魔法科高校の妖精遣いだよ……え?そんなにチートかな? 作:風早 海月
定期更新できる状況ではないですが、こっちのSSにも復帰致します。長らくお待ち頂いた方々に謝罪と感謝を申し上げます。
今回は放送が中心となります。
『さて、おはようございます。全国魔法科高校親善魔法競技大会、通称九校戦ですが、今日で5日目となりました。本日行われる競技は新人戦のアイス・ピラーズ・ブレイクとクラウド・ボールであります。本日の実況は私、森安智成が。解説は国防海軍、特殊魔法師部隊司令を務める坂本徹大佐にお越しいただいております。』
『坂本です、よろしくお願いします。』
雫は自室でテレビをつけながら、最後の調整をしていた。
「響、準備は?」
[もち。]
「まぁ、これで万全じゃないとか言ったらさすがにエロ関連全部禁止って言うところだね。あんな夜中までお盛んだったもんね。」
[……いつでもどこでも準備万端ってことだね。]
「……響が言うと別な意味に聞こえるから。」
もちろん、あっちの意味に聞こえる。
『昨日の新人戦初日、凄かったですねぇ。』
『ええ。私も見てましたが、今年の1年…特に女子はレベルが高い。さらに男子にも一条の御曹司やカーディナルジョージなど見ものですね。』
『昨日、結果の出たスピード・シューティングを振り返りましょう。まずは男子ですが、やはり第一高校と第三高校の一騎打ちとなりましたね。』
『ええ。ボディーガード業やCADの操作技術で有名な森崎家の一人息子と先程も挙げたカーディナルジョージ。カーディナルジョージのインビジブル・ブリットはスピード・シューティングには圧倒的に有利でした。それをあそこまで食い下がるとは…とてもいい試合でした。』
『対して女子ですが、優勝した第一高校の御巫栞選手には驚かされました。』
『はい。予選はなんとビームサーベルでしたからね。決勝トーナメントでは十七夜栞さんの代名詞と言われる
『十七夜栞選手との準決勝ですが、十七夜選手は後半苦しい立ち回りになりました。』
『そうですね。自分だけの持ち技と認識していた切り札を使えた相手との戦いで、相手の方が上手く使っていたようですから、非常にショックだったのではないかと思われます。』
雫はテレビを消した。
「響、栞は勝った。私達も、勝とう。勝って栞と…絶対に謝りに行く。」
あれから1ヶ月ほど経つが、雫と栞はつかず離れずを行っていた。また前みたいに…いや、もっと踏み込んだ関係になりたいと、雫は思い、今回の競技に挑んでいる。
昨日のバトル・ボードにも出場したが、そちらは目立たない程度に予選を突破している。
[…僕の魔法なら、深雪にだって負けないよ。]
雫の魔法資質と響の魔法資質が近いため、響が契約した時にその能力が拡張されている。
「そうだね。……そう言えば私って今、古式魔法師なんだ。」
こういう時にふと気づくのが雫クオリティ。
☆☆☆☆☆
アイス・ピラーズ・ブレイクの予選は、各校3名(前年度下位3校は2名)をそれぞれ別の3つのブロックに振り分ける。
そのため、深雪と雫が当たるには予選トーナメントの突破は必須である。
今日の2試合を行い、各予選リーグは2名の予選決勝進出者を出した時点で次の日に持ち越しとなるが、これは製氷能力の限界である。
ただでさえ暑い夏にバカでかい氷を1試合24本製氷しなければならず、これが限界である。
予選ブロック1つにつき、1回戦4試合、2回戦2試合。それが3ブロック。男女別なので×2。1日で、(4+2)×3×2=36試合。
36+24=864本。それが今日作られるバカでかい氷の数である。
ちなみに明日は、予選トーナメント決勝の3試合と決勝リーグの3試合しかやらないので、男女合わせて12試合。24×12=288本で済む。
いや、それでも多いのだが。デカイ分。
製氷に差があるのは問題になるため、製氷は専用の機械で行われる。その後、審判委員のA級またはB級魔法師による何らかの保存魔法で開始前まで融解を防ぐ。
雫は手札を見せずに深雪に当たるため、共振破壊と情報強化の2つだけで2戦を12-0と完封した。
対して、クラウド・ボールはスバルを除いてあまりいい結果を残せず、男子に至ってはなんとか来年の出場枠確保が出来たことは僥倖とさえ言われるような無様な試合であった。まぁくじ運も無かったのも原因だが。
『解説の坂本大佐、本日の競技を振り返っていかがでしたでしょうか?』
『そうですね…クラウド・ボール女子、決勝は面白かったですね。第一高校の里美スバルさんのパッシブスキルと第三高校の一色愛梨さんのエクレール。中盤は里美さんが押していましたが、終盤になって速度を増した一色さんが押し切りましたね。魔法は
『男子はどうでしたか?』
『そうですね…正直に言って凡戦ですね。普通は凡戦と言うと玄人好みな駆け引きや水面下の戦いが多いのですが、それも少なく、
『それほど…ですか?』
『ええ。魔法には工夫の欠片も見られなかったように感じます。あれで努力して工夫したと言える魔法師は私の部下にはしたくないですね。厳しいこと言いますけど。』
『そ、そうですか…ところで、アイス・ピラーズ・ブレイクはどうでしたか?』
『男子の一条将輝は圧倒的でしたね。やはり一条家の《爆裂》は強烈でしたね。私でも同じ競技で勝てる気がしません。幸いにして彼の照準は爆裂で1つのようですから、自陣12本を倒されきる前にエリア魔法で一網打尽にするしか方法はないですね。それも彼の防御の上から。』
『坂本大佐でも難しいのですか?』
『この競技のルールでは難しいですね。素直に称えたいと思います。』
『対して女子はどうでしょう?』
『全予選グループの決勝に第一高校が上がってきたのは驚きました。予選Aグループの司波深雪さんの魔法力には驚かされました。同年代最高クラスの魔法力をお持ちのようですね。さらに、予選Bグループではバトル・ボードではギリギリ予選通過した北山雫さんが共振破壊という強力な武器を手に暴れ回りました。予選Cグループでは砲撃魔法メインの明智英美さんが押し切りました。正直な話、今年の1年生女子は化け物揃いですね。得意魔法に限れば十師族と渡り合える力を持ってるのではないでしょうか?』
雫は余裕すら浮かべながら、テレビを消してベッドに後ろから倒れ込む。
「
机の上で、響自身が魔法で加工したらしいプラスチック製のナニでシてる声と光景から意識を逸らしつつ、雫は明日に備えて眠りの森へ誘われていった。
そう、明日はバトル・ボードとアイス・ピラーズ・ブレイク、両方に出場するのだ。大忙しである。
私、いつも思うんですよ。
アイス・ピラーズ・ブレイクの製氷数。やばくないですか?特に前半。