ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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よくある、書き始めにどんどんストーリーが描けてしまう現象です。気長にお付き合い板ただけると嬉しいです。
今回まではストーリー更新、次回は設定集を書く予定です。

それではどうぞ。





3. 黄金よりも輝く

 

 

 

「なに……あれ?」

 

 

 目の前の光景を、少女は信じられないようなものを見る目で見ていた。少女の名はアイズ・ヴァレンシュタイン。オラリオ最大級である、ロキ・ファミリアに所属する高レベルの冒険者の一人である。

 彼女は自分たちのパーティーが逃がしてしまったミノタウロスを追い、上層まで追いかけているうちに五層まで上ってきてしまったのだ。やっとのことでミノタウロスを見つけたものの、その個体は攻撃を受け流され、逆に攻撃を打ち込まれていたのだった。更に驚くことにミノタウロスの相手は、武器を一切持たずに徒手で圧倒していたことだ。

 

 

「だれ……なの? 人間?」

 

 

 ミノタウロスの相手は、姿かたちこそ人に近いものの、決定的に違う部分があった。特に頭や顔はもはや人ではなく、龍と言っても過言ではない。新種のモンスターか、はたまたまだ見たことのない種族か、アイズにはそれがわからなかった。そして心なしか、その人型は仄かに全身が光っているように見えた。

 

 

「ハァァァァァ……ハァッ!!」

 

「■■■■──―■■!!」

 

「ハッ、タァ!!」

 

「■■■■■■!?!?」

 

 

 人型はミノタウロスが振るう大剣を蹴りで受け流し、鳩尾にストレートを打ち込む。返す刃で振るわれた大剣を今度は腹をけって圧し折り、隙のできたミノタウロスを壁際まで蹴り飛ばした。ミノタウロスはもはや満身創痍で、立っているのがやっとの様だった。

 もう長くない、それを人型も気づいたのだろう。一度構えを解くと今度は人型の角が開き、六本三対へとなってより龍らしい風貌になった。

 

 

「ハァァァァァァァ……」

 

 

 人型が構えを取ると同時に地面に輝く紋章のようなものが描かれた。そしてそれは集約するように人型の右足へと吸い込まれ、やがてその右足からは仄かな輝きと、濃密なエネルギーが発せられた。

 

 

「……ごめんね。ハァッ!!」

 

 

 囁くような声、しかしその言葉はアイズにもミノタウロスにも聞こえた。何に対して謝っているのか、アイズとミノタウロスは分からない。人型は駆け出すと、飛び上がり、ミノタウロスへとドロップキックを喰らわせた。

 蹴りだす瞬間爆発的に加速したキックを受けたミノタウロスは、壁まで吹っ飛ばされ、そして断末魔の声を上げることなく爆散した。

 

 

「ハァァァァァァァ……」

 

 

 角を元の二本に戻した人型は大きく息を吐くと、腰のベルトを光らせた。余りの眩しさにアイズは目を覆ってしまった。そしてそれは同時に、人型の正体を見逃してしまうことにもつながってしまった。

 アイズの目がダンジョンに再び慣れたとき、目の前には、戦いなどなかったかのように静かな空間だけがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第五層まで潜ったアアアア!?!?」

 

 

 ギルドに戻って報告をするベルに彼のアドバイザー、ハーフエルフのエイナ・チュールの叫び声が襲い掛かった。なんだか今日は良く叫ばれる日だと考えながらも、ベルは釈明のために口を開いた。

 

 

「あ、あの。一応安全確認もしましたし、オラリオに来る前にモンスターとも戦ってましたから。その強さに合わせたのを求めてたら……」

 

「私言ったよね!? 君はただでさえファミリアに入ったばかりで尚且つソロだから、そうやってホイホイと下層に降りたらいけないって!!」

 

「その……一層や二層だと弱すぎて……」

 

「その慢心が致命的な事態に繋がるって言ったでしょう!? そりゃあ見る限り無傷で帰ってきているみたいだけど」

 

「なら……」

 

「でもダメ!! まず三層まででダンジョン慣れしなさい。そこからは私が判断して下層の探索をさせるわ」

 

「そんなぁ~」

 

 

 エイナの判断に若干ベルは不満そうだったが、渋々認めることにした。

 

 

「と、ところで質問があるんだけど」

 

「どうしたんですか?」

 

「五層にいたって言ってたけど、ミノタウロスに襲われなかった?」

 

 

 エイナの質問にベルの動きが泊まる。しばし動きを止めたベルを不審に思ったのか、エイナは顔をベルに近づけた。

 

 

「ねぇ、ベル君?」

 

「襲われませんでしたよ? 出会いすらしませんでした」

 

「本当?」

 

「ええ、本当です。流石にミノタウロス相手だと、一方的にやられるだけでしょうから」

 

「……そっか。うん、わかった」

 

 

 その会話を最後にエイナは仕事に戻り、ベルはドロップ品と魔石を換金しに行った。余談になるが、その換金額が一万を裕に超え、またもギルドを騒がせたのは言うまでもない。

 

 

 





「それは本当なのか、アイズ?」

「うん、確かに見た。金色に光る体と角、赤い眼を持ったのを」

「そうか」

「リヴェリア、どうした? レフィーヤも、ティオネとティオナも」

「い、いえ。なんでもないです」

(黄金の肉体と角。赤い眼。それに地面に浮かんだ紋章に高威力の蹴り。まさか)





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