お前のハーレムをぶっ壊す   作:バリ茶

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★でリア→フィリスに視点変わりますゾ



無表情っ娘 × 無表情っ娘

 

 全身青色な白衣の変態怪人が現れてから、約三時間。

 

 なんとかパンツを触り終えた俺を退かしてレイノーラは必死に抵抗したのだが、怪人は能力を封じ込めるアイテムを持っていた。

 ゆえにレイノーラはお得意の氷能力を使うことが出来ずあっという間に無力化。

 

 間一髪で助けに来た海夜と高月のおかげで俺は助かったがレイノーラはそのまま連れ去られてしまった。

 

 

 

 現在、俺たちは学校を抜け出して街中を走り回って彼女を探している。

 しかし手分けして探しているものの今だ手掛かりは見つからず、全員途方に暮れていた。

 

「……どこ、いった」

 

 溜め息を吐きながら近くにあったバス停の椅子に腰を下ろした。流石に走りすぎて疲れちゃったぜ。

 

 

 ……こう言ってはなんだけど、今回のこれって明らかにヒロインのイベントだよな? どっからどう見ても海夜がレイノーラを助け出して彼女からの好感度を一気に稼ぐヤツだぞこれ。

 

 そうなると今回の事件は海夜に任せておけば自然と解決するんじゃなかろうか? 

 エロゲーでヒロインを助け出す役割を担える存在なんて、主人公を置いて他にいないだろう。

 

  

 ──あっ! いや、ちょっと待て!

 

 もし今回のイベントが共通ルートじゃなくて、ルート固定のイベントだとしたらヤバくないか?

 

 今まで優しくしてくれてて更に言えばただの友達以上の関係な男の子が、まさに『助けて欲しい』って願った時に颯爽とヒーローのように助けてくれて……。

 

 そんなのもう堕ちるに決まってるじゃん? だってエロゲのヒロインだよ?

  

 もし俺の想像通りに事が運んだとして、そうなった後の二人が取る行動なんて……ぇ、えっ………ち、じゃん!?

 

 だってここエロゲだもん! アニメとかラノベなら惚れるだけかもしれないけどエロゲだったら大して間を置くこともなくエロシーン突入だよ間違いねぇよ!

 

「い、急いで……探さなきゃ」

 

 シナリオ重視のエロゲならまだ分からないけどこの世界には少なくとも『発情する淫紋を付与できるマッチョのオカマ』とかいうバカげた存在がいたわけだし、そこまで物語が深い作品じゃないはずだ。

 

 そうなるとエロシーンまでの過程だってあまり凝っているとは思えない。きっかけさえあればすぐさま突っ込むようなゲームに決まってる。下手すりゃ助けたその場で青姦とかだってありえるぞ。

 

 それはダメだって! 俺がヒロインにならないと駄目なの! レイノーラのルート進んだら詰んじゃうのぉ!!

 

 

「っ! ……おっ?」

 

 焦ってバス停から離れるとスカートのポケットから振動が伝わってきた。

 何事かと思ってスマホを取り出すと、そこには今まで見たことが無いような画面が表示されていた。

 

 

【☆1UPチャンス☆ 今回ヒロインを攫った白衣怪人を()()()()()撃破した場合、報酬として残機を一つゲット!】

 

 

 ……えっ、マジで? 残機貰えちゃうの?

 

 待ってまって、あの、これ……やるしかないのでは!?

 

 アイツに犯されて消えちゃった分の残機が返ってくるってことだろ!

 どちらにせよ海夜に対するレイノーラの好感度が上がるようなイベントは阻止しないと駄目だしこれなら一石二鳥だぁ……!

 

「ツイてる……やるしかない」

 

 俺の所持ポイントは4。結構溜まってる方だし、これを駆使すればあれぐらいの怪人なら倒せるはず。この力も能力じゃなくて運営から与えられたシステムだからやつのアイテムに封じ込められることもない。

 

 

 ──よし、そうと決まれば出発だ。

 さっさとレイノーラを助けてタピオカ奢って仲直りしないとな! クソ怒ってたし!

 

 

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 

 

 目を覚ました時、最初にこの目に飛び込んで来たのは──女性を使()()()性処理に勤しむ白衣の男の姿だった。

 

 瞳に光が映っていない、まるで人形の様な若い女性を玩具のように扱う白衣怪人の傍らには同じく白衣を着ている全身赤色の男がいた。

 

 ……後背位、というのだろうか。

 ともかく青色の怪人は女性の臀部を激しく叩きながら、何やら赤色の怪人に向かって叫んでいる。

 

「あー、だめだ! やっぱ性処理用のアンドロイドも使い古すと締まりが悪いな!」

 

「兄ちゃん、氷結の魔女を連れてきたんでしょ。なんでわざわざそっち使ってるの?」

 

 赤色の怪人が青色のことを兄と呼んだ。よく見れば確かに二人の顔は似ている。

 兄弟そろって悪の怪人とは些か趣味が悪いが。

 

「バッカお前、そりゃ違いを楽しむ為に決まってんだろ! こっちのクソみてぇなオナホの後に体つきのエロい学生で抜くのが最高なんじゃねぇか!!」

 

「じゃあその間に僕が魔女犯していい?」

 

「ざっけんなバカ死ね! 俺が捕まえてきたんだから俺が先に決まってんだろ!」

 

 

 内容など理解したくない下劣な会話が耳を劈く。

 彼らの犯罪者然とした言葉の羅列は聞くに堪えない。しかしながら耳を塞ぎたくても手が動かない。

 

 どうやらここは何処かの建物の中で、私は手足をロープで縛られて寝転がされているらしかった。

 

 ギチギチに絞められたロープは腕に食い込んでいて全く動かせない。

 上半身は肩周辺と肘から下が一本ずつロープで縛られており、二本のロープの間にある自分の大きな胸が強調されてしまっている。

 

 それを見た赤色の怪人は舌なめずりをしつつ銃の手入れを再開した。

 

「はぁ、早くあの巨乳揉みしだきたいなぁ~……!」

 

「落ち着けって弟よ。そこの魔女を洗脳して悪の組織のトップどもを皆殺しにして……そんで俺らが新しいボスになった後なら好きなだけ犯せるぜ?」

 

「そ、そうだね! 魔女を孕ませるの楽しみだ!」

 

 

「……っ」

 

 

 ゾッとした。確認するまでもなく鳥肌が立っている。

 ギラついた目で此方を見る赤怪人の視線に耐えられず、私はなんとか体を動かして彼らに背中を向けた。

 

 

 

 ……いつかこうなる事は覚悟していた。

 組織から逃げ出して能力をしっかりと扱えるようになってからは毎日のように組織の人間を氷漬けにしてきたから。

 

 そんなことをしていればどこかで恨みを買ったり『氷結の魔女』なんて寒い名前を付けられても不思議じゃない。

 

 こうやって拉致されるのだって組織の怪人がよく出没するこの街に来てから、ずっと覚悟していたことだ。

 

 

 だというのに、どうして。

 

「……ぅっ、うぅっ……」

 

 どうしてこんなに──怯えている?

 

 

 おかしい、以前の……この街に訪れる前の自分ならこんなこと平気で耐えられたはず。

 敵には同情せず自身が追い詰められても狼狽なんてしなかった。氷結の魔女なんて異名もあながち間違いではないくらい冷酷で、感情なんて微塵も出さなかった。

 

 なのに今は───怖い。

 

「ふぅ~! よっし見てろよ弟。景気づけに一発、魔女に種付けしておくからよぉ!」

 

 来るな、近づくな。

 やめろ、触るな。

 

「はっは、腕輪で能力使えねぇだろ? 抵抗しなけりゃ殴ったりはしねぇよ」

 

「でもその代わり孕ませるんでしょ?」

 

「ギャハハハ!! 大正解ッ!」

 

 馬鹿笑いした怪人の手が此方に伸び──

 

「──っ!?」

 

 青の怪人がその強靭な筋力で、私の制服を破いていく。

 そうなったことでブラも下着も露出してしまうが、腕輪による能力封印の影響で私は何も出来ない。

 

 

 やはりこれは罰なのか。いつだって勇気づけてくれたあの優しい少女を見捨てた私への。

 

 

 もしそうであるなら、私はそれを受け入れなければならない。

 

 今のフィリス・レイノーラという存在は全ての前提において『あの少女が助けてくれた』事実から成り立っているのだ。

 ならばそこから生じる問題は全て私の責任だ。逃げていい理由など微塵も存在しない。

 

 

「……んっ」

 

「おぉ、なんだよこの柔らかさは。アンドロイドなんか比べ物にならねぇじゃねぇか」

 

 ブラの上から激しく胸を揉まれている。

 行為に及んでいる青怪人の目は明らかに正気ではなく、次第に呼吸も荒くなってきている。

 

「なんだよォ! こんなデケぇ乳ぶら下げやがって! 誘ってたんだろ!? なぁオイ! そうなんだろォ!?」

 

「ぃっ……」

 

 まるでパン生地をこねるかのように痛みを感じる程強く私の胸を弄びながら叫ぶ怪人。そんな彼にできる抵抗など睨みつけるくらいしか残されていなかった。

 

 

 でも、そんな抵抗も出来なくなってしまうほど、自分の心が衰弱していることに気がついた。

 

「おっ? ……ははっ、オイ見ろよ弟!」

 

「なになに。……わっ! 魔女が泣いてる! すげーな兄ちゃん! あの魔女を泣かせたのか!?」

 

 

「っ……ふ……うぅっ」

 

 情けない事に私は涙を零していた。止めどなく溢れてくる熱い水滴で頬を濡らすことしかできない。

 

 『泣く』という行為がどれほど久しいかなんて覚えていない。

 ただ一つ分かっているのは、私自身がこの状況に恐怖し精神がかつて幽閉されていた頃の自分まで退行してしまっているということだけだ。

 

 

 怖くて、泣いて、怯えることしかできなかった、あの時の無力な自分に戻ってしまった。

 何故そんな事になっているのかなんてすぐに分かる。

 

 この街に来て蓮斗やロイゼたちと触れ合って──感情を取り戻しつつあった。

 それゆえに『心の弱さ』をも私は取り戻してしまったのだ。

 

 喜怒哀楽が戻れば戻るほど氷の仮面だって壊れやすくなる。そしてこの怪人たちによってその仮面は破壊されてしまった。

 

 今の私の感情は、まる裸同然。

 

 盾を失った無防備な感情は、凌辱され、嬲られ、壊されていくだけ。

 

 

「ぃっ……ゃ」

 

「揉むだけじゃ満足できねぇな! オラッ、下着脱がすから大人しくしてろ!」

 

 怖い、何もできない。

 

 

「……やだっ、やだぁ……」

 

「ギャハハ! 年相応の顔になってきたじゃねぇか! 安心しろよ、これからは俺の●●●無しじゃ生きられねぇくらい、快楽浸けの人生にしてやっからなァ!!」

 

 

 痛いのは、嫌だ。

 

 

「締まりが良さそうじゃねえか……ふぅ~、楽しみだぜ!」

 

「……やだっ、やめて……たっ、たす、けてぇ……!」

 

 

 もう、あんな思いはしたくない。

 

 

「動くんじゃねぇよ! 殴んぞメスガキがぁ!!」

 

「いたいのやだぁっ……! やめてぇ、はなしてぇ……っ!」

 

 

 

 

 たすけて、蓮斗───

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄ちゃぁんっ!!」

 

 

 

「……あぁっ? なんだよ急に。今いい所なんだから邪魔──」

 

「それどころじゃ! 一階のセキュリティが全部破壊されたんだ! 誰かここに来るよ!」

 

 

「……っ?」

 

 誰かが、来る? 

 

 それってもしかして、誰かが私を助けに来てくれたってこと?

 

 たった数時間でここを特定してセキュリティを強行突破して──私の、ために?

 

 警察か、いやもしかしたら蓮斗──

 

 

「オイ弟っ! 早くそこのライフルを──あ゛ァぁ゛ッ゛!?」

 

 

 青怪人が近くに置いてあった銃を手に取ろうとした瞬間、突然飛んできた光線のような物が彼の下半身を消し飛ばした。

 

 部屋の入り口から無数に飛んでくる謎の光線は室内を飛び回り、その全てが正確に怪人たちへ向かって突き進んでいく。 

 

「兄ちゃん!? クッソ、誰のしわ──ヘブッ」

 

 兄のもとへ駆け寄ろうとした赤怪人はその頭部を丸ごとレーザーに焼き飛ばされた。

 その瞬間を目撃した青怪人は震えあがり、哀れな叫び声を挙げる。

 

「なっ、何が起きて──ぅぎゅェっ」

 

 青怪人はセリフを最後まで言うことはなく、無数の光線によって体の全てを消し飛ばされた。

 怪人の二人が跡形もなく消滅すると部屋の入り口から飛んできていたレーザーが止んだ。

 

 

 残ったのはまるで廃墟のように変わった室内と、少しほこりを被った私だけ。

 

 

 ……何が。いったい何が?

 十秒にも満たないこの一瞬で、何が起きたんだ?

 

「うっ、けほっ、ごほっ……!」

 

 室内に立ち込めているほこりで少し噎せながら、部屋の入り口へ視線を移動させた。

 

 そこから煙の奥にうっすらと人型のシルエットが見えた。なにやら大きな武器のような物を持っていて、その人物は武器をそこら辺に捨てると私の方へ向かって歩き始めた。

 

 

 コツ、コツ、と床を踏む音が近づいてくる。

 次第に室内の煙やほこりは外へ流れていき、その人物の姿が鮮明になってきた。

 

 ……助けに、きてくれた。

 私が困ったときにはいつだって手を差し伸べてくれる。

 面倒くさがりだけど、根はお人好しな──

 

「れ、れん──」

 

 

 

「あっ……いた」(──って、ちょっと待って! なんて格好してんだレイノーラ!?)

 

 

 

「……ぇ」

 

 目の前に現れたのは自分が期待していた人物とは全く違った。

 背も高くなければ、髪も黒くない。どこからどう見ても助けを求めた彼ではない。

 

「どう……して」

 

「えと、助けに、きた。無事で、なにより」

 

 安心したような声音で呟くその人物は、自らが着ていたパーカーを脱ぎ私にそれを羽織らせた。

 

「その格好だと、マズイ……でしょ?」

 

 パーカーを脱いだ彼女は薄手の長袖一枚だ。この時期では寒いだろうに、そんなことは気にせずパーカーを渡してきた。

 

 放心気味に彼女から渡されたパーカーに袖を通していく。そしてジッパーを首元まで上げるとその人は私の目の前に座った。

 

 

 銀色の、髪。紫色の、瞳。

 ほぼ同年代にも拘わらず、低い背丈。

 

 

「……リア、なんでここに」

 

「レイノーラの、居場所が分かるレーダー、使った。えっと……さっきのレーザーは、能力じゃなくて、武器」(おかげでポイントは全部なくなったけどね!)

 

 

 ……はき違えてる。そうじゃないよ。

 

 

「どうして助けてくれたの。……だって、私は……っ」

 

「えっ。あの、ちょっ……」(な、泣いてるぅーっ! えっ? そこまで俺に助けられるの嫌だったの!?)

 

 

 捕まりそうになった貴方を見捨てた。

 今日だって首に刃を向けて脅した。

 そんな恩知らずでどうしようもない私を、どうして。

 

 

「えっと、や、約束っ」

 

 

「……やく、そく?」

 

 リアは突然、私の前に右手の小指を突きだした。握りこぶしの中で唯一小指を立てるそれは、俗に言う指切りげんまんの形だ。

 

「そう、約束……」(帰ったらタピオカ奢るって約束するから、泣き止んでくれ……!)

 

 

 

 

「──っ」

 

 

 

 彼女が小指を差し出してくるその姿に、既視感を、覚えた。

 

 この光景を、私は見たことがあると。そう自身の記憶が叫んでいる。

 

 遠い昔、十年以上前の記憶。脳裏に焼き付いた、忘れるはずの無い、あの時の──

 

 

 

『約束! フィリスのことは絶対! ぜぇーったいにあたしが助けるよ!』

 

 

『だから、ほら──』

 

 

 

『泣かないで』

 

 

 

 

 あの時、彼女は笑顔でそう言った。

 殴られることに怯えて、薬の投与に怯えて、実験に怯えて──そんな私を励ますために同じ立場である筈の彼女が、明るい笑顔でそう言ってくれたのだ。

 

 指切りをして、約束をした。

 

 必ず助ける、だから泣かないで、と。

 

 

「……っ、ぅうっ……っ!」

 

「れ、レイノーラっ?」

 

 

 無理だよ、そんなの。

 

 あれからどれだけの時が流れてると思ってるの? この街の人達と生きていく中で、あなたを忘れた日だってあったんだよ?

 

 それなのに表情を失った今でも、永い年月が経った今でも、私との約束を果たそうとしてくれるあなたの前で──

 

 

 泣くことを我慢するなんて、できるはずないよ。

 

 

「ぅう……っ! いっ、ひぐっ……わあぁ゛……っ!」

 

「あわわ……」(お、落ち着け。こういう場合は抱きしめたり、背中さすってやればいいんだ)

 

 

「むぐっ……っ、ひぅ、うぇ……」

 

「も、もう大丈夫……だから」

 

「ごっ、めん……なさっ、わたし……わたしぃ……っ!」

 

 

 意味の無い懺悔を続ける私をそっと抱きしめてくれている。

 泣き喚く迷惑な自分を、安堵させようとしてくれる。

 

 

 温かな胸の中で彼女の衣服を涙で濡らしながら、忘れていたことを思い出した。

 

 

 

 ずっと、ずっと昔から───私には『ヒーロー』がいたんだ。

 

 

 




(リアに対しての)好感度ステータス


  文香:0 《面識なし》

  陽菜:0 《面識なし》

 ロイゼ:30 《友人関係》

フィリス:100《攻略完了》

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