『ランサーズ』
世界の危機である次元戦争にて人々を守る為に立ち上がり遂には成し遂げた伝説の戦士達。
次元戦争の終了は世界を人々にとって都合の良いように書き換えた。
被害者には希望を、加害者は不明に。
それを覚えているの1握りの人たちだった。
ランサーズ全員は覚えてた。
しかし誰1人としてそれを話すことはしなかった。
世界を余計な混乱に巻き込みたくない、それもあっただろう。
しかし、真実は『結局ランサーズは何もしなかった』からだ。
次元戦争の真実は
『都合のよく黒幕が現れ』
『都合のよく英雄が現れ』
『都合のよく英雄が勝ち』
『都合のよく世界が救われた』
ランサーズがあったからこそ世界は救われたが、結局黒幕には勝てず黒幕に相応しい英雄が倒した。
その結果はむしろランサーズにとってはよかったのかもしれない。
黒幕を倒す英雄にならなかった為ランサーズは普通の生活に馴染み、普通のやるべき事に専念した。
高校生になった者は学業に専念した。
あの榊遊矢さえも。
例外は沢渡シンゴだけだった。
皆やるべき事だけをする中シンゴだけ学業というやるべき事とスターになるというやりたい事を目指した。
みんなはシンゴらしいと思いどっちとも中途半端になるのでは危惧したがシンゴは高い水準で両立してみせた。
褒めてくれるみんなにシンゴは優越感に浸ったが頭の片隅にある疑問が浮かんだ。
どうしてみんなはやるべき事だけでやりたい事をしないのか?
疑問はいつしか空虚に変わった。
どうしてオレはやりたい事をやっているのか?
昔のオレなら「さすが天才沢渡シンゴ」と笑い飛ばすそれを今は出来なくなった。
–––エリアC01・アーティファクトエリア–––
白い海の中を漂う。
足を抱き体を丸め自然にリラックスする
もう何時間もいるのか体がふやけて半ば白い海と同化している。
このまま溶けて白い海自体になる。
そうなる運命なのかと理解できた後、誰かの名前を呼ぶ声が海と同化した自分に聞こえる。
解けた体ではどうすることも出来ずにいると、声は暖かな光となって降り注ぐ。
暖かな光に白い海に解けていたオレは、集まっていく。
「………二度あることは三度ある、か」
短い目で見れば偶然の出来事、長い目で見れば必然の諺、今の今まで伝えられているならあり得ない諺も重みがあるな。
沢渡シンゴが目を開けてみたものは逆光だが何処か安心した雰囲気を見せるアーネとマット、リッカ、スラー、それと見知らぬ顔。
忙しい日常に慣れていたシンゴは無意識に体を起こしてしまい、起きてから状況を確認する。
寝ていた背後を確認すると草の上で見知らぬ顔の女性が膝枕していたみたいだ。
女性は白いファンタジーの魔術師の様な格好で湾曲したアコーディオンもしくは階段を降りるスプリング状のおもちゃの様な見た目にデカデカとした星が目に付く帽子?をしている。
特に何か言及する事なく立ち上がる。立ち上がってあの惨劇を思い出し痛み無く立ち上った自分の体を不思議そうにパンパン叩く。
「よかった、その様子ですともう大丈夫の様ですね…申し遅れました私ドリアードと申します」
「以後お見知り置きを」と差し出された手をさっきの惨劇はどことやらで「あ、はい」とまた現実をつかめない様な空返事をする。
握手をしながら周りを見ると、どうやら半壊しているが其れなりに広い部屋にいるみたいだ、ただ元の世界と比べると明らかに材質が違い、岩、もしくは土が固められたものらしい。他には木で作られたテーブルと椅子が見えるが長時間放置されていたみたいで体重をかけると壊れそうだ。
下の方に目を向けると覗き込んでいた4人が座り込んでいた。シンゴは「どうした?」と声をかけると
「どうしたもこうしたもないよ!」とアーネが声を荒げる。
「あんたが一番酷かったんだよ!」と絶叫にも近い叫びで今ある感情をはきだしたのか今度は「もうあんな事は嫌ぁ…」と泣き出す。
「あ、えあ」泣き出すアーネにどうして良いか分からず戸惑う、何時もならファンサービスの10や20やって笑わせるが思い出すのはあの惨劇でアーネは確か誰かを抱いて泣いていたこと。もしかしたら死んでしまったのかもしれない。あそこまで周りを気にせず抱いていた少女の名前を叫んでたんだ、大切な人だったんだろう。
次元戦争のカード化、殺すのとどっちが悪いと討論されたが最終的に50歩100歩と結論付けられそれに納得したが、やはり戻ることのできるカード化とは違う。死んだらもう戻ってこない。
『アレとコレは違う』この世界の危機を説明された後、次元戦争みたいなのか?と考え出した結論。次元戦争でも死んだ人はいるだろうが目の前でそれを目の当たりにして、逃げ出したくなった。
なんでこんな事になったのか、そう思い顔面が蒼白になったシンゴをマットが気遣い。
「助かったよ、あの機械から出た光が守ってくれて、多分防御魔法だけじゃ死んでた」
マットがデュエルディスクの最終緊急安全装置のことを言っているんだろうが腕を見ると何処かで無くしたのか無くなってる。大切なものだが動揺した今では頭の片隅に追いやられ。
「あ、当たり前だろ。英雄沢渡シンゴ様は弱きを見捨てて逃げたりしないぜ」
そんな空元気を吐く、しかしそんな空元気は心の歯車を錆びさせるだけで、戻り始めた心が軋む。
そんな心にシンゴ自身が一番気づかないのかただ乾いた笑いをするだけだ。
「全員起きましたか」とアレイスターが現れた、「この様な事になりすみませんが状況を説明するため落ち着いて聞いてください」と簡潔に説明し出したが想定外の出来事であったがあの惨劇の責任を感じているのか言葉の端に悲しみを滲ませる。
「…つまりあの事故で実働部隊が全滅、蒼い炎を止めるには召喚穴を塞がないといけない、だけど塞ぐともう開かないから周囲にいる比較的軽傷かつ少しでも『召喚』の素質があるものを選別して召喚穴の使用後に塞いだ、と」マットが簡潔に噛み砕いた説明をアレイスターが肯定する。
「軽傷って、アルマは大丈夫何ですか!?」
「『ファーストサモン』後直ぐに救助部隊と魔消水による消火が行われるでしょう」
いつものお調子者の雰囲気が消えたシンゴが「だったら最初からそれを使って!」ど声を震わせアレイスターを睨む、その様子に少し驚いたアレイスターだが「すみません、魔消水は召喚穴に悪影響を与えるため使用を躊躇しました」その姿を見たシンゴ他人の為では無く自分の為に怒りアレイスターに掴みかかろうとするが、それを1番ショックの大きいであろうアーネが止める「シンゴには分から無いかも知れないけど『ファーストサモン』成功はターミナルみんなの悲願なんだ、アルマにとっても…だから抑えて」その姿を見て怒りは収まらないが止められた手を伸ばす気が無くなり「クソ!」と吐き捨て下がる。
「召喚穴を塞いでは俺たちは帰れないのでは?」とマット思っていた疑問を口にする。
「目標のものを使い長い時間がかかる計算でしたが…シンゴ君あなたにもう一度謝らないといけませんね」
アレイスターは懐からデュエルディスクを取り出す。ディスクを見て少し驚き怒りによって興奮していた頭が冷静になる。
「これに入っている次元移動システムを使い、召喚穴とデュエルディスクの2つでトンネルを作れば今回は帰れます、それと…」アレイスターは慣れない手つきでデュエルディスクを操作すると。
[こちら基本界壁送喚機関ターミナル、デュエルディスク内の次元移動システムとのリンクに成功しました]とコザッキーの顔が映る。
(TV電話機能か)と思っていると控え室にいた中年も出てくる。
「電話機能でいいんじゃ?おっさんの顔見ても嬉しく無い」[美女がオペレーターになるかもな]「嬉しい」[お、おう、現金な奴だな]
「…コザッキー博士、ナイスミドル博士、フランゲ博士は?」
[あいつは1人ならまだしも私たち2人揃ったら近づかん]
「ターミナルと繋がるの!?ミドル博士アルマは!!」血相を変えながらアーネがディスクに叫ぶ。
[アルマちゃんは大丈夫だ、まだ眠っているが命に別状はない、流石実働部隊に選ばれただけの事はある]と聞きアーネは力が抜けたかの様に床に座る。本当に大切な人なんだったんだなと思う。
[重傷の者はミラちゃんが魔法で遅らせ長期治療を行うもう誰1人として死ぬ事は無いだろう]もう誰も、やはり思い出しても寒気のするあの惨劇は死者を…みんな黙ってしまった。
「…このエリアに送り込まれたのは私達4人だけなのでしょうか」その言葉に違和感を覚える、今いるのは5人だ。しかし誰もその事を言わない。
[…実働部隊にも比較的軽傷の者もいたがそれら全員は『召喚』の素質無しとして判断され拒否された]「どうしてですか」[高魔力のショックを近距離で浴びた事による1時的な魔力の使用不可状態が原因だ]「ちなみに1時的とはどれぐらいで?」[普通なら100日、実働部隊のエリートなら1ヶ月ぐらい、ただし召喚穴に近づくけるかは心の問題だな]「…判りました」
…聞く感じに実働部隊とはかなりのエリートらしい。アレイスターもその報告を聞き目に見えて落胆している。ただトラウマはどうしようもないだろう。
[ああ、エリアに送り込まれたのは4人では無く3人だ、沢渡シンゴは素質は無いがディスク側の誤作動で送り込まれたみたいだ…不幸中の幸いか幸いの中の不幸か、判断できないな…ディスクにエリア情報を送信後この通信は切らせてもらう]
通信が切られた後シンゴは目を瞑って上を向き「運命が嫌いになりそうだ」と呟き「そうだね」とマットが肯定した。
「…今できるのは私達だけです。シンゴ君ディスクは返します、アーネ君マット君にはこれを、使い方は覚えてますね。」
アレイスターは懐から小剣の様なものを2つ取り出す。それは4角と3角の部分が目立つ独特の形でシンゴはオシャレなゲームとかで見るピンみたいだなと感じた。
2人は決断した顔で小剣をアーネは左手で、マットは右手で持つ
揃って目を閉じ深呼吸する2人
「「………ふぅ!」」
目を開け息を吐くと同時に持っている手とは逆の手の甲に突き刺す。
手加減などされず突き刺した小剣は骨で止まったのか貫通はしなかったが血が出るには十分だった。
よく見ると持っている方の手からも血が流れてる。
小剣に血が伝うのを見て声をかけようとしたが、その血が紋様になっていき言葉を失う。
紋様になった事で成功を確信したのた急に安堵する2人。すぐさま顔つきが戻り口を開く。
「この異変に沈黙している者よ!反逆の声を上げることこそ尊きことである!」
「この異変を静観している者よ!その知を広げ叡智と化しこの世界に希望を!」
「現れよ!沈黙の聖騎士『サイレント・パラディン』!」
「現れろ!異視の瞳を持つ者『サイ・ガール』!」
まるで小剣から血が吹き出し血肉となったかの様に2つの人影が現れる。
1人は白銀と紺色の長身の女騎士
1人は白いマントを羽織った女の子
「召喚に応じましたサイレント・パラディンです、これからはあなたの剣と盾となりましょう」
「召喚に応じましたサイ・ガールです、これからあなたに我が瞳と知を与えましょう」
目の前で2人の少女が『召喚』された。
シンゴはその光景に「すげぇ…」と呟くと、ふとドリアードを見た。
「私もアレイスター様の召喚応じた者です」そう微笑みながら言った。
「2人とも召喚に成功したみたいですね」
アレイスターが2人に問いかけると2人は微笑みながら頷いた。そんな2人の手の甲にはそれぞれ別の紋章が浮かび上がっていた。
「…そういえば、人数増やしてどうする気だ?重たい物でも運ぶのか?」未だに全容を把握していないシンゴは自分を放って話が進むのがイラついて軽い気持ちで訪ねると。
「馬鹿ですかお前は?召喚したなら倒すべき敵がいるに決まっているでしょ?物を運ぶぐらいで呼ばないでください」返ってきたのは刃物によるカウンターだった。
「ば、おま」呆気にとられ言い返そうとしたがそれよりも重要なのは「敵!?まさか蒼い炎の!?」恐怖が蘇り足が震える。その足をサイ・ガールが冷ややかな目で見る。
「…まず、外に行きましょうか」外に出で行くアレイスターについて行く。
–––アーティファクト遺跡–––
外の光景は召喚区域と同じ地獄だった、違いがあるとするなら重々しい黒煙しかない空があることだ、その空も黒煙の先には青空ではなく召喚区域と変わらないドーム状の天井があるかもしれない。地獄が重なってしまう程脳に刻まれた記憶が血を吸い尽くし全身の血の気が引く。
「今から蒼い炎を避けあの建物を目指しその中にある『アーティファクト・ムーブメント』を確保する、それが『ファーストサモン』の成功の絶対条件です」
あの建物、周囲の瓦礫より明らかに高いそれはどうやっても見失う事は無いだろう。…1番の問題はそれでは無くあの時より広範囲に広がる蒼い炎と大量に舞う火の玉だ。
逃げる様に2人を見る、2人ができないといえばもしかしてしなくて済むのかもしれない。
しかし2人は目の前の地獄から目を逸らさず決意を決めている。
その姿を見てあるかも分からない空を見上げ目の前の現実のせめてもの抵抗として目を腕で隠す。
そのままでいるとアレイスターと2人は何やら話し合う、オレのことでは無いらしい。
「逃げたいなら手につけたそれを渡してさっさと逃げろお前は必要ない」
サイ・ガールの言葉が響く
手につけたそれ、デュエルディスクの事だろう。
今思えばこれが無ければこんな事にならなっかのかもしれない。
デュエルディスクさえ無ければ地獄に来る前に死ねたかもしれない。もしかしたらこの世界に来る前に死ねたかもしれない。
(死にたくねぇ…)地獄の時の様に生きたいと願った。
今考えればこれが無ければ死んでいたのかもしれない。
地獄でも生きているのはデュエルディスクのお陰で、オレが異世界人だと分かってもらったのもデュエルディスクのお陰だ。
みんなはデュエルディスクが欲しいだけでオレはいらない、奪われないだけみんなが優しいんだ。
結局オレは何もしてなくデュエルディスクが万能なだけ。
(ダセェな…オレ)目を背けていた事実に目頭が熱くなる。
「りーりー」聞こえてきた声に目を向けると足元で心配そうに見上げてくるリッカとスラー
なんでこの2匹までここにいるのか分からない。
そんな事考えるほど愛着もない。
ふと、柿本、大伴、山部の3人の顔を思い出し、すぐ消えた。
ただこんな地獄にいたくない、デュエルディスクがなくなったらこの地獄で野垂れ死ぬだけ。
(なら…)
「世界を救った英雄沢渡シンゴ様が逃げるわけないだろ!」
みんなについて行くしか…
「…それでは皆さん、行きますよ」
デュエルディスクにあるデータとサイ・ガールの力で導き出した比較的に安全なルートのスタート地点に来た。
「………」厳しい訳でもない普通の道、自分には地獄の底まで開いた崖にしか見えないが。
「では行きますよ!」
オレ以外の全員が走る、その姿を見て目の前が崖ではないと気付き慌てて走る。
オレとしては道を走っているのか、崖を転がり落ちているのか分からなかった。
蒼い火の玉が襲って来る。
アーネとマットが打ち消す。
蒼い炎に包まれた人影の様なものが襲って来る。
サイレント・パラディンとサイ・ガールが打ち消す。
道が蒼い炎に遮られていた。
アレイスターとドリアードが結界を貼り突き抜ける。
何もしていない沢渡シンゴだけがそれに必死について行く。
単純にシンゴが遅いのか、みんなが魔法で速いのか、
弱く恐る心が足に絡んでいるのか。
地獄の半ば「止まってください!」とサイ・ガールが叫ぶ。
その理由を聞く前に行く先に1人の男女が現れる。
シンゴはデュエルディスクでスキャンする前に男が持っている双剣に目が付く。
「『閃光の双剣ートライス』」
昔、デッキに入れようとしてコストが重くてやめた装備カードだ。
「トライス!ガーディアンか!もう1人はアルマだ!」とマットは相手の事を知っているみたいだ。
「…ガーディアン…世界の危機に現れ人々を守ると言われている伝説の集団ですか…世界の危機は今起きています、そこを退いてくれませんか?」アレイスターの言ってる言葉通りならこっちの味方の筈だがアレイスターは明らかな敵意を向けている。
「…無視して突破しますか?」と提案するマットに「ガーディアンはもっといます多少無理してでもここで倒します」「この先に迂回ルートのない1本道に4人います」と戦うと決めたアレイスターとサイ・ガール。
(おいおい…嘘だろ)崖には逃さないための腕がついているみたいだ。
戦うと決まってからは早かった。
アルマはサイレント・パラディンがトライスは右肩に召喚の小剣を刺し右腕に鎧と剣を持ったアレイスターが相手になった。
戦い始めると終始こっちが優勢だった。
アルマは蝶の様に舞うがサイレント・パラディンが剣で動きを制限し誘導した先で盾で相手を蒼い炎へ押す。
トライスはまるで2人いるかの様に戦うがアレイスターの剣から発せられる雷に速度を殺され避ける毎に蒼い炎に近ずく様に後退される。
何より優勢なのは火の玉を打ち消すアーネとマットがサイ・ガールの指示でガーディアンに向かっている火の玉を残し、2人に向かう火の玉だけを消している事だ。
(オレは何も…)リッカとスラーを抱きかかえなが無力を自分を『呪う』
勝負は優勢のまま直ぐに終わった。
アルマとトライスは不利と見て捨て身の1撃に賭けるが。
アルマは剣の角度から弱い攻撃と判断し当たりながらでも突っ込んでくるが盾で見えないうちに力の入る逆手に切り替わっており、体にねじ込まれ、最後の1太刀も盾の裏を蹴る事で大きく吹き飛ばされそのまま蒼い炎に身を焼かれる。
トライスは全速力で走って行くが避け場なく広がった雷を使われ、威力は弱かったが雷で筋肉が勝手に動き体全体の動きが止まる、強引に筋肉を動かし飛び掛るが両足まで鎧を纏った1太刀で下半身は雷に焼かれ上半身は蒼い炎に飛んでいく。
2人死んだ、結局次元戦争では体験しなかった事が目の前で普通に行われる。
オレ以外は特にそんな事を思っていないのか、すぐさまルートを走る。
オレも訳がわからずついていった。
「大丈夫ですか?」ドリアードがかける優し言葉も素通りしていった。
–––アーティファクト遺跡・広場–––
目標の建物の前、比較的蒼い炎が少ない大きな広場で、オレ達とガーディアンの4人が睨み合っていた。
竜人『シール』人魚『ケースト』悪魔『バオウ』恐竜人『グラール』
マットが言うにさっきの様にはいかないと。
「退け、禁忌に触れし者よ、それとも、盗っ人に堕ちし身では理解できぬか?」
(禁忌?…召喚のことか?)グラールの言う言葉に引っかかる。
「…ガーディアンの英雄グラール、伝承通りの存在なら世界を救う為に動く我々の邪魔をしないでいただきたい」
「…やはり盗っ人か…世界の為…その言葉でどれだけの禁忌の業に触れれば気がすむのか…自らの本質すら業に染まったか?」
(業?)その言葉にはアーネとマットも懐疑の目を向ける。
「貴方には世界の為に尽くす私の頑張りは分からない様だ!」
アレイスターが全身を鎧で包み眩しいぐらいの雷を纏った剣でグラールに斬りかかる。
グラールは持っていた斧で受け止め「バオウ!シール!」と指示を出し、悪魔が巨大な真空管を背負った鉄の生首を後方に蹴り飛ばしそれを竜人が弓で射る、鉄の生首が壊れ光が漏れだすとそれが蒼く燃え始める。
轟々と燃える蒼い炎は実質的な絶対条件の失敗を感じさせる。
「ッ!」
そしてそれが戦闘の開始となった。
「遂には理性すら捨てたか」「オオオォォォ!」斧のグラールと鎧のアレイスターが刃を合わせる
「ふーん、本当に人形みたいね」「………」杖のケーストは剣のサイレント・パラディンを翻弄する。
「…お前達の行動自体は賞賛に値する」「一体何を知っている!?」弓のシールと魔法のアーネとマットが撃ち合う。
「やる気は出ないが、ま、楽しもうぜ」「バカ、貴方は下がっていて下さい」大剣のバオウが異能のサイ・ガールを笑う。
「…なんで戦ってんだよ…もうだめだろ…これ」シンゴは何度目か分からない絶望に包まれた。
蒼い炎が少ない広場、広場には少ないってだけだ、もう周りは炎に包まれている。行く先も帰る道もない。
デュエルディスクの帰還はあっちからもトンネルを作る必要がある。こっちからはできない。
「りー…」腕の中でリッカとスラーが弱々しく身を震わせる。「オレについて来なければこんな事にならなかったのにな…」
会って間もないが同じ地獄を経験している為か愛着が湧いてきた。
「…こんなオレについてきてくれたんだせめて…」リッカとスラーを地面に降ろし、デュエルディスクにセットしていたデッキに指を置く。
「ドロー!」
バオウが大剣を振るう、身長ほどある大剣を片手で振るえるほどの力を持っているが誰が見ても手加減している。素人でも大剣を無視して必殺の一撃を与えようとするぐらいの速度で振り回す。戦場なら致命的、しかし圧されているのはサイ・ガールだった、『破邪の大剣ーバオウ』は異能すら邪として破壊する。
「ま、面白くねぇから、もう死んどけ」バオウが少し本気を出して切りに行く。一度低めに振り、逃げたサイ・ガールを下から追って斬るか上から回り込んで斬るか、それを迷っていると急に現れた鉄拳を即座の大剣を上げ防ぐ。
「♪〜」戦場を見ると見たことのない連中が現れてた。さっきバカって言われていたガキがやっていることらしい。
再度きた丸い巨漢に破邪の大剣を振るう、巨漢は腕でそれを防ぐがそれだけだった「…あれ?」巨腕が剣を弾く、強く握っていた手が仇になり体勢を崩される、その無防備な状態を細身の男が背後に周り締め上げてくる。
「こいつら使い魔じゃねぇな!」巨漢のパンチが来る、後ろの男ごと殴り倒す気だ。一瞬覚悟したがパンチが来ることは無かった。サイ・ガールが丸い巨漢男ごと破壊の異能を使ったからだ。
「テメェ!」「道具はさっさと出してください。」正直このままパンチの方が危なかった、破邪の大剣を手放し前の方に倒すそれだけで破壊の異能は消え去る。倒れた反動で浮いた大剣を足で蹴り後ろの男の足を切り飛ばす。
デビル・ヒール、ビッグ・スターが消えていく、2人を消したバオウはこっちに向かって来る。もう来た、大剣を振り上げた姿が止まった様に目に焼き付く、次の瞬間コマ飛ばしの様に切られるのだろうか…目を閉じかけるがバオウの右肩にリッカが噛みつくその姿を見て「逃げろ!」と叫ぶ、そのままでは殺されると、しかしバオウは何もせずこっちに来る前にいた地点より遠くに逃げる。
アレイスターの一瞬の隙をグラールが手に持っていた重力の斧ではなく『アーティファクト・ラブリュス』による一撃を放った。
戦場の均衡を破ったのはそれだった。
アレイスターはラブリュス自体は避けれたがフルパワーで地面に当たったラブリュスは地面を砕き、破片が銃弾の様な速度で周囲を襲う。
シールはその破片がサイレント・パラディンに当たったのを見て『アーティファクト・フェルノート』を構える。マットは突然血を吹き出したアーネの元に駆け寄っていく。
割れた地面から吹き出した砂埃で顔がわからないほど精度は落ちているがすでにガーディアンの位置は把握済みでシンゴの魔界劇団はほとんど消滅した、何より目標はただ1つ『召喚』されしサイ・ガールに向けて弓を射る。
沢渡シンゴはその事に気付いた、奇跡かもしれないし、サイ・ガールの異能かもしれない。
シンゴは安堵した、サイ・ガールが死ぬことではない。
右手で左手のデュエルディスクを外しながらサイ・ガールに近づきディスクを外した左手で押す。
その瞬間左手が弾け飛び、弾け飛んだ左手に体が引っ張られ体も吹き飛ぶ。
(わりぃ、耐えきれなかった)
ここが地獄なのが。自分が無能なのが。最後の意地を誰かの為に死のうという欲望に。
(ああ、クソ)
サイ・ガールは特にこっちを見る事なくバオウと戦う。
「ガキ、てめぇの行動は賞賛してぇが助ける相手が悪かった」
(そんな大層なものじゃない…)
目の前を闇が覆い始める。
(4度目はなさそうだな…)
闇の先から光が広がる。
最初から明るかったんだろう。
目の前に黒い人影が現れる。
(…パパは死んでいないだろ…誰が来たんだ?)
黒い人影が急に輪郭がハッキリする。
(金の仮面のTVヒーロー?)
なんで好きなキャラである沢渡シンゴがこんな事に…