ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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今回は長めです。

ではどうぞ。




33. ゴライアス・ロード

 ロキ/ヘファイストス・ファミリアの拠点は混乱に包まれていた。彼等が拠点を張っていたのはダンジョン内における「安全圏」といわれるエリアで、モンスターがわかないことが常識である。しかし、現在その「安全圏」に多量のモンスターが押し寄せているという報告があったのだ。

 現在拠点にいるのは武具整備のためにロキ・ファミリアに同行していたヘファイストス・ファミリアの鍛冶師たち。そしてレベルが2や3程度の冒険者だけである。一対一の状況であれば、この場にいる冒険者であっても何とか退所は出来るが、非戦闘員を護りながらとなると些か荷が重すぎる。だからといって、彼等に逃走という選択肢はないのだが。

 

 

「弓矢隊は後方に!! 盾持ちは前衛に立つんだ!! モンスターどもを拠点に入れるな!!」

 

 

 ロキ・ファミリアの冒険者ラウルの指示が戦場に響く。彼はレベル4の冒険者であり、ロキ・ファミリアの主力メンバーを補佐する二軍の中核を担う冒険者である。彼の指示により冒険者たちは隊列を組み、モンスターの襲来に対処していく。勿論十八階層のモンスターは上層とは比較にならぬほどに協力になっており、第二軍では苦戦はしないものの、決して楽な戦いではない。

 弓矢や前衛によってモンスターたちは魔石へと還っていくが、それでも冒険者側も負傷者が増えていく。元々彼等は遠征からの期間途中だったこともあり、回復用の物資も補充したとはいえ、十分な量があるとは言えない。そのため負傷しても最低限の治療しか施すことができない。このまま戦い続けてもじり貧であり、運よく鎮圧したとしても、最悪死者すら出かねない。どうするかラウルは思考をを巡らせる。

 

 その時、盾持ちの前衛たちの前の緑色の輝きが落下した。衝撃と風で前衛と交戦していたモンスターが吹き飛ぶ。土煙が腫れた先には、全身が深緑と黒い肉体で覆われた異形が、肩で息をしながらモンスター群を睨みつけていた。ラウルたちからは異形の背中しか見えていなかったが、正面から見たらモンスターと間違えても仕方がない形相をしていた。

 元々赤く輝いていた大きな複眼は更に煌々と光を湛えており、頭から生えている二本の触覚は長く伸びていた。暫くモンスターを見つめていた異形は、左手の甲から突き出ている黄色い突起を伸ばしてかぎ爪状に変えて切りかかった。

 一振りで次々にモンスターをなぎ倒していく様を見て、ラウルたちは冷や汗を流す。今はモンスターだけに意識を割いているものの、もしモンスターが全滅されれば、次は自分たちにその刃を向けるのではないかと恐れたのだ。

 

 

「ギギギ、ギギイイイ!!」

 

「でや!! ダアアッ」

 

 

 モンスターもこの緑の異形が危険だと感じたのだろう。冒険者たちには目もくれず、全てのモンスターが異形に向けて武器や爪をむき出しにしてとびかかっていった。しかし囲まれても動揺することなく、異形は獣の様な俊敏の動きで攻撃をよけ、かぎ爪でモンスターを切り裂いていく。時折モンスターを威圧するように大声で叫び、それに硬直したモンスターを更に仕留めていく。

 

 

「無事か、みんな!!」

 

 

 と、そこへ救援に来たであろう、リヴェリア率いる何人かの幹部組が戻ってきた。事前に事態を察したのだろう。すぐにケガ人の保護に動き、前衛の補助をしつつも、その他冒険者たちに指示を出していく。

 

 

「ケガ人は早く後退しろ!! 戦える奴は防衛線を護りつつこっちまで来るんだ」

 

「しかし、あの緑のやつを放っておくわけには」

 

「あいつは大丈夫だ、心配しなくていい。それより消耗していない者たちはあちらのゴライアスの救援に向かってほしい」

 

「ゴライアスも出ているんですか!?」

 

「ああ。それに見たところ強化されている。今はフィンらと共にヘスティア・ファミリアの者が対応している」

 

「わかりました。では治療班を数人残し、ほか無事の者たちと一緒に向かいます」

 

「頼むぞ」

 

 

 リヴェリアの指示によってフィンたちの許に向かおうとしたとき、ラウルは背筋に走る薄ら寒いものを感じた。恐る恐る振り返る先には、両腕を顔の前でクロスさせ、中腰で構える緑の異形。その足元には何かの紋章の様なものが浮かび上がり、やがて渦を巻くようにして異形の右足に吸収され、そのかかとに生えていた鉤爪上の突起物に大きめのエネルギーの刃が形成される。

 

 

「Grrrrrrrr……デヤアッ!!」

 

 

 一瞬の溜めののち、異形は一気に駆け出し、飛びながら後ろ回し蹴りを残りのモンスター群に向かって繰り出した。蹴りだすと同時に更に肥大化した緑色の光刃が残っていた全てのモンスターを切り裂き、魔石ごと爆散させた。たったのひと蹴りで、隊列を組むほどのモンスター群を殲滅させた異形、その牙の向かう先は果たして何なのか。ラウルは目の前の紅に光る恐怖して動けずにいた。

 しかし異形は冒険者たちやラウルには目もくれず、リヴェリアだけに目を向けた。そして彼女だけに分かるように首肯すると、ゴライアスに向けて飛び出そうと足に力を込めた。

 しかし水を差すように、異形の足元に何かが数発撃ちこまれた。

 

 

「……いやー悪いね。でも今回、君はここで待ってて貰わないと」

 

「……誰だ、テメェ」

 

「誰、か。ん~あえて言うなら『破壊者と対なす盗賊』かな?」

 

KAMEN-RIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に立つ黒き巨人(ゴライアス)を見上げる。全身から滲み出る覇気は抑えることをせず、その全てを目の前に立つ戦士(ベル)に向けている。ゴライアスは階層主と呼ばれるだけあり、その全てが他のモンスターと一線を画している。特に筋骨隆々の肉体に違わず、単純な力ならば並みの冒険者ならばひと捻りされることは想像に難くない。

 しかしその反面スピードはそれほど速くはない。その遅い動きを馬鹿力と筋肉の鎧で補っている。そう考えたベルは、力と防御に秀でたフレイムフォームへと変身した。ストームフォームで攪乱するのも考えたが、もしも攻撃を受けた場合、ストームフォームでは大きくダメージを受けてしまう。

 オルタリングからフレイムセイバーを引き抜いたベルは、ゴライアスのパンチや踏み付けを避け乍ら一撃一撃を確実に入れていく。着られると同時に内側を焼かれる痛みで、ゴライアスは更に怒り狂い、全身の筋肉に力をみなぎらせていく。

 

 

「……ちょっと拙いかも」

 

 

 ベルは独り言つ。攻撃を避けてはいるが、拳の風圧や足踏みによる地面の振動などで、ベル自身が思っているよりもダメージを受けていた。もしこれがグランドフォームやストームフォームだったらと考えると冷や汗が止まらない。

 

 

「でも今あいつの注意は全部僕に向いてる。あと少し時間を稼ぐぐらいなら……」

 

 

 しかしベルの期待を裏切るようにゴライアスは行動を起こした。ベルが相手をしているのはゴライアスとは言え、強化された個体。それにフィンの動揺からして、見たことのない強化体という線が濃厚である。

 大きく開いた口に得体のしれないエネルギーが集まっていくのを感じたベルは、咄嗟に足元に紋章を出し、足を介して剣にエネルギーを込める。紋章が消えた頃には剣からゴライアスの身の丈を超すほどの火柱が立ち上っていた。

 

 

「ふうぅぅぅぅ……ヌゥウン!!」

 

■■■■■■■■■■■■■──■■■■■■■■ッ!! 

 

 

 巨大な剣が振り下ろされるのと極大の咆哮(ブレス)が繰り出されるのは同時だった。暫く鍔迫り合いとなったが、やがて焔の剣が咆哮を切り裂き、そのままゴライアスを縦に切り裂いた。

 左右に切り分けられたゴライアスはドウと地響きをたて乍ら倒れていく。地に伏したまま動かなくなったゴライアスを確認し、ベルはホウとため息をついた。自身より大きい敵の相手は何度かしてきたが、今回のゴライアスは今までの比ではなかった。そのためなのか、いつになく精神的に疲弊してしまっていたようだ。

 

 

「ベル―!!」

 

「ベル様―!!」

 

 

 遠くから自分を呼ぶ声がし、そちらに目を向ける。そこには大きく手を振りながらこちらに走ってくるヴェルフとリリ、無言だが並走するリューとロキ、タケミカヅチ・ファミリアの面々。そして彼等に守られるようにして同行しているヘスティアとヘルメスの二柱。とりあえず安心したのもあり、ベルは変身を解くのも忘れて手を振った。

 しかしベルの直感が突如警鐘を鳴らす。右手に握っていたフレイムセイバーを本能に従って振りぬくと、何やら黒くて大きなものを切り払ったのを認識した。急いで前方に目を向けたベルの視界に入ったのは……

 

 

「再生……している?」

 

「ゴライアスは確かに再生するけど。普通ああも見事に縦に割られたら魔石ごと砕いているはずなんだ」

 

「でもあんな……あんな変な再生の仕方はしませんよ!?」

 

 

 立ち上がりながら、徐々に肉体を再構築していくゴライアスの姿だった。普通ゴライアスが再生する際、傷口の組織が盛り上がるように再構成され、欠損した部位を作り直すように行う。しかし目の前のゴライアスはまるで盆に注ぎなおされる水のように肉体が繋がり、傷口も塞がっていく。そして特筆すべきは、左胸の真中あたりに妙な文様が浮かび上がり光っていることである。

 

 

「あの文字……まさかエルロード?」

 

「ベル君。まさかあのゴライアスの強化はエルロードの誰かがやったというのかい?」

 

「予想です。ですがあの文字は確かにテオス様とエル、ロードの使うものです。そして水の特徴が表層化していることから考えると、恐らく水のエルかと」

 

「ただでさえ強いゴライアスがエルロードの加護を受けたんですね?」

 

 

 唯一それに気づいたヘスティアたちが話を進める。ヘルメスは口に出さずとも、エルロードかテオスが手を加えたことを察していた。しかし他の面子は彼等が何を話しているかがわからない。

 

 

「ベル。君の言うエルロードというのは何だい?」

 

「……この場ではある方の眷属という認識で。詳しくはロキ様にお伺いください。それより気をつけないといけないのは、あれは従来の強化ゴライアスと一緒にするのは拙いです」

 

「それはあの再生の仕方でなんとなくわかるけど。それほどにかい?」

 

「はい。あれは最早ゴライアスの括りに入れること自体が間違いです」

 

 

 彼等が会話を進めている間に、ゴライアスの再構成が徐々に終わりを見せる。同時に巨人の体には魚類の(ひれ)の様なものが形成され、クジラの尾鰭のような斧も握られる。

 

 

「武器を持つゴライアス……確かに認識を変えた方がよさそうだ」

 

「……僕が囮になります。その間に態勢を整えてください」

 

「しかしそれでは君が……」

 

「ベル。いくらアギトでもそれは無茶が過ぎると思う」

 

「無茶なのは分かっています、アイズさん。でも恐らく、一番適してるのは僕です」

 

 

 ベルはそう言うと、オルタリングを光らせながら二本目のフレイムセイバーを抜いた。それぞれの剣に炎を纏わせながら、ベルは出せる限りのスピードでゴライアスに向かい、足の筋や関節を切り裂いていく。しかし再構成の時に肉体を硬化させたのか、先程までと違って刃がほとんど通らない。更にはゴライアスの振るう斧によって真空間が出来上がり、それによって形成された空気の刃がベルの体に傷をつけていく。いくら防御力も高いフレイムフォームといえど、蓄積するするダメージには逆らえない。

 

 

「ッ!? ガレス、相手の隙を狙って大きな一撃を入れてくれ!! 一撃離脱を繰り返すんだ!! アイズ、ティオネ、ティオナは僕と一緒にベルの邪魔にならなように攪乱だ!!」

 

「「「はい(わかった)!!」」」

 

「レフィーヤだけど……」

 

「遅くなった!!」

 

 

 フィンが指示を出している最中に、拠点に向かっていたリヴェリア一行が到着した。何人かの冒険者たちも引き連れているが、ゴライアスの異常な変異に動揺を隠せていないようだ。それに真っ先に拠点に向かったベートの姿が確認できない。

 

 

「いいところにきてくれた。魔法隊、弓矢隊は外周を囲うように隊列を組んでくれ!! 近接隊は出来るだけ素早く動けるように盾の使用は控えるんだ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

「リヴェリア、ベートはどうしたんだい? ベートがいた方が幾分楽になるんだけど」

 

「ベートは謎の襲撃者に対応している。自身を盗賊と名乗っていたが、奴はロストエイジの道具を使いこなしていた」

 

「襲撃者?」

 

「奴の目的はベートをここに寄せ付けないことと言っていた。どうやらあのゴライアスの異常に関係しているらしい」

 

 

 ゴライアスの変異と謎の襲撃者。増えていく問題にフィンは頭を抱えたくなってしまうが、今はそんなことをしている場合ではない。一度頭を振って意識をリセットし、再びリヴェリアに向き直った。

 

 

「リヴェリアは外周でレフィーヤや他の魔法隊と共に迎撃を頼むよ。あと怪我人の治療も必要なら頼む」

 

「わかった。レフィーヤ、行くぞ」

 

「はい!! リヴェリア様!!」

 

 

 フィンの指示に従い、外周へと移動する二人。それを見届けたフィンは自らの愛槍を構えて戦場へと向かった。

 戦況は苦しく、次々に怪我人が増えていく。死者がいないことが幸いだが、このまま全員が負傷すれば結果的に全滅の一途をたどることは明白である。リリがゴライアスの目を狙ってボウガンで打つが、なかなかに命中しない。リューやアスフィがスピードを生かして斬撃を入れてもはじかれ、魔法で攻撃しても巨大な斧で薙ぎ払われてしまう。

 

 

「グっ!? 重……い……!?」

 

 

 そしてついにゴライアスの斧の振りおろしがベルを襲った。何とか二本のフレイムセイバーで受け止めるが、衝撃で腕にしびれが入る。地面に足がめり込むほどの衝撃に一瞬意識が飛びかける。そしてその一瞬が命取りとなる。

 急に軽くなったことに反応できずにつんのめるベルの正面には、巨大な拳が眼前まで迫っていた。そしてベルが気が付いた時にはすでに遅く、剛腕から繰り出されるパンチをまともに受けてしまった。あまりの衝撃と痛みにベルは完全に気絶し、地に伏してしまう。同時に彼の変身も解除されてしまい、次の一撃で確実に死に至る状態になった。

 攻略の要であるベルが倒れたことにより、一気に場の士気が乱れてしまう。アイズは剣筋が乱れ、ヴェルフとリリも同様で碌に攻撃も出せず、他冒険者たちも同様に動きに粗が出始める。

 ゴライアスも一番の危機が去ったと感じたのだろう。足を振り上げ、確実に危険要素を排除するためにベルに振り下ろそうとした。

 

 

「ベル君!!」

 

「ベル様、起きてください!!」

 

「誰か彼の回収に!!」

 

「間に合わない」

 

 

 誰もがベルが潰される光景を幻視した。事実、誰もがベルの許へと走るが、誰も間に合わないことは明白だった。

 

 

「おっと。悪いが、今そいつに死なれるのはこちらとしては痛い」

 

 

 ただ一人を除いて。

 突如ベルの下に灰色のオーロラが現れ、ベルはそこに落ちる。そしてゴライアスの足が着く前にそれは閉じてしまい、巨人の足は何もない地面を踏みしめた。

 獲物を踏んだ感触のしないことにゴライアスは戸惑うが、不意を衝いて顔面と眼球を襲う痛みにそれどころではなくなり、余りの痛みにのたうち回った。

 

 

「……誰だい?」

 

 

 再び外周に現れたオーロラを通って出てきた男に、ヘスティアは警戒を示す。しかし男の腕に抱えられたベルを見て、彼が一応助けてくれたことを理解した。

 男は無言でベルを下すと、手に持っていた妙な銃の持ち手をたたみ、一枚のカードを開いて取り出した。そしてそのままのたうち回るゴライアスの許へと歩き出す。その足取りはごくごく自然なもので、男が係争であるにもかかわらず、誰もが言葉を発せないでいた。

 

 

「誰だと聞かれれば答えに困るな」

 

「名前は言いたくなければ言わなくていい。でもベル君を助けてくれた君が信用できるかわからないんだよ」

 

「信用はしなくていいさ。そうだな……色々といわれているが、あえて名乗るとしたらこれが一番しっくりくる」

 

KAMEN-RIDE

 

「『世界の破壊者』、または『通りすがりの仮面ライダー』だ」

 

DECADE!!

 

 





――おや? どうやらあいつも来たようだね

――何の話をしてやがる?

――今はいいさ。いずれキミもわかるよ。

――ああ? 何ならここで吐いてもらうぜ!!

――できるのかい?

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