ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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やっと熱が下がった。
最近の執筆時のローテーションは、栗林みな実さんの「君の中の英雄」をきくことですね。
書くことないからこんな個人的などうでもいいことを書く「前書き」です。

それではどうぞ。




35. 驚愕のロキ

 

 

「……みんなそんな湿気た面して、何があったんや?」

 

 

 遠征から帰ってからというものの、ロキは自分の子供らの様子をいぶかしんだ。思うような成果が得られなかったのかと考えたが、どうもそれは違うらしい。それは幹部以外を人払いしたフィンの行動からは分からないが、それを成したときの深刻そうな顔から分かる。

 

 

「あえて確認するけどロキ、この部屋は盗聴されないよね?」

 

「は? どんだけヤバい話なんや。あ~大丈夫やで」

 

「そうかい、なら単刀直入聞くよ。エルロードとはなんだい?」

 

 

 フィンの口から出てきた単語が予想外過ぎ、ロキは一瞬思考が停止した。ヘスティアの眷属が何かしら言うならばわからなくはないのだが、アギトとはあまり関係を持っていない自分の眷属から出てくる言葉ではない。

 

 

「……話す前にや。その言葉、何処で聞いた?」

 

「っ!? ベル・クラネルと彼の主神が話しているのを聞いた」

 

「……ほんで?」

 

「彼からは詳しくは語られず、ロキから聞くよう言われたんだ」

 

「はぁ……ドチビといいその子供といい、面倒事ばかり作って。それで、どういう経緯でその単語が出てきたんや」

 

「ああ。十八階層の天井を破ってゴライアスが出たんだけど、それが変な強化をされていた。そのゴライアスの左胸に書かれていた模様をみて、『エルロードによる強化』って言っていた」

 

 

 フィンとリヴェリアの証言を聞き漏らすまいと耳を傾け、頭の中を整理していく。どうやら故意にその話題を出したわけでなく、事の成り行き上仕方なく出てきたことは把握した。とはいえ、自らの眷属に妙なことが吹き込まれたのも事実。

 ロキはひとつ大きく長いため息をついたあと頭を振り、卓上の自分のコップに入った水を一気に飲み干した。

 

 

「……これから話す内容は他言無用や。それくらいヤバい話やと覚悟しとき」

 

「わかった」

 

 

 確認をとり、ロキは話を始めた。

 世界の創造、それは光と闇の二つの力によって成し遂げられたという。宇宙ができ、星々が生まれ、その地に生命が生まれた。その生命体は、闇の力の配下たるエルロードたちの特徴を持ったものであった。

 

 

「恐竜、魚、虎や狼。それらは総て、それぞれのエルロードによって生み出された。フィンたちが見たゴライアスの特徴からして、水を司るエルロードの影響と考えられるな」

 

 

 それからはロキら神々が生まれ、天上界に住まうようになった。しかしエルロードはテオスの配下であり、分身体であるのに対して、生まれ落ちた神々は強力な力を持っていてもエルロードよりも格下であった。

 そんな中、テオスが自らの姿見を模してある生命体が創造された。それが初めての人類である。

 

 

「最初はエルロード達やテオス様に従順に従ってた人類も、やがて傲慢なものが出始めたんや。自分らは最高神を模した生命だから、他の生命を従えていいと」

 

 

 だがエルロード達はそれを面白く思わなかった。当然である。自分たちの子供とでもいうべき生命たちが、一方的に蹂躙されるのだ。そうしてエルロード達と人類の戦争が始まったが、結果は火を見るよりも明らか。人類は劣勢になり、勝負がつくのは時間の問題だったが、それでも人類は粘った。

 

 

「そんなとき、火を司るエルロード・プロメス様が人類を哀れみ、ある女とまぐわって子を産ませた。その子はネフィリムと呼ばれ人よりも強い存在として生れ落ち、それはエルロードにも匹敵するものやった。それにより、人類とロード達の戦争は膠着状態になった」

 

「ねぇロキ」

 

「なんやアイズたん?」

 

「そのネフィリム? っていうの、絵かなんかないの?」

 

「見た目か? せやなぁ……こんなのや」

 

「えっ!?」

 

「これって……」

 

「何やひっかかる反応やけど、話を続けるで」

 

 

 結局戦争の決着はつかず、多大な血が流れたことを悲しんだ闇の力は星を覆うほどの洪水を発生させ、双方の勢力を巻き込んで戦争を終わらせた。しかし絶滅を避けるため、大きな箱舟に幾種もの生命体を乗せて種の存続を行ったという。

 

 

「洪水の後、人に味方したプロメス様は闇の力によって処刑されたんや。そして箱舟に乗っていた人類は偶然か必然か、火のエルロードの子孫もまじっていたんや。そしてプロメス様は処刑の寸前、増えた人類に己の因子をばらまいて消えたんや。その因子がアギト因子、その因子で戦士として覚醒したのをアギト言うねん」

 

「それから、ロストエイジが始まったんだね?」

 

「その通りや。そして人類史上最初で最後にアギトと闇の力の戦いが起こったのもロストエイジや」

 

「最後?」

 

「せや。その戦いでアギトが負けとったら、今の世にフィンのような小人族、レフィーヤやリヴェリアママのようなエルフもおらん」

 

「どういうことだい?」

 

「あっ、ベルから聞いた。今いる種族は全部、アギトの進化する力でできたものって」

 

「アイズたんの言う通り。アギト因子っちゅうのは人類に無限の可能性を与えるもの。その地の気候に適応して進化するうちに、種族という形を取るにまでなったんや」

 

「てことはあたしたちアマゾネスの先祖も団長の先祖も、同じ人間だったってこと?」

 

「にわかには信じがたいけどね」

 

 

 ロキの話が一区切りつき、各々が話の感想を述べあう。コップに入っていた水を注ぎなおし、皆思い思いのペースで飲んでいく。そしてロキが三杯目の水を飲みほしたとき、再び口を開いた。

 

 

「ほいで? さっきネフィリムの絵を見せたとき反応したけど、なんでなん?」

 

「それは……」

 

「いい、俺が自分で言う」

 

 

 一瞬フィンは口ごもるが、今まで一度も口を開かなかったベートが口を開いた。珍しいこともあるものだと思っていたが、彼の次の行動でロキは再度卒倒しそうになった。

 瞬間の緑の輝きののちにベートのいた位置には、深緑色の異形の生命体が立っていた。

 

 

「ベート!? おまっ、ええ!?」

 

「さっきそこの馬鹿ゾネスが騒いでいたのはこういうわけだ。ロキ、何か知ってんだろ?」

 

「知ってるも何も、その姿はギルスやんか!? なんでベートが……はあ!?」

 

「そのギルスってのは何だい?」

 

「ギルスっちゅうんはネフィリムの、もっと言えばプロメス様の子孫や!! いわば先祖返りの一つで、普通はアギト以上に本能に吞まれるし、体の崩壊も起こる危険な姿や!! はっ、まさがベートがネフィリムの、プロメス様の子孫!?」

 

 

 ロキはもはや正常な思考ができていないのか、ベルのスキルを初めて見たヘスティアのように叫んだ。それを慣れて知るように流れる動作で耳をふさぐ部屋の面子。暫く彼女を放っていくかのように水差しに水を満たしなおし、ロキが落ち着くまで皆水を飲んだり武器を見たりと各々で行動していた。

 やっとのことで落ち着いたロキは一つ咳ばらいをし、ようやく机についた。

 

 

「……すまん。取り乱した」

 

「いいよ。それで、そのギルスというのはどれだけ危険なんだい?」

 

「改めてゆうけど、ギルスはプロメス様の直系の子孫以外発現しない姿や。アギト因子と違うて、徐々に体に慣れていくようなもんやない。一度発現したら最後、体はその強すぎる力に耐えきれんで少しずつ崩壊する。それによって通常の何倍もの速さで老化が起こって、早死にするんや」

 

「止める方法は?」

 

「アギト因子の影響が表層化しとる子から因子をもらえれば、もしかするかもしれん。やけどそう都合よく出てこんやろ。今んとこベートは出来るだけ変身せんことや、最悪一年以内に死にたくないんやったらな」

 

 

 真剣な表情でそう述べるロキに、ベートは黙したまま何も語らなかった。暫く自分の掌、正確には指先をしばらく眺めた後に無言のまま退室した。有無を言わせぬ彼の行動に誰もが何も言わず、フィンとリヴェリアはため息をついた。

 

 

「今後はベートが変身しないよう誰かが見てないとね」

 

「ん~まぁベートなら心配いらんやろ。あの子に関しちゃ様子見や」

 

 

 ベートについての方針も決まり、流石に疲労もたまっただろうということで今日はこのまま解散を言い渡し、各々事後処理や休息のために部屋に戻っていった。

 

 

「それにしてもあの子らの記憶で見たけど、まさか『破壊者』と『怪盗』が来とったんやな。やーなことにならんけりゃええけど。『仮面ライダー』なぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方ヘスティア・ファミリアのホーム。

 補修された廃教会の地下では、ベルが上半身裸でうつ伏せになったままベッドで熟睡していた。その顔にはこれまでの焦燥の色はなく、非常に安心しきった顔をしていた。

 

 

「ベル様、よく寝てますね」

 

「うん。ようやく問題が一つ解決したんだ。暴走の心配もないし、気が抜けるのもわかるよ」

 

「ヘスティア様。ベル様のアギトはどういう状態なんですか?」

 

「あれは殻に覆われている状態だね。ボクの知る限り、バーニングフォームの暴走を克服したのはベル君含めて二人だけだ」

 

「ベル様以外で一人だけ。それほど強力で不安定な形態なんですね」

 

 

 お茶を口に含みながらリリはベルを一瞥した。年齢よりも若干幼く感じるその寝顔は、一歩間違えたら生物兵器になっていただろうと、リリには到底思えなかった。

 暫くするとお茶を飲みほしたヘスティアは立ち上がり、地下室の端っこに移動した。訝し気な視線をリリは送るが、ヘスティアは気にすることなく、重なっている小棚を一つずつ動かしていく。やがて全て移動させたあとの壁には、目を凝らしてみれば扉の様なものが存在した。

 

 

「ヘスティア様? それはいったい……」

 

「リリ君。蝋燭を持ってついてきてくれ」

 

「え? はい、わかりました」

 

 

 ヘスティアの指示通りに火をつけた蝋燭をつけて戻ってきたときには、リリの目の前には人一人が通れそうな通路があった。扉は分厚い石に見せるように巧妙に色付けされており、余程注意深く観察しなければわからないだろう。

 ヘスティアとリリは無言で通路を進んでいき、途中で何度か分かれ道を曲がりながら更に奥に深くに通路を進んでいく。そして辿り着いた先は無機質な洞窟の空間。天井は大の男でも思い切りジャンプできるほど高く、そしてだだっ広い空間だった。そして壁は自然発光をしており、この空間だけが何故か昼間のように明るかった。

 

 

「ヘスティア様? この空間はなんですか?」

 

「その答えは正面にあるよ」

 

「正面?」

 

 

 ヘスティアに促されたままに正面に目を向けるりり。最初は何のことだか分らなかったが、徐々に目が光になれたことで、目の前の壁に絵が描かれていることに気が付く。

 大きな壁に描かれたそれは、まるで一つの物語を示しているように描かれていた。そしてその壁画の両脇に、アギトのベルに酷似した石像が跪いた態勢で鎮座していた。

 

 

「リリ君。この絵はね、テオス様の世界創造から最初の人類とロードの戦争、それからロストエイジまでを描いたイコンだ」

 

「人類の歴史、ですか?」

 

「そう。ボクもこれがここにあるとは思わなかったけど、あの時代の彼等が伝説を記録するために壁に絵を描いたんだ」

 

「ヘスティア様、この中央で赤子を抱いてる天使の絵は」

 

「そう。このお方がプロメス様で、全てのアギトの始祖。そしてキミの記憶を見る限り、ロキのあの狼の子のご先祖様だ」

 

 

 たった一枚の壁画。しかしそこに表現された情報はあまりにも多く、リリは一つずつ整理しないと理解が追い付かなかった。

 

 






――そうですか、ギルスが。

――アギトにギルス、彼等が同時に目覚めたという意味。

――プロメス、貴方は常に人の子の未来を見ていた。

――貴方には、いったい何が見えていたのですか?

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