ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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平成仮面ライダー、終わってしまいましたね。ですがこれも一つの区切り、一号から受け継がれているその魂は、必ず令和ライダーにも受け継がれることでしょう。
また、今回を以って、アギトアンケートの受付を終了させていただきます。


それでは今回もごゆるりと。





5. 豊饒の女主人

 

 

 シルの弁当をおいしくいただいた後、ベルは約束通り三層までで魔石集めをしていた。とはいえ、初日でもやらかした通り、ベルにとって三層の敵は苦戦の「く」の字も出ない、その程度の力であった。集団で襲い来られても、呼吸一つ乱さずに全滅できるぐらいには、腕が立つ。そんな調子だからか、新調した腰巾着も直ぐに魔石でいっぱいになり、バックパックもドロップアイテムが入らなくなった。初日の半分ほどの時間しか経過していないが、換金してもう一度ダンジョンに潜るのも面倒だ。仕方なくベルはゆっくりと地上に戻り、昨日の戦闘場所の爆発跡の一通り証拠を消し、ドロップ品と魔石を換金して帰路についた。

 ギルドでエイナに捕まりそうになったが、そこはとっさに走り帰ったのは賢明な判断だっただろう。夕方前、ダンジョン帰りが多い時間帯だったのが幸運だった。問題を先送りにしたともいえるが。

 

 拠点に帰りついて、時は幾ばくか過ぎて時間帯は夕方。そろそろ多くの人間が、夕食のために店に入ったり料理したりする時間である。武器や所持品の手入れをしていたベルは、最低限の装備だけで拠点から出かけた。

 道を歩くと左右では、酒場や食事処が次々と営業を始めていた。空も暗くなり始めた故か、あちらこちらでカンテラや松明に明かりが灯り始めている。

 やがて道を進んでいくと、一つの酒場の前に辿り着いた。看板には「豊饒の女主人」と書かれている。

 

 

「やっぱ酒場なだけあって、とっても賑わっているなぁ」

 

 

 元より非常に静かな環境で育ったベル。このように賑やか場所は、とても新鮮に映った。

 

 

「あっ、ベルさん!!」

 

 

 店に一歩入って全体を眺めているベルに、朝と同じ格好をしたシルが話しかけてきた。やはり今朝の服装はこの店の制服だったようで、他のウェイトレスも同じ服を着ている。

 

 

「こんばんわ、シルさん。約束通り、やってきました」

 

「はい、いらっしゃいませ!!」

 

 

 朝と変わらぬ笑顔で応対したシルは、ベルをカウンター席に案内した。目の前では恰幅の良いドワーフの女将らしき人が、お玉を振るっている。

 

 

「おや? あんたがシルの言っていた客かい?」

 

「ええ、ベル・クラネルです」

 

「あたしはミアだよ。それにしても坊や、冒険者のわりには可愛い顔してるね。でもあんた……腕はたつんじゃないかい?」

 

「それは分からないですね。僕はつい昨日、冒険者になったばかりですよ?」

 

 

 ベルの言葉にミアは豪快に笑い声をあげ、そして真剣な顔をしながらカウンター越しに顔を近づけた。

 

 

「無論レベルはそうだろうさ。でもあたしが言っているのはそういうことじゃない。『心技体』のうち、技術の話をしてるのさ」

 

「……確かにオラリオに来る前に訓練を受けてましたけど、その程度ですよ。それを言ったらこの店の店員、シルさんを除いた全員が腕利きですよね?」

 

「いうじゃないか。こりゃ面白い子がでてきたもんだ」

 

 

 小声での問答を終え、ミアは体を起こした。そしてその顔は商売魂が篭ったものになっていた。

 

 

「まぁそれは置いといて、アンタ、シルによれば相当な大食漢なんだそうじゃないか!! じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってってくれよぉ!!」

 

「は?」

 

 

 余りの発言に驚きシルを見ると、シルは舌を出して拳を額に当てていた。それによってベルは察した。ああ、この店のものは、全員が一癖も二癖もある人間であると。

 まぁそう言われたのなら仕方がない。ベルは観念して小さい袋を取り出した。中には千五百ヴァリスほど入っている(一ヴァリス=一円と考えてもらいたい)。

 

 

「これで出せるだけの料理をお願いします。メニューはミアさんのお任せで」

 

「ほう?」

 

 

 ベルの言葉にミアは目を細めた。個人営業の飲食店でお任せを頼む。本来は何度か足を運んでいる客がする注文「お任せ」。しかしこれは同時に、この店が自信をもって、美味いと言わせるという料理を注文することと同義でもある。

 ミアの目には、戦士が宿すような意志が燃え上がった。

 

 

「ちょっと待ってな。酒は飲めるだろう? こいつは初来店のサービスだ!!」

 

 

 目の前に置かれたエールのジョッキを傾けながら、改めてベルは周囲を見回す。老若男女、様々な年齢層と種族の人が、飲めよ食べよと騒いでいる。そしてその騒ぎ様は、見ていて気持ちのいい騒ぎ方だった。

 暫く待っているとパスタやムニエル、スペアリブなどが運ばれてきた。手始めにパスタに手を付けると、一瞬だけとまり、それからがっつく様にフォークやスプーンを進めた。豪快に、しかし食い散らかすような下品なことをしないベルの食べっぷりに、ミアの顔には自然と笑みが浮かび上がっていた。

 

 

「美味しいですか、ベルさん?」

 

「ええ、とても。店の雰囲気も良くて、楽しんでます」

 

「それなら私もお誘いした甲斐がありました」

 

 

 暫くすると、シルがベルに近寄ってきた。ミアに視線を向けると、一つ頷いて仕事に戻った。どうやらベルに付き添うよう許可が出たらしい。

 

 

「サンドウィッチ、ありがとうございました。おかげで昨日よりも張り切って探索できましたよ」

 

「ふふふっ、それは良かったです」

 

 

 暫く料理を食べ進めながら、シルとこの店について話す。どうも女将のミアは元第一級冒険者らしく、この酒場を一代で築き上げたことにより、所属しているファミリアから半脱退状態になっているそうな。

 そしてここにいる店員たち、その殆どが訳アリとのことらしい。ベル自身も隠し事が多い身の上なので、それについては追究しなかった。

 

 と、そこに一つの団体が店に入ってきた。ベルは何と無しにそちらに視線を向けると、一人の女性に視線が固定された。その人物とは、金髪の少女で、見る者によっては儚げな印象を持つだろう美貌を持っていた。

 ベルが知る由はないが、彼女の名前はアイズ・ヴァレンシュタイン、ロキ・ファミリアに所属する一級冒険者である。その美貌と強さに惚れこむものは、オラリオに多数いる。

 

 

「……綺麗な人だ」

 

 

 そしてそれはベルも例外ではなかった。ベルも、アイズの様相に見惚れてしまっていたのだった。

 

 

 






ヘスティアが出かける理由。神会としておりましたが、改めてバイトの宴会に戻しました。前話のその旨の部分も修正しております。

アンケート、すごいですね。
現在の状況を報告した途端、アイズ票が一気に入ってシル票を追い抜きました。トップ4人の面子は変わりませんが、上位二人の首位争いがすごいです。
ついでに何故ヒロインにレフィーヤを入れて、アイシャやカサンドラ、ティオナを入れないのかという質問が来ました。
お答えします、単純に私の好みです。嫌いではないのですが、レフィーヤのほうが好きですし、原作でもヒロイン候補になっていないぶん、二次創作で書いてみたいという欲があったためです。


それではまた。



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