ガンドォ!   作:brain8bit

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 半年ROMり掛けた……詳細はあとがきにて。




第23話「一難去ってまた一難はシングルタスクに優しい」

 夢に、浮かんでいる。

 

 

 

 泡沫の宵に垣間見る夢。

 

 

 

 宙ぶらりんな脱力感。

 

 

 

 確かな感触に、意識が沈む。

 

 

 

 

 ――――。

 

 

 

 

 何だろう。

 

 

 

 とても、冷たい。

 

 

 

 凍えてしまいそう。

 

 

 

 でも、どうして――。

 

 

 

 

 

 

 

 全然、動けない。

 

 

 

 

 

 

 あぁ、眠いのかな。

 

 

 

 ちょっと、可笑しい。

 

 

 

 夢の中で、眠いなんて。

 

 

 

 

 

 

 何時になれば、覚めるんだろう。

 

 

 

 早く、起きたいな。

 

 

 

 お願い、誰か――。

 

 

 

 誰か、私を――――。

 

 

 

 

 

 

 

「――自分で起きなさい。それが出来なければ『捨てられる』だけよ、貴女は」

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 体育祭は、終わりを迎えた。

 

 

 無事に、とは口が裂けても表現はできないだろう。前代未聞ではないにしろ、大きな事故が確かに起こったのだから。

 

 事態の収拾は、学校全体の教師陣の謝罪会見という形で成された。そこに意味があったかは、個々人の主観に大きく左右されるだろう。だが、少なくとも反響は大きかったと言える。

 

 メディアは連日その『事故』について取り上げていた。一番の盛り上がりを見せたのは言わずもがな「誰に責任があるのか」だ。引き起こした張本人、防げなかった雄英、USJに襲撃してきたヴィラン、個性社会そのもの、etc……。あちこちに飛び交う火の粉のように議論は白熱していった。

 

 

 

 そして、1週間もすれば熱が覚めた。

 

 

 そんな世の中(・ ・ ・ ・ ・ ・)なのだ。個性の事故なんて、物珍しくもない。あれは、一世一代の大舞台であったから取り上げられた。過去に遡れば、雄英体育祭で怪我人……いや、重危篤者が出ることは1度や2度ではないのだという。ただ「ヒーロー界隈のトップカーストがやらかした」という事実が、社会をざわつかせた。

 

 

 

 ――たったそれだけの『どうでもいい事』が世間にとっての火種だったのだ。

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 

 ため息だって、つきたくもなる。世間は鎮火の一途を辿っているが、僕らにとっては未だに解決していない問題なのだから。

 

 

「オイオイ緑谷よぉ……気持ちは分かるが流石に露骨だぜぇ?」

 

「……うん。ごめん、峰田君」

 

 

 2つ前にある空席から、目を離した。後ろを振り向けばそこには特徴的な髪型が映る。その持ち主に対して、僕は曖昧な表情を浮かべることしかできなかった。それは整理がついていない証拠。そもそも、僕たちはその事に対して一切の情報が開示されていなかった。

 

 

「でも、雄英ってスゲーよ。あんなこと(・ ・ ・ ・ ・)があった後でも、普通に最後まで体育祭やるんだもんな」

 

 

 ――そう。 それは本当の事だ。

 

 不足の事態だったはずなんだ。あんなことが、起こってしまうなんて。それでも、体育祭は予定通りに進んだのだ。強いて言えば、実況解説の席から相澤先生が降りた事ぐらいだろう。鬼気迫る表情とはまさにあの顔のことだった。

 

 

 ……何度も甦るあの光景。

 

 

 ヴィランが襲撃してきた時以上の焦燥。

 

 できる事がないと理解したときのやるせなさ。

 

 ただ、見ているだけの絶望。

 

 

 ある日のオールマイトの言葉が過った。

 

 

 

 

 

『当然、いるんだよ。助けられない人たちが沢山……ね。手の届かない者は、今この瞬間にも世界のどこかにいる。……ははは、そうだね。全ての人を救うなんて事は絶対にできないんだ。だからこそ、私は平和の象徴止まり(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)なのさ』

 

 

 

『だけどね、緑谷少年。それでも、私はヒーローを続けるんだ。何故だか分かるかい? そう、私が助けたいからさ! 無論、エゴだと分かっているとも! 余計なお節介とも言う人も当然いる!』

 

 

 

『だとしてもだ! 私の手が届くのであれば、笑って言い続けよう! "私が来た"とね!! 例えそれが自己満足でも! 偽善に近しいものだとしても――!』

 

 

 

『私は、"平和の象徴"であり続けるのさ!!』

 

 

 

『……緑谷少年。時には壁にぶつかる事もあるだろう。己の無力さを呪う日も来るかもしれない。大いに苦悩し、大いに嘆くはずさ。それでも、忘れないで欲しいんだ。君は確かに、ヒーローとして前に進めている事を。決して道を踏み外していないという事を……ね。なぜなら――』

 

 

 

 

『――君が抱くその想い……誰かを助けたいというその心は、決して間違いなんかじゃないんだから』

 

 

 

 

 

 ……それでもまだ、迷っている。

 

 オールマイトは後継の証として、僕にこの力を渡してくれた。無個性でありながらも、その尊い心を持っているからこそ惹かれたのだと。そのこと事態は非常に嬉しいし、感謝もしている。おかげで、僕はこの場所でヒーローを目指すことができている。

 

 

 

 だからこそ、思ってしまう。この力を、もっと才能のある人に渡していれば、と。

 

 かっちゃんの様な一瞬で物事をものにする才能のある人、轟君の様な凄まじい個性を持っている人、八百万さんの様にずば抜けた頭脳を持っている人……探せば、もっといるはずなんだ。

 

 彼らがもしこの力を扱えたのなら、救えた命があったのかもしれない。体育祭でのあの事件だって、未然に――。

 

 

「えっと……デク君? 大丈夫?」

 

 

 気が付けば、隣に麗日さんがいた。後ろに蛙吹さんと耳郎さんも立っている。3人とも若干、表情が険しい。一体どうしたんだろう?

 

 

「ここ数日は仕方ないと思ってたけど、流石に引き摺りすぎ。自分の顔、鏡で見てみなって」

 

「本当……辛そうな顔してるわ。私たちと違って、あのとき緑谷ちゃんは一番近くにいたのよね。手が届いたかもしれないって、そう思っているんでしょう?」

 

 

 ふと、彼女たちの後ろの窓が視界に入る。授業も終わり放課後となった今、外は薄暗くなっていた。室内灯が窓ガラスに反射して、教室の在り様をそのまま映し出す。皆が一様に不安げな表情を浮かべる最中、その人物だけが酷く目立っていた。それが自分の姿であると認識できたのは、自分と同じ様に眉をひそめたのが窓の中にいる自分自身(マリオネット)だったから。

 

 

「……はは、確かにこれは酷いや」

 

 

 目の下には薄っすらと隈が浮かび、瞳には生気が宿っていない。これで正常と判断するほうがおかしい。ヒーローの卵は疎か、一般人でも気付けるような顔色の険しさ。助けを求める誰かを安心させるために、常に笑顔を絶やさない最高の師。その姿とは対極に位置したような表情がそこにはあった。

 

 

「試合の形式上でも、僕が守らなくちゃいけなかった。でも、助けられてばかりで……ホント、考えれば考えるほど後悔が湧き上がってくる」

 

 

 

 ――君に、付き合ってあげる。

 

 

 そう話す彼女の目は、力強く輝いていた。気が向いたら、僕の練習に付き合ってくれる。その話に嘘偽りはなかった。いきなりのことで困惑はあったけど、正直嬉しくもあった。

 

 でも、最初は個性を使ってくれなかった。ただ、首を傾げたり、頷いたりするだけ。何かに対して疑問を抱いていたのか時折、目を細めたりもしていた。

 

 僕にその真意を測ることはできない。けれど、何となく使ってくれなかった理由も、今なら理解できる気がする。思えば、最初から覚悟があってのことだったのかもしれない。僕がそうであるように、彼女もまた同じだった。個性の反動という枷。使うことすらままならない、超人的な力。彼女の個性もそうだったんだ。

 

 

「『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』……そういう意味も込めて名付けられた個性なのかな」

 

 

 自分を犠牲にしてでも、他者のために振るう個性。普通なら使うことすら躊躇うはず。いや、実際は本当に躊躇っていたんだ。でなければ、僕にすぐ個性を使わなかった事に説明がつかない。僕も使えば無傷では済まないから、それとなく気持ちは理解できる。僕らには個性を使う前に今一度の覚悟が問われるんだ。

 

 

「……先、帰るね。心配してくれてありがとう。気持ちを切り替えてみるよ」

 

「あっ」

 

 

 違う……何してんだよ。彼女たちは本当に心配なだけなんだ。感謝すべきところで、こんな態度取るなんて。なんで止まらないんだ? 足を止めて、振り向いて、笑って言うだけじゃないか。どうしてこんなにも重いのだろう? こんなんじゃ誰かを助けるヒーローには――。

 

 

ドンッ

 

 

「……ッ」

 

 

 開いていたはずのドア。ぶつかるものなんて無かった。そう思っていたのに、僕の前に壁が現れていた。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 沈黙。お互いがお互いを認識している。そんな確認なんて必要のないほどに、誰よりも理解できている同士のはずなのに。その沈黙こそが答えだった。どうして今そこにいるのか。そう思うほどに君の姿が僕の瞳の中で揺れた。

 

 

「……情けねぇ面でこっち見んなクソナードが」

 

 

 懐かしい、と思ってしまったのは慣れてしまったからか。あの日以来呼ばれていなかったその蔑称は、不思議なほどすんなりと僕の心に染み入った。嬉しさすらあるのは、どういう風の吹き回しだろう。まるで、その言葉を待ち望んでいたみたいじゃないか。

 

 

「……チッ、さっさと行くぞ」

 

「え……」

 

 

 何処へ。と、声をかける前に壮絶なヴィラン顔で掌を爆破させる彼を見て高速でうなずく。呼び方といい、仕草といい、本当に少し前に戻ったみたいだ。そのまま校舎を抜ける。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 やはり無言だった。

 

 僕としては徐々に早まっていく足が気になるけど、黙って横に着くよう足を早める。

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

 お互い、長い付き合いだ。半生以上を共にしてきた。家族の次に分かっている。まあ、僕の場合は越えようと一方的に研究してたからだけど。それでも、彼は僕の癖なんて1回見ただけでも見抜けるはずだ。やっぱり天才だよ。彼のほうがよっぽど僕なんかより大成するだろうな。

 

 そんな事を思っていると、早足だった速度が競歩並みに早まった。心なしかもう走っているような……。

 

 

「………………ッ」

 

「………………ッ!?」

 

 

 体育祭の最後も、轟君と凄まじいバトルを繰り広げていた。吹っ切れた様な表情の轟君は、普段なら絶対に使う事のない左の個性も交えて、猛攻を仕掛けていった。途中、傷を負いすぎた彼を見て、竦んだ様に攻撃ができなくなったりしたけど、がむしゃらに放った僕の発破が届いたみたいで、何とか最後まで戦い通せていた。まあ、最後の最後で使えなくなっちゃったみたいなんだけど……。

 

 後、どうしてかな。周りの景色が一瞬で流れるんだけど。んんん? これってもしかしなくても、アレだよね??

 

 

「……ッ……ッア!!」

 

「…………くッ……!」

 

 

 結局、体育祭は彼の1位で終わった。僕は、ハーフカウルも指を使ったスマッシュも出し切ったけれど、勝つことは叶わなかった。本当に凄い個性だし、それを如何なく使いこなせる本人も凄いと思うよ。最後に放った全力の一撃の後に「全力で戦ったのは、お前が初めてだ」っていうのもズルい。きっと、天然なところもあるから建前とかじゃないんだろうな。まあ、それはそうとさ。そろそろキツ――。

 

 

 

「何で走るのかっty「俺の横に並ぶんじゃねェエエエェェエ!!!」えええぇえええぇぇぇぇ!!!??」

 

 

 

 何言ってんのこの人!!?

 

 

 嘘でしょまさかそんな理由でぇ!? 思ってた以上にしょーもないな!? 僕に並ばれるのが嫌だから走るってそんな小学生みたいな理由で……かっちゃんだったらやるか! ごめん僕が間違ってたよ!!(ヤケクソ)

 

 

「き、君が付いてこいって言ったんじゃないか!? そもそも何処に行くすら聞いてないしっ……一緒に行かなきゃ分かんないでしょ!?」

 

「るせぇ!! テメェの価値観で勝手な自己嫌悪に陥るようなメンタルクソ雑魚が近寄んな虫唾が走るわ!!」

 

「ひっどォ!!?」

 

 

 的確すぎるのが尚の事質が悪い……! 後、そう言いながら加速するのやめて貰えるかなぁ!? 駆け引きゼロの持久走じゃどう頑張っても限界がすぐに来る……ってうわッ!?

 

 

「へぶッ」

 

 

 痛ったた……お手本のように顔面からすっこけた……。勢いは抑えたから問題ないけど、痛いものは痛いんだ……っていうか、なんでまた急に止まったんだろう? 雄英の敷地内を全力疾走してきたけど、そもそも何処を目指して走っていたんだ――。

 

 

「オイ、いつまで地面にへばりついてやがる。さっさと入らねぇと背中から爆殺すんぞコラ」

 

「え……ここって――」

 

 

 グラウンドβ……だよね。最初の戦闘訓練以来、何回か来たことあったけど……けど、今は何のために? いやうん、後方から微小な爆発音が徐々にボリュームアップしてるから入らざるを得ないんだけどさ。御託なんぞ知らんの一点張りだろうし、とりあえず今は従う……っていうか待てよ。たしかグラウンドとかの特定施設の個人使用って許可が必要じゃなかった?

 

 …………と、思って振り向いたら右上が炭化している許可証を顔面に押し付けられました。もちろん、張り手で。イタイ。

 

 

 

 結局、レンタル式(無料)のジャージを借りて競技場の大体中心部まで来た。今では特に建物に大きな外傷等は見られない。というか、本当にどうしたんだろう。かっちゃんから僕に用事なんて……。

 

 

「テメェは弱い」

 

 

 ……うん、知ってるよ。いつも、不甲斐ないばかりだ。指摘されるのは当然かもしれない。体育祭だって、本選で1勝はできたけれど、その後に完璧に実力差で負けた。OFAの力を100%、それこそオールマイトみたいに扱えていれば、太刀打ちできたのかもしれない。今の僕には到底無理な話だ。だから、今の僕は弱いのは事実だ。

 

 

「テメェだけじゃねぇ。クラスの連中……どころか、雄英の生徒全員が雑魚と言っていい。あの半分野郎だって例外じゃねぇ。ただ、一人を除いてだ」

 

 

 それは、どうなのかな。今の言葉の意味を、たぶんちゃんと理解できていないんだ。だから、判断に困る。体育祭で1位を勝ち取ったから……じゃないよね。あれはかっちゃん自身が一番納得してないみたいだし。生徒っていう括りがあるから、当然教員のプロヒーローは除いた話だ。オールマイトも当てはまらない。そうなってくると、選択肢として残されているのは――。

 

 

「あの体育祭で、全員が他人を蹴落としてでも勝ち上がる気概があった。有象無象が大半だったが……今、それはどうでもいい」

 

「あの実力至上主義のかっちゃんがロジックから実力を外した……!?」

 

「何処に驚いてんだ首から上更地にすんぞコラ」

 

 

 ご、ごめん。あまりの意外さについ本音が。

 

 でも……うん。かっちゃんが言ってることは正しい。本気で全員が勝ちに行こうって思ってた。雄英っていう狭き門をくぐったからには、絶対にここで目立ってヒーローになってやるって。僕も前日にオールマイトから発破を掛けられたて、そういった心持ちのまま競技に参加したし例外じゃない。

 

 

「……だが、一人だけトチ狂った馬鹿が混じってやがった。自分(テメェ)の勝ちなんざいらねぇと吐き捨てやがった大馬鹿がだ。クソみてェに皮肉なことだが、ソイツが最も体育祭に爪痕を遺していきやがった」

 

「…………うん」

 

「無論、それは栄光だとか名誉とはかけ離れた『ただの衝撃(インパクト)』に過ぎねェ。観衆が騒ぎ立てたがるような火種をまいた。ただ、それだけだ」

 

 

 あんまりな謂れ様だけど、至極それは正しい。世間では英雄奇譚ではなく、不幸な事故として語られている。当事者以外の第三者が、彼女の気持ちなんて知る由もない。

 

 

 

 それで救われた人がいるなんて、尚の事――。

 

 

 

 

 

「それでも、アイツは笑ってやがった」

 

 

 

 

 

 ハッとした。茫然自失、は言いすぎかもしれないけど……とにかく、頭に靄がかかるように思考の渦へと飲まれていった。

 

 そして、同時に困惑した。今でも意図が読めていない事は沢山もある。けれど、また理解ができない事がまた増えた。

 

 笑った? 大怪我、下手をすれば死にかねない様な攻撃を前にした上で? そんなこと自身が助かることが分かっていなくちゃできることじゃない。でも、現に大怪我をして……。

 

 

 

 

『わたしは――ない。ただ、それだけだから』

 

 

 

 

 ――今の今まで忘れていた。

 

 そうだ。あのとき彼女は何を言ったのだろう? どうして僕を前に送り出した? ルール違反でランキングには入れなくても、実質的な1位の栄光を手に入れられたはずなのに。かっちゃんや轟君を出し抜いて他の人を助けたりていた。

 

 目立ちたかった? いや、この数ヶ月で彼女の人となりに触れて、それは有り得ないと分かっている。人目につかない所で計画的に事を進めたがる合理主義。何処と無く相澤先生と似ているんだ。だから、必無策に物事を引っ掻き回す様な事はしないし、必要以上に目立つ理由なんて――。

 

 

 

 

 

 ――――もしや、必要だった……のか?

 

 

 

 

「考えても無駄だ。アイツの考えは、アイツの頭ン中にしか存在しねェ」

 

 

 

 

 ……お見通し、か。本当に……敵わないな。

 

 

 

 そう。結局全てが仮説なんだ。僕も、かっちゃんでさえもそれは一緒のこと。本人から聞く以外に方法は無いんだ。

 

 

 

 けれど、それ願いはひどく空虚だ。

 

 

 

 だって、知らないから。

 

 

 

 彼女の居る場所……まして、どんな状況にあるかさえ、僕らは知らされていない(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 

 

「怪我はしてるが死んではいねェし、回復する見込みってのは聞いてんだからそれで十分だ。いつか戦り合えるってんなら文句もねェ。テメェもごちゃごちゃ考えてる暇ねェだろうが」

 

「そうだけど……」

 

 

 授業でヒーロー名も決まった。職場体験だって控えている。着々とヒーローとしての前準備が整っているっていうのに、不安の方が先立ってしまう。それは何故か。

 

 決まっている。何もかもが足りていないからだ。他のみんなと比べても、自分の持つ個性への理解度が圧倒的に不足している。果たして今の使い方が正しいものなのか。8代にも渡って継承されてきたこの力には、今以上の何かがあるのではないか。

 

 足りない、足りない、足りない……。分かりきっていた事だけに歯痒い。だからこそ、今は――。

 

 

 

 

「……強くなりたい。みんなを守れる……ヒーローに」

 

 

 

 

 B O O O O O O M !!!

 

 

 

 

 

「遅ェんだよカスが」

 

 

 

 

 ――――ああ、そうか。

 

 

 

 

「うん…………待たせたね。本当に」

 

 

 

 

 君も、そうだったのか。

 

 

 

 

「手ェ抜いたらコロス。全力で来い」

 

 

「……随分と世話焼きだね。それは彼女の影響かな……かっちゃん(・ ・ ・ ・ ・)?」

 

 

「鏡見て言えやクソデク(・ ・ ・ ・)。捻くれた皮肉なんざ宣うようになったその口……顔ごと矯正(ふっとば)してやらァ!!

 

 

 

 互いに地面を蹴った。

 

 負けるんだろうなぁと頭では理解してた。けれど、諦めた訳じゃない。それを踏み越えて更に前へ、先へ、上へと走り続けるための第一歩。

 

 振り返ったっていい。泣いたって構わない。けれど、足だけは止めちゃいけない。自分以外の誰かを守れるようになったら、その道筋を鑑みればいい。そこまで歩んでやっと、本当に正しいかどうか悩むべき時が来る。

 

 

 

「かっちゃあああぁぁあぁああああん!!!」

 

 

「デェクゥアァァアアアァァァ!!!」

 

 

 

 

 だから今は、ひたすらに前へ――。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「…………ん」

 

 

 

 

 ………………………眠い。

 

 

 

 クッソ眠いのだが。意識は覚醒してるけど、瞼が上がらぬぇ。何でこんな眠いんですか。昨日何時に寝たんだっけ……。

 

 

 

 

 あ。

 

 

 

 

「……知らない、天井」

 

 

 

 転生したら言ってみたいワード堂々の1位発声の実績をここで回収……なんて呑気な事言えるのは現実逃避してるからですお察しください。あははは………は、は……

 

 

 

 

 

 

 

 ア  カ  ン  。

 

 

 

 

 

 

 おはようございます、奏です……。

 

 

 

 うわぁ思い出したぁ……いや、できればそのまま永遠に封印指定案件だったんですがねぇ!? わたくしどうやら酔った後の記憶はソコソコ残るタイプみたいでして!! バッチグー大体覚えてまーッす!!(サマーウォーズ感)

 

 なんですかあの痛々しいモノマネは……ッ!? いやでも、あのときは完全に降りてきてたんですよ! 頭の中に莫大な情報がドバーッと! それが気がついたらあんな大惨事に……ちくせう! アタイ、自分が許せへん!!

 

 

 

 ……まあでも、結果的に退場できたから良くない? あの後絶対起こりうる、マスメディアの玩具から逃れられるんだから実質勝ちでは? さっすが奏ちゃんだな! 試合に負けて勝負に勝つとはまさにこのこと。何も憂うことなんてないな!ガハハ!!

 

 

 え、根本的解決じゃないただの逃避? もっとヤバイ現実が待ち受けてる?

 

 

 

 

 

 …………き、気の所為でしょ! そんなことよりココは何処かなあ!?(墓穴)。ベッドはふかふか(・ ・ ・ ・)だし、めちゃくちゃ内装とか凝ってる部屋(・ ・ ・ ・ ・ ・)ですね!? 見た感じ洋館っぽい(・ ・ ・ ・ ・)雰囲気のオシャレな寝室なんだけど、こんな場所でノンレム睡眠キメれるとか幸せだなぁ!!?

 

 

 

 

 

 ………………アレ? ココ病院じゃなくない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――やっと目が覚めたのね」

 

 

 

 

 

 

 あ、はい…………え、どちら様でしょうか?

 

 

 

 気が抜けて普通に返事しちゃったんですけど。気がついたらドアの近くにめっちゃ美人な女性おるんやけど? マジで存じ上げないんですが、美しいので良しとしま……いや、良いけどそれじゃ何の解決にもならんわ。

 

 とりま今の言い方から察するに、わたしが寝ている間の経過観察してたみたいだし、看病もしてくれたんですかね? 看護師……っていう格好じゃないしなぁ……? そもそも場所も時間も分かんないしお手上げっス。とにかく、自己紹介というかご挨拶を――。

 

 

「貴方のプロフィールは把握してるわ。実習生の事、ましてや指名したんだから当然でしょ。見ず知らずの他人を介護するほど、私はお人好しじゃないから」

 

 

 実習? なんか聞き覚えのあるワードの様な……?

 

 

 

 あ、アレだ。

 

 相澤先生が言ってたヤツ。確か体育祭が終わって間もないうちに、職場実習があるって言ってましたね。なるほど、少しは状況が理解できてきました。

 

 要するに、わたしが気絶してる間に先生方が実習先を決めてくれた感じですか。しかも、わたしが眠って動けない状況でも、対応できる受け入れ先を。マジで有能だな雄英高校。伊達にプロヒーローが揃っていないぜ……。

 

 ということは、もしかして回復専門とか、サポート路線のプロヒーロー事務所に来たのかな? そうでもないと、わたしを介護しながら活動とかできないもんね。例外あるとするなら色んなサイドキックを抱えてる大手の事務所だけど……わたしみたいなルールガン無視で体育祭引っ掻き回した様な厄介者は御免でしょうし、そういう系の路線のプロヒーローだと見ました。

 

 

 …………的なこと眼の前の方に告げてみたり。

 

 

「あら、イイ勘してるじゃない。そうね、私以上に貴方のこと活かせる人は少ないんじゃないかしら。貴方の怪我を治すことにもそれなりに貢献したのよ? だからこそ、指名を勝ち取れたと言っても過言じゃないわね」

 

 

 

 

 命ノ恩人 感謝永遠ニ

 

 

 

 

 いやいやマジです? やってること聖人ってレベル上げじゃないですからねコレ? 感謝してもしきれないですよコレ。話の流れからみて大分長い間眠っていたっぽいし……一学生に対してこの手厚さ、頭が上がらないっス。

 

 けど、ヒーローとしてこんな人は見覚えないんですよねぇ。自分の個性を鑑みて、将来の展望として何人かサポート型の個性持ちのヒーローはピックアップしてたんですけど、こんな美人の方がいたら覚えているはずなんですよ。もしかしてヒーローコスチュームの都合上顔が映らなかったとか? うーん、いずれにしてももう少し話を伺わないことには考えようも無いですね。

 

 

「何から何までお世話になりました。お名前を伺ってもよろしいですか?」

 

 

 ココは直球で言ってみる。だって、やましいことなんてないからネ! 寧ろ、被害者体質過ぎて全てを愚痴として垂れ流したい。入試と個性把握テストにマスコミ騒動を経て最後に体育祭……緑谷少年並にハードな人生送りすぎじゃない? わたし危険な目に合いたくなくて雄英に入った筈なのにあっれぇ〜〜〜??

 

 

 

 

「――――いいわ。名乗ってあげる」

 

 

 

 

 …………ん? なんか今、雰囲気が変わった様な……微妙な逡巡があったのは気の所為ですかね? 前にも一度……いや、何回か味わった空気――?

 

 

 

 

礼洞瑞香(れいどうみずか)。貴女に興味を持ったひとりにして、この館に住む自由気ままな女主人。そして――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、これってシリア――

 

 

 

 

 

 

 

 

「このF市を統括する【魔術師(・ ・ ・)】よ。

 

よろしくね、見習い魔術師(リトル・メイガス)さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………はぇ???

 

 

 

 

 

 




 かっちゃんが世話焼いてデクと訓練し始める。実力的には合宿の後ぐらい。

 そんでもって、魔術師のご登場でございます。



 その辺りは、近況のご報告から始めさせていただきます。

 再三申し上げた通り「書いたら面白そう」という気持ちが先立ち、この作品の執筆に至った次第です。言うなれば、ノリだけで書き始めたものでした。SSなんて大抵はそんな気持ちで書き始められるのが大半でして、当時の私もその同類でした。

 しかしながら、予想を遥かに上回る反響を頂いたことに内心驚いていました。あとがきやまえがきで感想や評価について余り触れていませんでしたが、実際は嬉しさと不安が渦巻いてました。

 というのも、この物語の着地点をきちんと見据えずに書いていた事が理由です。その場のアイデアや思い付きを形にしていけば、上手く収まるでしょう……と楽観的な気持ちで続けていました。

 ですが、話数が重なるにつれて、撒きに撒いた伏線モドキや特に考えもせず出した意味ありげな会話が増え、徐々に収拾が付かなくなることが見えてきたのです。当たり前と言えば当たり前ですね。執筆が楽しければそれで良いのスタイルを続けてしまった結果と言えます。どんな分野でもそうですが、最初は良かったのに最後は雑に終わらせてしまったせいで、駄作となってしまうことは珍しくありません。

 無論、自分の書きたいように書いて、途中でやめるのも別に構わないのでしょう。このハーメルンでも完結している作品より、途中で執筆が止まっている作品の方が圧倒的に多いことは紛う事なき事実です。それを鑑みれば、このまま適当に終わらせるか、はたまた途中で投げ出すことも一つの選択肢なのでしょう。それが二次創作の自由性というものです。

 それならば、私もそれに従うこととします。




 原作崩壊を帰しても、この作品を完結させます。



 オリジナル設定を多量混ぜ込んだとしても、撒いた伏線を回収し、投げたものをまとめられるように努めます。結果的にどうなるかと言えば単純なことです。


 作品概要の「申し訳程度の型月要素」が虚偽になります。この話を読んでいただければ理解できると思いますが、この先めっちゃ型月します。「これ本当に原作ヒロアカか?」と言われれば難しいぐらい型月します。なんならオリジナルの魔術やら世界設定もわんさか盛り込まれます。

 ヒロアカ主体のクロスオーバーを望んでいた読者様には、非情に申し訳ありませんが、これが私が出した結論になります。その構成を練るために、この半年近く頭を悩ませておりました。「半年悩んでそのレベルしか出せないの?」と期待外れなと思う部分もあるかもしれません。ヒロアカはともかく、型月に関してはまだまだ造詣が浅い故に、それはおかしいと感じさせてしまうこともあるかもしれません。

 型月ファンとして、この作品を読んでいただけている方のご期待に沿える様、尽力は致します。ですが、満足いただける結果に至らなかった場合、お目汚しにはご容赦ください。

 また、別として感想に置かれた質問等に対する返信は、控えさせていただきます。オリジナル展開が加速する手前、些細な情報でもネタバレに繋がってしまうためです。完結した後、最終話についた感想のみにご返信させていただきます。


 長々と語らせていただきましたが、これまでとこれからに関する反省と展望でした。これからも僕のヒーローアカデミアSS作品「ガンドォ!」をよろしくお願いいたします。



追伸

 更新速度は、週1ぐらいを目安に再開していきたいと考えております。ですが、世間を騒がせている例のウイルスにより少し忙しい状況です。半年も音沙汰無かった理由の半分くらいは大体アイツのせいです……。過度なご期待はお控えなさるようお願いいたします。

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