ガンドォ! 作:brain8bit
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なんか変な夢見た気がする(寝ぼけ眼)
なんだったんだ今のは……クラスのみんなが戦ってた気がするし、声も何か無線チックなフィルターが掛かってて、何故か言語設定が英語でスタイリッシュな日本語字幕が流れてた気がする。一体何コンバットのプロローグなんだ……。
あ、おはようございます。
今日もいい天気になりそうですね。窓から流れてくる空気が美味しくて涙が出そう。こんな日はピクニックにでも行きたくなりますね。ええ、めちゃくちゃ行きたいですとも。それはもう学校をサボってもいいと思えるぐらいに。うん、そうしよっか。だってこんな日なんですもの。うんうん、今日ぐらいは休んでもいい――
バタンッ!
ふぁッ!? お、お母様!? どうしたんですかそんな鬼の様な形相で、ってあぁッ!? やめてぇ! 布団を剥がさないでくださいましぃ!! さっさと学校行けって……そんな!? 今日学校行ったら例のアレに参加しなくちゃならな、ひぇっ!? わ、分かりましたぁ行きますよぉ!! 行きますから指を鳴らしながらこちらに詰め寄ってこないでくださいぃ!!
...少女準備中...
朝から酷い目に合ったぜ……はぁ。お察しかも知れんですが、今日は待ちに待った体育祭の日。そして、最も通り過ぎてほしい一日のひとつでございます。
マジかー。ついに来ちゃったよ。オリンピックとほぼ同義のお祭りとか絶対注目の的じゃないですかヤダー。まあ、でも1年生全員でやる地下闘技場トーナメントみたいなもんでしょ? 死なない程度に頑張れば某不良少年も満足してくれる見たいですし、そんなに肩肘張って身構える必要もありませんかね。本当に地下闘技場だったらわたし生きて帰れないけど。
「奏ちゃん落ち着いてるね。私はドキドキが止まんないよ~」
うんうんそっか。わたしも絶賛ドキがムネムネしてますよお茶子ちゃん。このまま心不全で亡くなるんじゃないかな(白目)。
説明するまでもないかもですが、わたしたちは控室で屯ってます。みんないい表情してますね。適度に緊張してるけど尻ごみはしてないっていうか。度胸の塊かよ。いや、自信家が多いだけかな? これは折られた時が大変そうですわぁ。
「……いや、選手宣誓で何言おうかなと思って」
「あ、新入生代表だもんね! 気合入るやつ期待してるから!」
あう。ガチで慕ってくれる子の羨望がツライ。直前まで何も考えてない時点でわたしに非があるのは明確なんですけど、こーゆーコミックな雰囲気の場所でウケる語彙力なんて持ち合わせてないんでどうにもならなかったんですよ。気の利いたことも言える自信ないので普通に終わらせることになりそうですがね。それはそれで目立つ? じゃあ、どうしろと(血涙)。みんな頑張ろうとか言えるキャラじゃないですし……ぐぬぬ、マジでどうすれば――。
「あんまり気負わなくてもいいんじゃなーい? ただの選手宣誓だよー?」
三奈ちゃん、普通の選手宣誓は全国のお茶の間に流れたりしないと思うの(白目)。ええ、ご家庭の細やかな鑑賞会に一瞬映るとかだったらわたしも許容しましたとも。下手なこともつまらんことも言えないって難易度インポッシブル過ぎない? トム・クルーズ呼んできてどうぞ。私には無理です。
「おい、緑谷……それに萬實黎」
むむ、男子の声。基本低いけど高音出せそうな雰囲気のこれは轟少年だな。どうしたよ、わたしと緑山少年のセットって。主人公と並び立たせる理由なんて皆目見当もつかないんですが。
「客観的に見ても、純粋な戦闘能力だけだったら俺の方が上だと思う」
おっそうだな。当たり前田のクラッカーってヤツですね。そんな自己顕示欲の塊みたいなこと言うキャラだったん……いや、これ多分ただの天然ですね。しかも、イケメンだから許される的な。どれだけ内面が醜悪だって外見によってはカリスマと捉えられるんだから捻た世の中ですよ。
おっと、話が逸れました。で、その実力差が明確な相手に何の用でしょうか。
「お前らオールマイトに目ぇ掛けられてるよな。そこ詮索するつもりはねぇが……お前らには勝つぞ」
宣戦布告かーい。てか、ちょっと待て。わたしそんなにオールマイトに注目されてたことあった? ただの一般通過女子高生なんですけど。確かに棚ぼたで入試1位もぎ取ったり、クジ運でオールマイトと組んだり……あれ? 結構絡んでるのでは??
いやいやいや! 全部偶然ですから!! 勝手にそうなっちゃっただけで実力も見合って無いし、なんなら個性だってサポート向きですよ? そもそも、なんで注目されるような事をわざわざこの場で言うんですかぁ! ハッ!! もしやあれか、戦闘訓練の時の事まだ根に持ってんのか!? だとすれば、あれはオールマイトがいたから勝てただけで――。
「――僕も、本気で獲りに行く!」
緑谷少年んんんんゥゥ!? 何勝手に覚悟完了しちゃってる顔で啖呵切ってるんですかぁ!!? そんなこと言ったら確実に……ほらぁ! みんなの視線がこっちに向いちゃったよぉ!! 絶対わたしも何か返さないと収まらない雰囲気でしょこれ!! 知らんぞ!? わたしにカッコイイ台詞求めても無理だからな!? 大したことは言えないからな!? 普通の言葉返すからなぁ!!?
「……わたしなんかより他の皆の方が強いよ。もうちょっと視野広げたら?」
「は? どういう意味だ」
そのまんまの意味なんですが(困惑)。どう考えてもそこの爆豪少年とか切島少年とかの方が強いじゃん。タイマン張ったら私の勝ち目が薄いことぐらい理解できてるでしょうに。そして、ちょっとなんでキレ気味なの? リアルにハイライトない目とか怖いんですけど。カルシウム足りてる? 足りてるなその高身長は。くっそ、わたしなんて158しかないのに。いや、そうじゃない。そもそもなんで怒ってんのこのウルトラマンヘアスタイルは?
「宣戦布告するのは構わない。逐一他人の行動に文句言う趣味なんてないし、何なら興味なんてないから」
「……俺なんて眼中に無いってか」
違ぇわ!! いつわたしが一個人に対して興味がないって言ったよ!? なんでそうナチュラルに喧嘩腰で捉えるかなこの子!!? つか、そもそも最初に喧嘩売ってきたのアンタでしょうが!! 相手にされないからキレるって自己中過ぎんだろ!! なんで、何、あぁもう……!!
「わたしなんかに構うぐらいならもっと優秀な人がいるでしょって話。何に拘ってわたしと緑谷君に目を付けたのか知らないけど、他の人なんて眼中にないのはどっちなんだろうね?」
「ば、萬實黎君っ!? それは言い過ぎだろう!? 轟君もやめたまえ!!」
……あ、飯田少年。ん? あれ、わたし今なんて言った? 変な事口走った気がする。普段なら適当にあしらっていたはずなんだけどな。もしかして選手宣誓とか真面目にやらなくちゃいけないその他諸々に対するストレスでやらかしました? うわー……ここ数年、自分の感情コントロールしきれてない気がする。特に中学2年の半ばからそうだった気が……どこぞのAUOも言ってたけど肉体に精神が引っ張られるってマジなのかな?
「……そうかも。悪かったね、変なこと言って」
「あぁ」
うん、一時撤退しよう。思考の仕切り直しってやつだ。場の空気を冷やしたまま黙るのもどうかなと思うけど、正直時間がないんだよね。え、何の時間って?
選手宣誓を考える時間に決まってるじゃないですか。
もちろんマズいとは思ってますよ! でも、日本国の皆様の前で大恥かく方がもっとマズいでしょ! 毎回思うけど何かしらに迫られてるよねわたし。時間とかヴィランとか課題とか……やはりヒーローになれば安定とか安直過ぎましたかねぇ。まあ、今更後悔したところで体育祭は待ってくれないんですけど(絶望)。
ん、どうした飯田少年? え? もう入場だから控室から出よう? 嘘やん……いや、マジで普通の事言おうそうしよう。無難に注目も引くことなく終わらせるのが最善手のはず。て、体裁さえ保ててしまえば何も問題ないきっと。
『――今年もお前らの大好きな青春暴れ馬ァ! 雄英体育祭が始まり! Everybody! Are you ready!?』
あ、マイク先生の実況が始まったってことは……うおお時間がないっつーかマジで我即入じゃねーか!! くっそ行くぞお前らぁ! もうどうにでもなーれ!
◇ ◇ ◇
茹だる様な熱気とはまさにこの事だった。周囲360度見回しても人、人、人……。日輪に照らされたドームはまるで人間が壁となったサウナの様だ。そんな中、俺たち普通科は一際冷めていたと言ってもいい。当然だ。俺たちみたいな3軍生徒は最初から期待などされていないのだから。
「あーあ、どうせ俺たちは引き立て役だろうよ。心操もそう思うだろ?」
後ろからそう声を掛けられた。勿論、その意見には合意する。客観的に見た事実であることに違いは無いのだから。けれど、その問答は俺にとっては倒錯的なモノとなる。何故ならこの大舞台で何もしないという選択肢はなかったからだ。俺以外の奴もそうなのだろう。口上では不平を吐きながらも、その眼には隠し切れない闘志が宿っていた。本当に、その気持ちは痛いほどわかる。分かる故に――。
「選手宣誓だってよ。代表は1-Aの……萬實黎? 確かA組以外の奴でアイツの個性は誰も知らないんだっけ?」
「あ、でもあたし見たことあるよあの子。ヒーロー科の実技試験のとき一緒だった」
「マジ? てかヒーロー科の入試受けてたのかよ。何してたかわかんねぇ?」
「うーん、正直あたしも試験で必死だったからねぇ。でも、あの広い会場の中で割と何度も見かけたのは覚えてるよ」
使えそうな情報が聞けるかと思い耳を澄ませたが、当てが外れたようだ。だが、ヒーロー科に合格できたというのなら相当戦闘に向いた個性を持っていたんだろう。ヒーロー科の入試はロボを倒すといった内容。何かしらダメージを与える個性でなくては厳しい。ましてや、代表になるくらいだからな。
「……羨ましい限りだよ」
それは本心だった。人は生まれながらに平等じゃない。それは個性がこの世界に生まれる以前からも存在していた真理だ。一個人がどうこう出来る様なことじゃない。諦観を背負って生きなきゃいけないのは理解できた。
だが、それでも人は羨望を抱くものだ。それは憧れに繋がり、行動に現れる。ましてや、今は夢が現実になる時代。それなら自分だって、と思えてしまうのは仕方のない事だと思った。現に、俺はこの雄英体育祭に出場しているのだから。
「宣誓。我々、国立雄英高等学校の生徒は――」
まあ、せいぜいA組やB組連中には驕っていてもらおう。俺たちなんて眼中にない方が都合がいい。それが明確な隙を作ることになるのだから。
「――
「……なんだそりゃ」
思わず口に出た。いや、言っていることは至極まともだった。ヒーローを目指す生徒としては正しい事を宣誓したのだろう。けれど、前半部分……そこに妙な違和感を感じた。如何なる手段? 普通に日頃の努力を最大限引き出しとかで良かっただろう。何故、そんな言い回しをしたのか無性に気になった。
「それじゃさっそく、第一種目の発表と行きましょうか! 今年の第一種目は……これよ!!」
主審を務めるミッドナイト先生が声を上げる。意識は未だに引っかかったままだが、説明を聞き逃す訳にもいかない。そちらの方へと耳を傾けることにする。どうやら、今回は競技場外周を一周する障害物競走の様だが――。
「雄英の用意する障害物って……うわ、想像するだけで嫌気がさしてきた」
「言うなよ……俺らはトップの奴らが退けた障害にありつければなんとなるだろ」
それは正しい判断だろう。最初から全力を出す必要はない。恐らく俺らみたいな普通科連中やB組の賢い奴らは徒党を組んで障害を乗り越えようとするだろう。無論、俺もそうするつもりだ。まあ、
「さぁさぁ! 位置に付きまくりなさい! とっとと始めるとしましょう!!」
さて、あらかじめ有用そうな奴に目をかけておくか。A・B組連中は無しだ。アイツらの『個性』を使えれば有利に進められるかもしれないが、終わった後に十中八九自分の『個性』が他の連中にバレる。なら、隣のD組かサポート科を狙うのが定石だ。死人に口無し。落ちた奴は喋らないだろうからな。
「スタート!」
よし、じゃあ後ろに下がるとするか。どの道、入り口付近は渋滞するだろう。最初からトップに追いつけるわけがないのだから、何人か使えるように取り入ろう。
「なあ」
「あぁ!? なんだお、まえ……」
……よし、何人か確保できたか。そうだな、なるべく今は体力を使いたくない。とりあえずコイツらには担いでもらうか。よっこいせ……ん?
「おい、お前らなるべく高くジャンプしろ」
やはり、後ろから見ていて正解だった。あの個性は……エンデヴァーの息子か。冷気関連の個性とは聞いていたが、さっそく使ってきたな。地面に霜が下ろされたタイミングが見えて助かった。まあ、分からなくても問題は無かったんだが、体力温存が継続できると考えれれば得だろう。
「……第1エリアが見えてきた。アレは……見たことあるやつだな」
『さぁ! いきなり障害物だァ!! まずは手始め……第一関門"ロボ・インフェルノ"ォ!!!』
あれか。まあ、面倒なもんだが、そこまで大したことはないか。周りがある程度倒してくれるだろうし……ほら、またデカい冷気が起きた。A組やB組連中で機動力のあるやつは避けていくだろうが、大半は撃墜してくれるはずだ。変わらずこのまま傍観させてもらおうか。
分かっていたことだが……実用性がありつつも、華のある個性ばかりだな。間違いなくあーゆー奴らがヒーローに向いてるんだろう。見栄えも気にしなきゃいけない客商売だから仕方のない事なのは理解してる。不公平な世の中だよ全く。
『オイオイオーイィ!! 第一関門は全員余裕かよォ!? なら、第二関門はどうだぁ……?』
どうやら大半が抜けてきたらしい。斯く言う俺も、既に第二関門へと向かっている。ここまでは順調だが、それも第二関門次第ではあることは否めない。
『落ちればアウトォ!! それが嫌なら這いずりなァ!! "ザ・フォール"!!!』
これはまた……個性次第というかなんというか。何人か飛行能力のある異形系は確認したし、そっちの方で残ってる奴に声かけるか。
『先頭は難なく一抜けして……ってちょっと待てェ!!? これはどんなイリュージョンだァ!!?』
先頭でアクシデントか? なら都合がいい。そろそろコースも終盤に差し掛かる。第3関門がなんであれ俺も予選落ちしないよう動く時間だ。申し訳ないが、少し人使いが荒くさせてもら――。
『先頭を走り続けていたはずの轟の目の前に、人影が立ちはだかったァ!! 今の今まで姿かたちすら見せなかったソイツの正体は――』
『1年A組、萬實黎奏ェェーーーーーッッ!!!』
◇ ◇ ◇
「さっきぶりだね。どう? ちゃんと周り見えてる?」
普通科の少年が虎視眈々と勝ちを狙う最中、とある少女も意外とやる気だったりする。ただ、それだけの話。