ガンドォ!   作:brain8bit

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 色々忙しかった(現進)とだけ残す。そして、自分の中で面白さというものが行方不明。どうしてこうなったのか分からない。


 あ、そういえば4期始まるね。


第13話「人の振り見て我が振り直せ」

 正直言えばむしゃくしゃしてた。思えば毎度毎度、理不尽に晒されることを許容してた方がおかしかったんだ。唐突に第2の人生を知識ありきで始められたり、勝手に出来た人間だと思われたり、不審者二人組に殺されそうになったり……特にここ数ヶ月はそれらが濃密すぎた。

 

 

 

 

 

「――◼️◼️ってさぁ、マジでいいヤツだよねー」

 

 

 

 

 

 でも、乗り越えるしかなかった。この世界でちょっとだけ知っている物語。その近くにいれば、生き残れると信じる外なかった。全力で苦難を与え続け、ヒーローを育てる雄英高校。そこで強くなれれば死なないんじゃないかなぁ……なんて、浅い考えで受験した。

 

 

 

 

 

「え、やってくれんの? さんきゅ~、助かるわぁ~」

 

 

 

 

 

 そうしたら、何の間違いか本当に入れてしまった。本物にヒーローとしての素質をもった人間しか入れない場所に。予想の斜め上過ぎる合格の仕方に戸惑いこそあったけど、まるで、世界がわたしというイレギュラーを受け入れてくれた見たいで、少しだけ嬉しかった。

 

 

 

 

 

「あ~、それ? 大丈夫だよ、◼️◼️が手伝ってくれるし」

 

 

 

 

 そこから、過酷な日常が始まった。辛かった。だって、当たり前だ。わたしは死にたくないだけ。ヒーローになりたい訳じゃない。けれど、本心を虚勢に隠すことで凌いできた。ヒーローとしての素地を作る実技、高まる周囲からの期待、触れたことのない本物の悪意――。

 

 

 

 

 

「平気だって~! アイツ、絶対嫌がんないし?」

 

 

 

 

 

 特に最後のは酷かった。冗談抜きで、この超人社会に蔓延る闇を見せられた。無意識に内包していた命の単位を改めさせられた。ふとした瞬間に死ぬかもしれない毎日。安全な保証なんて何処にもない。まるで今まで歩いてきた道が、地雷原の上だと認識させられたようだった。どうしようもないくらい怖くなった。ただ死にたくないと膝を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、そうだよね。◼️◼️ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、わたしがこんな目に合わなくてはならないのだろう? このまま生き続ける? 目に見えない悪意に晒されながら? 流石にしんどいにも程がある。限界だ。こんな事なら、転生(やりなおし)なんてしたくなかった。あぁ、いっそあのとき終わって(・ ・ ・ ・)いられたら良かったのに。そんな考えが脳裏に過った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『――もう、泣くな(無理するな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――そんなとき、わたしを包んでくれた腕があった。

 

 

 

 

 決して柔らかくない、ゴツゴツとした大きな手が、何度も背中を(さす)ってくれた。大丈夫だと、無理するなと、言ってくれた。

 

 わたしはこの世界で物心ついてから今日まで、自分の気持ちを大っぴらにしたことはなかった。だけど、その時だけは、みっともないほどに声を上げて泣いた。支離滅裂に自分の中に渦巻く感情をとにかく喚いた。

 

 

 

 「怖い」「助けて」「嫌だ」「死にたくない」――。

 

 

 

 幾ばくかの言葉を繰り返し、自身の心を裏返す。巣食う不安を捨てようと一心に全てを吐き出した。思い出してみればまるで顔から火が出るように熱くなる。だが、不思議と嫌悪感はなかった。今まで感じたことが無かった心地よさに、随分と当惑させられた。

 

 そんな訳がわからないまま、答えを求めるように顔をあげる。そこにはわたしを抱き締めてくれた人の顔があった。相手もそれに気付いたのか、こちらを見つめ返す。そして、そのときにわたしは初めて――

 

 

 

 

 

『――よく、頑張ったな』

 

 

 

 

 

 

 

 ――ヒーローに、少しだけ憧れたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 状況は最悪だった。だが、それはつい先程までの事だ。逆転の一手。そんな思いを抱いた瞬間に、意識が遠退く。そんなとき、一陣の風が頬を撫でた。刹那、それが俺たちにとって追い風であるものだと理解する。

 

 

「随分と遅い登場……ですね」

 

「すまない。無理を通してでも合流すべきだった……ヴィランが一度侵入してきた事を知っていながらこの醜態。活動限界にかこつけて君たちに負担を押し付けた。相澤君、本当にすまない!」

 

 

 皮肉でこそあるものの、決して恨み言ではない。むしろ、感謝すらしている。謝罪をもらう理由などない。ヒーローといえど、所詮は人の身。どれだけ強大な個性を持っていようが、全世界の人間を一度に救うような真似はできないのだから。

 

 

「冗談ですよ……すみませんね、俺が不甲斐ないばかりに」

 

「……何を言ってるんだ。生徒は誰一人として大事には至ってない。君たちの奮闘のおかげさ。間違いなく、13号君と君は生徒を守れたんだよ。だから、もう安心して体を休めてほしい。それにね――」

 

「……?」

 

 

 何故言い淀んだのかと首を傾げる……事は、肩を外されて折られた腕の影響で出来ない。よって、目を細めることに留める。そんな俺の表情に対して目の前の平和の象徴は困ったように眉をひそめた。

 

 

「君を、待っている子がいるんだ。重症なのに酷なことを言うようだけど……是非、君の口から伝えてほしいんだ。『自分は大丈夫』とね」

 

 

 俺を待つヤツ……考えを巡らせるがパッと浮かぶような顔はいない。無茶した後にうるさいのは山田……プレゼント・マイクぐらいだが、既にプロヒーローがこちらに到着しているのだろうか。いや、そうだとすれば激しい戦闘が行われているはず。

 

 

「ハハハ……君は自分の事を過小評価しすぎだよ。少なくとも、彼女(・ ・)は君を心配していたさ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

『……相澤先生を助けて下さい。お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

「それは――」

 

 

 

「我々はヒーロー……悪を打ち倒すのは、過程であって目的じゃない。我々が掲げるのはヴィランの撲滅ではなく、人々の幸福だ。だから、君もヒーローとしての務めを果たしてほしい。これは今、君にしか出来ない事なんだ。相澤君、いや――」

 

 

 

 

 

 

 

「プロヒーロー『イレイザーヘッド』……萬實黎少女のこと、頼んだよ」

 

 

 

 

 

 

 

『お前のコードネームは……イレイザーヘッドだァ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、まったく酷い話だ。古い鏡を見せられている。だが、そうだ……こういう男たちがいたんだったな。

 

 俺は目を伏せたまま、オールマイトに抱えられる。そして、動かない両腕に意識を向けながら、蛙吹たちの元へと運ばれた。体格差が大きい故に峰田が胴、蛙吹が脚を持つ人間担架の状態となる。酷く情けない限りだが、その状態に身を甘んじた。任された仕事を遂行するためにはそれが一番合理的な手段だったからだ。安寧を求める声がそこにあるというのなら、手を差し伸べる。綺麗事と笑われようとそこに命を懸ける。それが俺たち(ヒーロー)という存在だ。

 

 

 

「まったく……不合理な事だ……」

 

 

 

 この場にはいない表情筋の死んでいるソイツを思い浮かべる。本人にそれを言えば「お互い様です」ぐらいの憎まれ口を叩く事だろう。そんな事を考えながら、俺は眉間の皺を弛ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 …………あ、シリアス終わりました?

 

 

 

 はっはっは、学べよ諸君。天丼だろうが何だろうが知ったこっちゃねぇです。こちとら精神年齢アラサーの独り身女ですし? 日によっては「はぁまぢ生きるのつらみリスカしよ」って鬱々ジメジメするけど、吐き出してしまえばこんなもんよ。

 

 はい、そこで「ダマシタナァァァアアァ!!」って形相をしてる諸君ら。別に騙してはないですよ? 昔から面倒事押し付けられてたのは事実ですし。前世のわたしは責任転嫁だの、セクハラだの、裏切りだのそりゃあもう酷い理不尽被り体質でしたよ……あ、今も変わってねぇや。ハハッ(自虐)。

 

 

 

 まあ、んな事はどうでもいいんです。ただまあ、そーゆー認識はあったほうがいいよって話です。割といるんすよ、理不尽の皺寄せを一身に受けてる人間って。自分の身の周りにいないって思い込んでるだけ。まあ、わたしみたいに内心「てめぇでやれやぶっ飛ばすぞ」ぐらい毒吐けてたら問題はないんですけどね。メンタルクソ雑魚故にちょっとの事で死にたくなるけど、復帰は秒速5センチメートルなので。あ、ちなみに先の暴言はこれでもオブラートに包んでるぐらいです。そのまんま放送しようものなら、規制必至の罵詈雑言のバーゲンセールと化すためお伝え出来ません。爆豪少年? あんなの可愛いもんですわ。

 

 

 ただまあ、そんな中でもわたしのストレスを受け止めてくれた相澤先生が死にそうになってるの見てキレそうにはなったけどね。てか、ちょっとキレた。でもなぁ……。

 

 

 

 

 

『そんな言い訳なんて認めない!! あの人を助けない理由になんてならない!! わたしは絶対に助ける……救わなきゃいけないんだ――』

 

 

 

 

 

 おいカメラ止めろォ!!

 

 

 誰が全セリフ赤裸々に語れと言ったァ!! 止めてホント恥ずかしいから! 何やねん絶対に守るって! 相澤先生が勝てないバケモンにわたしが相手取れる訳がないやん! しかも他の人にめっちゃ見られてた……青臭いセリフを全部聞かれた……そうだ、冥府に行こう(京都並感)。

 

 男子諸君に取り押さえられた衝撃とオールマイトが扉を破壊した轟音で正気に戻ったけど時すでにお寿司。言った後めちゃくちゃ恥ずかしくて顔を上げられんかったよ。めっちゃどもってオールマイトに相澤先生の事頼んだわ。えぇ、それはもうか細い声でしたとも……平和の象徴の視線もどこか生暖かかったような気がする。まったくいつからそんな眼で見るように……あ、初対面からそうでしたね(白目)。

 

 

 

 まあ、閑話休題(それはともかく)

 

 

 

 オールマイトが到着したことで事態の収拾は着きそうですね。相澤先生を獲ったあの脳ミソマッチョの詳細はわからないけど、少なくともオールマイトが瞬殺される事はないはず。いや、瞬殺でなくとも負けちゃったら困るんだけども。そんなこと起きたらわたしたちの身の安全どころの騒ぎじゃない。下手したら世界が滅んで混沌に堕ちる。モストバッドエンドとか笑えねぇでさぁ……。

 

 ま、まあ、そんなこと無いでしょ。少なくともこんな所で原作が終わるわけないし……ね、ねぇ? そうだよね? 終わったりしないよね? う、打ち切りは悪い文明だよ? 絶対完結させよう!? ねぇっ!?

 

 

 

 

 

 

...少女逃避中

 

 

 

 

 

 

 ふぅ。落ち着いたぜ。やっぱり気を静めるには甘いものだねぇ。スーパーで売ってるひとくちチョコだったがけどこれはこれで美味。むしろ日常を思い出させてくれる質素さがベネ。かと言って、何個も食べたくはならない甘ったるさが鼻腔を突き抜ける。だが、それすらも懐かしい。うむ、実に食べ堪えがある一品だった……。

 

 あ、待たせたな皆の衆。糖分摂取で冷静沈着と化した奏さんだ。え? チョコの出所? 砂糖少年からぶんどり申しただけですが何か? はい、冗談です。ホントは先のおこタイムの時に落ち着けと言わんばかりに渡されたモノです。イラついた時は糖分とれば良いってどっかの天パ侍も言ってた。古事記にもそう書いてある。多分。

 

 

 

 よし、せっかく落ち着いたんだ。少し状況を見てみよう。

 

 遠目から確認できる限り、1-A屈指の戦闘向き個性持ちが集結したようですね。唸るような爆音と地面の所々に這う氷が目立つ。言わずもがなあのふたりでしょ。後はよく見えないな……障子少年、他にも誰か見える? ほうほう、緑山少年と切島少年もいると。オールマイトに加勢しよう意気込んでる、ねぇ……止めといた方がいいんじゃないかな。邪魔になるだけだと思うし。プロの仕事に青二才が首ツッコむと、大抵足引っ張るのが目に見えてるんだから。

 

  ん? 唐突に土煙があがったんですけど、戦闘再開したのかな……え? オールマイトが吹き飛ばされたの? それは個性で? は? 普通に殴られて? 何その化け物。相澤先生をボコボコにした奴がそうしたんだろうけど、クロギリさんが言ってたオールマイトに息絶えてもらうってのはマジだったのか。

 

 

「おーい!」

 

 

 あ、ブドウ頭が帰って来た。名前は……たしか峰田だっけ。え、少年をつけない理由? うーむ、なんていうか峰田は峰田なんだよね。それ以外にしっくりくる呼び方が無さそうっていうか。

 

 それで? 梅雨ちゃんと一緒に誰かを担いで……あぁ、なるほど……そっかぁ。ボロ雑巾みたいになって、微塵も動かないけど、生きてるんだよね。ならいいよ、さっさと手伝いに行こう。

 

 

「ケロッ、奏ちゃん?」

 

「手伝うよ。個性使うから一気に階段上まで連れてっちゃって」

 

「わかったわ」

 

 

 全体強化を峰田と梅雨ちゃんにかけて……よし、これで蛙としての行動を全て向上したから、舌で持ち上げる力も上がったはず。梅雨ちゃんには腹周りから膝上まで舌で巻いてもらって……わたしが梅雨ちゃんに代わって肩から上を支えよう。よっこいせ……って軽い? あ、まさかこの人……。

 

 

「力抜いてください。体に障ります」

 

 

 怪我人の癖に負担をかけないための体重の掛け方とか実践しやがってますよ。何考えてんだホント。この期に及んで無茶を重ねるとか。

 

 

 

 

 

「……合理的手段を取っているだけだ」

 

 

 

 

 

 

 ……あぁ、そうですか。そういうこと言っちゃいますか。ふーん、なるほどねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いい加減にしろよオルァァン!?

 

 

 

 

 

 

「『合理性の中に自分が入っていなければ』の話ですよね、それ。今すぐ止めてください」

 

 

 

 

 

 

 もう知らん。これだから、ヒーローって人種は嫌なんですよ。余計なお節介が仕事なのは分かる。自己犠牲の精神を持たなければならないのも理解はできる。それが空想上の創作で、リアルじゃないならそういうもんだって割り切れた。

 

 だけどね、この世界で約15年間生きてて常々思ったよ。原理主義を忌避する癖に、個々人の強者(ヒーロー)に庇護を求める国民性。「個性」の存在に振り回されて、自分たちの在り方を歪めてる。原因こそ違えど格差社会への回帰に変わりはない。「個性格差」についての社会学的研究に関する論文はいくつも出ているのがその証拠だよ。夢見る少年少女には無縁のモノだろうけどね。だって、必要ないんだもの。

 

 

 

 結局のところ何が言いたいのかっていうと、この世界の人たちの倫理観は致命的にズレてるってことだ。

 

 

 

 別に結果的な自己犠牲を称える事を総じて悪と糾弾したいわけじゃない。この世界でのヒーローに対する認識が間違っているなんて反論する気もない。個性なんてものが発現しなければ、人は今頃別の惑星に移住していたなんて声も上がるけど、空想ではなく現実に目を向けなくてはいけない。

 

 

 「超常」は「日常」に、「架空(ゆめ)」は「現実」に――。

 

 

 そんな風に銘打つことで、人々は個性を受け入れた。一種の子帰りとも言うべきかな。それで、ぽっと出の超常を形だけは日常として体を成せたのだから、大したものだよ。黎明期こそ犯罪の横行は止まらなかったらしいけど、今では管理体制も発足されて国による管理運営が行き届いている。ヒーローなんて職業まで容認して、国民の思想を強制しないのは、それが都合がいいから。この社会が成り立つのであれば、それに越したことはないんだろう。ヒーローに夢を見れる時代なんて、聞こえだけは良いのだから。

 

 

 

 

 

 

 ――けどね、そんなもんでこの「現状」を納得出来る訳ないでしょうが。

 

 

 

 

 

 

「わたしが助けたいのは国でも民衆でもない。手の届くたった一握りの知人です。それらを守るためならどんな手段だって用います。必要なら何か(・ ・)を犠牲にしてでも助けます。ですから、選んでください」

 

「……何をだ」

 

「今すぐ力を抜いて自身の療養を優先するか、それとも無理を続行してわたしに意識を刈り取られるかのどっちかです」

 

「お、おい萬實黎、何言ってんだよぅ!?」

 

 

 お黙りブドウ頭。わたしは今このアホ教師にキレてんの。この分からずやは合理性とか(のたま)いながら、自分の事を勘定にいれない大馬鹿なんだよ。世の中のヒーロー全般に言えることだけど、綺麗事吐くだけ吐いて勝手に死なれるのはただの迷惑だから。お前ら残された側の気持ち考えたことあんの? ないとは言わせないからな。ヒーローっていうブランドに隠れてるけど同業者で殉職した人とか居ない訳ないもんな? 分かっててなお、自分もそうするとかマジでふざけんな。

 

 

「例外はありません。さっさと選んでください。さもなければ締め落とします」

 

「奏ちゃん、目が本気(マジ)よ。怖い」

 

 

 だってマジだもん。

 

 安心して梅雨ちゃん。わたしはやると言ったらやる女だから。有言実行は大人の常識だから。さて、無言貫いてるけど、だんまりは肯定と受け取る。つまり、わたしの締め技を喰らう覚悟ができたって事だな。よし、待ってろ今おろしてチョークスリーパー奏ちゃんスペシャルをかけてやろう。一瞬で落としてやるから安心して身を委ね――。

 

 

 

 

 

「……はぁ、分かった。後はお前に任せる」

 

 

 

 

 

 

 はぁ…………まったくしょうがないですね。わたしは寛大ですし? 許してやろうじゃないか。勝手にひとりで飛び出して言った挙句にボコボコにされて、散々心配かけたことぐらい水に流してやりますよ。まあ、プロヒーローかつ担任の責務もあったことでしょうし? その辺も考えれば当然の対応だったと割り切ってあげますか! あらあらあら、わたしってばなんて優しい~!

 

 

 

 

 

「心配、かけたな……すまなかった」

 

 

 

 

 

 

 …………分かればいいんですよ、分かれば。

 

 

 

 

 

 

「わたしに『無理するな』と言ったのは貴方です。自分にできないことを他人に押し付けないでください……迷惑ですから」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

 

 

 

 だらんとした腕から力が抜けて、わたしの肩に重みがかかる。先程よりも呼吸が穏やかになった気もする。どうやら本当に無理をやめたようだ。短い嘆息の後に、階段を上るべく一層足腰に力を入れた。その後すぐに、お茶子ちゃんが駆けつけてくれて彼を無重力にしてくれたことで、何の苦労もなく運ぶことができて、勝手に徒労したのかと少し意気消沈したけど、楽ができたと思えばすぐに立ち直れた。

 

 そして、ふと最初から言おうと思っていた事を言っていないことに気が付き、横になっている彼の方へと向き直った。色々言いたいことはあったけど、それだけは伝えなきゃいけないと思った。振り返った時には既に、気を失っていたから伝わってないのだけど……それでも、言わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

「――わたしたちを守ってくれたこと、感謝します」

 

 

 

 

 

 口早にそう紡ぎ、彼の腕の治療に専念することにした。ジャージを脱いで個性を起動する。今度は予め女子たちの鉄壁のガードが展開されたようだ。ブドウ頭が血涙流して悔しがっていたけど、治療に集中していたから気にも留めなかった。

 

 

 

 そして、治療中に自分の口元が弧を描いていたのも気のせいだ。どうせ、イメージと現実のギャップがちょっと表情に出ただけなのだろう。うん、きっとそれだけの事。

 

 

 

 

 

「……ありがとう、相澤先生」

 

 

 

 

 

 自分の声が、そんな言葉を紡いだのも――

 

 

 

 

 

 

 多分、気のせいだから。

 

 

 

 

 

 




 主人公の会話で「」なっているのはつっけんどん口調のフィルターがかかった喋り方。なので「」に無い会話が地の文で展開されたときは「あ、また勘違いされる喋り方でそんな風に伝えたんだろうな」と思っていただきたい。

 そして、ここに来て主人公に新要素追加。もとい、作者が勝手に脳内補完で書いてなかったことを執筆。



・主人公は表情筋が死んでいて基本無表情



 同じ属性? 轟焦斗? 主人公は内心ハジケリストなので、住み分けできてるから……(震え声

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