ガンドォ!   作:brain8bit

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 好きなジャンプ作品は『レベルE』



第9話「奏のグルメ」

 どうも奏です。相も変わらず授業を受けねばならぬ。学生だからね。仕方ないね。けど、こと普通の授業に関しては平和で気が楽だよ。午前中と放課後だけがわたしの心の安らぎ。ビバ普通の学生生活。雄英に覚悟の無い一般人が入るとこういうことになるって身を持って体現していくスタイルですよ。マジ自己犠牲の精神。わたしやっぱりヒーロー向いてるのでは?ハハッ(嘲笑)。

 

 けど、刺激のある日常ってのも悪くはない。入試然り、個性把握テスト然り、昨日の実技授業然り……。生前はあり得ないとも思えるほどの非日常感。たまにはそんな空気が吸いたくもなるのも事実。けどさぁ……。

 

 

 

 

「あのぉーー!! オールマイトの授業について何か一言いただけますか!?」

 

 

 

 

 流石にこれはない(真顔)。

 

 

 

 この世界でも商魂たくましいと来たか。いや、むしろネタには困らない世界になったから余計に活発になってんのかな。そんで手段を問わないマスゴ……んんっ、マスコミのことだから、見えないところで個性の不正使用とかも……なんて邪推しちゃうよね。コミックもびっくりな超人社会でも悲しいけどこれは不変の因果らしい。うむ、厄介極まりない事で候う。

 

 

「あの! そこのあなた!! オールマイトの授業について一言お願いします!!」

 

「(相澤先生に比べたら)割とまともです。失礼します」

 

 

 いやぁ、いざ追っかけられる当事者になって尚更感じるけどマジで不快っす。なんで人のパーソナルスペースにそんなずけずけと踏み込んでこれるのよ。良心は犬にでも食わせとけって感じ? わーお俺たちにできないことを平然とやってのけるその黄金(メッキ)の精神! そこに痺れぬ反吐が出るぅ!

 

 はあ……朝から謎に神経使わされた。さっさと撒いて登校しよう。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「今日は学級委員長決めとけ……終わったら起きる」

 

 

 いや先生やる気なさすぎでしょ!? あ、でも最後に「合理的にやれよ」って付け足して芋虫と化した。そこは譲らないんですね……ってうっるさ!? お前ら貪欲っつーか節操なさすぎだろ! 小学生か!! いや、実質的なクラスのリーダーに憧れるのは分かるけど、そこまで見境なくなります? 誰かが収集付けないと……お、飯田少年。ふむ、投票にしようって? 自分に全員が入れる最中にある票の差こそ価値があると。なるほど、流石規律を重んじると公言してる奴の意見だ。みんなも納得したみたいだし、わたしもいいよそれで。

 

 あ、でも待って? 多数決って不確定要素が多いのはちょっと見過ごせないな。おねーさんなーんか嫌な予感がするんだけど――。

 

 

 

 

 

 

 緑谷 出久 3票

 

 萬實黎 奏 2票

 

 

 

 

 

 

 

 セ、セェェェーーーフ!!

 

 

 

 あ、危なかった……! 考えうる最悪の結果だけは免れた……のかな? お上はまだわたしを見放していなかったのね……!

 

 だが、それでも納得いかない! 誰ですかわたしに票を入れた物好きたちは。手を挙げなさい、先生怒らないから。お茶子ちゃんと飯田少年には予めわたしには入れんなって忠告したから違うとして……え、マジで誰が入れたのか分からん。わたし? わたしは八百万ちゃんに入れたよ。だから彼女は2票になってるはずって1票!? わたしに入れたのお前だな!? なんで!? どう考えても八百万ちゃんの方が委員長って感じじゃんか!!

 

 

「お、揃ったか。ならこれで委員長と副委員長決定な。じゃあさっさと授業の用意しろよー」

 

 

 ちょ、タンマ!? そんな本人の意思関係なく決めちゃうの!? わたしやるとは一言も言ってないんだけどぉ! そもそもわたしに入れた犯人まだ分かってな……ちょっと待てぇええぇぇえええ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 もっきゅもっきゅ。

 

 気分は良くないが飯はウメェ。料理系プロヒーローが作るご飯が不味いわけがないよね。「最終的には白米に落ち着く」という至言を残したランチラッシュ先生は個人的に雄英で一番好きなプロヒーローです。美味しいご飯が食べさせてくれる人は万国共通の救世主。出来ることなら一生この人のご飯食べたい……。

 

 

 

「はぁ……僕が学級委員長なんて務まるかなぁ」

 

 

 あー、落ち込んでるけど緑谷少年? 自分に一票入れておいてそりゃないでしょ……いや待てよ。入れてなかったらわたしが委員長だったのかな。他に緑谷少年に票をいれそうな人は……いないか。うん、よく自分に入れた!(掌のドリル)

 

 てか、今さらだけど副委員長って何するの? 仕事って言っても多分諸々の雑務とかかな? プリントを職員室まで取りに来いとか、資料整理手伝ってとか。それなら、そこまで肩肘張る理由もない……んだろうけど、ここ雄英だしなぁ。何が起こっても不思議じゃない夢のヒーロー育成機関。面倒事の受け皿になることは、ほぼ確定なんじゃないかな。

 

 

「……面倒だから八百万ちゃんに任せてしまおう」

 

「む、それはいけないぞ萬實黎君! 忠告されて俺や麗日君も君に票を入れていれなかったが、それでも君は選ばれた。勝ち取った信頼に報いる努力はすべきだろう!」

 

 

 言いたいことは分かるけど、要らぬ善意の押し付けは勘弁。勝手な理想抱かれて、失望されてもわたし責任取れない。マッチポンプ過ぎて笑えないぜ……いやマッチポンプはちと違うか。あー、もう考えるのも億劫になってきたよ。終わったら相澤先生に相談して……いや、あの人まともに取り合ってくれるんかな? 今のところゴウリテキキョギーと毎日眠そうなこと以外印象に無いから不安しかないんですけど。あ、除籍もあったわ。

 

 

「でも、奏ちゃんってなんだかんだ面倒見いいよね? なんか困った人とか見つけるとふらふら~って近付いて手を貸すイメージある」

 

 

 そう思うかお茶子ちゃん。否定はしないけど、それは見て見ぬふりの罪悪感に耐えきれないからだよ。なんならお人好しとかじゃなくて自分のためですし。え、ズレてるって言われないか? 無関心よりは良いと思うんですが、違うんですかね。『知ってて何もしない』はバレたとき印象最悪だと思いますよ? 偽善者って罵られるかもしれないけど、それでも対外的に見れば善なんだからさ。それなら、何か行動を起こした方が良いと思うんです。

 

 

「……むむむ、不思議な考え方だね」

 

 

「そう?」

 

 

「せやせや」

 

 

 うぬぅ……割り切ってるだけなんだけどね。世渡りを考えたとき、必然的にそう成らざるを得なかったっていうか。擦れた社会人の考え方は夢見る少年少女には想像しにくかったかな。

 

 でも、いつかは現実を見なきゃいけない。わたしたちがヒーローとして助けなきゃいけないのは、『現実』の人々なんだもの。夢ばかり見てちゃ、本当に救いたいものも見えなくなっちゃうよ?

 

 

「ハハ……萬實黎さんは現実主義者(リアリスト)なんだね。あ、悪いって意味じゃないよ!?」

 

 

 いーよ、気にしてない。緑谷少年は低姿勢が過ぎるよ。謙遜は日本の美徳だけど、引き過ぎは侮蔑と捉えられるからお気を付けて。性分なのかもしれないけど、助けに来たヒーローがビクビクしてたら、助けられる人も不安になっちゃうぞ。ほら、オールマイトだって大胆不敵に笑ってるでしょ。いや、流石にあそこまでやれとは言わないけどさ。委員長に選ばれたんだし、もう少し自信持ちなって。

 

 

「そっちだって入試と言い、個性把握テストと言い、大事なところでは根性見せてる。だから少しは胸張ってもいいと思う」

 

「……! あ、ありがとう!」

 

「うん、いい話なんだけどね? 奏ちゃんそれ自分に刺さっとらん?」

 

 

 ……君のような勘のいい子は嫌いだよ。

 

 

 わたしは信条として目立たないことを優先してるだーけーなーのー! 今朝みたいな取材陣に取り囲まれる人生なんぞいらぬ! 毎度言いますけど、わたしは静かに暮らしたいだけだから。人に恨まれたり疎まれたりされたくないし、脚光を浴びることも嫌です。それこそ相澤先生みたいにアングラ系ヒーローでも全然いいよ。

 

 自分で決めれる活動時間に、公務員の立場でありながらも給料は一定の基本給プラス活躍に比例した歩合(ボーナス)制。働きたいときに働ける公務員とか理想的過ぎる。やることと言えば、活動している他ヒーローの個性をわたしの個性でブーストして稼ぐこと。勿論、自分の手で届く範囲であれば体張って人命救助するよ? そのために中学で体鍛えたんだから。

 

 

「ぐ、具体的な将来設計があるのは良いことだな……うむ……」

 

「アハハ……」

 

 

 何若干引いてんですかメガネ&もっさりマン。悪かったですね、幻滅させて。

 

 

「ち、違うよ! ただちょっと、意外だっただけだって! 僕、萬實黎さんって基本的に何でもこなせる人なんだなと思っててさ……昨日もオールマイトが講評で萬實黎さんが推薦入学者を完封してたって聞いて、やっぱりすごい人だって思ったんだ。けど、実際は努力で培ってきた結果なんだって分かって凄く申し訳なくて……ええと……だから、その――」

 

 

 オーケー分かった分かった。一旦落ち着け。言いたいことは何となく伝わったから。

 

 

「つまり、意外と俗っぽいから接しやすくなったって事?」

 

「身も蓋もない言い方だよ!? いやでも、それはそれで間違っていないけ、うぇっほゲッホォ!!?」

 

「だ、大丈夫か!? そして落ち着きたまえ緑谷君!!?」

 

 

 あ、気管に入ったか。地味に辛いよねあれ。うん、分かる分かる。うんうん(他人事)。

 

 でも、本当に素直な子だよ緑谷少年は。やはりジャンプの主人公は愚直で真っ直ぐなのが王道。友情・努力・勝利を地で行けるからこそ務まる。是非とも頑張ってスーパーヒーローとして巨悪から世界を守ってほしい。そして、出来ることならわたしの平和も守ってほしい(本音)。私情こそ大いにあるけど、応援してる心には嘘はないから。さてと――。

 

 

「あれ? 奏ちゃんどこにいくの?」

 

「ご飯おかわり。後3杯はいけるから」

 

「食いしん坊キャラだったん!?」

 

 

 ランチラッシュ先生のご飯が美味しすぎるのが悪い。わ、わたしは悪くねぇ! なんと言われようが髪切って出直したりしないからな! いやこれ本当マジで。この昼食のために午前の退屈を乗り切れて、この昼食があるからこそ午後の地獄を乗り切れるんですよ。満腹中枢が悲鳴を上げない限り食べ続けねばならぬ! まだだ。もっと……もっと……もっと寄越せランチラッシュ……!

 

 

「どうしたの奏ちゃん!? 片眼が真っ赤だよ!!?」

 

 

 おっと、これは失敬。あまりに白米が美味しすぎて心の阿頼耶(式)が暴走したようだ。思わず某魔神柱並みに狩り尽くしたくなってしまったよ。

 

 さて、冗談は置いといてさっさと並ぼう。早くご飯食べて、相澤先生にも相談せにゃならんのです。美味さを噛み締めつつも迅速に食事を完遂するとしよう。

 

 いざ、最高の昼食をこの手に――!

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 その後の、マスコミが敷地内に流れ込んだり、飯田少年が非常口になったり、委員長と副委員長が原作通りになったりする。マスコミは警察に連行され、飯田少年のあだ名が非常口飯田となり、クラス全員は勿論指名された飯田少年と八百万ちゃんが推薦を承諾し、万事丸く収まったのだった。

 

 

 なお、その頃のわたしと言えば、相澤先生に副委員長を変えられるか聞くために職員室に向かってました。その道中外が騒がしいな~とか思ってたけど、雄英だから何が起きても不思議じゃないよねって感じでスルー。そんでもって、職員室前まで来た訳なんですが――。

 

 

「失礼しま――」

 

「あ?」

 

「はい?」

 

 

 入ったらやべぇファッションした奴がいました。

 

 

 え、なにそれ。なんだろう。うん、めっちゃ手って感じ。それがあなたのナチュラルファッションセンスだというのなら、仲良くなるのはと絶望的だと思って頂きたい。つーか「あ?」って何ですか「あ?」って。ここに居るってことは少なからず教職員か関係者でしょ? 人に教える立場の人間以前に社会人としてどうなんですか。

 

 それと、もう1人いた。なんか、要石から出てきそうな見た目してますね。おんみょーん的な鳴き声出しそう。ていうか先生全然おらんやんけ。会議中だったりします? だったら出直しますけども。

 

 

「おい黒霧……なんでガキがいるんだ。マスコミに釣られてヒーロー共といるはずだろうが」

 

「どうやら渦中からあぶれた生徒がいたようですね……死柄木弔、増援を呼ばれては面倒です。さっさと退散してしまいましょう」

 

 

 このミカルゲめっちゃ礼節ある喋り方しますやん(驚愕)。それに比べてガキってこの手だらけマンは。ビックリするぐらい口悪いな。つか撤退? どゆこと? 本当に教職員か? あれ? でも、どっかで見たことある気がするあの手男。どこで見たっけか……あんな特徴的な容姿忘れる方が難しいと思うんですけど……うーん、もう少し、ここまで出かかってるのに。

 

 

 

 

「こんなガキ一人のために引けだぁ? そんなダサい真似できるかよ。もっと簡単な方法がある」

 

 

 あ、そうだ。たしかコイツ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――殺せば、喋れないだろ?」

 

 

 

 

 

 (ヴィラン)やんけ。

 

 

 

 

 

 

 

 これがわたしにとって、本物の悪意との邂逅だった。

 

 

 




 アニメ1話分の内、半分しか進んでないという事実に震えるといい……。


 私は震えてる。


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