戦闘描写のない戦闘シーンが意外と長くなり分割。
柿本、大伴、山部。
中学の頃は賑やかしてくれる取り巻きとして何時も一緒にいた。
このままバカやるのもいいかもなんて考えていた。
絶対に切れない仲、それが切れたのははなんて事ない高校進学だ。
LDSらしくそれなりの家だった3人は難し目の高校に入学することに。
オレもTVと高校は両立させると決めた後だった。
中学生の最後の方はとにかく時間が欲しかった時期で。
最後にパーっと騒いで終わりにすることにした。
空いた時間に努力をとにかく詰め込んだ。
意地として3人よりも難しい高校を目指して。
集まるのは最後といったがオレの合格発表に3人は来た。
オレの合格が決まった時には胴上げしてくれた。
ただそれが4人で会う最後の時だった。
そこからは中学の時より忙しかった。
自分に使える時間がない程に。
そんな生活に慣れてきた頃にはTVマンとしてミッチー、勝鬨、デニスなどの中学時代の知り合いにあっていた。
あいつらとも遊ぶ仲になったが、3人ほど親密にはならなかった。
あいつらにもやるべき事があったからだ。
同世代ともっと遊びたいと参加したデュエル大会。
結局同世代と会う事なく優勝した。
榊遊矢は出場してなかった。
戦いたかった相手は後日優勝を祝うメールをくれただけだ。
オレの年齢なら高校で学業に集中している。
オレだけがやりたい事をしている。
…いや、最初から気付いていたんだ。
みんなはやりたい事をしていると。
3人もミッチー、勝鬨、デニス、ランサーズ、遊矢も。
学業は苦手かもしれないが将来のやりたいことのため。
みんなのやるべき事はみんなのやりたい事だった。
みんなこそやりたい事とやるべき事を両立していた。
それに比べたらTV出演と学業は全然両立していなかった。
最初から崩壊していた、両立して見えたのは。
オレの努力もあるが、両立が物珍しくそれの宣伝だ。
笑われ者の道化だったんだ。
今からでも遅くない、どっちかを捨てよう、と考えたが結局やめた。
TV出演がやりたい事だったからだ。
学業はオレも高校にいったという、同世代との繋がりの心の拠り所だからだ。
考えれば考えるほどオレは道化だった。
繫がっていたいそんな糸で操られた操り人形がオレだ。
心無い人形がオレをを演じる劇をやっても誰も気付かないだろう。
劇はいつになったら終わるのだろうか?
糸はいつになったら切れるのだろうか?
切れたら解放されるのか?動けるのだろうか?
糸のなくなった人形の体は立ち上がれるのか?
苦痛に囚われながら恐怖が終わるなと叫ぶ。
沢渡シンゴは1つだけ願った。
でもさ…誰も巻き込まなかったんだ。
だからさ…褒めてくれ…パパ。
––???–––
「不幸な運命だな少年」
金の仮面のヒーロー然とした男がいきなり話しかけてくる。
シンゴは一切状況が理解出来ずにいる。
「異世界から逃げ出そうとしたものに触れたばかりにこの異世界に来てしまうとは」
「…リッカとスラーのことか?」
当てはまる存在を言ってみるがヒーローは肯定も否定もせずただ話続ける。
「この世界の危機、それに巻き込まれ状況も意味も理解する事なく諦めて死ぬとはな」
ヒーローは目を瞑っていたらしくそこで初めてオレを見た。
「運命を知れ、少年」
運命!これが!シンゴはキレてヒーローに掴みかかるが剣を喉元に突き付けられ止まる。
「…諦めて死を選び身勝手に喜んだクセに今更剣が怖いか?」
まあ聞けと剣を収める。
「少年、お前にはターミナルが隠した嘘とアレイスターの召喚の禁忌を教える」そんな前置きで語られた言葉は想像を絶していた。
「…なんでこんなことになるんだよ…」
体験は想像を超え、精神は容量を超え、試練は実力の超えていた。
死んでも逃げれず運命に囚われている。
安息はない。
「運命って何だよ…」
「運命、神、それの始まりは人が知りたかったからだ」
『如何して人は生まれたのか』それは神が作ったから。
「いつしかそうあってほしいと願ったからだ」
『如何してこんな事が起こったのか』それは神の仕業だ。
「そうあってくれと願ったからだ」
『如何してこんなに不幸なんだ』それは神にせいだ。
「元々は人がわからなかったもの、わかろうとも納得できないもの、それを納得する為に神は作られた」
その結果人に作られた神が人に呪われるのは不幸だな。と呟くヒーローの姿を(オレとは違う、オレにはそんな考えは持てない)と感じ座り込んでしまう。その姿にヒーローは息を吐く。
「…少年お前は生き返る…こともできる…吹き飛ばされた左腕も一緒にな」
ヒーローから今1番聞きたくない言葉が来る。
生き返りたい、あの地獄に帰りたくない。
生き返らないとどうなるんだ?あの地獄に戻りたくない。
希望こそ絶望だった。
「帰りたい…」何よりも望んでいることが自然と溢れる。
「…観測者である私にその力はない」
心のどこかで感じていたその結果に衝撃はなかったが、しぼんでいた心から感情が溢れる。
「…でだよ…何でだよ!」感情のまま立ち上がり殴りかかる。
ヒーローは剣を使わずただ打たれる。
目から涙が溢れる頃には膝立ちになり額をつけノックするように叩く。
いつしか叩く事をやめ膝立ちで地面に手をつけいた。
「…生き返るのなら、できる限りの力を授けよう…状況によっては生き残れるかもしれん」
与えられた希望にすがりつくように顔を上げる。
「帰れる可能性は少ない、生き残っても次の地獄に足を踏み入れるだけだ、その時お前は殺しの罪を犯すだろう」
絶望的だった。
「平和だろうと戦場だろうと命の重さは変わらない、少年の躊躇はむしろ賞賛な値する」
みかねたオレに優しさをかけてくれる(ああ…)
「生き返りたくないなら背を向けて走れ、それで終わる」
土下座から正座に変わる(ああ…)
「あの時と同じだ、逃げたかったんだろ」
ヒーローの背後にこの世界での出来事が見える(ああ…)
「…正しい運命なんてない、運命を変えるとは運命を狂わす事だ」
蒼い火の玉が襲って来る、思わず背を向ける(ああ…なんて…)
「悲しい事だがどうなろうと悲劇で終わる運命もある」
(なんて惨めなんだろう…オレ)
「地獄とはいえ自分で道を決めれるなら。自分を持っているものの義務だ」
(こんな所で1人で死んで)
なら、看取られれば満足か?
なら、悲しまれれば満足か?
オレは死に方を決める為に生きたのか?
(オレの幸せだった頃…)
柿本、大伴、山部と一緒だった頃?
違わないけど違った。
ランサーズの頃?
違わないけど違う。
(オレが幸せを感じる時)
それは背伸びせずただ仲間と笑い合っている時だ。
(…ああ、そうだったんだ)
死んでから気付いた、幸せに。
「さあ決めろ、自死を選ぶほどの地獄に立ち向かうか、あの時の様に逃げるか」
リッカとスラーを抱いている感覚が蘇る。
(オレの幸せは仲間がいないと始まらない)
(なら)
あの時のように背後から蒼い光が迫って来る。
「あの時?逃げる?」
バカバカしくて笑ってしまう。
こんな事でオレは…
「あの時確かに背を向けたが!オレは動ける足を1歩も踏み出してない!」
蒼い炎に立ち向かいヒーローに向けてガッツポーズを繰り出す。
「…え?いや、あの時…」
「1歩も!踏み出して!いない!」
弱みを振りまいていたオレをぶん殴りたくなる。
「…生き返るって事で?」
親指を立てる。
あっけにとられていたヒーローだったが意思を再確認するとさっきまでの冷静な態度になる。
「左手を出せ」と言われ左手を出すと甲に光が集まり魔法陣が書かれる。
「人の手には余るがアレイスターのような禁忌に染まっていない召喚術式だ」
少しの間嬉しそうに見ていたが「これ消せたり、右手に移動できない?」と聞き頭痛を起こしたヒーローが消したり右手に移す方法を教えてくれる。
魔法陣が移った右手を回しながら地獄に歩いていく。
「本当にいいのか?お前にとっては辛い道だぞ?」とヒーローは最後に聞いてきた。
「誰にとっても辛い、誰もが辛い、オレも辛い、だけどさそれでも幸せになりたいんだ、1度捨てた命だけどそれでオレは知ることができた」
『オレの命は仲間と一緒にいる幸せを感じなくなった時に死ぬ』
『ならオレの幸せは仲間とオレが幸せで楽しい事』
「命の重さは変わらない、命を捨てたオレが生き返る事はあり得ない、そんなあり得ないがあり得たのは運命が許した奇跡だ、だがもうあり得ない、ならオレは仲間を助けに行く、唯一無二の仲間を助けるそれがオレの幸せだからだ。」
満面の笑みを見せながらシンゴは歩いて行く。その姿は安堵すら覚える。
「…最後の忠告をしよう…この異変の前では神も悪魔も救うための手、救われるための手を伸ばすだろう、その手を一々引っ張ってると引きずり込まれるぞ…おい、聞いてるのか?」
–––アーティファクト遺跡・広場–––
『ファーストサモン』は失敗した。マットはそれを否応無しに確信してしまう。
アレイスター先生はあの1撃は避けたが飛散した破片をまともに浴びその後も戦闘続行したが再び重力の斧に持ち替えたグラールによって地面に伏せられた。
アーネはいきなり血を吐いて倒れた、普段の姿からは考えられないほどの闘志で戦闘続行しようとする。マットは治癒の魔法を使うが何故か全然効果は現れない。
シンゴは死んでしまった、確かに足手まといだったが明るくジョークを飛ばしていた姿からは想像できないほど痛々しく物のように転がっている。近くでペットが悲しんでいる。
召喚した3人だけが不気味なほど無傷で戦っている。
シンゴが外したデュエルディスクを見る。
あれを使ったら…
だけど希望なんてない。
増援は来ない。
使えるのは帰還だけ。
4人いるガーディアンは戦える召喚したものと戦っている。
こっちを1目も向けない。
今なら取りに行ける。
行ってディスクを拾って帰還して。
帰還して、完全に失敗して世界が滅びるのを待つ。
このエリアに来てまだシンゴが寝ていた時、アレイスター先生は。
「みんなのためにもこのミッションは絶対に成功しなければなりません」
「大義のためならこのアレイスターの魂を差し出しましょう」
世界救済の為に命を差し出す。アレイスター先生はそう言った。
俺の番になったんだ。
命を差し出してもやり遂げるんだ。
そう決意し立ち上がろうとした時。
世界が震えた。
アーネとマット、ガーディアンはその発生源に目を向ける。
みんなの視線の先、世界を揺るがす中心に沢渡シンゴは立っていた。
「仲間がオレを呼んでいる」
俯向き表情は分からないがその声ははっきりと自信に溢れた
「助けてくれよと呼んでいる」
右腕を振るう、それだけで周囲の蒼い炎が怯える様に後退する。
「空に輝く星1つ、ご覧栄光の1番星!」
右腕を大きく上げたポーズを取る。
すると頭上の黒雲に穴が空き沢渡シンゴの周りを明るく照らす。
光り輝くドヤ顔をしていたが、確認する様に空を見上げる。
「…やっぱりここは地獄じゃない」
それだけの確認をしたかったのか直ぐに空から目を離し。
「マット、アーネ、このリニューアル沢渡シンゴ様が助けに来たぜ!」
ウインクしながら親指を立てる。
「…なに、あれ…」
ドン引きしているアーネに「さ、さぁ」としか言えないマットであった。
(やっぱ、オレって最高…オレってだけで感動10倍増し…)恍惚していた。
みんな呆気に取られていたが。
「ハァ!」しかし時間が止まった訳ではない。
「早速で悪いが!ぶった切られろぉ!自己満ヤロォォォ!」
今までが嘘の様な爆発力で突進してくるバオウ。
大剣を構えおり何のしなければ速度の乗った大剣の1振りで真っ2つだろう。
だから沢渡シンゴは近ずくバオウに右手を出し。
「待った!」待ったをかけ「まだやる事がある!」待ったをかける理由になっていない理由を叫ぶ。
最早訳分からず素直に止まってしまった。
「はぁ?おまあたま…」と呆れるバオウだったがシンゴが右手の甲を見せると呆れ顔が嘘の様に消え「…」何かを瞬考し後退する。
「どうしたバオウ?」不審に思ったグラールはその行動の真意を聞く。
「…正規品だ」その言葉の意味と彼らしい称し方、そして自分達の状況を考え苦笑する。
「救星の挑戦者か…」「…そんなタマじゃねえよ、あいつは」
「………」
シンゴは相手に見せた右手の甲の魔法陣をもう1度見る。
(この状況…仲間を助ける為、力をくれ)
魔法陣から心臓の様な熱と鼓動を感じ光が溢れ出す。
それが実際にあるんじゃと思わせる程強くなると、鼓膜を揺さぶらない声が聞こえる。
『お前は何を望む?』そんな声に特に驚かずに正直に答える。
(仲間を救えるヤツ…ああ後ノリがいいヤツがいい、マットもアーネもノリ悪くて、仲間なのは仲間なんだがオレって人選ぶたちで…それから『歩いてでもいいから』オレと一緒に行けるヤツで)
中々不躾に要求するが、それで良かったみたいで光が手のひらに集まり心臓の鼓動も光の集合体から発し始める。
(人殺しになるかもしれない)最後の最後、後1歩って所で迷いが現れる。
それを必要な迷いと受け入れる。
(悪い…仲間が進み、時間が進み、運命が進み続けるのならオレも進む、せめてオレが殺す事を躊躇している限りは呪わないでくれ)
…アイツに合わせる顔が無いな。と苦笑する。
(もう戻れないかもしれないし戻らないかもしれない)
(親不孝な息子でごめんパパ)
迷っている心を受け入れる。
最初の1歩を始める。
「忌避されし秘術の継承者よ!闇と光と共に歩み真実となる正道を行け!」
爆発したかの様に膨れた光から青と赤の髪と瞳を持つ少年になる。
「『影霊衣の術士 シュリット』ここに召喚!」
少年シュリットとシンゴが1瞬目を合わせ。
「勝ってこいシュリット!」「おうよ!クラウソラス!」
直ぐ様戦闘開始した。
「不味いな…」
シールは冷静に戦況を分析した。
相手は実質的には1人増えたにすぎないが、その1人が戦場をかき乱した。
「『召喚』か…」
アレイスターによって歪まされものではなく本物の『召喚されし者』
鳥の鎧を纏ったシュリットが飛びながら戦う。
普段なら地面に足を付けない戦いなど愚の骨頂と笑う所だが。
風を操るその鎧の使い方と天才的な戦闘センスは賞賛ものだった。
飛んで来たシュリットをグラールが斧で迎撃する。
それを直ぐに羽を模した小柄な体では大剣で有るそれで受ける。
手加減ではなく変幻自在の相手に素早く対応するため力をセーブして斧を振るうグラーフ。
だが、本気なら王宮の鉄壁の城壁すら揺るがす力を持つ男の攻撃、軽く吹き飛ぶ。
そう羽の様に軽く吹き飛ぶ、風で体重を軽減しているのか、いや重さを感じさせないのはそんな簡単な話じゃ無い。
破壊力とダメージは簡単に結びつく、破壊力に大事なのは固さ、速度、重さそれがバランス良くかつ高い事。
闘争の根っこは固さ、速さ、重さ追求、それに対するのもその3つの追求。
だが不可能なだけであってそれ以外にもある、単純に反対のものである。
だがそれは力を生む筋肉の全否定であり人にはできないものだ。
(それができるからこそ相性が致命的に悪い)
飛んで行ったシュリットを追いグラールが飛ぶ。
力を生み出す程筋肉は固まる、固まった筋肉は緩む遅さが必要になる。
グラールが振るう斧にシュリットが風を当てる、それで斧を遅くさせる訳ではなく斧と自分の間に高密度の空気作る事だろう。
斧が空気を押す分風を掴む鎧が後方に移動する、空に飛ぶほど軽く、相手が近づくほど後退し、力を入れていない筋肉は柔い。
またグラールの攻撃を片手で…いや全身で受け流す。それだけなら『今の』グラールでも対応出来るだろうが。
アレイスターの少女達から1時的に撤退したバオウもシュリットを狙うがシュリットは手を捻り剣の角度を変えるだけでグラールの斧に羽の様な剣が引っかかり引っ張られバオウから避けようとする。
グラールはバオウも避けられると結論付けると、斧を地面に投げ飛ばす、力任せに投げたグラールにより引っかかっていた剣と斧が離れ体より下になった剣に乗り滑空する。
グラールが着地して半ば埋まった斧を掘り上げる、その体はうす傷だが既に50箇所以上切れていた。
(さっきより、グラールは6箇所、バオウは2箇所カマイタチで切られた)
シュリットは剣による攻撃をせずカマイタチでグラールを切り刻む、ただ速度が乗った部位の筋肉が薄い所、顔なら目をねらったカマイタチがうす傷なのはグラールの回復力でそうなったいるだけで、常人ならもうズタボロだ。
彼は『召喚』されたが別に召喚されようと強化される訳では無い。
今の私達は弱体化されてはいるがここまでガーディアンと戦うその姿は末恐ろしさを感じる。
シールはバオウに目をやるとめんどくさそうにバオウはアレイスターの娘に向かう。
(観客まがいの私は気分屋のバオウを笑えないな)
ガーディアンは『召喚』の様に現れる、彼処に彼女を置かれた事でガーディアンは残り召喚容量から弱体化せざるを得なかった。
(ガーディアンは不死の存在とはいえ)アルマとトライスを確認と捨て駒として扱い。残り4人の肉体だけは万全の容量を開けた。
今の肉弾派の私とグラール、バオウは魔法を使えない存在。
その結果、只の弓兵である私は風を扱うシュリットがいる限り最も相性が悪い存在となり何もできない。
不死で膨大な量の記憶を持つ私達は記憶を消費して使用する『アーティファクト』を使う事も考えられるが。
正しく『召喚』された彼には使う意味は無い。
(…バオウお前の気持ちもわかる)
『アレイスターの娘を撃った所で何万いるか分からん虱潰しをしなくては意味がない』
『今は違法を使っているだけでターミナル自体は善良なお人好し集団だ』
この異変解決に彼ら以上の適任者はいないか…
今回ガーディアンが召喚された理由は異変解決ではなく『アレイスター』抹殺、それも終わっており帰還命令すら出ていてあと少しで彼女以外のガーディアンは強制帰還する。
1番最悪な考えが思い浮かぶ、しかし今の私達にそれを確認する手段はない。
「…ケースト!」と呼ぶ、ケーストも同じ事を考えていたらしく目を瞑り息を吐く。
それが終わると共にシールは矢をケーストは杖を自分の心臓に突き刺す。
シールは最後にグラールを見て消えた。
「なんだったんだ?」
2人が自害し消えたのを見て素直な感想が漏れる。こっちからしてみればいきなり襲って来たヤツら自害したにすぎない。
まあラッキーぐらいに考えみんなが集まっているドリアードの所に急ぐ。
「シンゴ!アレイスター先生が!」「…デュエルディスクサンキュ」
慕っていた人が死んだその純粋な悲しみを複雑な顔で固まったシンゴはマットが持っていた返してもらう。
空中サーフィンなんてカッコいいことしてるシュリットに手招きしながらアーネの状態を確認する。
確認していないが大怪我を負ったオレが数時間程度で治ったドリアードの魔法だがアーネの傷はまだ治っていない。
「…あんた…魔法使えたの?」「生き返りチートは鉄板だぜ?まあ不死身の沢渡シンゴ様は死なずにチートだが」「…あんたやっぱ意味不よ」
常識を超越どころかオレのあとに常識が遅れ付いてくる…長いやめ
「お体大丈夫ですか?」と聞いてくるドリアードに「アーネに集中してくれ」と近づけさせない。
「シンゴ!気をつけろよ!」歩いてくるシュリットに敵の攻撃にも眉を動かさず退かないサイレント・パラディンとサイ・ガールが明らかにシュリットから離れるのを見逃さず「行けるか!シュリット!」と答えの決まってる問い投げかける。
「当然!期待して待ってな!」こっちに振り向かずに勝てることを信じきった声と歩みでシュリットは戦いに臨む。
「…バオウ後は任せたぞ」「グラール、あんたが何を望んで言ってるかは知らんが、俺は俺のしたい事しかしないぞ?」
それでいいと呟き向かって来た挑戦者を正面にとらえる。
鳥の鎧と剣を持つ戦士と呼ぶには余りにも幼いその姿を。
「召喚されし少年よ、お前のその戦い方は若さ故のものだ、成長していく体ではいつか合わなくなるぞ」
シュリットはその助言に誰かを思い出したのか「…分かってるよ」とこっちに歩きながら答える。
グラールは斧を前に屈む、出来る限りカマイタチで切れる部位を隠すその姿はさっきまで見ていたグラールよりは小さく見えるが、その実態は1撃当てれば終わる事を理解しておりその1撃をいかに悟られず邪魔されずに当てることに特化させた構えに他ならない。
その姿で挑発自体は無駄と確信したが歩きながら「さっきみたいに剣で切り刻んでやるよ」とシュリット自身も危険に陥るかもしれない賭けに出る。
いまだ近くその姿見てシュリットの作戦がとにかく近く事で始まって既に術中と確信し(敗北か…)と気付く「近づく必要経費だ」カマイタチで切り刻まれたが、カマイタチでしか切り刻まれてい無い。剣を強調したのは1文字分でも時間を作り近く時間稼ぎだ。
(気付かれたか?)と足を止めかけるが…(まだ圏内じゃないけどやって来るならやって来いよ、おっさんはあの弓のおっさんより俺との相性が悪い)心を元気付かせすでにグラールの斧の効果を受けたかのように重い足を進める。
既に敗戦濃厚と理解した顔色変えないグラールと絶対的に優位であると考える冷や汗を流したシュリットは既にお互いの獲物の間合いに入っていた。
(1撃食らったら死ぬな…)近づきようやく恐怖の正体が解り冷や汗すら止まったシュリットは後数瞬で生きるか死ぬかが決まる戦いを始める相手であるグラールに問う。
「おっさん今本当の何%?」
今のシュリットはグラールが力を制限されていると知っていて、心に余裕を持たせようと聞いてみたが、寧ろまた噴き出した冷や汗が全身に、手に持っている剣に違和感を生み出す。
答え次第では死ぬかもとシュリットの体は冷え付き熱い心臓の動きすら違和感と感じる。
「半分だな」答えなくてもいいのに答えるグラール、何時もなら茶化すであろう相手の姿が見えなくなる程頭の機能すら冷える。
(2倍に強くなるの?…あ、死ぬんだ)本物の召喚は複数あるがシュリットは次元移動の様なものでしかない。
今ここにあるのは本物と同じ性能を持っている体に本物の魂が入ってるに過ぎない。
本物の魂なら本当に死ぬかもしれない。
天才的な才覚を持ってはいるが若さ故の経験のないシュリットには厳しかった。
(このまま氷柱の様に固まっていれば終わるかも…)
俺が相手ならそんな事ないしそもそももう切っている。
死なない為には体を動かさないと、氷柱の様になった体に熱を送る為に心臓が動くがその熱は氷を溶かさず冷えてしまう。
このまま心臓すら冷えるだろう…あと、数瞬で…
「シュぅリットぉぉぉ!!」
凍っていく空気を読めない灼熱の熱波が背中に当たる。
「テメェ!男だろがぁ!そのていどぉ!」
熱き熱情をそのまま叫ぶシンゴ。
面白そうだからそんな理由で召喚を決めたシュリットにとって沢渡シンゴはノリがいいだけのただの召喚主でしかなかった。
本当ならお前が相手しろと言いたいところだったが。
(助かった…体が暖まった)
さっきまでが嘘のように体が馴染む。
剣を持つ手の汗は凍っている間に落ちたのか熱波によって蒸発したのかわからないが、なくなりいつももの感覚に戻る。
体が暖まったのは本当だがシュリットにはプライドがあった。
(まだ熱さが足りない、それならさぁ!)
「半分?だったらさぁ!」
自分で熱くなる。
「勝たなきゃ!男じゃないなぁ!」
シュリットは重力の斧に足を乗せる。
グラールは結果的に相手の作戦道理になると知りながら相手を攻撃ごと吹き飛ばす為斧を上に持ち上げる。
重量の斧を蹴りシュリットはグラールの頭上にジャンプする。
それがガーディアンとの最後の戦闘開始の合図だった。
(やはり頭上を取るか…)
シュリットは徹底してグラールの上に居続ける。
シュリットの攻撃を避けるフリをしてシュリットが斧の範囲から抜ける距離移動するが。シュリットは攻撃が避けられたことによって崩れた体勢を整える前に強引にグラールの上に移動する。
さっき戦った時も浮いてはいたがあの時とは違う。
さっきは小さい体でそれを生かして足を狙うのではなく、頭や心臓が力が入る位置まで浮いてその小さい体の力でこっちを1撃で殺そうとしていたが今は明らかに頭上にいてその小さい体の筋力に依存する蹴り剣による突きで戦っている。
別に上にいる事は不思議ではない。
相手の利を考えるなら、重力によって物は速度を上げながら下に進む。上から落とすだけでも下の者には脅威だ。
蹴りも小さい体の分体重も軽いだろうがそれをいつも支えている足の体重の重さから解き放たれた攻撃は重い。
此方の不利を考えるなら、斧は重さを生かす為振り下ろしたいが頭上にいては力が入らない。だからさっきから斧の刃に近いところを持ち手首の力で長い持ち手も武器として戦っている。
4本足をやめた人は背筋もしくは首を動かさない限り地面から水平にしか視線を動かせない。もし背筋や首を使い上を向いたところで地面などの目立つ対比がないなら距離間が分かりにくいしそもそも負担が大きく戦い難い。ただ恐竜の血を持つグラールは背骨の仕組みとと目の位置からあまり負担無く上を確認できる。
多くある利点から確かにシュリットの様に浮くことが出来るのならそう戦うのも不可解ではないかもしれないが。
斧の持ち手がシュリットの目からは死角になっている脹脛に当たる。
打撃による苦痛の痛みと衝撃で顔が歪に体勢が…崩れる前に持ち直し再度蹴りを繰り出すが痛みを感じている限り勢いが落ちる。
結局の所、人は浮けないし、そうやって戦える体をしていない。
浮いてもそれは戦闘中の不意打ちぐらいにしか使えない。
今の体ではカマイタチも通じず、倒す為には掴まれる位置まで近付く。
筋肉があるからこそ、重く速く硬く止まり難く、こっちを見る目は足より遠く足で見辛く。
そんな此方に致命を与えられずリスクだけがある戦いをするのは彼越しに見える大きく渦巻く黒雲の空の状態から察せる。
ガーディアンの武器は武器自体が異能を秘めている。
『重力の斧ーグラール』は文字通り重力を操る斧である。
さっきの戦いでは、斧自体の重さを上げるぐらいしか使えなかったが、今ではそれを解放し周囲の重力を強めることが出来る。
そしてその力こそ不死身にして強力な異能集団であるガーディアンをまとめる者に与えられしもの。
世界を救う者に与えられし世界を滅ぼせる力。
(世界の歴史は世界に働く不変の重力に依存した歴史)
法則に依存せしものは法則が変われば無為のものに変わる。
重力は全ての法則の根本にして前提。
格闘術すら重力が変われば使えないものになる。
(そもそも人は生きる事すら難しくなる)
体重が倍になるなどという話ではない。
体の中にある内臓、体を構成する細胞と血が重くなるのだ。
普通ならすぐ倒れ頭を打ち血の詰まった脳が破壊されて死ぬ。
倒れなくてもいずれ血が回らなくなり死ぬ。
達人だろうが鍛えられない内臓は素人と変わらない。
人が2本足で立ち上がった時から不変の重力への依存をしたのだ。
それは目の前の風をあやつるシュリットも、である。
重力の斧の力で殺す事は造作でもない。
殺さないのは心情的理由もあるが。
結局のところ『相性が悪い』からだ。
重力の斧は力を開放できるが斧以外の特定のものだけをとは出来ない。
さらに言えば重力を上げるとそれと比例するように範囲が広がっていく。
周囲1メートルを2倍にしようものなら斧の力は数十キロに及ぶ。
シュリット越しの渦巻く黒雲の見る。
(確か平均的な普通の雲でも100トンの水があるらしいな…まあ、今ある雲は水では無くチリだろうが)
それより問題は雲が浮かぶ空気そのものだ。
重力の斧は持つ者が1番強く受けそれから広がっていく。
全てに影響を及ぼす重力はもちろん空気も受ける。
それが『相性が悪い』理由だ。
重力によって加速した重い空気が襲う、それもあるだろうが。
実際近づいてくる途中で斧を使おうものならシュリットは使っていただろう。
(人が空気の重さを感じないのはあらゆる方向、自分の内側からも力が働いているからだったな)
近づいてきた今のシュリットは重力で降りて来る空気を集め超高密度の空気をグラールの周囲に作りそれでこちらを攻撃するだろう。
正直グラール自身もそれで死ぬかは分からない、死ななくてもスキが出来てそれにより死ぬだろう。
ゆっくり重力を上げても増えた体重で殺しにくるだろう。
一気に上げたなら空気と共に落ちて来て両方が死ぬだろう。
シュリットを殺す任務なら即座にそうするが、殺すのはアレイスターで既に終わった。
死んでも生き返ることの出来る我々が相打ち覚悟とは口が裂けても言えない。
それは命を懸けて戦う彼に対しての侮辱であり唾棄すべき卑怯であるからだ。
(残り時間も少ない…)
グラールはシュリットが想定していないであろう策を使う。
グラールは斧を槍の持ち方で持ちシュリットと近付ける様に突く。
刺又の様になっていた斧の刃を避けシュリットは反撃する、斧を下から支えているせいで剥き出しの左の頸動脈ごと心臓を剣で突くつもりだ。
グラールは直ぐには避けず腕の筋肉が緩むのを待ち、緩むと同時にほぼ両手の手首だけで斧をシュリットにぶつけ左足で地面を蹴り致命傷だけは避け残った右足で力の限り後退する。
力の入っていない斧でもシュリットの力では動かせず、斧を回り込んでくるが。
そこで重力の斧が一瞬だけ力を開放して斧とシュリットと周りの空気が落ちていく。
大量の空気が落ちた為か砂埃が出るがシュリットは隠れきれていない。
グラールは傷を負っていない右腕でトドメを刺しに行く。
その為の一歩を踏み出すと背中から止まれないほどの追い風が吹く。
風がグラールを追い越しシュリットの砂埃を吹き飛ばす。
(…着地していたか)
シュリットは着地していた足と全身を使い羽を模した剣を斬り上げながらグラールを遥かに越える一歩を踏みだす。
その剣はグラールに届かない。
当たり前だ、それはグラールを斬る為では無く。
グラールの体を持ち上げる程の風を起こす為。
(…これは命を試した不死の傲慢、それの罰か)
グラールがすぐにトドメを刺しに来たのは高密度の空気を溜めれないと考えたからだ。
しかし、重力で落ちる空気を同時に落ちてくる周囲の空気で押し潰し圧縮、それによって数瞬だけ空気を閉じ込め近づいて来たグラールを吹き飛ばした。
グラールを吹き飛ばすほどの風に乗り斬り上げていた剣を振り下ろす形に変える。
「見事だ」
グラールは風に乗ったシュリットに両断された。
「グラールを倒したか…」強敵を倒し喜ぶシュリットとシンゴ、バオウはシンゴが一度グラールの体から溢れる光を見て複雑そうな顔をしたのを見逃さなかった。しかし特に思うこたはない、結局俺ではなくシンゴ自身の問題だから。
「次はお前か!」とグラールを倒した事実を自信に変え意気揚々と戦いをふっかけてくるシュリット。
「ガキ!そんな感じじゃ早死にするぜ!残念だがな!」バオウの体が光に包まれる。「もう時間切れだ!」
バオウは自分が火をつけた箇所に向き、今まで戦いでは見せていない綺麗な上段の構えを見せ。
「『愚王臣罪罰旅』」
そこから放たれる邪なき一太刀は大きく燃える蒼い炎を幻だったかの様に切る。
「御苦労だな、自己満野郎」シンゴを見ながら一方的に喋り。
バオウは光となり消える。
文て書いてみないと分からないものだな。