ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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お待たせしました。
ようやくヒロイン毎の分岐ルートへ突入です。
さて、最初は誰のでしょうか?

ではどうぞごゆるりと。


異端児:ルートA
51. 我は問う、汝は怪異なりや?


 

 イシュタル・ファミリアとの抗争も落ち着き、オラリオは表面上だけではいつもの日常を取り戻していた。冒険者たちは日々ダンジョンへと乗り込み、冒険をして切磋琢磨していく。

 しかしオラリオ内の強力なギルドがまた一つ潰れたのも事実であり、この数ヶ月の間に巨大派閥が二角崩れたことで情勢が揺れ動いているのも事実である。幸運なことにほとんどは他のファミリアに映ったりで事なきを得たが、それでも何人か行方不明となっている者もいる。捜索はされたものの、目ぼしい成果は得られなかった。

 

 

「ベル君、鍛冶師君。今日もかい?」

 

「何故か最近多いんです」

 

「しかしこの本が正しいのなら、本来この世界には存在しないもののはずでは?」

 

「ああ。グールにヤミー、眼魔と出自もバラバラなやつらなのに、どうしてか最近頻繁に姿を現しやがる」

 

「アギトの感知は利くんですが、こうも頻発すると同時に二か所で起こる可能性も」

 

「G3-Xは一応完成しているが、ガードチェイサー使っても遠かったら時間かかるし、この都市はまだバイクを使うには不向きな造りをしている」

 

「どうしても大通りでしか使わざるを得ないから、裏路地とかにでられるとね」

 

「まだ夜間にでてないだけマシだな」

 

 

 そしてさらなる問題がオラリオを襲っていた。

 イシュタル事変後、突如オラリオやダンジョンの一角で人外が多量に湧いて出る事件が多発している。全身をボロ布で巻かれた怪物だったり灰色の化け物だったり。全く同じ造形の未確認生物が、街のあちこちから湧くのである。

 所謂ライダー分野において雑魚敵に分類される奴らだが、一般人にとってはとんでもない脅威になり得る。レベル2以上の冒険者ならばなんとか対処できるが、それでも数で囲まれれば話は変わってくる。

 現在はベルとヴェルフが中心となってオラリオ市街の、ベート含むロキ・ファミリアなどの強派閥がダンジョンのパトロールを行っているため、殺生沙汰の事件は起こっていない。ひどくても家屋の一部に穴が開いたり、公共のゴミ捨て場が少しゴチャゴチャになったりする程度である。

 一応他の面子がダンジョン攻略に向かっているため、ファミリアの財源が尽きる心配はない。しかし攻略の主力となるベルとヴェルフがいないのならば、どうしても上層での探索にとどまってしまう。最近加入した春姫は、隠れて観察していたテオスが匙を投げるほど戦闘に不向きであり、もっぱらホームでの雑事を中心に行っていた。そのため攻略は実質、リリルカと命のにめいだけで行っている。

 

 

「どうにかしたくても原因がわからないことにはね」

 

「士さんがいたらわかるかもしれないですけどね」

 

「士? ああ、あのマゼンタ色の男かい?」

 

「ええ。あの人ならこの混乱した状況について少しは知ってそうですけど」

 

 

 しかし士はどこにいるかわからないし、そもそもこの世界のこの状況を知らないかもしれない。なので今のところは、自分の力でどうにかするしか手立てがない。結局この日もこれ以上の襲撃はなく、彼等はそのまま床につくことになった。

 だが真夜中の皆が寝静まったころ、廃教会を抜け出す一つの影があった。バイクに乗らず、人の通りのない道を猛スピードで走る姿は、最早獣が駆けているといっても過言でもない。しかし目的の場所がわかっているのか、一切速度を落とすことも無駄な音を立てることもなく走っていく。

 

 

「……ッ!! 近い!!」

 

 

 夜道を走りながら人影、ベルは頭に響く声と全身に訴えかける感覚に従って動く。誰もいないはずの裏路地、しかし確かにそこから助けを求める声がベルには聞こえてくる。

 はたしてそこには、ヤミーに囲まれた誰かの影があった。夜にヤミーが出現しているというのもだが、誰かが襲われているというのがベルにとって一番の問題であった。

 

 

「変身!!」

 

 

 一対多数に最も向いている形態、ストームフォームに直接変身してヤミーを弾き散らす。ストームハルバードを展開してヤミーを全て切り捨てていく。そもそもの動きが緩慢なヤミーでは、スピードに秀でたストームフォームの動きにはついてこれない。パワーが多少落ちたとしても、彼の神速から繰り出される斬撃からは逃れることが出来ず、悉くが塵に帰されてしまった。

 ヤミーを全滅させて暫く変身は解かなかったが、再出現の兆しは現れなかった。警戒と変身は一応とかないものの、ベルは戦意を和らげながら地面に倒れ込むモノに目を向けた。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「だ……れ……?」

 

 

 無事かどうか問いかけるも、帰ってきた答えは要領を得ない。というよりも、ボロ布越しに推測されるシルエットはヘスティアよりも少し大きい程度の体躯、しかし聞こえてくる声は幼い少女のもので喋りも拙い。

 

 

「ちょっとゴメンね、フード外すよ?」

 

「……うん」

 

 

 一応承諾は得られたため、頭があるだろう場所の布だけずらす。そこから覗いたのは真っ青な髪と薄紫に近い肌。紅とも橙とも受け取れる色の眼にその目じりに浮かぶ深い青の鱗。額に装着されているだろう赤い宝玉も鱗も後天的に張り付けたものではなく、少女の体から生えている歴とした体器官であることがわかる。

 

 

竜女(ヴィーヴィル)!? ……いや、違う」

 

「だれ?」

 

「……僕はベル・クラネルだよ」

 

「ぼくはべる、くらねる?」

 

「ベル。それが僕の名前だ」

 

「な、まえ?」

 

 

 どうやら舌足らずなだけでなく、精神面も相応に幼いらしい。どうにも見た目とのギャップがあり過ぎて対応に戸惑いが生じてしまう。

 しかしこのまま放っておけないのは事実。この短い時間でこの少女に知性と理性があることは理解した。しかし顔だけでも所謂モンスターの特徴を持っている彼女が発見されれば、問答無用で討伐したりする人が出てくる可能性は否めないだろう。果ては彼女を捕獲したのちに、見世物小屋や貴族の嗜好品や奴隷として売りさばかれるかもしれない。

 

 

「べる……なまえ……」

 

 

 もう一度ベルの前で座り込んでいる少女を見やる。先程から言葉を食べ物のように租借し、じっくりとその意味を飲み下している様子でベルの名前を繰り返している。

 本当に幼いのだろう。

 右も左もわからぬ中、誰もいない街に布切れ一つで出てしまい、挙句ヤミーという人外に襲われる。もしかしたらダンジョンで本当に生まれたばかりで、今の人間がモンスターにどういう行動を起こすか分かっていないのかもしれない。

 ヤミーにそれ程傷は負わされてない様子から、只人よりも体が強いことは確実だろう。そんな竜女(あかご)が力の制御も学ばずに放っておかれたら、それこそベルが危惧することが起こりうる。

 

 

「ねえ、ちょっといいかな?」

 

「べる……うん?」

 

「今日はもう暗いし、こんな寒くて堅い場所で寝たら体を悪くしちゃうよ」

 

「くらい? さむい?」

 

「そう寒くて暗い。だから僕のところに来ない? 大丈夫、さっきの奴らのようなことはしない」

 

「……いたい、しない?」

 

 

 ベルの誘いに暫く逡巡したのち、竜の幼子はベルに問いを投げた。先程襲われたばかりであり、助けてくれた存在(ベル)も紺碧の鎧と武具を持った異形、紅の複眼も黄金の角も少女に恐怖を与える要素としては申し分ない役割を果たしてしまう。

 一瞬のためらいののち、ベルは変身を解除して少女の側に屈んだ。目線を合わせ、決して怖がらせないように微笑みを浮かべる。

 

 

「大丈夫。痛いこと、絶対に、しない」

 

「だいじょう、ぶ?」

 

「うん。大丈夫」

 

「だいじょうぶ……ベルは、だいじょうぶ!!」

 

 

 ベルの言葉を含み、味わい、ようやく少女はベルと共に教会に向かうことを承諾した。無邪気に満面の笑みを浮かべるその様子は、何よりも人間らしく、何よりも人間からほど遠いものだった。

 

 






はい、ここまでです。
原作ではダンジョン19階層内で出会ったウィーネ、本二次創作では街中で邂逅するという展開にいたしました。
異端児編は色々と精神的に来るものがあるパートですが、とあるヒロインと関係を進めるためには必要だと考え、分岐後に取り扱うことにしました。
さて、次回は分岐編第二話、ベルの保護という選択は、ヘスティア・ファミリアにどのような影響を与えていくのでしょうか?

それではまた次回、お会いしましょう。
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