ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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――何処にある、どう使う?

――見ぬふりすべきか、もぎ取るべきか?

――禁断の果実をめぐる戦い

――最後の一人になるまで戦いは終わらない

――ライダー戦国時代の開幕

――「今」という風は何を伝える?

――うつむくな、顔を上げろ

――信じた道をいけ



20. 新たな相棒

 

 

 ヴェルフのパーティー参入が決まった翌日早朝、いつものように『豊穣の女主人』の前を通って広場へと向かう。到着すると、すでに防具と身の丈に迫るほどの体験を携えたヴェルフが待っていた。ベルたちに気づいた彼は元気よく手を振ると、待ちきれないとでもいうようにベルとリリに駆け寄った。

 

 

「よっベル、今日はよろしく頼むぜ」

 

「うん、お願いするねヴェルフ」

 

 

 駆け寄ったヴェルフとベルは互いに握手を交わす。しかしリリはその二人に対し、不審に思っている視線を向ける。

 

 

「ずっと怪しいと思っていたのですが、やはりあなたは()()『クロッゾ』ですか?」

 

「あの?」

 

「ベル様、知らないのですか? かつて強力な魔剣を打つことで知られた鍛冶一族がありました、それがクロッゾです。ですが、ある日を境にその能力を全て失い、今では完全に没落したと聞いてますが……」

 

 

 そこでリリは言葉を切り、ヴェルフを見つめる。しかしヴェルフは、哀しそうな眼をしながらも苦笑を浮かべる。

 

 

「ああ…………ただの落ちぶれ貴族の名だ。でも、今はそんな事どうでもいいだろ?」

 

「ですが……」

 

「リリ、この話はここまでにしよう。それよりも、ヴェルフがどの程度まで戦えるかわからないから、とりあえず今日十一階層までにしようか」

 

「……はぁ、わかりました」

 

 

 話を強制的に終わらせ、本来の目的であるヴェルフのレベル上げとベルの戦闘データ収集のために、三人はダンジョンに向かった。道中何回か小規模なモンスターの群れに出くわしたが、ベルの小太刀とリリのボウガン、そしてヴェルフの大剣によって難なく撃破された。そして当初の予定通り辿り着いた十一階層。そこで出てくるモンスターをはじめはヴェルフがメインで討伐し、他二人はサポートに努める。

 暫く討伐を繰り返したところで、一旦ヴェルフは休憩となる。余り続けて事を成してもヒトは成長しない。適度に働き、適度に休み、適度に食べてヒトは効率的に成長するのである。

 

 

「じゃあリリ、しばらく僕一人で戦うからヴェルフと一緒に見てて」

 

「はいです」

 

「ヴェルフはよく見ていてほしい。新しい武器を作ってもらうための参考になると思う」

 

「応よ、任せろ」

 

 

 素直に返事したヴェルフに少し笑みを浮かべ、ベルは視線を鋭くしながら目前に迫ってきたオークやインプの群れに向かう。偶然か彼等が狙ったのか、ベルがいたのは広い空間だった。それは彼が、人の姿で十全の力を発揮するに十分な広さをほこっていた。

 長く息を吐いたベルは腰に小太刀を収め、代わりに主武装の両剣を取り出す。初めから両端の刃を展開し、一振り二振り体の周囲で回した後、体の前方で水平になるように片手で持つ。

 

 

「ギャアアアア!!」

 

 

 オークの一人が叫ぶと同時に、全てのモンスターがベル一人に向かって襲い掛かっていく。

 

 

「はああああああ!!」

 

 

 対するベルも猛るように声を上げ、両剣を操ってモンスターをさばいていく。モンスターの攻撃を紙一重でかわしていき、返す刀で相手を切りつけていく。時折両剣を投げてはブーメランのように絶妙に手元に戻し、遠方のモンスターも倒していく。そんな様子を、ヴェルフは見逃すまいと、食い入るように見つめていた。

 気が付けばベルは両剣を片手で持ち、もう片方の手には小太刀を握りしめ、異質ともいえる二刀流で大立ち回りを繰り広げていた。猛る業火のようでありながら、清廉な疾風のような動き。「静」と「動」という二つの矛盾を見事に長所を潰さずにあ併せ持ったスタイルに、ヴェルフは勿論のこと、リリも呆然とした表情で見つめていた。しかしヴェルフの目には驚喜の色が濃く浮かび、爛々とその瞳を輝かせていた。

 

 

「セヤあッ!!」

 

 

 最後の一振りとでもいうように、ベルは体と共に両手の武器を回転させると、この場にいたすべてのモンスターが魔石へと還った。気が付けばベルの周りには、大小様々な大きさの魔石が散らばっていた。

 

 

「……ふう。どうかなヴェルフ、参考になった?」

 

「ああ、バッチリだぜ!!」

 

「じゃあ今日はもう帰りましょう。十分魔石も集まりましたし、ヴェルフ様もイメージが残っている間に作りたいでしょう?」

 

「そうだな。じゃあ行くか」

 

 

 満場一致で今日は帰還することになり、ベル一行は魔石を残さずに集めて地上に帰還した。因みに彼等が持って帰ってきた魔石の換金額は均等に三等分され、それぞれに渡された。結果的にヘファイストス・ファミリアの取り分は低くなってしまうが、それは武器製作費を支払うことで交渉済みである。

 帰還後、すぐにヴェルフは自分の工房に戻り、武器制作にかかった。武器を鍛えるには相応に時間がかかる。特に彼の場合、武器とは使用者の唯一無二の相棒という考えを持っている。そのため、振り下ろす鎚の一振り一振りに、全身全霊の魂が込められていた。

 そしてダンジョン攻略から二日後、ベルは彼の工房に呼び出された。

 

 

「できたぜ。こいつがベルの新しい武器だ」

 

 

 そう言い、ヴェルフは卓上の布を取り払った。布の下から姿を現したのは、鍔部分に紫の水晶が嵌められた打刀ほどの大きさの片刃剣が二本。それぞれが銀色の輝きを放ちながら、己を扱う主人を今か今かと待ち構えていた。

 

 

「これは……」

 

「ああ、昨日までの武器は確かに強力だが、どうしても両方の鍔部分が脆くなってしまう。折り畳み式にしている分、その結合部が使うたびに、整備でも誤魔化せないほど壊れやすくなるんだ」

 

「あれ? でも今回は両剣じゃないんだね」

 

「それなんだけどな、柄頭を見てみろ」

 

 

 ヴェルフに言われた通りその部分を見ると、普通は何かしら装飾が付いている部分に別の機構がついている。そして更によく見れば、二本の刀で組み合わせられるようになっている。

 

 

「気づいたようだな。そう、こいつはベルの主武器の両剣にもできる。前までと違って刃も長くなっているし、持ち手も短い。だけど今までよりもリーチ変更が簡単だし、小太刀との二刀流もやり易いだろうということでこれにした」

 

 

 彼の説明を聞きながら、実際に武器を手に取って何度か振ってみる。彼の言う連結後の両剣形態や二刀流、更には逆手や一本を両手持ちしたときなど、あらゆる持ち方で刀を振るい、その扱いを吟味した。気のせいか、水晶が仄かに光っているようで、ベルの手にも不思議と馴染むものであった。そして彼は一つの結論を出す。

 

 

「……気に入ったよヴェルフ。是非これを使いたい」

 

「そう来ると思ったぜ。ところで何かつけてほしい装飾とかはあるか? これはあくまでベースの物で、後から強度に問題ない装飾をつけられるが」

 

「う~ん……あっならこういうのは出来る?」

 

 

 ベルの提案にヴェルフは一瞬驚くも、快く了解を示した。次の日、ダンジョンに向かうベルの背には二本の刀がベルトで固定されており、刀身の背に追加された紅の装飾と鍔の紫の水晶が、朝日を受けて輝いていた。

 

 





――雲の切れ間から手招きする空

――プレッシャーをぶっ壊してアクセルを踏み込め

――「でも」「だって」「だけど」

――そんな言葉を吐いたら行き止まりさ

――仮令心が止まりかけても

――彼の脳細胞はトップギアで回る

――この男、刑事で仮面ライダーだから

――OK!! START YOUR ENGINE!!
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