お前のハーレムをぶっ壊す   作:バリ茶

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毎度恒例コスプレ部6枚目

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★で夜 → 呉原 アンケートについては活動報告の方へどうぞ



スイカに塩 TS娘に親友

 

 

 

 小学校での事件から約三日後。

 

 アクセスウォッチを用いて肉体を一時的に作り替えた後遺症を危惧した真岡の勧めで、俺と朝陽は午前中の授業を欠席して病院に赴いていた。

 普通の病院ではなくデム隊の息がかかっている所だったが、別段怪しい何かがあったわけでもなく。

 

 後遺症も無く至って健康という診断結果が出た俺たち兄弟は病院を後にして午後の授業には出席することにした。

 少し前に戦ったばかりだし今日くらいは休んだらどうか……なんてことも医師に言われたが、今朝の内に「昼までには行くから昼飯一緒に食べよう」と呉原に連絡していたので却下だ。

 

 

 というわけで朝陽を小学校に送り届けた後、我らが地東高校に戻ってきたわけなのですが。

 

「……マジか」

 

 校門から先にある敷地内の全てが『青白いバリア』に覆われている自分の高校を見るや否や、そんな溜め息交じりの呆れ声が口からポロリとこぼれた。

 

 

 ……マジで言ってんのか。

 

 

「変なのがいっぱいおる……」

 

 青白いバリアの先で暴れているのは、朝陽の小学校で見かけたザ・怪人みたいな分かりやすい見た目の連中ではない。

 

 巨大化した青いゼリーみたいなスライムだったり、生徒たちを襲って衣服を剥ぎ取るサルだったり──特に目に留まったのが、校舎のすぐ外でいろんな生徒たちを『触手』で捕まえている巨大なタコみたいな怪物だ。あっちは拘束しているだけの男子たちとは違って女子の方は妙な粘液を塗り付けたりして衣服だけを溶かしたりして遊んでいる。

 

 スライムに捕まった女子生徒たちも制服が溶かされてるし……総じて中にいるモンスター共には『特に女子生徒をあられもない姿にしている』という共通点があった。

 

 

 なんだろう、この、RPGのエロゲーで出てきそうな感じの雑なエロモンスター感は。

 

「っ! 電話……真岡さんからだ」

 

 ポケットの中のスマホが震えたので取り出してみると、画面にはオカマの三文字が表示されていた。すぐさま応答ボタンを押してスマホを耳に近づけると耳を劈く大声が聞こえてきた。

 

『ボウヤ今どこにいるの!?』

 

「こ、校舎の前だよ」

 

『てことは高校のゲームフィールドには巻き込まれてないのね! ……はぁ~、よかった』

 

 胸を撫で下ろすような息遣いが聞こえてくるが、俺の心は若干パニック状態だ。

 勿論ゲームフィールド発生の事もそうなのだが──それ以上にあのモンスターたち。

 

 仮想世界じゃあんな奴らを見た覚えはない。

 

「なんか……全然知らない怪物とかが暴れてるんだけど?」

 

『ドローンからの映像でこっちからも把握してるわ。多分そいつら、没になったルートの敵キャラたちね』

 

「没キャラってこと? それにしたって何であんなファンタジーっぽい奴らが……」

 

『聞くところによれば蓮斗くんが異世界に転移するルートも企画当初はあったみたい。そもそも海夜小春の没設定まで内包していた世界だから……モンスターが出てきても不思議ではないわね』

 

 何やらスマホの向こうからカタカタとキーボードを叩く様な音を鳴らしながら説明する真岡。

 

 その音が気になっていると、程なくして空から俺の前に正方形の箱の様な形をしたドローンが降りてきた。

 紐で括り付けられた小型のダンボールをぶら下げており、それを地面に置くと再び上空へと戻っていった。

 

「な、なにこれ」

 

『そのダンボールにゲームフィールド内でのみ使えるレーザー銃が入ってるわ。流石にフライパンだけじゃキツイからって黒野博士が作ってくれたの』

 

 中を開けて確認してみるとそこには見覚えのあるハンドガンが入っていた。玩具のような装飾が施されていて、手に持ってみるとかなり軽い。

 これは見る限り、あの仮想世界で使っていたポイント1で交換できるレーザー銃だ。

 

『弾数も二百発くらいあるからジャンジャン使っちゃってね!』

 

「……あー、うん」

 

 いやこのサイズで二百発も撃てるレーザー銃を作れる黒野理愛ってマジで何者なの……。ゲームフィールド内でしか使えないとはいえ明らかにオーバーテクノロジーすぎるッピ!

 

 この世界に帰ってきてからは直接会話をしたこともまだ無いし、余裕ができたら会いに行きたいところだが今は他にやることがある。とにかくこのレーザー銃はありがたく使わせてもらおう。

 

「よーし……変身(アクセス)ッ!」

 

 手首の腕時計を起動させて合言葉を叫ぶと、俺の身体全体が光に包まれる。

 数秒後にはその光も霧散し、男子生徒がもと居た場所には銀髪の小さな少女が佇んでいた。

 

 

 目線が低い、相変わらず膨らみかけのちっぱい、銀髪もサラサラ……よし、無事に変身完了だ。

 

(夜、セクハラは感心しない)

 

(ごめんなさい!)

 

 自分の身体を触って心の中にいるもう一人の自分に怒られるという奇妙な体験を終え、俺は背中にフライパンを装備してレーザー銃をしっかりと手に持った。

 

「じゃあ行ってくる」

 

『……や、やっぱり一人は危険じゃない?』

 

「朝陽を呼ぶわけにもいかないし。……それに、一人じゃないよ」

 

 そう言いながら胸の中央に手を添えると、自然と『もう一人』を感じることができる。

 この体に変身している内は、俺は一人じゃない。それを再確認して安心したあと、その場を駆け出した。

 

「それじゃ、あのエロモンスター共を倒してちゃちゃっと攻略してくるから! いつも通り後処理よろしく!」

 

『……無茶するんじゃないわよ! 戻ったら飯奢るから覚悟しときなさい!』

 

 

 気遣いを込めたオカマの言葉に少し顔を綻ばせつつ、スマホの通話を切ってバリアの中へと入っていった。

 

 よーし、同級生の女子たちの肢体が学校中で露わになってるとかヤバすぎるし早急に攻略すんぞオラ!

 

 

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 

 

 

 ちょうど四時間目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った時、それを遥かに上回る爆発音のような轟音が学校中に鳴り響いた。

 

 鼓膜を刺激されて頭が揺れ、目を閉じて両手で耳を塞ぐこと数分。少し余裕が戻ってから窓の外を確認すると、学校中を取り囲むかのようにドーム状に広がっている青白いバリアの姿がそこにはあった。

 

 事前に美咲から話を聞いていた『ゲームフィールド』という現象だということは直ぐに察しがついた。

 

 だからといって何かが出来たわけでもない。今は三階の図書室で身を潜めて、静かに助けが来るのを待っている。

 

「……はぁ」

 

 無力な自分に辟易して溜め息が出てきた。我が身大事でここまで逃げてきた結果、俺は数人の生徒たちを見殺しにしてしまっている。

 

 あ、いや、別に死んでないけど。モンスターに捕まった生徒たちに行われる攻撃は、制服を剥ぎ取られるか拘束されるかエロ攻撃をされるかのいずれかだ。

 

 ちなみにエロ攻撃っていうのは──まずスライムの場合は、その柔らかい体を変形させての胸や秘所への()()である。スライムたちのレベルが低いのか幸いにもイタズラ程度で済んでいて、本格的に凌辱されてる生徒はほとんどいない。

 

 補足するとスライムたちの襲う対象は男女問わずだ。女子生徒の場合はそのまま体に纏わりついて、男子生徒の場合はスライムが人間の女性のような形に変わってから襲う。

 

 ……さっきの『ほとんど』に含まれない一部の男子生徒は女スライムに逆レイ……南無。羨ましそうな顔してる男子もいた気がするけど俺は何も見てないです。

 

 

 服を剥ぎ取るサルの場合は男子生徒をロープで縛って、女子生徒は制服を半脱ぎにさせて彼女らの臀部に腰をパンパンしながら擦りつけるというものだ。

 

 しかし残念ながらサルたちに性器は見当たらない。奴らは子孫も残せないクセに女の子に()()()発情する悲しき存在たちだったのだ。涙がで、出ますよ。

 

 

 最後に巨大タコ触手。こいつのエロ攻撃は言わずもがなだが、他の連中と比べてガチ度がヤバい(謎の日本語)

 

 いや本当にヤバイ。今は触手で軽く弄ぶ程度で済んでいるようだけど、あのタコの変態的な目を見るに……本気の凌辱をするのも時間の問題だ。そんな事をされてしまったら触手トラウマだらけの地獄みたいな高校になってしまう。

 

 

「こんなんでいいのかよ俺……」

 

 蹲って頭を抱えているとそんな言葉が自然と出てきた。今や逃げ回れている生徒も少なく、教職員は全滅。解決の為に動ける人間は俺を含めてもごくわずかだ。

 そんな少人数で何ができるというのか。そもそも生き残っている連中とも連絡が取れるわけでもない。

 

 こんなの助けを待つしか──

 

 

 

「……んん?」

 

 

 

 助けを、待つ。

 

 待つ? 誰の助けを待つっていうんだ? あのバリアがある限り警察も救助隊なんかも入ってはこれないし、電波も圏外になっていてそもそも助けの連絡なんて送れない。

 

 デスゲームに精通していたあのデム隊とやらでさえ手も足も出ないバリアをなんとかできる人間なんて……。

 

「あっ」

 

 いや、いる。一人だけいる。友人──いや親友から聞いた話が確かなら、この状況を打破できる可能性をもった人間が一人だけ。

 

 

「……美咲」

 

 

 ハッとした。先程までの悩み全てが霧散して、頭の中が冷静になった。

 

 今日、あいつは学校に来ていなかった。当然だ、あいつは午前中病院に行ってから昼ごろこっちに到着すると、今朝そう連絡してきたから。

 そうなると、あいつはまだこの騒動に巻き込まれていないことが分かる。そしてこれから、自ら巻き込まれようとしていることも。

 

「か、隠れてる場合じゃねぇ!」

 

 すぐさま立ちあがって図書室を飛び出た。近くにあった消火器を手に取り、襲い掛かってくるサルたちを殴り飛ばしながら外を目指して階段を駆け下りていく。

 

 このままじゃ美咲が学校に来てしまう。アイツの話が正しければ、非力で小さいリアの体で単身突撃してくるに違いない。

 

 

 バカか、そんなことを許していいはずがない。

 美咲は俺のせいで理不尽なデスゲームに巻き込まれて、数え切れないほどの苦痛と苦しみを味わいながらあのゲームをクリアしたんだ。極度のストレスと異常な状況下に晒されながら、必死で。

 

 俺に巻き込まれて。

 俺の、せいで。

 

「ふざけんな俺のバカ野郎……!」

 

 汗でシャツが滲んでくるがそんなことも気にせず走っていく。美咲の話が正しければ、この空間は核を破壊すれば崩壊する。そして俺の予想が正しければこの空間の核はあの巨大タコの額で光っている宝石みたいな部位だ。あそこからバリアの天井に向かってうっすらと光の線の様なものが伸びていたのが見えた、恐らくあのタコが空間を支えているに違いない。他に心当たりもないしそれに気づいている俺自身が行くしかない。

 

 

 ……これ以上美咲に無理なんかさせられるか。あの世界でどれほどアイツが必死に頑張ってきたと思ってるんだ。せっかく普通に戻れたってのにまたアイツを巻き込むなんて許せねぇ。

 

 絶交してもおかしくない俺を、笑って許してくれた美咲を。

 もうこれ以上苦しませたくない。だからあいつの助けが来る前に俺が終わらせなきゃ駄目なんだ。

 

「見えた……っ!」

 

 昇降口を走り抜けて校舎の外に出ると、校庭の中央に鎮座している巨大なタコが視界に飛び込んできた。大きなトラックほどの大きさがあるタコは触手をウネウネとくねらせながら男女問わず生徒たちで遊んでいる。

 

 タコの額は地上からでは手が届かない位置にあるため、アレを破壊するには物を投擲して当てる他に選択肢はない。俺の手元にはスマホと中身が無くなった消火器だけ。

 

 これだけでは投げる物が全く足りない。せめて体育倉庫から野球のボールか何かを持ってきた方が──

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああぁーっ! 離せコラ! タコ焼きにするぞテメぇっ!」

 

 

 

 

 

 

「……マジか」

 

 校庭の端にある倉庫へ向かおうとした瞬間、背後から女の子の叫び声が聞こえてきた。

 

 なにやら聞き覚えのある声な気がしたので振り返ってみると、そこには腹部を触手でグルグル巻きにされて天高く持ち上げられている『銀髪の少女』の姿がそこにはあった。

 

「何でもういるんだよ……!」

 

 思わず頭を抱えたくなった。

 

「てか何で捕まってんだよ!」

 

 確かにそろそろ昼休みに差し掛かる時間帯だったからこうなる可能性もあったけどさ、まさかもうタコの触手に捕まって凌辱されそうになってるとは思わないでしょ……。

 

「わっ! わっ! 触手でおっぱい触るなぁ!」

 

 捕まっている生徒たちの数倍デカい声で叫ぶ美咲(リア)。そこにかつてのミステリアスなクール無表情系ヒロインの面影は無く、逆に自分のよく知る親友の雰囲気が感じ取れた。

 

「ひぃぃパンツの中入ってきたぁぁぁ」

 

 涙目でガタガタ震えているリアをよく見ると、彼女が右手から何かを地面に落としたのが見えた。

 

「あぇっ!? レーザー銃どこいった!?」

 

「……レーザー銃なのね」

 

 いちいち大声で状況説明してくれるので助かる。

 つまり今アイツが落としたレーザー銃を拾ってタコの額を撃ち抜けばいいってことだな。

 

「いくぞ……!」

 

 レーザー銃はタコの足元にあるので、接近してヤツの触手に捕まらずに拾い上げなければならない。

 しかし消火器を持ったままでは機敏に動けないからこれは捨てるしかない……つまり咄嗟の迎撃が出来なくなるという事だ。

 

 でもやるしかない。

 

 腹を決め、消火器を投げ捨ててからタコの足元に向かって駆け出した。

 

 

 ──しかし。

 

 

「なっ!?」

 

 まるで俺が接近してくるのをあらかじめ知っていたかのように、駆け出したその瞬間にタコが伸ばした触手をこっちに突き出してきた。

 

 あまりにも急な出来事に対応が遅れ回避も儘ならず、槍のように真っ直ぐ突き立てられた触手が鳩尾に深く突き刺さった。

 

「っ……ッ、っ!」

 

 まるでフルスイングしたバットで殴られたかのような衝撃が腹部を襲い、声にならない悲鳴が喉を上下する。瞬間的な激痛と共に肺の空気が一気に外へ流れ出てしまい、思わずその場に膝をついてしまった。

 

「ぅっゲほ! え゛ほっ!」

 

 涎と吐瀉物が口から漏れ、眼尻から涙がボロボロと溢れ出てくる。両手で腹部を押さえて蹲ると、すぐさま追撃が飛んできた。

 

 今度は触手を鞭のように撓らせて勢いをつけ、俺を強打して大きく後ろへ吹き飛ばした。

 受け身を取ることもできずそのままゴロゴロと地面を転がり、腹部を押さえたままうつ伏せで寝転がる形になってしまった。

 

 ──するとタコは口角を上げ、拘束していた生徒たちを触手から解放した。

 

「……っ!?」

 

 ただ一人、リアを除いて。

 

 

「うえぇっ! なにっ、何!?」

 

 生徒たちを解放したことで空いた触手を全てリアに差し向け、両手両足上下半身すべてに触手を巻きつけた。

 そして触手の先端を『怪しい形』に変形させ、触手のあらゆる部分からねっとりとしたピンク色の粘液を噴き出してそれをリアに塗りたくっていく。

 

「むぐっ、んっ、んん……! んぷぇっ、ぬるぬるするぅ……」

 

 触手は服や口の中にも侵入していき、徐々にリアを包んでいく。なんだか既視感があるような形になった触手の先端でリアの肌を舐めまわしながら、タコは気味の悪い笑みを浮かべながら俺を見てきた。

 

 

 分かっている。このタコは俺に見せつけているんだ。無力な俺の前でリアを凌辱することで、相手を絶望に叩き落しながら優越感に浸ろうとしていやがる。

 

 それを察して止めないわけにもいかず、立ち上がろうとした。意外にも体は言うことを聞いて立ち上がってくれたが、体を支えている両足はずっと震えっぱなしだ。

 

 かろうじて動ける、だが解決する手段が無い。

 気がつけばレーザー銃はタコの巨体の下敷きになっていて、アレを今から取り返すのは不可能だ。

 

「……こ、のっ、野郎……!」

 

 どこまでもふざけた態度を取るタコを睨みつけながら歯軋りをした。

 今俺が一番恨んでいるのは、あんなクソタコ野郎にすら手も足も出ない無力な自分自身だ。

 

「ひゃあぁっ!? どこ触ってんだこのタコ!」

 

 抵抗することで頭がいっぱいのリアに、未だ気づいてすらもらえない程何もできない自分が腹立たしい。

 

「わわっ、やめ……あ、ひゃうぅっ、そこ、ダメ……っ」

 

 涙目で抵抗するリアを陥落させようと目論むあのタコ野郎をぶっ殺したい。ずっと無力だった自分を変えたい──いや違う。

 

 

 俺は。

 

 助けたい。

 

 ずっと傍観するしかなかった、手を差し伸べることができなかった。

 

 

 あの親友を──助けたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

 何処からともなく、落ち着いた声音が耳に飛び込んできて。

 

 その声の主を探そうとして反射的に後ろを振り返ると、そこには見覚えのある少女が立っていた。

 

 水色の髪を靡かせ、まるで氷の様に冷たい眼差しをした小柄な少女が。

 

「……呉原(くれはら)永治(えいじ)

 

「……フィリ、ス……?」

 

 フィリス。

 フィリス・レイノーラ。

 

 仮想世界で共に戦った仲間であり、この世界には存在しない筈の人間がそこにいた。

 

 そんな彼女の登場で呆気にとられていると、冷たい瞳で俺を見つめたままフィリスは此方に右手を差し出してきた。

 

「リアが道を作ってくれて、貴方の心が私をこの場に導いた」

 

「……ど、どういうこと?」

 

「詳しくは分からない。……でも」

 

 力強い眼差しで、フィリスは言葉を続ける。

 

 

美咲(リア)を助けたいって気持ちは──私に届いたよ」

 

 

「……っ」

 

 そう言いながら優しく微笑むフィリスを前にして、俺は今するべきことを察した。

 詳しく説明ができるわけでもないし、何が起こるかもわからない。ただ、何をするべきなのかは理解できる。

 

 差し出されているフィリスのこの手を握ること。

 きっとそれが今の俺にできる最良の選択だ。

 

 

「頼む……っ!」

 

 

 俺自身も右手を伸ばし、差し出されているフィリスの右手を握手するような形で握りこんだ。

 

 

 ──瞬間、目の前にいたフィリスが姿を消した。

 

 すると俺の体から凍てつくような冷たい風が巻き起こり、その突風がリアに纏わりついている粘液を全て吹き飛ばした。

 

「わっ! ……な、なに?」

 

 それに驚いたリアが慌てふためいているが、同様に巨大タコも少なからず狼狽している。

 先程まで何もできなかった一般人が粘液を吹き飛ばすほどの寒風を突然巻き起こしたとあれば当然の反応だ。

 

 

 

 

 ──感じる。心の中にフィリスの存在を。

 

 周囲を凍てつく風が支配していくと同時に、彼女の記憶や感情までもが流れ込んでくる。

 

 そして理解することができた、フィリスの感情を。彼女が俺に導かれたその理由を。

 

 

(私も永治と同じ。あの時リアを……アイリールを助けることができなくてずっと後悔してた)

 

 

 悪の組織でモルモットにされていた幼少期、彼女はリアを見捨ててただ一人逃げ出した。無力な自分を嘆き、その過去を延々と後悔し続けてきた。

 

 デスゲームに巻き込んで、生還してもなお美咲の助けになることができない……そんな自分を嘆いている俺と一緒だ。

 

 嫌いなんだ、自分が。

 

 彼らの優しさに甘えるばかりで何の助けにもなれない自分が、この世で一番大嫌いなんだ。

 

 

(……でも、今なら助けられる、か)

 

(そう。私と永治ならできる)

 

 二人なら、できる。 

 

 同じ気持ちを共有する、互いの弱さを理解し合える、いまこの場で心が重なった『もうひとりの自分』がいれば、きっと。

 

(助けよう、今度こそ)

 

(ああ、必ず)

 

 

 

 今度こそ──二人で。

 

 

 

 

「……覚悟しろタコ野郎」

 

 心の中で完全にフィリスと重なり合った瞬間、体の周囲に青白いオーラを纏った。

 まるで吹雪の様に肌を刺す冷気を纏い、俺は一歩その場を踏み出す。

 

「そこから動くなよ……!」

 

 両手を勢いよく地面に叩きつけると、その場から瞬間的に巨大な氷の道が生成されタコに向かって伸びていく。

 

 そして氷の道がタコの足元に到達した瞬間、一瞬で全ての触手を氷結させた。更にタコの胴体までもを氷で覆っていき、タコの自由を完全に奪って拘束する。

 

 その隙に別の氷の道を空に向かって生成し、上空に掲げられているリアの元まで赴いた。

 

 リアに巻きついている凍って動かなくなった触手を蹴って破壊し、彼女をお姫様抱っこの形で抱き上げた。

 

 

「……えっ、え? く、呉原?」

 

「ほっ」

 

 

 そのまま氷の道を下って地面に着地。それと同時にタコから伸びている氷の道をコツンと踵で叩いた。

 

 するとタコの周辺に寒々とした空気が巻き起こり、二秒も経たず即座に巨大触手モンスターを氷結させた。これでエロモンスターの氷像(フィギュア)の完成である。

 

 

 ──あっという間に勝利した。どんな原理なのかは分からないが、とにかく俺の体でフィリスの能力を使うことができて美咲を助けられた。その事実があれば十分だ。

 

 

 お姫様抱っこされたままのリアに視線を移し、ふっと微笑んだ。

 

「よかった」

 

「えっ」

 

 助けることができて安堵し、体の力が抜けていく。今の『よかった』という言葉は俺のものであり、またフィリスのものでもある。

 

「やっと……お前のことを助けることができた」

 

 心からの本心だ。これで俺もフィリスも、かつての後悔をほんの少しは許せるかもしれない。

 もちろんこれだけで贖罪が終わるとは思っていない。……それでも、俺たち二人で勝ち取ったこの勝利は無駄ではないと、そう信じたい。

 

 

 それはそれとして気持ち的には小躍りして喜びたいくらいの気持ちだが、今だけはもう少しだけカッコつけてもいいと思う。

 

「怪我はないか?」

 

「……ぁ、う、うん。あり、がと……」

 

 俺とは目を合わせずリアが視線を右往左往させている。

 よく見れば頬も少し赤く染まっている。美咲には影響が出ないように氷の能力は調整していた筈なんだけどな……。

 

 まぁこの何とも言えない雰囲気も捨てがたいが、やっぱりコイツとはもっと分かりやすい距離感でいたい。

 ということでからかいます。

 

「なんだよ美咲、照れてんのか? チョロすぎだろお前」

 

「はっ、はぁ!? てってて、照れてねーし!? 調子乗んなバーカ!」

 

 

 

 




特殊形態:ブリザードフォーム

 仮想世界の少女と現実世界の少年の『親友を助けたい』という気持ちが重なって発生した事象。
 呉原永治の姿のままフィリス・レイノーラの氷能力の一部を使用することができる。

 ウォッチを用いずにアクセスしているため非常に不安定な形態。ゆえに使用できる能力は本来の五分の一程度であり、変身時間もわずか三分程度。
 その代わりに一発の出力が高い。
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