ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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――ベート様、治療しますね。

――大した事ねぇからやめろ。雑魚にやってやれ。

――あとはあなたとヴェルフ様、ベル様だけです。

――わかったわかった。だが先にあの赤毛の雑魚からやれ。

――心配しなくても、あちらはあちらで既に治療してますよ。

――イデデデデデ!? 沁みる、沁みるからゆっくりだあああああ!?

――あわわわわ、ごめんなさ~い!!

――……ね?

――……ふん。




45. 戦後処理

 『戦争遊戯』の翌日、戦後処理のためにベル達はギルドにて色々と申請や受諾の承認書類を認めていた。アナザーウォッチという未知で有害なものを持ち出したアポロン・ファミリアは、主神がオラリオ追放の刑にあったことで事実上の解散状態になった。

 その結果、全財産はギルド預かりだったのだが、問題の早期解決に最も尽力したとして、遺族への保障金を差し引いた分をロキ・ファミリアとの折半という形に落ち着いたのである。ただロキ・ファミリアは受け取りを拒否したため、全額全土地がヘスティア・ファミリアの所有となった。

 

 

「しかし良いのかいロキ? 君のギルス君がいなければ、ウチのヴェルフ君は死んでいたかもしれないから……」

 

「殊勝な態度やめえ、背中痒ぅなるわ。ええも何も、ベート本人がいらん言うてたんや。それにアポロンの財産て、殆どあのバカの銅像や石像何十体とかそんなもんや。そりゃ売れば少しは金になるやろうけど、うちはいらんよ」

 

「そうかい。なら遠慮なくいただくよ」

 

 

 話し合いも特に滞ることがなかったのは、ギルド職員にとっては多いに助かることである。ウラノスの方針でアギトとギルスについての情報開示命令などもあったが、両主神とも本人の許可する範囲で余さずに報告している。そのことも、押し寄せる人の対応で混沌としつつも、ギルドは作業を(つつが)なく行えるということで安堵していた。

 

 

「そう言えばヘスティア様、我々の住んでいた場所はどうするんですか?」

 

「それなんだよ。ヴェルフ君と命君にはまだ見せてないけど、あのイコンがある以上余り空けたくないんだよね」

 

「とはいえ、倉庫として使っても泥棒が入らないとも限りませんし」

 

 

 せっかくアポロン・ファミリアの広大な土地が手に入ったのだから、有効活用をしていきたいという思いはある。事実中止になったとはいえ、「戦争遊戯」後にヘスティア・ファミリアに入りたいというフリーの冒険者や、他派閥からの「改宗」を望む冒険者の申請が後を絶たない。

 一応ギルドの方でも審査をしてもらってはいるが、それでも三十を下らない数の志望書がホームに届けられている。のが現状である。ギルドの審査を通っても、入団を拒みたくなる冒険者はごまんといる。一例を出すならば、ヘスティア・ファミリアに入団すれば、特別な力をもらえると勘違いしているタイプの輩だ。ひどい場合は拒否をすると、口に出すのも憚れるような悪態をつきながら去り、身に覚えのない悪評を流すものもいた。

 そのため、未だヘスティアの眷属はベルとヴェルフ、リリと命の四名だけなのである。命も一年限定という条件の入団のため、永続的眷属は実質三人だけの状態だ。

 五人で頭をうんうんと悩ませていると、廃教会の扉が叩かれる音が響いた。また強硬手段に出た輩かと考えるも、何処か叩き方が丁寧で小さめである。しかし来客の予定もなかったため、きょとんとした顔のままベルが代表して扉を開いた。

 

 

「あれ? カサンドラさんとダフネさん?」

 

「おや、アルファじゃない?」

 

「ど、どうも……ベルさん」

 

「こんにちは。ミアハ様のファミリアはいかがですか?」

 

「いいとこだよ、けどやっぱ財政状況がね。普段の探索以外にもちょいちょいクエストをやってる」

 

「そうですか、お疲れ様です。立ち話もなんですので、中へどうぞ。暑いですからお茶でも飲んでください」

 

 

 普通他派閥の主神や眷属をホームに招くことはない。ヘスティアとロキが内緒話したりと、余程重要な話でない限りありない。しかしそこは懐の深すぎるヘスティア・ファミリアというよりもベル・クラネル、ヘスティアも苦笑いを浮かべるだけで最早彼の人の好さには諦めをつけていた。

 出された冷えたお茶を黙って飲み続ける二人だが、流石にいつまでも本題を出すためにダフネが口を開いた。

 

 

「今日来たのは改めてお礼を言うことと、カサンドラがアンタたちに、アルファに伝えたいことがあるからだよ」

 

「伝えたいこと?」

 

「ええ。まずはありがとう。多少の恩はあったけど、あんたたちのおかげでアポロン・ファミリアから抜けることが出来た」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「……僕たちは何もしてません、と言いたいですけど、それだと納得いかないですよね。なら貸し一つということで手を打ちませんか?」

 

「……わかったわ。何か助けが必要な時、出来る範囲で援助させてもらうわ」

 

「ええ、お願いします。それでカサンドラさん、僕に伝えたいこととは?」

 

 

 ベルとダフネの話が落ち着いた後、今度はカサンドラに顔を向けた。オドオドとした態度で隣に座るダフネを見つめるも、彼女はため息をつくだけで手助けをする気配がない。何度か視線を右往左往させたのち、カサンドラはコップに残ったお茶を一気飲みした。

 

 

「お、お待たせしました」

 

「いえいえ」

 

「あの……私は夢という形で未来が見えるんです……」

 

「未来をかい? 未来視、いや、この場合予知夢というのが近いね。ということは、その予知夢で何か見たんだね? ベル君に関することを」

 

「はい、ヘスティア様」

 

「言っておくけど、この子の予知夢は結構大袈裟よ。この前の『戦争遊戯』も、アルファのことを『輝く龍』って表してたみたいだし」

 

「あはは……まぁ強ち間違ってもいないからなぁ」

 

 

 ダフネは呆れたような声で捕捉するが、大きく間違っているわけでもないため一概に否定できない。アギトは味方によれば人型の龍に見えないこともないし、シャイニングフォームなぞ正に「輝く龍」だろう。

 

 

「そ、それでですね。あの、そう遠くない先に、大きな脅威が来るみたいです」

 

「……『脅威』?」

 

「はい。闇が世界を覆いつくしていき、闇に包まれた世界は絶望にくれるんです。けれど、『世界の理』が遣わした黄金の王が、それを打ち払っていくという内容で……」

 

「『闇』……『黄金の王』……カサンドラさん、その王様の背後に、何が見えました?」

 

「星々、です。何人も侵すことが出来ない、眩い輝きを放つ黄金の星々……世界を明るく照らす優しく強い光。その星の一つに、ベルさんのシンボルがあったので」

 

 

 小さな声でそう表すカサンドラだが、ベル達にとって決して無視できない内容だった。隣に座るダフネは、未だ大袈裟な内容だとため息をついているが、当事者にとってはそうでもない。

 ベルの予想が正しければ、そう遠くない先に、オラリオ全土か、もしくは世界規模での厄災が降りかかることになる。それに立ち向かうのはベル達仮面ライダーに他ならない。現状オラリオにいるライダーはベートとベル、そしてもうすぐヴェルフが加わって三人となる。

 

 

「……ありがとうございます。お礼といってはなんですが、こちらをどうぞ」

 

「ちょっと正気? これ結構有名なお店のお茶菓子じゃない。そんなホイホイ他人に渡すようなものじゃないでしょう? それにこの子の夢の話だし」

 

「ボクたちにとって、それほど重要な内容だったということさ。これはミアハたちで分け合ってくれよ」

 

 

 ダフネたちは手土産を受け取ろうとしなかったが、ならば郵送するとヘスティアが言うと渋々受け取った。

 世間話も程々に、二人が帰ると改めて五人で机を囲った。議題は勿論、先程のカサンドラの予知夢の内容である。

 

 

「ベル君、彼女の話は『ライダー』に関わることだね?」

 

「はい。間違いないと思います」

 

「それじゃあヴェルフ様とベル様、ベート様がまた戦うと?」

 

「そうでしょうな。ベル殿たちはオラリオ唯一の『ライダー』、本人の意思に関係なく、戦うことになると思われます」

 

 

 問題山積みだねえと、ヘスティアは小さく嘆息しながら言ちた。ホームやファミリの問題に加え、世界規模の問題が舞い込むとなると、ため息の一つも付きたくなるものである。

 

 

「この際アポロン様の元領地は、道場か何かにしましょうか? 僕の予感が正しければ、その厄災の時、僕たちだけじゃ対処しきれないと思うんです」

 

「成程、ある程度自衛できるレベルまで鍛え上げるってことだな? いいんじゃねえの、俺もG3ユニットの調整場所が欲しかったし」

 

「まぁあそこは無駄に広いからね。二人はどう思うんだい?」

 

「問題ないと思いますが、教導官はどうされるのです?」

 

「それに施設の運営にもお金がかかります。完全に無料というわけにはいきません。それにヴェルフ様のG3ユニットの費用を考えると……」

 

「余り安い利用費にできないか……」

 

 

 訓練場を開くにも財政面や誰が教えるかなどの問題が浮上し、五人とも再び頭を悩ませることになる。しかし結局訓練場は開くことになり、アポロン・ファミリアの拠点建物は改築された。地下部分はG3ユニットの運転場となり、ガードチェイサーとヴェルフの鍛冶場もここに収納されている。地上部分は一階建ての道場と離れで構成されており、ヘスティア・ファミリアからベルと命が交代で指導をすることになった。

 道場が解放されるのは週二回、その他の日で鍵が開いているときは施設利用が可能という体制で運営している。無論指導料と施設利用料はとるという定めのもとである。それでも足繫く通うものが多くいるため、運営には若干の余裕が出てきていた。

 利用者には何とベートの姿もあり、誰にも見られない地下空間でベルと鍛錬を積んでいた。アギトにはアギトを、同じ力を持つ者同士、先のことを見据えての判断であった。

 

 






今回はちょっと薄味に仕上げました。
次回からはイシュタル編に移っていきます。
本当ならイシュタル編は、春姫ルートとして仕上げる予定でした。ですがやはり分岐する前にヒロインを全員出すべきと判断し、共通ルートに入れることに決定しました。

それでは皆々様、また次回に。

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