ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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唐突に書きたくなり、書いてしまった次第です。
生暖かい眼で読んでくだされば幸いだと思っております。




本編
1. 戦士の船出


 

 

「ベルよ、よく聞け」

 

「その力の使いどころを見誤るでないぞ」

 

「『力』と言うものは、他者に誇示するためにあるのではない。己に決して負けぬために、『力』を培うのじゃ」

 

 

 その言葉と共に、生まれ育った村から見送られたベルは、迷宮都市オラリオへと向かう馬車の上にいた。親切な商人がいてくれたため、道中の護衛として載せてくれることになったのだ。

 

 

「ずっとおじいちゃんに訓練されて、戦い方を勉強してきた。そして、森で会った黒い服を着た、神様のような人に、僕の中に眠る力の種火をいただいた」

 

 

 最初は戸惑った。ゴブリンの群れに襲われそうになって必死に逃げて、気が付けば自分を中心にゴブリンの亡骸が転がっていた。彼らの血に映った自分の姿は、とても人と呼べるものではなかった。黄金の角に真っ赤な複眼、最早ドラゴンを彷彿とさせるような顔に変化しており、己の内からあふれ出る力を持て余していた。

 

 その時だった、神のような黒衣の人に出会ったのは

 彼は自分を「人の子、アギト」と称し、自分の変化を見ても、何も言わなかった。寧ろ力を使いこなせるようにと、彼の配下たちにも協力してもらった。何とか己の力として扱えるようにもなり、安定したときに、育ての親に外の世界を見るように言われた。

 女好きで英雄譚が好きな老人だが、彼の慧眼は確かなものであるため、その言葉に従い、街に出てみることにしたのだ。少なからず、親の影響を受けていたベルは、出会いなんかもあるのかと少し期待はしつつも、初めて見る様々な光景に目を奪われていた。

 

 馬車に揺られること数刻、道中単独のゴブリンに襲われることはあったが、そこは鍛えられた身、苦戦するまでもなく一太刀で切り伏せて終わった。

 街に入ると、生まれ故郷とは違って人でにぎわっている様子に、ベルは目を奪われていた。何もかもが新鮮で、衝撃を受けていた。

 

 

「おっといけないいけない。冒険者になるにはまずファミリアに入らないと」

 

 

 少年は意気揚々と地図を片手に、街中に繰り出した。

 しかし結果は惨敗続き。ある程度戦えるとはいえ、見た目が貧相なので門前払いを受けてしまっていた。再び街に繰り出すも、休憩を入れようと、ちょっとした広場のベンチにベルは腰かけた。

 

 

「はぁ……ここもダメか。まぁ外見で判断するところは、こちらも願い下げだけど」

 

 

 ため息をつきつつも、ベルの目に諦めの色はなかった。もとより、この程度で諦めていたら、師の特訓から逃げ出している。それに比べたら、門前払いで受ける精神ダメージなど屁でもなかった。

 

 

「ところで、隠れていないで出てきたらいかがですか?」

 

 

 顔を上げ、立ち上がったベルは、自身の後方に声をかけた。何件目かの門前払い絵を受けた際、自信を尾行している存在に気付いたのだ。

 果たして物陰から出てきたのは、ベルの胸あたりまでの身長の小柄な少女だった。長い御髪は頭の上部で二つに縛っており、丈の短い、ワンピース上の白い服を着ていた。

 

 

「き、君。ボクに気付いていたのかい?」

 

「えっと、ちょっとした事情があって、僕は気配に敏感なんです」

 

 

 目の前の少女に、ベルは律義にも答えた。これには、ベルの人柄もあるだろうが、目の前の少女が自分に害成す存在ではないと、本能的に感じ取ったからであった。

 

 

「失礼ですけど、貴女は神様ですか?」

 

「ッ!? 君は、ボクが神であることがわかるのかい?」

 

「はい。ここに来る前の修行で、気配とか、そういうのがなんとなくわかるようになりまして」

 

 

 目の前の少女は、自身が神であることをわかってくれたことに対して、大変機嫌を良くしたようだった。

 

 

「ところで、どうして僕を尾行していたんですか?」

 

「おっと、そうだったそうだった。君、所属するファミリアを探しているようだね。よかったらボクのところに入らないかい?」

 

「貴女の眷属、ですか?」

 

「そうさ。恥ずかしながら、ボクには今眷属が一人もいない。だから今は入ってくれる子を探していたのさ」

 

「はぁ……」

 

「それに、先ほどまでの君の様子を見ていたけど、君は悪い子ではなさそうだ。だから正直に言うと、是非とも眷属になってほしいところなのだよ」

 

 

 女神の言葉に、ベルはしばし考え込む。これほど美味しい話は、早々転がってはいないだろう。加えて彼女の人柄も見る限り、ベルをだまそうという気配は感じられない、

 

 

「分かりました。僕を神様の『眷属』にしてください」

 

 

 考えた末に出した結論は、「承諾」という選択だった。ベルの言葉に満足したのか、目の前の女神は満面の笑みで頷いていた。

 

 

「そうと決まれば早速ボクのホームに帰ろう!! ファミリア入団の儀式をするぞ!!」

 

 

 意気揚々と歩き出す女神に、ベルは慌てて追いかけた。未だ自己紹介すらしていない二人だが、この出会いを祝福するかのように、空は晴れ渡っていた。

 

 

 





「なぜ、彼の力を呼び起こしたのですか?」

「……かつての彼と、同じ輝きを持つ魂。その魂の行く先を、見てみたくなりました」

「人を愛したがゆえに人を滅ぼしかけた貴方が、そう考えるとは」

「しかし、私とは異なる考えを持つ者もいます。彼等が新たなアギトにどう関わるのか」

「人も神も、一筋縄でいかないものですね」


最初のルートのヒロイン②

  • シル・フローヴァ
  • 春姫
  • エイナ・チュール
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