよ」

 

「まぁいいけど。そこで試し切りができるよ。それにしても、その武器は癖が強すぎるんだけどねぇ」

 

 

 店員がそうぼやくのを聞いた客たちは、自分たちの武器を見ながら、ベルの行動をチラチラと気にしていた。エイナはベルから少しだけ離れ、ベルの様子をいぶかしげな表情で眺めている。

 件のベルは一度二度、杖の中心を持って回転させると、目の前の人形に一息で飛び出した。いきなりのトップスピードで飛び出したのと、ズパンという決して軽くない音が鳴り響いたことにより、店内の全ての視線がベルに集まる。

 

 

「……えっ?」

 

 

 突然のことにエイナは反応できず、ベルが人形の後方にいるのに気が付いたのは、彼が再び杖を振る音がした後だった。

 人形の後ろに移動していたベルは更に杖の頭で一息に人形の背中を三発突き、そしてまたすれ違いざまに人形の胴にまた一発重い一撃を入れる。もはやベルの無駄のない動きに、誰もが目を離せなくなっていた。

 

 

「……おいおいおい」

 

「マジかよあの坊主……」

 

 

 そしてベルが両手で再度杖を回転させたとき、杖の両端が伸び、隠されていたであろう片刃がそれぞれ出てきたのだ。この杖は、実は折り畳み式の両剣であり、店員が言った癖というのは、まさにこの性質にある。唐突に変化するリーチと戦い方に順応できる使い手がほとんどおらず、長いこと売れ残っていた武器だった。

 いい加減廃品として処分しようと思っていたところに、目の前の少年/ベルが現れたのだ。ベルは変形した両剣を回し、人形をバラバラに切り刻んでいく。その動きは一切によどみなく、同じく両剣を使うティオナ・ヒュリテには劣るものの、中堅冒険者としても通じるであろう技量を持っている。

 

 

「スゥゥゥゥ……」

 

 

 そしておが屑となった人形の前で、体の左右でベルは息を吐きながら両剣を回しだす。段々と加速するその速さに、次第に風が沸き起こり、やがてベルを中心にして。その風はやがておが屑を巻き上げ、風で切り刻み、目に見えない粒にまで分解されていく。

 

 

「セヤァッ!!」

 

 

 最後に一薙ぎ両剣を振るうと、ベルが纏っていた風が霧散し、一瞬だけ店内を突風が駆け抜ける。静かな空間に、一瞬で駆け抜ける爆発的な突風。そのさまはまさにすべてを薙ぎ払う、力強い嵐のよう。

 

 

「……坊主、その武器はどうだ?」

 

「いい武器ですね、いくらですか?」

 

「そいつは元々処分しようとしてたもんだ、代金はいらねぇよ。それよりも坊主、お前その武器を預けてくれねぇか?」

 

「どうしてですか?」

 

 

 店員の提案に首をかしげるベル。聞けばこの武器を作った鍛冶師は駆け出し、ベルが買う予定の防具を鍛えた鍛冶師が、過去にお試しで作ったものだそうだ。最低限の手入れしかしていないそれは、いざというときに万全でなくなる可能性がある。そうなる前に、作った本人に一度精密に整備させ、完璧な状態でベルに提供させるというのだそうだ。

 

 

「いいですよ。じゃあこれは預けますね」

 

「おう。何かつけてほしい装飾とかあるか?」

 

「強いて言えば、青っぽい仕上げでお願いしたいです。あと制作者に伝えてほしいことが」

 

「なんだ?」

 

「……魂を込めたモノを。その一言だけをお願いします」

 

「……おう、確かに伝えとくぜ、坊主」

 

 

 防具と小太刀の代金を支払ったベルは、エイナと共に店を後にした。

 先程の光景を見ていたエイナは、歩きながら思考に耽る。エルフに伝わる英雄譚、その中にはアギトに関するものもわずかながら存在する。その言い伝えの一つに、このようなものがある。

 

 

 ──世界を襲う厄災あらわる時、猛き戦士が誕生せん。

 

 ──その者、黄金の輝きに身を包み、その拳と脚で厄災を打ち砕かん。

 

 ──その者、蒼き風と共に大地を駆け抜け、その刃で厄災を切り払わん。

 

 

 ベルが武器の試し切りをしたとき、本来ならばありえない突風が発生していた。一瞬アイズ・ヴァレンシュタイン同様、スキルや魔法を疑ったが、彼のスキルには魔法がなかった。それに彼はアギト、伝説の通りならば、彼のアギトとしての次のステップが目の前に迫っているということ。

 報告によれば、アギトには紅い形態もあるらしい。同僚のドワーフが、アギトのうわさが出たときにそう言っていたし、ベル自身も秘密裏にエイナに報告していた。

 闘う者として覚醒することが良いことなのか、一介のアドバイザーであるエイナには分からない。だがベルならば、その力を悪い方向に使わないだろうと、前を歩く身長に見合わない大きな背中を見つめながら、エイナはそう思った。

 

 

 







 久しぶりに本編更新しましたが、やはり第三者視点での文章執筆は難しいですね。どういう状況であるかを、如何に簡潔に、如何に爽快にかけるかを模索しています。
 しかし一向にハリポタが進まない。四年経過してまだ五巻までとは、知己にいい加減新作を増やさずに完結させろと怒られちゃいました。

 まぁそれはさておき、正直今迷走しています。ヒロインを八人に設定していましたが、減らすことを検討し始めています。理由は単純、私の力量不足です。
 言いだした手前、しっかりと全員分書きたいのですが、正直アイズとシル、春姫、そしてなぜかレフィーヤのルートの結末までの構想は出来ているのですが、他の四人がネタ切れで思いつかないです。

 この件に関してはおいおい決めていこうと思います。それではまた、いずれかの小説で。

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