ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~ 作:シエロティエラ
本編に入る前に一つ謝罪をいたします。
何かやらかしたわけでなく、これからの展開について前もってするものです。
さて、今回の分岐ルートですが、異端児編をベースとしております。しかしライダー要素を取り入れたりするうちに、原作の展開から大きく乖離する結果になりました。
タグにて事前に「原作乖離」「ご都合主義」を入れておりますが、流石に一言添えるべきと思い、この前書き欄をお借りして報告した次第です。
原作の流れが好きな方には申し訳ないですが、今回以外の個別ルートも同様な形になるため、どうかご容赦願います。
それでは分岐第二話、どうぞごゆるりと。
ベルが連れて帰った竜の少女は、当然だがファミリア内に動揺をもたらした。初めに出会ったベルに特別になついているのか、彼から離れようとしない少女にメンバーはは大いに悩み、渋々ながら一旦少女を保護する方針に決まった。
「でも流石にこの教会にずっと置くわけにはいかないからねぇ」
「あの元アポロン・ファミリアのホームに行きましょう。僕だけは暫くこの子と一緒にそこで過ごします」
「まぁそれが無難かなぁ」
「ではリリと命様とヴェルフ様で、街での情報収集をしますか?」
「交代でいこうぜ。ただでさえ怪人たちの対処もあるんだ、それでダンジョン探索も滞ったら貯えがなくなる」
「それもそうですね。では日ごとに二人はダンジョンに、もう一人はヘスティア様と情報収集と行きましょう」
動揺は残るものの、サクサクと今後の行動についての予定を立てていく。ここら辺は、ヴェルフやベルという不確定要素を抱えるヘスティア・ファミリアならではの即決さといえるだろう。
そして話に上がらなかった春姫だが、彼女はスキルによるサポートは出来ても戦闘は出来ない。そのため滅多なことでダンジョンに繰り出すわけにもいかず、ベルかヴェルフのどちらかが参加する時だけダンジョンに共に潜り、それ以外はファミリアホームの掃除やリリと共に出納管理を行っている。
そして春姫だが、どうやら竜の少女はベル以外にも春姫になついたようで、彼女の背中に隠れたり、ゆるく抱き着いたりしている。春姫も満更でもなさそうで、ゆっくりと単語を繋ぎ合わせて少女と意思疎通を図っていた。
「……まぁ今のところは問題なさそうだし、人目につかないよう気をつければいいですね」
「そうだね。ベル君、キミは今晩この子を連れて第二ホームに連れて行ってくれ。春姫君も明日の朝からそっちで暫く生活だ」
「必要なもんは追って持ってくから、二人はこの子から目を離さないようにしてくれ」
「わかったよ」
「わかりました」
決めた方針の通り、人通りのない夜間の間にベルは少女を連れて第二ホームへと移動した。少女の名前もこの世界に伝わる神話、「
それからは数日、彼等は情報を集めながらウィリュジューネ、ウィーネについて理解していくことに努めた。もしもベルがアギトでなければ、彼ら彼女らが積極的にウィーネと交流をしようとは考えなかっただろう。しかしアギトは存在すら場合によっては畏れられるもの、姿かたちは人よりも竜人という方が早い。
付け加えるならばベートの変身するギルスは、アギトよりもモンスターに近い印象を抱かざるを得ない。何も知らぬものが見れば、ベルもベートも討伐対象にされてもおかしくなかった。
しかし姿は変わっても、恐ろしい力を手に入れてtも、彼等の人としての心は失われていなかった。ならばウィーネはどうなるか。もしかすると種族としてはモンスターでも、人として意思の疎通ができるやもしれない。理性と知性を以て人と交流を可能とする存在になりうるかもしれない。
そう考えたヘスティアたちは、ウィーネに歩み寄ることにしたのである。
更に数日が経過したのち、ベルはウラノス直々の指名でギルドへと赴くことになった。当然彼になついているウィーネは少し愚図ったが、春姫が側にいることでベルが離れることを了承した。因みにだがウィーネはスポンジのように知識を吸収し、いまでは多少の舌足らずさは残るものの、違和感なくベル達と意思疎通ができるまで言葉を操っている。
それはさておき、ギルドに到着したベルはそのままウラノスが祈祷をしている部屋へと案内された。その際受付にいたエイナに怪訝な視線を向けられたが、ウィーネを保護したこと以外に問題行動を起こしていないため、特に気にすることなく案内に従う。
通された薄暗い部屋には老いた男神が杖をついており、その隣に頭から真っ黒な布を被って素肌を一切見せない人物が立っていた。
相手は神であるため、ベルは自然跪いて首を垂れる。アギトとはいえ、彼は人間であるからその行為は当然と言えば当然だ。
「……ベル・クラネルだな?」
「ええ。お初にお目にかかります、ウラノス様。我が主神、竈の女神ヘスティアが祖父。神々の王と謳われた天の神格」
「いかにも。とはいえ、テオス様には及ばぬがな」
軽い挨拶を交わしたうえで、ウラノスに促されてベルは立ち上がる。
「単刀直入に聞こう。モンスターをどう思う? ダンジョンについてどう思う?」
真っ直ぐと、感情の読めぬ目でベルは見据えられた。神威こそは制約もあって解放はしていないが、一介の冒険者ならば下手すれば失禁しかねない圧力を感じるだろう。ベルも動揺はしないものの、戦闘時並みの緊張感をもってウラノスと対峙していた。
「ダンジョンは、過去の遺物が変質したものと考えています。ロストエイジの神代には、今のような魔法なども存在していたと聞きます」
「……」
「しかしその歴史では神秘ではなく、科学が発達した。それによって神秘は薄れ、やがて伝説のような存在になりました。ですが認識できなくなっただけで、神秘自体は存在している。証拠がテオス様や貴方達、神々と呼ばれる存在です」
一つ一つ、言葉を選びながらベルは思いを紡いでいく。遠回しな言い方などを使ってはいるが、その言霊に込められた思いは嘘偽りのない、ベル自身の想いである。
「使われなくなった神秘は滅ばない。しかし使われないということは、それらは蓄積するということ。その結晶のようなものが、このオラリオのように存在しているダンジョンだと思います。モンスターは結晶のかけら、生き物でもあり、神秘の塊でもある。無色の神秘、しかしダンジョンで死んだ多くのモンスターやヒトの無念の集合体。それが私たちがモンスターと呼んでいるものと考えてます」
「ではモンスターに魂はないと?」
「いいえ、それはあり得ません。魂がないなら抜け殻そのもの。ですが彼等は本能が強いとはいえ、己というものを持っている。いずれは人語を解し、操る個体が出てもおかしくはない。共に歩める道があるならば、個人的にそれに越したことはありません」
「これまで冒険者としてモンスターを多数屠ってきたのにか?」
「殺めてきたからこそ、です。僕は一度たりとも、殺めることを楽しんだことはない。これからも楽しむことはない。殺めたモンスターの顔を忘れたことはない。奪ってしまったもののためにも、僕は助けを求める声に手を伸ばし続ける。仮令それが、モンスターと呼ばれるそんざいからだったとしても」
「修羅の道に堕ちるというのか?」
「この力を手にしたときに、薄々覚悟していたことです。その覚悟がオラリオに来たことで確固たるものなっただけ」
ベルの言葉を最後に部屋は沈黙に包まれる。ベルもウラノスも、互いに視線を躱したまま一言も話すことはない。また、ウラノスの隣に立つ謎の人物も口を開くことはない。
暫くして先に沈黙を破ったのはウラノスだった。
「明朝、ヘスティア・ファミリアの冒険者全員でダンジョンの第二十層に向かえ」
「全員、ですか? ヘスティア様は?」
「ヘスティアには個人的に話がある。明朝ここに来るよう伝えろ」
「わかりました」
「それから二十層には、竜女の少女も連れていけ」
「……存じていたのですか?」
ウラノスから紡がれた、ウィーネの存在を察しているような言葉。知らずベルの声は低いものとなり、警戒心が強まった。それを察したためかウラノスの隣に立つ人影は、いつでもベルに飛び掛かれるように態勢を僅かに変える。
「そう殺気立つな、これはその少女にも非常に関係あること。案ずることはない。この件において、決して彼女よお前たちにに危害は加えん」
「言葉だけで、それを信じろと?」
「イシュタルや愚かな曾孫アポロン、アレスのこともある故、神を信じきれぬのも無理はなかろう。だが我が天の神格に違って、嘘はつかぬと断言主しよう」
「……分かりました。その任務、ヘスティア・ファミリアが承ります」
ウラノスの強制ともいえる任務をベルは受諾した。何処でウィーネのことを知ったか、なぜこんな極秘にベルを通して依頼したのか、疑問に思うことは多々ある。
しかしウィーネに関する情報が全く得られない今、ベル達にはこの依頼以外に縋る術はなかった。
「良いのですか、ウラノス様?」
「フェルズ。私は
「鍵、ですか?」
「『人類とモンスターの共存』。人であって人でない彼奴こそが……
「しかし人々は認めるでしょうか?」
「拒絶は受けるだろう。オラリオ総てが敵になるやもしれん」
「ではなぜ? もしも彼がヒトの敵になるならば!!」
「それでも彼奴はいばらの道を進むだろう。彼奴の守り通した先に、私の望む世界への一歩がある。私はそう信じている」
「……ならば私は私で見定めさせてもらいます」
「それでよい。己の眼でしかと見極めよ」
――実験は上々だな。
――だがこの世界、時代の人間は欲が薄い。クズヤミーでもこの程度か。
――だが冒険者という存在をエサにすれば……。
――それにこの世界はライダーの存在がたったの三人。
――目標第一段階の達成は近い。
――我ら、ネオタイムジャッカーによるライダー抹消の日が。