ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~目覚めるその魂~   作:シエロティエラ

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ねぇ知ってる?
お酒に酔うとね、その人の元々の道徳観が出るんだって。


……実験で判明したという記事がありましたけど、大体みんな察していましたよね。お酒を飲める年齢の人は特に。私もそれを警戒して、他人と飲んだり飲みすぎたりしないのに。
皆さんもお酒には気を付けてくださいね。

それではどうぞごゆるりと。

ページ下に別途アンケートを設けております、ふるってご回答ください。






6. 後ろにご用心

 

 

 酒場に入ってきた集団、ロキ・ファミリアの面子に、店内の客の視線が集中している。理由は様々だが、まず挙げられるのが集団の実力者の多さだ。

 アイズ・ヴァレンシュタインに狼人(ウェアウルフ)のベート・ローガ、小人族(パルゥム)でファミリアの団長であるフィン・ディムナ、エルフのリヴェリア・リヨス・アールヴにレフィーヤ・ウィリディス。アマゾネスティオネ&ティオナ・ヒュリテ姉妹にドワーフのガレス・ランドロックと、オラリオでは知らぬ者がいないという面子である。

 彼らは皆が皆レベルが高く、レフィーヤを除いて全員がレベル4以上を有している。実力を持ち、容姿端麗でオラリオの二大ファミリアと名高いロキ・ファミリアの一団となれば、自然と視線も集中する。

 

 

「……ベルさん?」

 

「え? ああ、すみません。ところであの一団は?」

 

「ベルさん知らないのですか? あれはロキ・ファミリアの人たちで、オラリオで一、二を争う探索系ファミリアですよ」

 

「へぇー」

 

「ロキ・ファミリアはウチのお得意様なんだよ。彼らの主神であるロキに、ウチの店がいたく気に入られてしまってねぇ」

 

 

 シルとミアから説明を受け乍ら、ベルはジョッキを傾けて集団を横目に見ていた。これでもベルは人の理を外れた身、また訓練相手も人の理を外れたものだったためか、観察眼は常人よりかは優れている。そしてその観察眼から、彼ら宴会メンバーの実力相応に高いものであると察していた。

 

 

「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんなご苦労さん!! 今日は宴やぁ、飲めぇ!!」

 

 

 赤髪細目の女性が音頭をとると、皆が料理や酒を食べ進めた。ベルはその女性を一目見て、人とは違うと判断した。戦力ではないが、それでも音頭をとるということは、その者がファミリアの中心に近い証である。加えて彼女が慰労して、人の気配がしないといことは、彼の者が主神のロキであろうことは容易に想像できる。

 それだけの情報を集めたベルは、目の前の料理に集中しようとした。

 

 

「そう言えばアイズ、お前あの話は本当かよ? 黄金の人影を見たって話」

 

 

 狼人のこの言葉を聞くまでは。

 一気に料理から気を逸らされたベルは、彼らの言葉を一言一句聞き漏らすまいと、食べる手を止めた。突然のベルの行動に、隣に座っていたシルもカウンター越しにいるミアも、怪訝そうにベルを見つめている。

 

 

「なんや、なんか面白そうな話か?」

 

「面白そうというか、現実離れしたという印象を受けると思うよ」

 

「フィンがそう言うほどの話か。してそれは何じゃ?」

 

「うん。ダンジョンでミノタウロスを、私たちが一匹取り逃がしたよね?」

 

 

 アイズのその言葉で、緑髪のエルフ、リヴェリアと小人族の男性フィンが苦い顔をする。

 

 

「あれは我々の失態だ。確認したが、上層で被害者が出なかったのが僥倖と言えるだろう」

 

「うんそうだね」

 

「んで、そのミノタウロスはどうしたんや? 聞いとる限り、アイズたんが倒したんちゃうんやろ?」

 

「うん。倒したのは別の存在、人と言っていいかわからないもの」

 

「なんや、モンスター同士で殺し合いでもしよったんか? でもミノタウロスに敵うもんなんて、上層にはおらん筈やけど」

 

 

 ロキの発言に、話を事前にアイズから聞いてなかった面子以外が、微妙な顔をする。特にエルフの二人が顕著で、信じられないものを耳にしたかのように、ため息を一つついた。

 

 

「そのミノタウロスを、徒手だけで魔石ごと撃破したんだとさ」

 

「そう。その存在は大きく真っ赤な目に金色の体、あと頭に金色の大きな角があった」

 

「ッ!? ……ほんで?」

 

 

 アイズの言う特徴に違和感を覚えただろうロキは、普段は微笑を絶やさない表情から笑みが消え、目も開いてアイズを真剣に見ていた。その様子に怪訝な顔をしながらも、アイズは言葉をつづけた。

 

 

「額の真ん中にみどりにひかるちいさなてんがあって、ミノタウロスを倒すとき、とても強い蹴りを使ってた。あとその蹴りを出すとき、角が六本に増えてた」

 

「……ロキ、どう思う?」

 

「……アイズたんが嘘をついているようには思えん。でもそいつの特徴がうちの予想通りやったら、大変なことや」

 

「というと、やはりアイズが見たのは……」

 

「たぶん、間違いないやろな。このオラリオ、いやこの世界に……」

 

 

──アギトが降臨したっちゅうことや。

 ロキのつづった言葉に、ファミリアの机が静寂に包まれた。周りが騒がしくても、その机が静かになるのはある意味目立っていた。そしてロキの声が聞こえていたのだろう、エルフの給仕やミアまでもが、その言葉に固まっていた。そのような状態を尻目に、ベルはゆっくりとジョッキを傾ける。

 

 

「それが本当なら、確かにまずいのう。ドワーフの伝説によれば、アギトが出るときは、世に厄災が降りかかると言われておるが」

 

「それはわからん。エルフに伝わる伝説では、『彼の者らは疾風の様に現れ、嵐のように厄災を薙ぎ払う』と称されている」

 

「……まぁ今はアギトかどうかわからん。悪いけど、あとでアイズたんの記憶を見せてもらうとして、今は飲もうや。折角の慰労会なんやし」

 

 

 ロキが話を閉めたことにより、ファミリアの卓に再び活気が戻った。先ほどまでの真剣さが嘘のように騒がしい机を背に、ベルは出された食事を全て平らげ、荷物を纏めて帰る準備をしていた。

 

 

「ごちそうさまでした、ミアさん。また来ますね」

 

「え? あ、ああ。また来な」

 

 

 一瞬呆けたミアだったが、すぐに調子を取り戻し、ベルを送り出した。

 

 

「……あれ?」

 

 

 その後ろ姿を、一人の少女が見つめていたことに気付かないまま。

 

 帰路についている途中、ベルは考え事をしていた。ミノタウロスを倒したことは後悔していない。あの場で変身しないでただ相手にしたら自分が死んでいたし、何より自分以外の犠牲が出ていたのかもしれない。

 しかし周囲の警戒を怠ったのは事実である。種族によっては、アギトを不吉の象徴として取り扱うとも聞いている。特に神の中には、アギトを消そうと考える者もいるという話だ。

 

 

「……問題が山積みだなぁ」

 

 

 そうぼやきながらベルは、自身のホームとなる廃教会へと足を進めるのだった。

 

 

 




 はい、ここまでです。
 原作ではベートのディスリがありましたが、本小説ではまだベルとアイズが関わっていないので発生しませんでした。


 さて、ヒロイン毎にどんな話の展開にしようと思ったら、エイナとヘスティアのルートがネタ切れで思いつかないという事態に陥っています。
 またルートによっては異様に長くなったり逆に短くなったり、原作イベントの前後関係が変わったりとなってしまっています。

 なので予め書いておきますし、タグ付けします。完全にこの物語はご都合主義に突入します。途中までは原作通り進みますが、各ルートの分岐点以降はそういう展開になります。
 尚、大元となる設定等々は出来るだけ原作を汚さないようにしていくつもりです。
 現在確定でヒロイン毎に展開が前後する予定なのは、「戦争遊戯」か「春姫・イシュタル騒動」あたりです。どのルートかは秘密です。

 これからも私目の拙作を、よろしくお願い致します。

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