ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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ごめんなさい、一日遅れの更新となってしまいました。
今回はちょっと話の展開が遅いと思います。いやはや、夏は不得手でして、空調付けても朝起きると脱水を毎朝起こしかけるんですよね。太った体形ではないのですが。
早く秋や冬になるのが待ち遠しいです。

さてさてそれでは最新話どうぞ。





4. 生まれた疑心

 

 ギルドで騒ぎになりそうだったが、大きくなる前に建物から出ていったために巻き込まれることはなかった。とりあえず野菜と肉を購入したベルは、当初の予定通り拠点の廃教会へと帰りついた。

 

 

「ただ今帰りました、神様」

 

「おかえりベル君!! 昼間は放っとかれたけど、ちゃんと帰ってきてくれて嬉しいよ!!」

 

 

 地下に入ると、満面の笑みでヘスティアが出迎えた。やはり初めての眷属だからか、ベルのことを非常に大切にしていることがうかがえる。

 

 

「神様、もう夕食は食べました?」

 

「いや、まだだよ。今日は君の眷属入りを祝って、外食でもしようかと考えていたところさ」

 

「そうですか……ならこの教会に貯蔵室とかありますか? 食材を修められそうな」

 

「ん? 僕が確認する限り、そういうのはここにはなかったはずだよ」

 

「えっ? 困ったなぁ、じゃあこの食材どうしましょうか?」

 

 

 ベルはそう言うと、手提げ袋から野菜や肉を取り出し、机の上に置いた。地下室は石造りであり、上階や外に比べると室内は冷えてはいる。しかし保存に適した温度ではなく、腐らせてしまうのも時間の問題である。

 

 

「えっ? ベル君、キミ料理ができるのかい?」

 

「ええはい。一通りできますよ」

 

「それはいいや!! せっかく買ってきた食材を腐らせるのも勿体ない。今日は外食じゃなく、ベル君の手料理をいただこう!! 僕もしっかりと手伝わせてもらうよ」

 

 

 ヘスティアの提案に、ベルはほっとした表情を浮かべた。余談ではあるが、この後ベルと作った料理があまりにもおいしく、ヘスティアは本日何度目ともわからぬ叫び声を上げたのだった。

 

 あくる朝、ベルは再びギルドへと向かっていた。余ったお金で大きめのバッグを買ったため、初日よりも長くダンジョンに籠るつもりであった。そんなことを思い返しながら早朝の街道を歩いていると、後ろからベルの肩を叩くものがいた。

 

 

「ッ!? 誰だ!!」

 

「きゃっ!!」

 

 

 急に触れられたためか、ベルは腰の小太刀に手をかけつつ、勢いよく振り返る。その拍子に後ろにいた人物は、尻餅をつく形で倒れてしまった。

 その人物はヒューマンの少女だった。灰青色の髪と目を持ち、長めの髪は頭の後ろで結って総髪にしている。草色のワンピースに白いエプロンとヘッドドレスを付けていることから、どこかのお店のウェイトレスなのだろう。

 

 

「あっすみません。驚かせてしまいましたね、大丈夫ですか?」

 

「いえ、私も後ろから忍び寄ってしまったので、大丈夫です」

 

 

 少女はそういう言って立ち上がると、服についた埃を払って顔を上げた。その顔を見た瞬間、ベルは思わず見惚れてしまった。

 

 

「あ、あのー?」

 

「ハッ!? す、すみません。ところで、僕に何か?」

 

「そうでした!! これ、落しましたよ?」

 

 

 少女はそう言うと一つの魔石を差し出した。

 

 

「あれ? 確かに昨日、すべて換金したはずですけど……」

 

「袋の隅っこに挟まってたのではないですか? ほら、見た感じ穴が開いてますし」

 

 

 少女に指摘されて確認すると、確かに腰巾着に小さな穴が開いていた。辛うじて、少女が差し出した魔石が落ちそうな大きさだが。一瞬少女の自演ではないかと疑ったが、少女からは悪い気配は感じられない。加えて一般人であろう少女が魔石を持っているとも考えにくい。

 

 

「すみません、ありがとうございます」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

 

 と、ここでベルの腹の虫が鳴った。昨晩しっかりと食事を摂った。しかし今朝はまだヘスティアが夢の中にいたのもあり、寝室と台所が一緒くたになっている今の廃教会では、静かに作業するというのは出来ない。結果、朝食を摂らずにダンジョンにもぐるという、なんとも不健康な状態になっているのだった。

 

 

「ふふふっ、よかったらこれどうぞ」

 

 

 そんなベルに少し微笑むと、少女は一つの包みを取り出した。仄かにいい香りを発しているため、食物であることがわかる。

 

 

「ええっ!? そんな、悪いですよ!! それにこれ、あなたの朝ごはんじゃ……」

 

「このまま見過ごすと、私の良心が痛むんです。ダンジョンで空腹のために力尽きた、なんて事態になってほしくないですし」

 

「うっ……そのいい方はズルくないですか?」

 

「そうですね……じゃあこういうのはどうでしょう? 確かにこれでは私がお腹が空くだけで損します。ですがこれを差し上げる代わり、私が務めるお店に来てくれませんか?」

 

「お店?」

 

「ええ。『豊饒の女主人』という酒場兼食事処です」

 

「『豊饒の女主人』……ああ、あのお店ですか」

 

 

 そのお店は、昨晩ヘスティアが行こうと予定していた店である。まだまだオラリオに来て二日目、酒場で情報収集は定石であるし、聞く限り人気の高い店らしい。

 加えて昨晩ヘスティアによると、今日はバイト先のお店の宴会があるらしく、それに参加するらしい。一人でする食事も味気ないし、ベルは少女の提案に乗ることにした。

 

 

「分かりました、ボクの負けです。今晩伺わせていただきますね」

 

「はい、お待ちしております!!」

 

「あっ、忘れてました。僕はベル、ベル・クラネルといいます。あなたのお名前は?」

 

 

 ベルが少女に名を聞くと、少女は太陽のように輝いた笑みを浮かべた。

 

 

「シル・フローヴァです。よろしくお願いします、ベルさん!!」

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 ベルがギルドにつくと、何やら昨日よりも騒がしい状態になっていた。特に最新情報を掲載している掲示板では、老若男女を問わない冒険者やギルド職員が集まっていた。

 

 

「あっ、ベル君!!」

 

「エイナさん、おはようございます」

 

「おはようベル君。ねぇ、聞きたいことがあるけど今いいかな?」

 

「それはあの騒ぎに関することですか?」

 

「うん、そう」

 

「……わかりました」

 

 

 ベルがそうだ久すると、エイナによって個室に案内された。今の状態、ギルド内で内緒話ができる場所は、こういったアドバイザーと冒険者間で行われるプチ会議に使われる個室しかない。そして使われるということは、相応に大きい話な証拠である。

 

 

「それでねベル君、聞きたいことなんだけど……」

 

 

 エイナはそこまで言うと、一度口を閉じた。その様子にベルは黙して語らず、黙って先を促した。エイナは一度深呼吸をすると、少し声を落して口を開いた。

 

 

「ベル君、昨日ミノタウロスが上層に出たことは知っているよね?」

 

「はい」

 

「その時、ベル君は会わなかったって言ってたよね?」

 

「ええ……」

 

「でもね、昨日ギルドにこういう通報があったの。三人の冒険者が、一人のヒューマンを囮にしてきてしまったって」

 

「……」

 

「その殿を務めた冒険者はね、ベル君。年が15歳前後で少し長めの真っ白な毛髪。そして真っ赤な目をした、小太刀を一本携えた人だって。そして防具はギルドの支給品だって」

 

「……」

 

「ねぇベル君、本当のことを教えて。昨日、ミノタウロスと……戦った?」

 

 

 エイナは真っすぐにベルを見つめる。そこには邪な感情は混ざってはおらず、ただただベルを案ずる心と、真実を知りたいという心が映し出されていた。

 彼女が掛ける眼鏡のレンズ越しに、ベルはしばらくその目を見つめる。そして数秒か数分か、時間が過ぎた後、ベルは一つ息をつき、口を開いた。彼女の思いを僅かにも察し、嘘を吐いたことに罪悪感を感じてしまった。

 

 

「……わかりました、白状します」

 

「うん」

 

「確かに、ミノタウロスと相対しました」

 

「そっか」

 

「嘘をついてごめんなさい。これ以上の騒ぎになるのが嫌だったのです」

 

「わかった。ありがとう、本当のことを言ってくれて」

 

 

 エイナはベルの言葉を聞くと、少しだけ安心したような表情を浮かべた。しかし今度は怪訝そうな顔をし始めた。

 

 

「あとベル君、もう一ついいかな?」

 

「はい、なんですか?」

 

「あの後ベル君が帰った後、ロキ・ファミリアの冒険者が訪ねてきたの」

 

「……え? あのオラリオ最強クラスのファミリアが?」

 

「うん。それでね? こんなことを訪ねてきたの」

 

 

 ──ダンジョンで取り逃がしてしまったミノタウロスが上層にて倒された、と。

 

 

「それでね、倒されたミノタウロスは魔石ごと倒されたらしいんだけど」

 

「……」

 

「問題はその倒した人なの。唯一アイズ・ヴァレンシュタインさんがその光景を見ていたらしくてね」

 

「はいっ? いまなんと?」

 

「えっ? だから、ロキ・ファミリアのアイズさんが倒されるところを見ていたって……」

 

 

 思わずベルは立ち上がってしまった。闇の力/テオスからは、むやみに変身を見られてはならないと言われている。絶対とは言われていないが、見られるのはあまり好ましいことではない。

 

 

「ベル君、どうしたの?」

 

「い、いえ。なんでも……ないです……」

 

「……?」

 

「すみません、僕ダンジョンに行ってきます」

 

「え? ベル君!?」

 

「大丈夫です、約束通り三層までしか行きませんから!!」

 

 

 ベルはそれだけを言い、個室を慌てて飛び出していった。彼は思慮深い、それは彼に修業をつけた存在の影響が、少なからずあるからだろう。しかし彼はまだ十四歳の若輩、とっさの感情で動くことも少なくない。

 そして今の行動は悪手であった。この唐突な行動は、エイナの心に疑心と確信を産み落としたのだった。

 昨日のミノタウロスはベルが倒したのではないか、そしてアイズが語った異形の存在とは、ベルなのではないかと。

 

 

 

 




はい、ここまでです。
エイナにバレそうになるの早かったかなと思いましたが、この展開を採用しました。理由といたしましては、今回取っているヒロインアンケートでTOP4に入っているためです。勿論他ヒロインも回収していくのでご安心を。

さて現在のヒロインアンケートの状況ですが、上から順に、
(33) シル・フローヴァ
(31) アイズ・ヴァレンシュタイン
(26) 春姫
(22) エイナ・チュール
(9) リュー・リオン
(6) リリルカ・アーデ
(5) ヘスティア
(5) レフィーヤ・ウィリディス
となっております。

またアギトのアンケートは順に、
(24) ギルス
(20) 出てこない
(13) アナザー
(4) ミラージュ
となっております。

アギトアンケートは設定で。ヒロインアンケートは一話と二話にて受け付けておりますので、ご確認ください。

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