小説家になろうに投稿している作品を転載しました。

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小説家になろうに投稿している作品を投稿しました。



スライムな俺がオーガなんかに恋をするわけがない!

 日本に突如現れたゲート。それは異世界の住人、モンスターたちを招いた。初めこそは戦争になりかかけたりしたが、100年以上も経った今では強い友好関係を結び、人間とモンスターとのハーフも少なからずいる。

 俺も、その一人だ。

 

「ねぇ、スラ男? 聞いてる? 聞こえてますか? もしもーし」

 

 授業中なのに話しかけてくる隣のバカ女も同じくハーフだ。

 

「うるせーんだよ! オー子、お前は静かに授業を受けろ‼︎」

 

「いや、お前もなかなかうるさいからな。森山スラ男」

 

「やーい、怒られてやんの。スラ男のアホー」

 

「おいおい、お前もだからな足立オー子。

 

「「すみませんでした」」

 

 授業を妨害された担任に怒られ、頭を下げる俺とオー子。

 ったく、いつもこうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、人間とモンスターたちは同じ学校に通うことになっている。といっても、それは中学生からだ。

 モンスターは人間と比べて遥かに強い力を持つ。幼少の頃は感情が暴走すると力をセーブ出来なくなったりもするので、ある程度自分を抑制できる年齢になってからだ。

 

「でさ、オー子のせいで俺まで怒られたって話なんだよ」

 

「なるほどね。ようは夫婦喧嘩ってやつだね。やめときなよ?犬も食べないって話だし」

 

「「誰がこいつと夫婦だ(よ)‼︎」」

 

 互いに指差す俺とオー子。

 現時刻は昼休み。中学からの親友と俺たちは屋上にて飯をつついていた。

 

「いやいや、二人のバカップルぷりはうちの学校の名物だしね」

 

 サングラスをかけた藤田ヴァンが笑う。ちなみに名前の通りヴァンパイアなので肌が病的なまでに肌が白い。手にはトマトジュースが握られている。

 

「そんなのが名物なんて終わってるなこの学校」

 

「あっ、スラ男。ネクタイ曲がってるよ」

 

 そう言ってオー子がいつものようにネクタイを正した。

 

「サンキュー」

 

「多分、そんなところが夫婦と思われてる原因なんだけどな〜」

 

「そっか?まぁ、弁当作ったりとか朝起こしてもらったりはされてるが……」

 

 あくまでそれらは俺とオー子の習慣なので、特に気にしたことはなかった。

 

「絶対それだよ」

 

 溜め息をつきながら紙パックのトマトジュースをちゅうちゅう飲むヴァン。

 

「スラ男、箸止まってるよ」

 

「おっ、すまんすまん」

 

「でも、スラ男もオー子ちゃんとイチャイチャするのを控えがいいかもしれないね」

 

  紙パックを潰しながらヴァンが言った。

 

「イチャイチャしてないって。でも、どうしてそんな話になったんだ?」

 

「知らないのか?最近、三年の犬神先輩がオー子ちゃんを狙ってるって話」

 

 今日は豪勢にタコさんウインナーが二本も入ってるな、どれどれ。

 

「やっぱ、ウインナーはタコさんに限るな。で、どうしてその先輩はオー子なんて狙ってるんだ?」

 

「どうしてって、そんなのオー子ちゃんが可愛いからじゃないのかい?」

 

「げほげほ。オー子が可愛いだって?」

 

 俺の横で頬にご飯粒をつけたこいつが?

 

「ないない。だって、その気になればリンゴを素手で潰すようなやつだぞ?」

 

「あー、スラ男! その話はしないって言ったじゃん‼︎」

 

「まぁ、あれは驚いたけど……。でも、そういう所を知ってるのは僕らだけじゃないか。他の人たちは知らないし」

 

 まぁ、それもそうだなわな。いつも茶髪アホ毛のこいつも、最近は周りと同じようにオシャレしたり、体も平均以上に成長してる。多分、並のアイドルよりはマシだと思う。

 

「もの好きもいたもんだな。オー子、幸せになってこいよ」

 

「私が犬山先輩の所に行ったら明日からお弁当なしだからね」

 

「それは困る! ちなみに犬山じゃなくて犬塚だぞ」

 

「二人とも違うから。犬神ね? い・ぬ・が・み。こんな話、犬神先輩にしれたらマズイよ」

 

「その、犬神先輩ってどんな人なの? 私、知らないよ。スラ男、知ってる?」

 

「名前と噂くらいわな」

 

 曰く、狼男と人間のハーフであるらしい。

 

 曰く、気性が荒く、暴力沙汰を起こしたことがあるらしい。

 

 曰く、学校内では一番強く、不良たちのボス的存在らしい。

 

「これくらいのことしか知らん」

 

「それくらい知ってるなら大丈夫だよ。だから、あくまでも騒ぎを起こさないようにね。特にスラ男」

 

「なんだよヴァン。俺が問題児みたいな言い方」

 

「あながち間違えじゃないからね」

 

 横でオー子がうんうんと頷いていた。

 まったく、失敬な。

 

「とりあえず絡まれたりしても無視をすることだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とは言われたものの、この状況はどうすればいいんだ?」

 

 現在、俺は校舎の影から頭だけを出してそれを見ていた。

 そこには、数人の不良たちに囲まれたオー子がいる。

 いつものようにオー子と一緒に帰ろうと待っていたが中々来ないので、あちこち探したら校舎裏に連れていかれてるオー子の姿を見つけたのだ。その後を尾行したらこの現場だ。

 さて、どうするかな? まぁ、とりあえずは様子を見るか。

 

「おい、お前が足立オー子か?」

 

 オー子の前に立ってる目つきの悪い大男が喋る。確か、あいつが犬神だ。

 

「そうだよ。あなたが猫山さん?」

 

 おい、それだともはや別人だぞ。

 

「おい。テメェ、犬神さんの名前を間違えるとか頭おかしいんじゃねぇのか?」

 

「ふっ、別に構いやしねぇよ。足立、俺がこの学校をシメてる犬神 猛だ。よろしく」

 

「どうぞ、よろしくお願いします」

 

 ぺこりと素直に頭を下げるオー子。

 あいつは警戒心無いからな。そこは昔から心配な所だよ。

 

「あぁ、よろしく。後々のためにお互いにいい関係を気づかないといけないからな」

 

「それって、私が先輩の彼女になるって話ですか?だとしたらごめんなさい。私、先輩みたいな人、興味ないんです。だから、先輩とは付き合えません。いや、付き合いたくありません」

 

 再び頭を下げるオー子に対して、犬神の顔が真っ赤になる。

 バカっ‼︎ もっと言葉を選べよ………。

 

「あれか? 好きな男でもいんのか? あの寝癖頭か?」

 

 寝癖頭って俺のことか?まぁ、確かに寝癖はあるけどさ。ってか、オー子が俺のことが好きとかないだろ。

 

「好きな人なんていませんよ? それにスラ男はただの幼馴染ですよ」

 

「なんだ、あの寝癖頭は彼氏じゃねぇのか。ホッとしたぜ」

 

「ただ、一緒にいると楽しくて、心がポカポカするだけですよ」

 

「……………はぁ?」

 

 間抜けな声を出してポカンと口を開けた犬神と手下たち。

 一体なんだ? 今、オー子のやつが何か変なことでも言ったか?

 オー子の方も犬神たちね反応の理由がわからずにキョトンとしている。

 

 …………………………………。

 

 どれくらいの間無言だったのかは知らないが犬神の手下の一人がぽつりと呟いた。

 

「これって、犬神さんが告白する前にフラれたんじゃ…………」

 

 あっ、確かにそうだ。一方的にオー子がフッただけで、犬神は告白すらしてねーじゃん。

 

 プルプルと震える犬神の顔がタコみたいに真っ赤になる。あれは、完全に怒ってるぞ。

 

「あの、スラ男を待たせてるんで、私はもう帰りますね」

 

 気まずくなったのは流石のオー子でも感じとったらしい。

 しかし、そんな態度が彼の自尊心をさらに傷つけたのか、怒気を含んだ声で犬神が吠えた。

 

「こんの、くそアマがぁあああああああ‼︎」

 

 パンッ!という乾いた音が響く。

 ビンタされたオー子の頬が赤く腫れ、切れた唇から血が出た。

 

 ブチッ。何かが切れた音がする。

 

 気がついたら俺は飛び出していた。

 感情を抑えることが出来なかった。

 

「なに、してくれてんだよ。テメェ‼︎」

 

 いきなり現れた俺に反応が遅れ、犬神は顔面に拳を貰って、尻餅をついた。

 

「犬神さん、大丈夫ですか‼︎」

 

「大丈夫だ。いきなり殴られたせいでバランスを崩しただけだ。ダメージは全くねぇよ」

 

 やっぱり、喧嘩とかしない俺の拳だとこれが限界か。でも、隙はできた。

 

「オー子!今のうちに逃げるぞ」

 

 あれ? なんでスラ男がここにいるの? みたいな顔した幼馴染の手を掴んで逃走を試みる。

 だが、逃走劇はすぐに終わった。

 

「二人でどこに行くつもりだよ。俺をコケにしてくれたお礼がまだあるだろうが」

 

 何故なら、俺とオー子の前に、大きな狼男が立ちはだかったからだ。

 太く鋭い牙に、黒に近い灰色の体毛。丸太のように太い腕や足。並のモンスターとは格が違う、選ばれたものが持つ風格。

 

「へっ。俺がこの姿になったってことが、どういうことか、ハーフのテメェらたちならわかるよな?」

 

「もちろん。わかってる」

 

 人間社会に溶け込む上で、モンスターたちにはある制約が課せられた。

 

 それは、むやみにモンスターの姿にならないことだ。

 

 人間は本能的に自分とは体の作りが違う生物に恐怖を感じる。その恐怖がモンスターと人間たちの間に戦争を起こさせた。戦争が終わった今、歴史の過ちを犯してはならないと。

 純血のモンスターたちはかなり経験を積まないと人化の術を覚えれないが、ハーフはその限りではなく、最初から人間と同じ姿になることができる。ハーフが人間社会に溶け込みやすいのはこの性質からきてるそうだ。

 では、モンスターやハーフたちは本来の姿には戻らないのか? 答えは否。

 人命救助・国から許可を得た職種・自分の身を守るための防衛。以上の三つ状況ではモンスターの姿になることが許されている。

 なので、犬神の変身は完全な違反行為で警察に捕まってもおかしくない。そんなことを考えた上での変身ということは……。

 

「本気で俺たちを殺すってことですか?」

 

「そうさ。特にテメェな。女の方は無理矢理にでも犯して風俗に回せばいい話だ」

 

 ニヤリと犬神が笑う。

 

「その慣れた言い方からするに、同じようなことを何度かしてますよね」

 

「まぁな。多分これで四人目くらいだな」

 

「警察には捕まらなかったんですか?」

 

「俺の親はちょっとした組の頭だからな。そこら辺を揉み消すのは得意なんだよ」

 

  ヤーさんの息子かよ。それまた厄介な。

 

「なるほど。でも、先輩が殺す気で来るなら、正当防衛で変身しても構わないですよね?」

 

「はぁ? お前が変身? ハハハハハハハハ‼︎」

 

 犬神たちが腹を抱えて笑い出す。

 

「お前、ハーフって言っても、スライムだろ? あのゲームに出てくる雑魚キャラの」

 

「犬神さん。スライムなんて変身したらなんか起きるんですか? ククク」

 

「何も起きやしねぇよ。万年、ランキング最下位の種族だぞ? むしろ、人間の姿の方がマシだそ?」

 

 やっぱり、酷い言われようだなスライム。まぁ、一番弱い種族ってのは否定しないけどさ。

 

「まぁ、見てろよ犬神」

 

 自分の中のモンスターの枷を外す。熱い何かが身体中を駆け巡り、変化が始まる。

 手足が短くなり、体が縮んでゆく。肌色のだった皮膚が青くなっていく。変化が終わった時、そこにいたのは

 

 小さな青いスライムだった。

 

「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハ‼︎ これは傑作だ。笑いが止まんねぇよ。まんまスライムじゃねーか」

 

 顎をこれでもかというくらい広げて笑う犬神。周りの連中も腹を抱えて笑っている。

 

「いきますよ」

 

「ヒーヒーっ。いいだろ、かかってこいよ」

 

 笑終えた犬神が俺と向き合った瞬間、無防備だった犬神の腹に俺がぶつかる。

 

「がっ⁉︎」

 

 なすすべもなく五メートルほど後ろに飛ばされる犬神。

 周りの笑も一瞬で止まった。

 

「なんだあれ? 犬神さんが飛ばされたぞ!」

 

「あれっ、おかしいな。お前、何かしたか?」

 

「しましたよ。ガラ空きのあんたの腹に一撃ね。見えてなかったんですか?」

 

「いや、見えてたぜ。いきなりだったから反応が遅れただけだ。次はマグレでも成功しねぇぞ」

 

 犬神の顔が真剣なものに変わる。

 

「なら、もう一回行きますよ」

 

「かかっこい。返り討ちにしてやる!……………グォ⁉︎」

 

 先程と同じように飛ばされる犬神。

 だが、タフな体らしく、予想より早く立ち上がった。

 

「なんだよ、一体なにをしやがった‼︎」

 

「ただの体当たりですよ。限界まで自分の体を伸ばして、力を緩めるだけ。まぁ、輪ゴムと同じ要領ですよ」

 

「なるほどな。よくもこれだけ早く動けたもんだ。だがな、タネがわかればこっちのもんだ‼︎」

 

 左右にジグザグしながら近づいてくる犬神。

 どうやら頭が少しは回るようだ。この技は途中で方向転換ができないため、ちょこちょこ動かれると攻撃できないのだ。

 そうこう考えているうちに、犬神が目の前までたどり着いた。

 

「これで終わりだ‼︎ 雑魚スライム!」

 

 コンクリくらいなら破壊しそうな拳が振り下ろされる。常人ならまず死ぬような凶悪な技を受けた瞬間、

 

 ポヨンという音がした。

 

「…………えっ?」

 

 犬神の口から戸惑いの声が漏れた。

 それもそうだろう。こいつは俺を殺す気で攻撃した。なのに俺は全くの無傷なのだから。

 

「言っておくが、俺の体はボールみたいにブヨブヨだから、打撃系の攻撃はほとんど効かねぇよ」

 

「なら、これはどうだよ!」

 

 両手で俺を持ち上げた犬神が鋭い歯で噛み付いてくる。

 

 バキッと立派な狼の牙が折れた。

 

「言い忘れてたけど、スライムの親父はスライムとメタルスライムのハーフらしくてな。その血が流れてる俺も体を一時的にメタルに変えれるんだよ」

 

 打撃技には普通状態で。それ以外はメタルでしのぐ。

 

「なんだよそれ、めちゃくちゃじゃねーかよ。でも、それじゃあ俺は倒せないぞ。なんせお前の唯一の攻撃方法は俺には通用しないんだからな」

 

「いや、実は他にも隠し球があるんですよ。ただ、この技は相手が近くにいないと意味がないんですよね。しかも、俺までダメージ受けるし」

 

 不穏な俺の言葉に、犬神の顔が引きつる。

 

「おい、まさかお前の隠し球ってのは、まさか………」

 

 脂汗をかきながら顔を真っ白にしていく犬神に対して、俺は満面の笑みで答える。

 

「もちろん、自爆に決まってるじゃん。《エクスプローション》‼︎」

 

 俺は躊躇なく盛大に呪文を唱えた。

 

 ゴォオオオオオオオオオオオオオオン‼︎‼︎

 

 爆音と共に、校舎の一部が吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むり、もう動けん」

 

 力尽きて人間の姿で瓦礫の中から這い出た俺は、それしか言えなかった。

 

 辺りには犬神の手下たちが転がっていた。

 

「オー子? おーい、生きてるかー?」

 

 手下たちと一緒に倒れてたオー子に声をかける。少し遅れて、オー子は起き上がった。

 

「スラ男。あんたは私を助けに来てくれたんだよね?」

 

「もちろんだ」

 

「そっか。でもさ、守るべき対象を巻き込んで自爆するって、何に考えてるの⁉︎」

 

 すすだらけの顔でオー子が怒鳴る。

 

「いや、正直に言うとさ。オー子なら爆発の威力にも耐えれると信じてたんだけど」

 

「確かに耐えたけど! 他にもやりようがあったでしょう! こんなに校舎壊してどうすんのよ⁉︎」

 

 それは確かにマズイな。正当防衛とはいえ、やり過ぎたな。校舎の弁償っていくらかかるんだ?

 二人でワーワーギャーギャーと言い争っていると、瓦礫山が崩れて、誰かが立ち上がった。

 

「おい、テメェら。ふざけんじゃねぇぞ」

 

 そこにいたのは全身がボロボロになりながらもモンスターの姿をした犬神だった。

 

「げっ、まだ倒れてなかったのかよ」

 

 一番至近距離で巻き込まれたのに動けるって、タフすぎるだろ狼男‼︎

 ゆらりゆらりと俺に向かって歩いてくる犬神。

 状況はかなりマズイ。スライムの状態だったら、攻撃されても涼しい顔をしていれたが、人間の姿のままであの攻撃を受けたら、流石に死ぬ。

 俺がパニックになりかけた時、オー子が犬神の前に立ち塞がった。

 

「スラ男、そのままじっとしてて。あいつは私が倒す」

 

「なん……だって? お前があいつを倒すだって? やめろオー子‼︎ 怪我どころじゃ済まないぞ!」

 

「へっ、そいつの言う通りだ。足立、俺は知ってるんだぜ? お前が完全なモンスターの姿になれないってな。悪いことは言わねぇ。お前だけでも見逃してやる。そこをどきな」

 

「ほら、見逃してやるってさ! 大丈夫だ。俺はしぶといから、死にはしないって。だから、お前はやめろ。俺を置いて帰れ、オー子‼︎」

 

 必死に説得する俺にオー子は「ごめん」と言った。どうやら覚悟は変わらないらしい。

 

「いつもいつも守られてるばかりだから、今度は私がスラ男を守るね」

 

 俺の方を振り返ったオー子の顔は、俺を安心させるためか、微笑んでいた。

 バカ野郎……っ。

 

「話はついたみたいだな。なーに、苦しみはしねぇよ。一撃で楽にしてやるよ‼︎」

 

 犬神が今日一番のパンチを繰り出した。

 

「逃げろ‼︎ 犬神ぃいいいいいいいい‼︎」

 

 俺の叫びを聞いた瞬間、犬神の目が見開かれた。

 犬神の目の前にいるオー子の両腕は緑色になっていたが、それ以外に特に変化はない。オー子のモンスター化はこれが限界なのだ。

 だが、オー子にはモンスター以外の力が備わっていた。

 それは、モンスターと人間との戦争の中で、たった一人でモンスターの大軍を全滅まで追い込んだ『勇者』の血が流れているのだ。

 パワーのみに特化したオーガの力と万に匹敵するモンスターを蹴散らす『勇者』の力。この二つが合わさったオー子の攻撃は、打撃無効の俺でも威力を吸収しきれない。そんな一撃が、犬神の体に命中した。

 

「グワァアアアアアアアアアアアアアカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーー⁉︎⁉︎」

 

 最初は聞こえた犬神の声が、音の速度で離れていき、大空に向かって、飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オー子。俺はやめろと言ったよな?」

 

「うん」

 

「その気になれば竜すら一撃で倒せる力だぞ? それは使わないって約束したよな? 前にお前が突き飛ばしたせいで俺が死にかけたことを忘れたわけじゃないよな?」

 

「忘れていません。今回のことは深く反省しています」

 

 先生たちのお説教から解放された俺はオー子を叱っていた。

 幸いにも、犬神は全治三年の怪我を負っただけらしい。かなり重症にも聞こえなくないが

 、あの一撃を受けて死なないだけマシだ。オー子も少しは加減したらしいし。

 

「反省したならよしとするか」

 

 まぁ、しかけてきたのは向こうからだし、とりあえずはよかったってことなのか?

 

 ぎゅるるる〜。

 

 可愛らしいお腹の音が鳴った。

 

「………はぁ、しょーがねぇな。オー子、もう夜だからラーメン食って帰るぞ。一応、助けてもらったし、今日は俺のおご………」

 

 奢りだと言い終わる前に、目を星にしたオー子が抱きついてきた。

 

「わーい!ラーメンだ!しかもスラ男の奢りだ!」

 

「はしゃぐな、抱きつくな。もう少し声のボリュームを落とせ。近所迷惑になるだろうが」

 

「へへっ、ごめんなさ〜い。あのね、スラ男、」

 

 

  抱きついた状態でオー子が俺の顔を覗き込む。

 

「なんだよ、オー子?」

 

「だーい好き」

 

 満面の笑顔で堂々と恥ずかしいことを言うんじゃねーよ。ただ、お前の好きなラーメンを奢るってだけじゃらねぇかよ。と言いたかったが、胸が張り裂けそうなくらい高鳴ったせいで、言えなかった。

 代わりに、オー子の頭をぽんぽんと撫でた。

 

 言葉がでなかったのは、多分、こいつの顔がいつもより近くにあったから驚いただけだろう。

 

「ほら、さっさと行くぞオー子」

 

「待ってよ、スラ男!」

 

 

 

 俺の幼馴染はオーガ。俺はスライム。俺たちは今日も一緒に過ごしてる。

 


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