では本編です
リチャード・シーカー
イギリス陸軍の特殊部隊『SAS』の第一部隊隊長をしていた人物であり、ずば抜けた洞察力と人間観察、彼のスナイパーライフルの扱い、そして何よりも光ったのは彼の頭の回転の速さ、思考能力であり状況判断などである。彼の発案した対テロ作戦などはどれも奇策であり、成功を納めている。バーニィの父ローガンとの出会いは過去の大規模テロ対策作戦の時、ローガン率いるアメリカ特殊部隊『デルタフォース』と合同作戦の時に出会っている。
そのあとも何度か作戦で一緒になり、部隊を引き連れて共に酒を交わすなかともなった。
リチャードは結婚すると同時に軍隊を抜けると言い出した。結婚する相手はイギリスの名門オルコット家のご令嬢、セシール・オルコット。
昔、彼女の家の隣に住んでいたリチャードは、何度か彼女の屋敷に小さい頃に忍び込みセシールを連れ出して遊んでいた仲だったらしい。
リチャードは自身が特殊部隊の隊長と言うのをセシールには隠していた。彼女を不安にさせてはいけないと考えたのだろう。軍を辞めて彼女の立ち上げている企業のささえと成りたい、手伝いをしたいと言った。しかし、軍上層部の人間はそれをよしとしなかった。彼のような逸材を簡単に手放すわけにはいかなかったからだ。彼はローガンに相談を持ちかけていた。そしてローガンから様々なアドバイスを貰った。
その後、リチャードは辞めない代わりに条件をだした。それは、今後自分に何かあればオルコット家をまもると言うものだ。上層部はそれを許可した。
リチャードはそのあと無事結婚。婿養子のため名前はリチャード・オルコットとなった。
自分が特殊部隊の隊長であることを隠しつつ、セシールの会社を支える。彼は、自身の能力を隠し、下手にでしゃばらず、まるで何もできないダメ男の婿養子になりきった。そして裏方の仕事をセシールに内緒で行っていた。これを知っているのは、セシールのメイドのチェルシーだけだった。
セシールの周りの人間は彼を無能よばわりしだした。
そんなリチャードとセシールの間に最愛の娘、セシリア・オルコットが産まれた。その時の彼は泣きながら喜んだと言う。
その娘が産まれた後も彼は情けない父親を演じながら裏方の仕事。オルコット家に群がる不穏因子を叩き、そしてSASとして任務をしながらの生活を送っていた。
結婚して四年目、セシリアが2歳になるときにセシールに裏の仕事をしているのがばれてしまう。特殊部隊の隊長をしているのもばれてしまった。今まで情けない男、父を演じている彼の本当の能力を知ってしまった。
彼女から拒絶されると思っていたが、彼女はどうして自分に言ってくれなかったのかと泣きながら訴えた。
彼女は真実を会社の人や親戚に言おうと言ったが、彼はそれをよしとしなかった。セシールに黙っていろと、決して他の人達にも言ってはならない。そう彼は言った。
セシールは渋々だが、認めた。しかし、自分達オルコット家を守っているリチャードを何も知らない者達は無能扱いする。挙げ句のはてには、大きくなってきたセシリアにまでどうしてあんな父と結婚したのかと言われるようになった。セシールは耐えられなくなってきていた。その後、ISが産まれ、女尊男卑になりますます周囲からのリチャードに対する風当たりが強くなる。
セシールはリチャードに何度もセシリアだけには言おうと言ったがそれも拒否した。どれだけ馬鹿にされようと、自分の娘から嫌われようと、オルコット家を守るためなら自身を汚く見せることぐらいどうってことないと……。
いつか大きくなったセシリアがこの家を継ぐとき、すべてを話すと言っていた。
しかし、それは叶わなかった。
結婚して10年目。セシリアが8歳の時にリチャードとセシールは仕事のために隣町に列車にのって移動中、そこで横転事故が発生し死亡。愛する娘に真実を伝えられず早すぎる死を妻と迎える。セシリアを残して。
俺はすべてを話した。愛した娘にさえ真実を伝えることなく、一人で戦い、オルコット家を裏で守ってきた男『リチャード・オルコット』。
すべてを伝えた後、セシリアは俯いていた。
「オルコット。君のお父さんはすごい人だよ。決して情けない人ではない。むしろ誇るべき人物だよ。」
俺はセシリアに語りかける。
「知ってるかオルコット。嘘を貫き通すのは並大抵のことではできない。嘘をつくのはとても辛いんだ。だけど……オルコットのお父さんは貫き通したんだよ。愛するオルコット家と将来の君のために。」
そう…嘘は悪いものだけではない。でもそれは残酷で、悲しいものもある。バーニィは痛いほどそれを理解している。だから、バーニィからすればリチャードの考えがわかるのだ。守りたいもののために嘘をつくということを……。
バーニィはセシリアを一人にさせてやろうと整備室から出ようと自身のラファールを片付けようと立ち上がる。
すると背中にセシリアが抱きついてくる。
「な!おおおおるこっとさん?何を?!」
「少しだけ…背中を貸して下さい……。」
その後セシリアはバーニィの背中で子供のように泣いた。何度も何度もごめんなさいごめんなさいと言いながら。そんなセシリアにバーニィはこれこそが彼女の本当の姿ではないのかと考えていた。そしてバーニィは本当の事を伝えてよかったのかと考えていた。彼女を追い詰めた結果となってしまったのではないかと、家族のことに首を突っ込んではいけなかったのではなど……。
~30分後~
オルコットは泣き止み、落ち着きを取り戻した。
「お恥ずかしいところを本当に申し訳ありませんでしたわ。」
目を擦りながらオルコットは顔を赤くしながら謝罪してくる。そんなオルコットが少しかわいいと思ったのは内緒だ。
「大丈夫、俺なんか何もしてないさ。ただ一人のかわいい女の子に背中を貸しただけだよ。」
柄にもないことを言う。はははと笑うとオルコットも笑った。
「本当にありがとうございます。貴方のおかげで本当の父を知ることが出来ました。このままではわたくしは死ぬまで父の事を誤解したままだったでしょう。」
オルコットは目を閉じる。
「これからは、母が作り、父が守り抜いたオルコット家を守っていきますわ。本当にありがとうございます。バーナードさん。」
微笑みながらそう言うオルコットの顔は、本当に綺麗だった。きっと彼女ならできる。そう思えた。
その後俺はオルコットを一夏の部屋に連れていった。オルコットは一夏に謝り、一夏もオルコットに謝った。
その後、箒さんを含めた四人で食堂で晩御飯を食べた。
夜の12時。わたくしの隣のベッドで寝ている人。バーナードさん……。彼には本当に驚かされてばかりで、助けられてばかりで……。
彼の事を考えるだけで心が暖かくなり、ドキドキする。でも、わたくしはあまり彼の事を知らないし、彼にもわたくしの本当の姿を見せてません。これから、彼の隣で彼の本当の姿を見ていきたい。そう思えます。そして、わたくしの本当の姿を見てもらいたい。さて、明日も朝の弱い彼を起こすために早く寝ましょう。
シャルロットのキーホルダーを落とした。
死にたい