ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~ 作:シエロティエラ
お久しぶりです。覚えておいでくださる方々、感謝を申し上げます。
ダンまち最新刊が約一年ぶりに出版されましたが、いやはや衝撃ものでしたね。いや、ある程度予想していたとはいえ、なかなかにショックも大きく。
これは原作も、そろそろ佳境に差し掛かってきたのでは?
それでは最新話です。ちょっと内容が薄いかも。
どうぞごゆるりと。
……シルのルートを編集しなおさねば。
戦後処理も滞りなく終わり、迷宮都市オラリオにもいつもの日常が戻ってきていた。街の通りには人が行きかい、商店では客を呼び込む威勢のいい声がが響き渡る。夜にはダンジョン帰りの冒険者が、駆け付け一杯とでも言うように酒に喉を鳴らし、料理に舌鼓を打つ。時折路地裏で殴り合うような音も聞こえるが、酔っ払い同士による喧嘩なので、特に気に留める者もいない。
そんな日常のなか、ヘスティア・ファミリアの拠点である廃教会には僅かにだが重い空気が漂っていた。
事の発端は数日前に遡る。
限定メンバーである命が、元所属ファミリアの仲間である千草と歓楽街に向かったのをベルが見かけたのである。身売りをする様子ではないことは察したが、目的が分からない。それに歓楽街は治安がいい方ではなく、何かのはずみで問題に巻き込まれることを危惧し、ベルはこっそりと尾行していたのだった。
幸い防具は装着せず頭からボロ布を被っていたため、特徴的な白髪は誰にも見られることなく尾行を続けられた。纏っていた布が宵闇に紛れやすい、黒色をしていたのも幸いしたともいえる。
しかし何故かその場にいた神ヘルメスに見つかり、あれよあれよといううちに一人の娼婦につかまり、歓楽街を統括するイシュタル・ファミリアの本拠地に連れていかれたのである。「
そのまま彼女に庇われる形で歓楽街出口近くまで抜けたベルは、何とか命たちと偶然だが合流し、急ぎ廃教会まで帰ってきた次第である。しかしヘスティアにも見つかってしまったため、やむなく二つのファミリアによる緊急会談となったわけだ。
「……命君、千草君。君たちの事情は分かった」
「しかし何故私やヘスティアにも相談しなかったのだ? 桜花も連れて行けば、護衛にも役立ったものを」
主神二人は事の発端となった二人の行動に一定の理解を示すも、二人だけで行動したことに関しては反省を促す。軽率な行動だったことは件の二人は理解しているようで、粛々と二柱の言葉を受け止めた。
「さて、二人に関してはこれでいいだろう。次にベル君、キミに関してだ」
「僕……ですか?」
「そうだよ。テオス様やゼウスには劣るけど、ボクは君をしっかりと見てきたつもりだ。だから何となく、君が何かに悩んでいることはわかるよ」
ヘスティアに諭されるように問われたベルはしばし逡巡したのちに、重々しく口を開いた。
当初は春姫を娼婦の一人としか認識していなかったベルだったが、今日にいたるまでの数日に、何度か彼女と話す機会があった。何故足蹴く彼女の許へと通ったかだが、単に彼の勘としか言いようがない。ベル自身が彼女を放っておくのは拙いと感じ、彼女について知るべきであるという勘を信じて訪ねたのである。
結果としては彼女は特殊なスキルを持っていることと、神ヘルメスの話では彼が運び込んだ荷物が彼女に何か関係があるということ。更に付け加えるのならば、ヘルメスはその荷物に関して良からぬものを感じており、それはベルも感じていた。正しくは彼女に関して良からぬことを感じたのであるが。
「……神様とタケミカヅチ様にに伺いますが」
「うん?」
「『殺生石』というものをご存知ですか?」
ベルが言葉を発した途端、タケミカヅチとそのファミリアの面々がこぼれんばかりに目を見開き、桜花やタケミカヅチに至っては顔を青白く変化させている。
「タケ? 君は知っているのかい?」
「……無論だ。これはかつての人類史で日ノ本にあったとされる呪い石だからな」
「呪い石?」
「ああ。かつての我らが神話の管轄地では、妖が人に紛れているのは珍しくなかった。ある時代、九本の尾を持つ狐の大妖怪が討伐され、石となった。その石は辺りに毒をまき散らし命を奪い突けたが、三百年の時を経て砕かれたんだ。だから今の世には存在しないはずなのだが」
「ええ、そのはずです。ベル・クラネル。その言葉をどこで?」
「ヘルメス様から聞きました。もしかしたら女神イシュタル様に頼まれて運んだものがそうかもしれないと」
「だとすると、彼の殺生石とは別物かもしれないね」
伝説との相違点に、全員が首をひねって頭を悩ます。仮に伝説の呪い石とは別物であっても、事情を知らないヘルメスや知っているタケミカヅチの焦り様からして碌なものではないだろう。
「……そう言えば以前聞いたことがある。狐人専用の道具があるらしい」
しばらく考え込んでいたタケミカヅチが口を開く。
「『殺生石』かは知らぬが、狐人の遺骨を原料とした道具があるらしい。それともう一つの道具を合成したら、生贄となった狐人の『妖術』を使える道具になるようだ」
「では、生贄となった狐人は……」
「魂の抜け殻だ。合成後の道具に魂を吸い取られ、ただ肉体がそこに在るだけ、廃人同然だ」
「じゃあもう一つの道具は何だい?」
「確か『鳥羽の石』というものだ。尤も詳しい効果は俺も知らない。唯一知っているのは、満月の夜に最大限の効果を発揮するということだけだ」
重々しくそう告げるタケミカヅチに、室内の面々は黙り込んだ。もしもイシュタル・ファミリアに届けられたものがその「鳥羽の石」であるならば、もう一方の道具は確実に春姫を材料にして作られるのだろう。そして計算が正しければ、この日オラリオで観測される月は
「ベル様。まさかと思いますが、イシュタル・ファミリアに攻め込むのですか?」
「え?」
「……どうやら少しは考えていたようだね。いいかいベル君、そしてヴェルフ君もだ。キミたちは確かに『仮面ライダー』だ。だけど君たちはフリーではなく、既にファミリアに所属している。その意味は分かるね?」
ヘスティアの言葉に、ベルは少し唖然としていた。確かに彼女の言う通り、春姫をこの理不尽から救い出そうと自然と考えていた。それは彼が「仮面ライダー」と自覚しているのもあるが、単純に彼自身が救いたいと無意識下で考えていたためである。
しかしヘスティアの言葉にもあったように、既に彼等は一つの組織に所属している。仮に後先考えずに春姫に手を伸ばせば、ファミリア同士の諍いと判断され、尚且つ先に手を出したとしてヘスティア・ファミリア全体の責任を問われかねない。下手すればベル達と懇意にしている人たちにも迷惑も掛けかねない。
「これは命君、千草君、桜花君たちにも言えることだ。君たちの、タケの反応を見る限り、その春姫という狐人が探し人なんだろう?」
「あ、ああ」
「ならば尚更、今飛び出してもしょうがない。幸い満月まで二日はある。もしもイシュタルの目的がその道具ならば、二日は何もしないはずだ」
「その間に、出来ることを考えよう。何も思いつかなかったら……」
「僕が動くのですね?」
「余りそうなってほしくはないけどね」
カチコミの有力な根拠がない以上、こちらから手出しすることはできない。しかし救えるかもしれない命を見殺しにすることなどベルは勿論、この場にいる面々には到底できない。
その日はそのまま解散となり、明日の夜もう一度集まる旨を決めてタケミカヅチ・ファミリアは帰路についた。リリやヴェルフなども自室に戻る中ベルだけが教会の外に向かい、その屋根に腰かける。
物憂げに空を見つめる彼に気づく者はおらず、それを見つめるのは紫に雲を染める夕日と常闇を彩る月と赤や青に輝く星々だけだった。
はい、今回はここまでです。
本当は春姫と出会うシーンやイシュタル・ファミリアのホームに連れていかれるシーンも書きたかったのですが、下書き段階でも然程原作と変わらなかったので、今回は省くことにいたしました。
後々小話として、分岐突入前に補完したいと思います。
さて、およそ二か月の間更新できなかったことを、お詫び申し上げます。
今後とも、私めの拙作をどうぞよろしくお願い致します。